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未完結打切り版(2010年)
NO TITLE 4
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*
ジャズの流れたバーは優雅で顔に大きな湿布を貼ったままのアレイドは場違いだった。それを自分でも分かっているだけに恥ずかしかった。
上等なスーツ姿の紳士や大富豪のように見える老夫婦。行儀悪くソファーに寝転がり、ぐびぐびとバーボンを飲み干す女。
探している人物は見当たらない。ひょっとしたら店を間違えたのだろうか?そんな疑問が浮かんでくる。しかしこのバー以外にこのあたりにはバーはない。
「久しぶりだね、アリアちゃん」
指定された席をきょろきょろと見回し、探していると後ろから肩を叩かれた。「リーダーさん。お久しぶりです」
派手な黒と赤を基調とした服に地毛の色が丸見えの髪。
「こんなところで何してるの?」
「とある人と待ち合わせをしているんですけど、ここでいいのかと…」
話している最中にリーダーはアレイドの頬に手を伸ばした。
「痛そう」
アレイドの話を聞かずにそう呟いた。
えぇ痛いんです。ですから触らないで頂けませんか、という台詞は呑み込んだ。
「まだ危険な仕事続けてるの?」
「はい」
「いつでも待ってるからね?」
アレイドは笑みだけ返す。リーダーはそれじゃと言って行ってしまった。
ダンテ君で足りてるクセに。
アレイドは空いたままの指定された席に向かった。 いらいらとカウンターテーブルを指で叩いている。腕時計を見ると予定の時間を5分も過ぎている。いや、5分しか過ぎていないと考えよう。白兎の遅刻癖のおかげで待たされることには慣れているつもりでいる。
「すみません…」
ちょんちょんと肩を叩かれた。アレイドは振り返った。
「はい」
黒い髪をした女性が視界に入った。
「アリスさんですか?」
「え、えぇ。アリスの者ではありますが…」
黒い髪の女性は膨れたファイルをカウンターテーブルの上に置くとアレイドの隣に座った。
「貴方が依頼人ですね?」
白兎から見せられた写真とは顔立ちが違う気がしたけれど、アレイドは写真の女性の顔立ちをはっきりとは覚えていなかった。
「違います」
返された言葉にアレイドは眉間に皺を寄せた。
「どういうことですか」
依頼人ではない人間がやって来たとはどういうことだ。アレイドは訊ねた。
「私は妹です。依頼人のシャルロットの妹のアリエットです」
アレイドはそれで?と話を促す。
「シャルロットは数ヶ月前に亡くなりました」
「あれ。そうなんですか?では依頼されたのは数ヶ月前より更に前と?」
アリエットは俯いて静かに口を開く。
「姉の遺言で…。依頼したときは嘘をついてしまって…。写真送ったんですけど、届きましたか?」
アレイドは頷いた。
「こちらもきちんとした話は全く聞いてないんですよ」
「とある人を殺して欲しいんです」
「まず、その話から聞きましょうか。復讐、ということで?」
「はい。姉の仇を討ちたいんです」
アレイドは頷く。
「シャルロットさんが亡くなったのは…?病気ですか?」
アリエットの膝で組まれた手が震えていたのをアレイドは見つめた。
「あの、まずは、これを見てもらいたいんです」
カウンターテーブルに置かれたままの膨れたファイルをアレイドは預かった。
「これは?」
「17年前に姉が巻き込まれた事件です」
アレイドはファイルの中身をぱらぱらと捲りながら流すように見た。
「後から目を通して置きます。それで、殺して欲しい人っていうのは犯人ですか?」
アリエットは頷いた。
「分かりました。犯人が何処に住んで何をしているのかはご存知ですか?ご存知ない場合はさらに手数料が上乗せになってしまうのですが」
形式的な、まるで演劇の台本に載っているかのように決まった言葉を並べる。
「はい。隣の街のアパートに住んでいます。結婚もして子どももいます」
「分かりました。暫くそこに監視役を置きます」
これで話は終わりますとばかりにアレイドは立ち上がった。
「頼みます」
「はい」
アレイドは深々と頭を下げるアリエットを煩わしそうに見遣るとバーから出て行った。
*
Aliceの本拠地にある殺風景なアレイドの部屋からテレビの音が聞こえる。立ち止まって、アレイドは額を押さえ考える。外出時は毎回テレビと照明の確認はしている筈だ。侵入者ならこんなあからさまに存在を主張するだろうか?それとも変わった侵入者なのだろうか?
