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未完結打切り版(2010年)
ダンテへの依頼 5
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「アニメにしろ、何にしろ、決して主人公が正義とは限らないんですよ。ですから敵が悪だとは限らないわけです。だからといって世の中正義と悪の2つに別れてしまうのか、それはボクにもわかりません」
「・・・・はい」
メッシュの入った黒い髪を一房摘まんでダンテは毛先をじっと見つめながら無難な返事をしていく。
「それでね。ダンテ君。ボクはね、考えたんですよ」
チェシャ猫の曲が使われたアニメの大ファンだそうだいや、大ファンというよりはアニメヲタクというやつだ。ダンテと相向かって座っている肥えた男は。
「そうなんですか」
アニメの評論についての書籍を出版したらしい。そして、この男が大好きなアニメの声優としてダンテが出演していた。友情出演でしかないため、ほんの数分という間だったのだが。
「そうそう、それでねダンテ君。君のやった役についてなんだけど・・・」
聞いている側が楽しいのか、きちんと聴いているのか、そんなことはお構いなくただ返事を繰り返していればいいのはつまらない中でも唯一の救いだった。
「すみません、そろそろ時間なんで」
取材をしたい。ダンテ君について取材をしたい、とマネージャーを挟んで頼まれたために指定された喫茶店まで足を運んだ。このアニメヲタクが出版する書籍を取り扱う編集者がダンテの兄が勤めている会社であったのもある。
一方的に話しているだけでダンテの言っていることは全く聞かず、ダンテが席を立ってもまだ一人でぺらぺらと話している。ただのアニメヲタクではなかったようだ。もともとどこかおかしいのかもしれない。
レジに伝票を出す。注文したブルーベリーチーズケーキと紅茶、それからまだ一人で熱く語っているアニメヲタクの分も払っておく。勘定も忘れたままずっと喋られていたのではこの店があまりにも不憫だ。
兄に会ったら文句を言ってやろう。
店から出るときは長い茶色の髪をした鬘を被り、サングラスを着けるのを忘れない。
あと5分でスタジオに着かなければ生中継に遅れる。そうしたらボーカル無しでやるのか、それとも順番が入れ替わるのか、少し試してみたい気もしたがスタジオまで走った。
チェシャ猫の特色といえば素顔が分からない程のメイクだ。短くて1時間、長くて3時間もかかってしまう。5分でスタジオに着いたはいいが、素顔で出演するわけにはいかず、チェシャ猫の出る順番は大幅に変わってしまった。メンバーの誰一人として咎める者はいなかったがダンテは罪悪感からかおとなしくしていた。司会者の後ろで出演者は控えていなければならなかったが、チェシャ猫は出番まではどの番組でも楽屋に籠っている。
「1時間半ズレるそうだ」
楽屋のドアが開いて、アルダがぼそぼそと言ったが静かな楽屋では聞こえた。
「1時間半もこの格好でいろってか」
ソファに座りながら 口から紫煙を吐いてギターのゼロは言った。
ゼロのメイクは顔面白塗りで今回の衣装だとウィッグが真っ青だ。
「お疲れ様アルダ」
比較的メイクの少ないアルダは真っ赤な長い髪のウィッグをしている。
「…すみませんね」
楽屋の隅でメイクをしてもらっているダンテは謝る。拗ねた子どものような言い方だった。
「も~、ゼロちゃん!遠回しに責めないのぉ!」
ルークと呼ばれているルクレツィアは体格のいいオカマだ。小麦色の肌にカールしたピンクのウィッグをしてキーボードを弾いている。
「責めてねぇし」
ゼロは煙草を灰皿に押し付けながら言った。
「ま~、ま~2人とも。ダンテ君はスケジュールの遣り繰りも出来なくなるくらい売れっ子なんだよ。それに予定は未定って言うだろ?」
リーダーは楽譜の確認をしている。ベースはいつも使っているのとは違う派手なデザインのものを今回は使うようだ。
「予定は未定じゃねぇよ。ばかか。番組の視聴率持たせてんのはオレ達ですって驕ってんじゃねーのか?リーダーさんよ」
「いやだなぁ、オレそんなこと思ってないよ?まさか、ゼロ君、君がそう思ってたりしちゃったりする?」
リーダーはあははと笑う。
「うるせーよ」
「だからすみませんってば」
ダンテはまた謝る。
「ゼロちゃんはさっさと終わらせて、どっかのメスブタどもと遊びたいだけなんでしょ」
ルークはふんっとそっぽ向く。
「誰だよメスブタって。どう解釈してもお前のことだよな。アリアんときは一度もなかったぞ」
ゼロはいらいらとしている。
「アリア先輩がきっと売れてなかったんすよ」
ゼロが鼻で笑った。
「言うねぇ」
リーダーは苦笑した。
「そ~んなこと言っちゃって~」
ルークはけたけたと笑う。アルダが疑問符を浮かべたのを見るとルークはまたけたけたと笑う。
「この前ダンテちゃんとバーに行ってね、べろんべろんに酔わせちゃったの。そうしたら、アリアちゃんのこと、尊敬はしているって言ったの。涙ながらにね!」
「ちょっとルークさん」
「ガキに酒飲ますんじゃねぇよ」
ダンテとゼロの言葉がかぶった。
「意外といえば意外だね」
「今の人気はアリア先輩が積み重ねてきたもので美味しいところ取りで申し訳ないって」
「ルークさんオレそんなこと言いましたっけ?」
スタイリストさんの動かないでください、という声が小さく聞こえた。
「だからダンテちゃんって酔わすと面白いねよ」
「だからガキに酒飲ますなよ」
ゼロは呆れている。
「とりあえず、セッションしなくていいのか?」
アルダが荷物の中から出したペットボトルに口をつけたあと言う。毎回ばらばらにマイペースに出番を待っているメンバーを纏めているのはアルダだ。
「スタジオに移動すんのがめんどくせぇ」
ゼロはソファの背凭れに凭れかかる。
「緊張感とか持ったほうがいいよゼロ」
「うるせぇっつの。緊張しすぎてギター弾けませんでしたダンテさんお願いしますってか」
「ウチはもうギターアンドボーカルはやらせないよ」
リーダーがすぐに突っ込んだ。
「アリアちゃんにはやらせてたくせにね!だからダンテちゃんが劣等感感じちゃうのよ」
「ま、真面目な話、ギター2人いた方がいいんじゃね?」
「・・・・ダンテはギター弾けるのか?」
ゼロの発言を聞いてアルダはダンテに振った。
「ベースならちょっとやってましたけど」
ダンテはスタイリストに顔を白く塗られている。今回の出演は白塗りなのだろう。
「リーダーはギター弾けるの?」
アルダはリーダーに訊ねる。
「これで弾けるって言ったら、ダンテ君がベースアンドボーカルになってオレがギターになるわけ」
疑問ではなく確信だった。
「そうなるわよね」
ルークが頷いた。
「んじゃ弾けない」
「メンバー増やすのか?」
「アリア呼ぶか?」
にやにやしながらゼロは横目でダンテを見た。
「アリアちゃんはアリアちゃんなりに仕事があるんだよ。チェシャ猫辞めなきゃいけなくなるほどのね」
この前バーで会ったときの元ボーカルの姿を思い出す。
「アリアって何の職に就い・・・・」
ゼロの言葉を遮るように楽屋のドアが開かれた。
「予定より早めに順番が回ってきてしまったので申し訳ありませんがそろそろ準備お願いします」
リーダーはダンテのメイクの様子を見ると「わかりました」と笑って頷いた。
「発声練習はしなくて大丈夫か?」
メンバーは楽器や道具を荷物から漁ると楽屋から出ていく。メイクが終わったばかりのダンテにアルダが訊くとダンテは頷いた。
*
青い光が熱く降り注ぐ。真ん中にダンテが立ち、客席から見てダンテの右斜めにアルダがドラムセットを構え、ダンテの左斜めにルークがいる。上手にゼロ、下手にリーダー。
ダンテは俯いたまま。緊張感のまるでないゼロが羨ましいと思った。