とりあえずアレイドは身構えながら自室に向かう。「アレイドちゃ~ん。おかえりなさ~い」
白兎がアレイドの部屋をまるで自室のように寛いでいるのが視界に入る。
「白兎さん何してるんですか」
「父親が息子の帰りを待って悪いかな?」
テーブルに広げられたポテトチップスと半分まで飲まれた炭酸飲料。無造作に置いてあったネコのクッションは白兎の下で形を変えている。
「依頼人、亡くなってたそうです」
「ふぅん?じゃあ電話の相手は亡霊さんだったのかな~?」
白兎はテレビ画面から目を放さずそう言う。
「依頼人の妹でしょうね。遺言による依頼だそうで」「今日はヤケにイライラしてるね。どうしたの?」
「そうですか?」
口調はいつも通りを装っている。イライラとした様子を見せたつもりはない。「僕が部屋を荒らしたから…いや、違うね。会いたくない誰かに会ったとか?…依頼人が気に入らなかったとか?」
「依頼人に気に入るも何もないですよ」
「戸惑ってる?」
白兎がテレビ画面から目を放した。そして眼鏡の奥の瞳はアレイドに向く。
「清々しく人を始末できますか?」
「清々しく…ねぇ?しかも今回は妻がいて子どもがいて…迷ってる?」
「知ってたんですか、標的のこと」
「依頼人の依頼聞かなくてどうするの?嘗めないでよね、プンプン」
白兎はあはあはと笑った。
「アレイドちゃん。いくら幸せな家庭を持っているからって、彼は1人殺してるんだよ。何の裁きも受けず、今ものうのうと生きてる。それが許せるかい?シャルロットさんが亡くなった以外に、もう1人、亡くなったんだよ」
白兎の口調が変わる。駄々を捏ねる子どもを諭すような口調だ。
「大量の新聞と雑誌の記事をもらってきました。今からこれに目を通そうと思うんで、出ていってくれますか?」
白兎は、はいはいと返事するとアレイドの部屋から出ていく。
ベッドに乗り、もらってきたファイルの中身を出した。
黄ばんだ記事だ。発行された日付は17年前の冬。
シャルロットは誘拐された。同時に誘拐されたのはアイーシャという少女だ。 性的な暴行を振るわれた後、シャルロットとアイーシャは苛烈で執拗な暴行を受ける。その半年後にアイーシャは亡くなった。シャルロットは助け出された。しかし狂乱状態にある。全記事を読んで纏めるとこうだ。犯人は複数だったが首謀者以外は既に死んでいる。このことについてはアリエットに訊いてみようと思った。
「アレイドちゃん。もうやるしかないんだよ」
「白兎さん、出ていってくださいよ」
「なんなら、同じ目に遭わせようか?」
白兎の瞳には「愉快」の二文字がうかがえた。
白兎さんは楽しんでいるだけだ。
依頼人を救いたいのではない。彼は苦悩する自身と狙われる標的を観て楽しんでいるだけなのだ。
「パパ」
レヴィは今年で35歳になる。9年前に結婚をして、3年前に子どもができた。
「どうしたルピ」
3歳になる一人娘のルピは目に入れても痛くないほどの溺愛ぶりで近所でも有名だった。
「パパ、ルピお腹減った」
「よぅし、今パパがおいしいごはん作ってやるからな」
レヴィも妻ジェシカは喫茶店で働いている。仕事をクビにされた後は殆どヒモ状態だ。
パンをトースターに突っ込むとフライパンを出して、ガスコンロに火をつける。
火を見ると、思い出したくもない忌まわしい記憶が蘇る。
若い女の悲鳴。床に転がって自身を見上げる虚ろな瞳。
「パパ?」
ルピが声で我に返る。
「あぁ、ごめんな」
フライパンに油を注ぐ。卵を割って、しゃかしゃかと黄身と白身を混ぜる。
ガスコンロの火を見つめているルピにレヴィは「テレビでも観ていなさい」と言った。
危ない火遊びのつもりだった。
じゃかじゃかといきなりうるさくなり、ルピがテレビを点けたのがわかった。今話題の「チェシャ猫」のライブの映像をニュース番組が取り上げている。ルピはチェシャ猫のボーカリストであるダンテが大好きだった。
ギターとドラムの音が部屋を支配する。そしてボーカルの綺麗な声が重なった。
「パパ」
「何だい?」
「ルピ、大きくなったらダンテと結婚する!」
そうか、と笑ってレヴィは食器棚から皿を出した。
「出来たよ」
こんがりときつね色をしたパンにバターを塗り、卵焼きをのせてマヨネーズをかける。
「ありがとう」
ルピは笑った。
「熱っ!」
いやぁあああ!!熱い!