「今週のナンバーはチェシャ猫の欲望・太陽!」
ギターとベースの前奏が入ったあと、キーボードとドラムが入る。
きゃーきゃーとファンの歓声が聞こえる。
ダンテは目を瞑りギターとベースの音を待つ。ダンテは観客を見ない。カメラ目線ということはあるが、観客席を向くときはいつも天井や空を見ている。ダンテを甘やかさないゼロもそれについては何も咎めない。
ダンテの耳に爆音のような音と低音が届く。ドラムがリズムが刻みだし、キーボードが乗る。ダンテは口を開いた。
まるで吸血鬼のような女が太陽の所為だと気に入った男を蝕む詞だと初めて歌詞カードを見たときに思った。
「キャー!!ダンテ~」
甲高い声が聞こえた。
キーボードの音が止まった。そして「ダンテちゃん!」という叫び声。
顔面に衝撃が走る。歌が止まってギターとベース、ドラムの音だけが響く。
ペットボトルがステージの床に落ちている。何のラベルのない透明なペットボトルにキャップはなく、中身の透明な液体は水溜りを作っていく。
我に返ってダンテは再び歌い始める。スタンドからマイクを取って、ステージ上を歩き観客席と距離をとった。上手くフォロー出来たつもりでいたが、ステージの照明が落ち、マイクの電源も落とされ、モニターもいきなり真っ黒になってしまった。司会者の「ここでニュースです」の声。観客一人ひとりがマイクをつけているくらいにざわざわと観客席はうるさくなる。
頬と左肩が熱くなっていくのを感じる。
退場を余儀なくされ、ダンテ達は楽屋に戻されることになった。
「ほっぺた、赤いぞ」
楽屋に戻る廊下で、ゼロがダンテに言った。いつもの調子だ。
「・・・・そうですか?」
手で拭うと痛みが走る。
「はい」
ルークがピンク色のメルヘンな手鏡でダンテを映した。
「うわ・・・」
白い化粧は落ちかけ、頬が真っ赤になっている。
「変な薬品かもしれないから、洗ったほうがいいんじゃない?」
熱く疼く頬に冷たくなった手を軽く当てて俯いた。
「水に触れると発火するかもしれないな」
ルークがダンテにそう言ったのに対しアルダがぼそりと呟く。
「痛いのか?」
「灼ける感じに痛いっす」
「犯人の顔は見たか?」
ゼロが珍しく落ち着いている。いつもならダンテを咎める口調でどこの出来が悪かったのと頭ごなしに愚痴ってくるのに。
「・・・・いいえ」
「今リーダーがプロデューサーに呼ばれていったから詳しいことは後から聞けると思う」
アルダが言った。
「一か八かで洗っておけ」
ゼロは俯いているダンテにぶっきらぼうに言う。
「はい」
「も~う。お兄様が黙ってないんじゃないかしら?」
「・・・・ハンス兄さんには言わないでください。チェシャ猫辞めろなんて言い出されたら、たまったもんじゃないっすよ」
「ああ、確かにそれは困るな」
ゼロはルークを睨みつけた。「わかってるわよ」とルークは渋々と呟いた。
楽屋の前まで来るとゼロは乱暴にドアを開いてウィッグをテーブルに投げつけた。ルークとアルダは眉間に皺を寄せている。ゼロがソファにダイブするのを見た後、ダンテは楽屋の中にある水道を使った。
体勢を直してゼロは煙草に火を点けている。向かい合ってルークがウィッグの下の地毛の傷みをじっと見つめている。アルダはパイプ椅子に座ってスナック菓子を食べている。各々で時間を潰しているメンバー。
水で傷口を洗って、清潔なタオルで水滴を拭き取った。清潔なタオルは粗品としてもらった未開封のものが荷物の中にあった。
ダンテはルークの隣に座った。
「痛ぇのか」
「それは痛いっすよ」
「そうか」
ゼロは紫煙を吐く。
「お兄様にはなんて言うつもりなの?」
「料理に失敗したとか、派手に転んだとかでいいんじゃないんすかね」
「ハンプティ・ダンプティ兄弟ねぇ」
「義理堅い兄貴に、冷酷な弟。これが冷酷ねぇ」
「別に冷酷なことをした覚えはないんですけどね」
「ただのクソガキだろ」
「クソガキですみませんでした。以後気を付けます」