「パパ!熱い!」
この頃、どうかしている。
「あぁ、ごめんな。今、水持ってくる」
レヴィは脳裏を過ぎった映像に眩暈がした。
皿を取った食器棚からルピのプラスチックのコップを出す。蛇口を捻って水を汲む。
思い当たる節なら複数ある。例えば妻のジェシカがこの前聴いていた曲がチェシャ猫の「明日」というのだが、その歌詞の内容は゛あの事件"をモチーフにされていたとジェシカが話していたとか。被害者の女性が数ヶ月前に亡くなったとか。ルピの誕生日が彼女等を誘拐してきた日と同じであるとか。
「どうしたの?」
ルピが心配そうにキッチンまでやってきた。
「あぁ、ごめんね」
もう終わったことだ。誰も咎める者はいない。
名前も住所も公開されていない。妻にバレることも、娘にバレることも、近所のフランクさんにバレることもない。バレてはいけない。バレたら全てを失う。知っている者がもしも現れたら
………殺すしかない。
レヴィは不敵に笑った。
ジャズの流れたバーは優雅で顔に大きな湿布を貼ったままのアレイドは場違いだった。それを自分でも分かっているだけに恥ずかしかった。
上等なスーツ姿の紳士や大富豪のように見える老夫婦。行儀悪くソファーに寝転がり、ぐびぐびとバーボンを飲み干す女。
探している人物は見当たらない。ひょっとしたら店を間違えたのだろうか?そんな疑問が浮かんでくる。しかしこのバー以外にこのあたりにはバーはない。
「久しぶりだね、アリアちゃん」
指定された席をきょろきょろと見回し、探していると後ろから肩を叩かれた。「リーダーさん。お久しぶりです」
派手な黒と赤を基調とした服に地毛の色が丸見えの髪。
「こんなところで何してるの?」
「とある人と待ち合わせをしているんですけど、ここでいいのかと…」
話している最中にリーダーはアレイドの頬に手を伸ばした。
「痛そう」
アレイドの話を聞かずにそう呟いた。
えぇ痛いんです。ですから触らないで頂けませんか、という台詞は呑み込んだ。
「まだ危険な仕事続けてるの?」
「はい」
「いつでも待ってるからね?」
アレイドは笑みだけ返す。リーダーはそれじゃと言って行ってしまった。
ダンテ君で足りてるクセに。
アレイドは空いたままの指定された席に向かった。 いらいらとカウンターテーブルを指で叩いている。腕時計を見ると予定の時間を5分も過ぎている。いや、5分しか過ぎていないと考えよう。白兎の遅刻癖のおかげで待たされることには慣れているつもりでいる。
「すみません…」
ちょんちょんと肩を叩かれた。アレイドは振り返った。
「はい」
黒い髪をした女性が視界に入った。
「アリスさんですか?」
「え、えぇ。アリスの者ではありますが…」
黒い髪の女性は膨れたファイルをカウンターテーブルの上に置くとアレイドの隣に座った。
「貴方が依頼人ですね?」
白兎から見せられた写真とは顔立ちが違う気がしたけれど、アレイドは写真の女性の顔立ちをはっきりとは覚えていなかった。
「違います」
返された言葉にアレイドは眉間に皺を寄せた。
「どういうことですか」
依頼人ではない人間がやって来たとはどういうことだ。アレイドは訊ねた。
「私は妹です。依頼人のシャルロットの妹のアリエットです」
アレイドはそれで?と話を促す。
「シャルロットは数ヶ月前に亡くなりました」
「あれ。そうなんですか?では依頼されたのは数ヶ月前より更に前と?」
アリエットは俯いて静かに口を開く。
「姉の遺言で…。依頼したときは嘘をついてしまって…。写真送ったんですけど、届きましたか?」