ルークは2人のやりとりを気にせず、今度は眉毛をいじりだす。
「はーい、みんな、ごめんね~。ダンテ君に乱暴した人は捕まったって」
再びドアが乱暴される。開かれたドアからリーダーが現れた。
「そうなんすか」
「中身はすぐに調べられたよ。塩酸だって。硫酸じゃなくてよかったね」
「真水の方がよかったっすけど」
静かな空気が漂っていた楽屋はリーダーのはっちゃけた声が響いた。
「ダンテ君は、どうしたい?」
「どうしたいって?」
ゼロが顔を顰めて横から口を挟む。
「大丈夫なの?明日また生中継だけど、大丈夫なの?明後日は収録だよ?ちゃんと観客もいる」
「お前も随分と過保護なんだな」
「黙ってよゼロ」
リーダーとゼロは睨み合っている。アルダが野菜ジュースを飲んでいるずずず・・・という音だけが聞こえる。
「ゼロさん、怒るかもしれないですけど・・・・、暫く、活動を休止させてください」
リーダーの顔も、ゼロの顔も見られなかった。何も言わないルークも、こちらを見ながら間食しているアルダも、視界に入れることが出来なかった。
「・・・・・ダンテちゃんは頑張ってきたと思うわよ。アリアちゃんが積んできたものを背負うのは重荷だったんじゃないかしら?」
ルークが眉毛から爪へと意識を移したようで、爪磨きで一生懸命になっている。
「解散ってわけでもないんだし、少しくらいならいいんじゃないの。半年くらいなら」
アルダは新しいスナック菓子を開けた。リーダーのだ。
「・・・・・すみません」
「そういうことだよ。ゼロ」
ぶすっとしているゼロにリーダーは言った。舌打ちが返ってきたがリーダーは表情ひとつ変えなかった。
「でもさ、ダンテ。本当のことは言うべきだと思うよ」
アルダのこの発言に、3人はダンテを凝視した。
「どういうことかな?アルダ。ダンテ」
「アルダさん?どういう・・・・」
アルダは口元に笑みを浮かべた。
「何か隠し事があるのは結構だけど、それで活動休止だなんて……ねぇ?」
くしゃくしゃとスナック菓子の袋を丸めてゴミ箱に投げ入れたが、縁にぶつかって床に落ちた。
「アルダ、面倒臭がらないでよ。それで?」
リーダーはアルダが入れ損じたゴミを拾ってゴミ箱に入れた。しかし視線はダンテから放れない。
「いや、あの…」
「んだよ、言えよ、じれってぇな」
ゼロはがりがりとクリーム色の髪を掻いた。番組のゲスト出演でしかこの髪を見せることはない。
「仕事してるんす、全く別の」
ダンテは言った。
「あら、バイトならあたしもやってるわよ」
「アルバイトで活動休止ってか。なんだよ、チェシャ猫は副業ですって?」
ゼロは項垂れる。
「お金に困ってるの?多額の借金?」
「違います。学校での職業見学とかそんなんですよ」
「あれ、お前、学校行ってたっけか」
「え、通ってますよ」
ゼロは顔を少し上げた。
「…19じゃなかったのか」
「17っすよ。さっきまでクソガキだなんだって言ってたじゃないすか」
「チェシャ猫上手くいかなかった時の保険かな?」
リーダーは訊ねた。ダンテは頷く。
「どんだけ自信ねぇんだよ。つか質問が質問だろ、リーダーさんよ」
「…とりあえずマネージャーさんと事務所長に活動休止しますって言っておけばいいでしょ。理由はまぁ、ゼロの産休とかね」
ゼロは舌打ちしてリーダーを睨んだ。
「仕事が終わりしだい、活動再開させますから…。我儘をすみません…」
ダンテは頭を下げる。
「ま、活動再開したときにまた会おうや」
「ちょっと待てよ、ゼロ。明日明後日の収録は」
「大事な大事なボーカルさんが怪我してんだぞ、キャンセルしちまえよ」
イライラとした口調だ。ダンテは溜め息をつく。
「ちょっと…」
「オレは出ねぇから」
「ゼロ…」
「本当にごめんなさい」
「・・・・はい」
メッシュの入った黒い髪を一房摘まんでダンテは毛先をじっと見つめながら無難な返事をしていく。
「それでね。ダンテ君。ボクはね、考えたんですよ」
チェシャ猫の曲が使われたアニメの大ファンだそうだいや、大ファンというよりはアニメヲタクというやつだ。ダンテと相向かって座っている肥えた男は。
「そうなんですか」
アニメの評論についての書籍を出版したらしい。そして、この男が大好きなアニメの声優としてダンテが出演していた。友情出演でしかないため、ほんの数分という間だったのだが。
「そうそう、それでねダンテ君。君のやった役についてなんだけど・・・」
聞いている側が楽しいのか、きちんと聴いているのか、そんなことはお構いなくただ返事を繰り返していればいいのはつまらない中でも唯一の救いだった。
「すみません、そろそろ時間なんで」
取材をしたい。ダンテ君について取材をしたい、とマネージャーを挟んで頼まれたために指定された喫茶店まで足を運んだ。このアニメヲタクが出版する書籍を取り扱う編集者がダンテの兄が勤めている会社であったのもある。
一方的に話しているだけでダンテの言っていることは全く聞かず、ダンテが席を立ってもまだ一人でぺらぺらと話している。ただのアニメヲタクではなかったようだ。もともとどこかおかしいのかもしれない。
レジに伝票を出す。注文したブルーベリーチーズケーキと紅茶、それからまだ一人で熱く語っているアニメヲタクの分も払っておく。勘定も忘れたままずっと喋られていたのではこの店があまりにも不憫だ。
兄に会ったら文句を言ってやろう。
店から出るときは長い茶色の髪をした鬘を被り、サングラスを着けるのを忘れない。
あと5分でスタジオに着かなければ生中継に遅れる。そうしたらボーカル無しでやるのか、それとも順番が入れ替わるのか、少し試してみたい気もしたがスタジオまで走った。
チェシャ猫の特色といえば素顔が分からない程のメイクだ。短くて1時間、長くて3時間もかかってしまう。5分でスタジオに着いたはいいが、素顔で出演するわけにはいかず、チェシャ猫の出る順番は大幅に変わってしまった。メンバーの誰一人として咎める者はいなかったがダンテは罪悪感からかおとなしくしていた。司会者の後ろで出演者は控えていなければならなかったが、チェシャ猫は出番まではどの番組でも楽屋に籠っている。
「1時間半ズレるそうだ」
楽屋のドアが開いて、アルダがぼそぼそと言ったが静かな楽屋では聞こえた。
「1時間半もこの格好でいろってか」
ソファに座りながら 口から紫煙を吐いてギターのゼロは言った。
ゼロのメイクは顔面白塗りで今回の衣装だとウィッグが真っ青だ。
「お疲れ様アルダ」
比較的メイクの少ないアルダは真っ赤な長い髪のウィッグをしている。
「…すみませんね」
楽屋の隅でメイクをしてもらっているダンテは謝る。拗ねた子どものような言い方だった。
「も~、ゼロちゃん!遠回しに責めないのぉ!」
ルークと呼ばれているルクレツィアは体格のいいオカマだ。小麦色の肌にカールしたピンクのウィッグをしてキーボードを弾いている。
「責めてねぇし」
ゼロは煙草を灰皿に押し付けながら言った。
「ま~、ま~2人とも。ダンテ君はスケジュールの遣り繰りも出来なくなるくらい売れっ子なんだよ。それに予定は未定って言うだろ?」
リーダーは楽譜の確認をしている。ベースはいつも使っているのとは違う派手なデザインのものを今回は使うようだ。
「予定は未定じゃねぇよ。ばかか。番組の視聴率持たせてんのはオレ達ですって驕ってんじゃねーのか?リーダーさんよ」
「いやだなぁ、オレそんなこと思ってないよ?まさか、ゼロ君、君がそう思ってたりしちゃったりする?」
リーダーはあははと笑う。
「うるせーよ」
「だからすみませんってば」
ダンテはまた謝る。
「ゼロちゃんはさっさと終わらせて、どっかのメスブタどもと遊びたいだけなんでしょ」
ルークはふんっとそっぽ向く。
「誰だよメスブタって。どう解釈してもお前のことだよな。アリアんときは一度もなかったぞ」
ゼロはいらいらとしている。