アレイドは頷いた。
「こちらもきちんとした話は全く聞いてないんですよ」
「とある人を殺して欲しいんです」
「まず、その話から聞きましょうか。復讐、ということで?」
「はい。姉の仇を討ちたいんです」
アレイドは頷く。
「シャルロットさんが亡くなったのは…?病気ですか?」
アリエットの膝で組まれた手が震えていたのをアレイドは見つめた。
「あの、まずは、これを見てもらいたいんです」
カウンターテーブルに置かれたままの膨れたファイルをアレイドは預かった。
「これは?」
「17年前に姉が巻き込まれた事件です」
アレイドはファイルの中身をぱらぱらと捲りながら流すように見た。
「後から目を通して置きます。それで、殺して欲しい人っていうのは犯人ですか?」
アリエットは頷いた。
「分かりました。犯人が何処に住んで何をしているのかはご存知ですか?ご存知ない場合はさらに手数料が上乗せになってしまうのですが」
形式的な、まるで演劇の台本に載っているかのように決まった言葉を並べる。
「はい。隣の街のアパートに住んでいます。結婚もして子どももいます」
「分かりました。暫くそこに監視役を置きます」
これで話は終わりますとばかりにアレイドは立ち上がった。
「頼みます」
「はい」
アレイドは深々と頭を下げるアリエットを煩わしそうに見遣るとバーから出て行った。
*
Aliceの本拠地にある殺風景なアレイドの部屋からテレビの音が聞こえる。立ち止まって、アレイドは額を押さえ考える。外出時は毎回テレビと照明の確認はしている筈だ。侵入者ならこんなあからさまに存在を主張するだろうか?それとも変わった侵入者なのだろうか?
とりあえずアレイドは身構えながら自室に向かう。「アレイドちゃ~ん。おかえりなさ~い」
白兎がアレイドの部屋をまるで自室のように寛いでいるのが視界に入る。
「白兎さん何してるんですか」
「父親が息子の帰りを待って悪いかな?」
テーブルに広げられたポテトチップスと半分まで飲まれた炭酸飲料。無造作に置いてあったネコのクッションは白兎の下で形を変えている。
「依頼人、亡くなってたそうです」
「ふぅん?じゃあ電話の相手は亡霊さんだったのかな~?」
白兎はテレビ画面から目を放さずそう言う。
「依頼人の妹でしょうね。遺言による依頼だそうで」「今日はヤケにイライラしてるね。どうしたの?」
「そうですか?」
口調はいつも通りを装っている。イライラとした様子を見せたつもりはない。「僕が部屋を荒らしたから…いや、違うね。会いたくない誰かに会ったとか?…依頼人が気に入らなかったとか?」
「依頼人に気に入るも何もないですよ」
「戸惑ってる?」
白兎がテレビ画面から目を放した。そして眼鏡の奥の瞳はアレイドに向く。
「清々しく人を始末できますか?」
「清々しく…ねぇ?しかも今回は妻がいて子どもがいて…迷ってる?」
「知ってたんですか、標的のこと」
「依頼人の依頼聞かなくてどうするの?嘗めないでよね、プンプン」
白兎はあはあはと笑った。
「アレイドちゃん。いくら幸せな家庭を持っているからって、彼は1人殺してるんだよ。何の裁きも受けず、今ものうのうと生きてる。それが許せるかい?シャルロットさんが亡くなった以外に、もう1人、亡くなったんだよ」
白兎の口調が変わる。駄々を捏ねる子どもを諭すような口調だ。
「大量の新聞と雑誌の記事をもらってきました。今からこれに目を通そうと思うんで、出ていってくれますか?」
白兎は、はいはいと返事するとアレイドの部屋から出ていく。