「アリア先輩がきっと売れてなかったんすよ」
ゼロが鼻で笑った。
「言うねぇ」
リーダーは苦笑した。
「そ~んなこと言っちゃって~」
ルークはけたけたと笑う。アルダが疑問符を浮かべたのを見るとルークはまたけたけたと笑う。
「この前ダンテちゃんとバーに行ってね、べろんべろんに酔わせちゃったの。そうしたら、アリアちゃんのこと、尊敬はしているって言ったの。涙ながらにね!」
「ちょっとルークさん」
「ガキに酒飲ますんじゃねぇよ」
ダンテとゼロの言葉がかぶった。
「意外といえば意外だね」
「今の人気はアリア先輩が積み重ねてきたもので美味しいところ取りで申し訳ないって」
「ルークさんオレそんなこと言いましたっけ?」
スタイリストさんの動かないでください、という声が小さく聞こえた。
「だからダンテちゃんって酔わすと面白いねよ」
「だからガキに酒飲ますなよ」
ゼロは呆れている。
「とりあえず、セッションしなくていいのか?」
アルダが荷物の中から出したペットボトルに口をつけたあと言う。毎回ばらばらにマイペースに出番を待っているメンバーを纏めているのはアルダだ。
「スタジオに移動すんのがめんどくせぇ」
ゼロはソファの背凭れに凭れかかる。
「緊張感とか持ったほうがいいよゼロ」
「うるせぇっつの。緊張しすぎてギター弾けませんでしたダンテさんお願いしますってか」
「ウチはもうギターアンドボーカルはやらせないよ」
リーダーがすぐに突っ込んだ。
「アリアちゃんにはやらせてたくせにね!だからダンテちゃんが劣等感感じちゃうのよ」
「ま、真面目な話、ギター2人いた方がいいんじゃね?」
「・・・・ダンテはギター弾けるのか?」
ゼロの発言を聞いてアルダはダンテに振った。
「ベースならちょっとやってましたけど」
ダンテはスタイリストに顔を白く塗られている。今回の出演は白塗りなのだろう。
「リーダーはギター弾けるの?」
アルダはリーダーに訊ねる。
「これで弾けるって言ったら、ダンテ君がベースアンドボーカルになってオレがギターになるわけ」
疑問ではなく確信だった。
「そうなるわよね」
ルークが頷いた。
「んじゃ弾けない」
「メンバー増やすのか?」
「アリア呼ぶか?」
にやにやしながらゼロは横目でダンテを見た。
「アリアちゃんはアリアちゃんなりに仕事があるんだよ。チェシャ猫辞めなきゃいけなくなるほどのね」
この前バーで会ったときの元ボーカルの姿を思い出す。
「アリアって何の職に就い・・・・」
ゼロの言葉を遮るように楽屋のドアが開かれた。
「予定より早めに順番が回ってきてしまったので申し訳ありませんがそろそろ準備お願いします」
リーダーはダンテのメイクの様子を見ると「わかりました」と笑って頷いた。
「発声練習はしなくて大丈夫か?」
メンバーは楽器や道具を荷物から漁ると楽屋から出ていく。メイクが終わったばかりのダンテにアルダが訊くとダンテは頷いた。
*
青い光が熱く降り注ぐ。真ん中にダンテが立ち、客席から見てダンテの右斜めにアルダがドラムセットを構え、ダンテの左斜めにルークがいる。上手にゼロ、下手にリーダー。
ダンテは俯いたまま。緊張感のまるでないゼロが羨ましいと思った。
「今週のナンバーはチェシャ猫の欲望・太陽!」
ギターとベースの前奏が入ったあと、キーボードとドラムが入る。
きゃーきゃーとファンの歓声が聞こえる。
ダンテは目を瞑りギターとベースの音を待つ。ダンテは観客を見ない。カメラ目線ということはあるが、観客席を向くときはいつも天井や空を見ている。ダンテを甘やかさないゼロもそれについては何も咎めない。
ダンテの耳に爆音のような音と低音が届く。ドラムがリズムが刻みだし、キーボードが乗る。ダンテは口を開いた。
まるで吸血鬼のような女が太陽の所為だと気に入った男を蝕む詞だと初めて歌詞カードを見たときに思った。
「キャー!!ダンテ~」
甲高い声が聞こえた。
キーボードの音が止まった。そして「ダンテちゃん!」という叫び声。