ベッドに乗り、もらってきたファイルの中身を出した。
黄ばんだ記事だ。発行された日付は17年前の冬。
シャルロットは誘拐された。同時に誘拐されたのはアイーシャという少女だ。 性的な暴行を振るわれた後、シャルロットとアイーシャは苛烈で執拗な暴行を受ける。その半年後にアイーシャは亡くなった。シャルロットは助け出された。しかし狂乱状態にある。全記事を読んで纏めるとこうだ。犯人は複数だったが首謀者以外は既に死んでいる。このことについてはアリエットに訊いてみようと思った。
「アレイドちゃん。もうやるしかないんだよ」
「白兎さん、出ていってくださいよ」
「なんなら、同じ目に遭わせようか?」
白兎の瞳には「愉快」の二文字がうかがえた。
白兎さんは楽しんでいるだけだ。
依頼人を救いたいのではない。彼は苦悩する自身と狙われる標的を観て楽しんでいるだけなのだ。
「パパ」
レヴィは今年で35歳になる。9年前に結婚をして、3年前に子どもができた。
「どうしたルピ」
3歳になる一人娘のルピは目に入れても痛くないほどの溺愛ぶりで近所でも有名だった。
「パパ、ルピお腹減った」
「よぅし、今パパがおいしいごはん作ってやるからな」
レヴィも妻ジェシカは喫茶店で働いている。仕事をクビにされた後は殆どヒモ状態だ。
パンをトースターに突っ込むとフライパンを出して、ガスコンロに火をつける。
火を見ると、思い出したくもない忌まわしい記憶が蘇る。
若い女の悲鳴。床に転がって自身を見上げる虚ろな瞳。
「パパ?」
ルピが声で我に返る。
「あぁ、ごめんな」
フライパンに油を注ぐ。卵を割って、しゃかしゃかと黄身と白身を混ぜる。
ガスコンロの火を見つめているルピにレヴィは「テレビでも観ていなさい」と言った。
危ない火遊びのつもりだった。
じゃかじゃかといきなりうるさくなり、ルピがテレビを点けたのがわかった。今話題の「チェシャ猫」のライブの映像をニュース番組が取り上げている。ルピはチェシャ猫のボーカリストであるダンテが大好きだった。
ギターとドラムの音が部屋を支配する。そしてボーカルの綺麗な声が重なった。
「パパ」
「何だい?」
「ルピ、大きくなったらダンテと結婚する!」
そうか、と笑ってレヴィは食器棚から皿を出した。
「出来たよ」
こんがりときつね色をしたパンにバターを塗り、卵焼きをのせてマヨネーズをかける。
「ありがとう」
ルピは笑った。
「熱っ!」
いやぁあああ!!熱い!
「パパ!熱い!」
この頃、どうかしている。
「あぁ、ごめんな。今、水持ってくる」
レヴィは脳裏を過ぎった映像に眩暈がした。
皿を取った食器棚からルピのプラスチックのコップを出す。蛇口を捻って水を汲む。
思い当たる節なら複数ある。例えば妻のジェシカがこの前聴いていた曲がチェシャ猫の「明日」というのだが、その歌詞の内容は゛あの事件"をモチーフにされていたとジェシカが話していたとか。被害者の女性が数ヶ月前に亡くなったとか。ルピの誕生日が彼女等を誘拐してきた日と同じであるとか。
「どうしたの?」
ルピが心配そうにキッチンまでやってきた。
「あぁ、ごめんね」
もう終わったことだ。誰も咎める者はいない。
名前も住所も公開されていない。妻にバレることも、娘にバレることも、近所のフランクさんにバレることもない。バレてはいけない。バレたら全てを失う。知っている者がもしも現れたら
………殺すしかない。
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