顔面に衝撃が走る。歌が止まってギターとベース、ドラムの音だけが響く。
ペットボトルがステージの床に落ちている。何のラベルのない透明なペットボトルにキャップはなく、中身の透明な液体は水溜りを作っていく。
我に返ってダンテは再び歌い始める。スタンドからマイクを取って、ステージ上を歩き観客席と距離をとった。上手くフォロー出来たつもりでいたが、ステージの照明が落ち、マイクの電源も落とされ、モニターもいきなり真っ黒になってしまった。司会者の「ここでニュースです」の声。観客一人ひとりがマイクをつけているくらいにざわざわと観客席はうるさくなる。
頬と左肩が熱くなっていくのを感じる。
退場を余儀なくされ、ダンテ達は楽屋に戻されることになった。
「ほっぺた、赤いぞ」
楽屋に戻る廊下で、ゼロがダンテに言った。いつもの調子だ。
「・・・・そうですか?」
手で拭うと痛みが走る。
「はい」
ルークがピンク色のメルヘンな手鏡でダンテを映した。
「うわ・・・」
白い化粧は落ちかけ、頬が真っ赤になっている。
「変な薬品かもしれないから、洗ったほうがいいんじゃない?」
熱く疼く頬に冷たくなった手を軽く当てて俯いた。
「水に触れると発火するかもしれないな」
ルークがダンテにそう言ったのに対しアルダがぼそりと呟く。
「痛いのか?」
「灼ける感じに痛いっす」
「犯人の顔は見たか?」
ゼロが珍しく落ち着いている。いつもならダンテを咎める口調でどこの出来が悪かったのと頭ごなしに愚痴ってくるのに。
「・・・・いいえ」
「今リーダーがプロデューサーに呼ばれていったから詳しいことは後から聞けると思う」
アルダが言った。
「一か八かで洗っておけ」
ゼロは俯いているダンテにぶっきらぼうに言う。
「はい」
「も~う。お兄様が黙ってないんじゃないかしら?」
「・・・・ハンス兄さんには言わないでください。チェシャ猫辞めろなんて言い出されたら、たまったもんじゃないっすよ」
「ああ、確かにそれは困るな」
ゼロはルークを睨みつけた。「わかってるわよ」とルークは渋々と呟いた。
楽屋の前まで来るとゼロは乱暴にドアを開いてウィッグをテーブルに投げつけた。ルークとアルダは眉間に皺を寄せている。ゼロがソファにダイブするのを見た後、ダンテは楽屋の中にある水道を使った。
体勢を直してゼロは煙草に火を点けている。向かい合ってルークがウィッグの下の地毛の傷みをじっと見つめている。アルダはパイプ椅子に座ってスナック菓子を食べている。各々で時間を潰しているメンバー。
水で傷口を洗って、清潔なタオルで水滴を拭き取った。清潔なタオルは粗品としてもらった未開封のものが荷物の中にあった。
ダンテはルークの隣に座った。
「痛ぇのか」
「それは痛いっすよ」
「そうか」
ゼロは紫煙を吐く。
「お兄様にはなんて言うつもりなの?」
「料理に失敗したとか、派手に転んだとかでいいんじゃないんすかね」
「ハンプティ・ダンプティ兄弟ねぇ」
「義理堅い兄貴に、冷酷な弟。これが冷酷ねぇ」
「別に冷酷なことをした覚えはないんですけどね」
「ただのクソガキだろ」
「クソガキですみませんでした。以後気を付けます」
ルークは2人のやりとりを気にせず、今度は眉毛をいじりだす。
「はーい、みんな、ごめんね~。ダンテ君に乱暴した人は捕まったって」
再びドアが乱暴される。開かれたドアからリーダーが現れた。
「そうなんすか」
「中身はすぐに調べられたよ。塩酸だって。硫酸じゃなくてよかったね」
「真水の方がよかったっすけど」
静かな空気が漂っていた楽屋はリーダーのはっちゃけた声が響いた。
「ダンテ君は、どうしたい?」
「どうしたいって?」
ゼロが顔を顰めて横から口を挟む。
「大丈夫なの?明日また生中継だけど、大丈夫なの?明後日は収録だよ?ちゃんと観客もいる」
「お前も随分と過保護なんだな」
「黙ってよゼロ」
リーダーとゼロは睨み合っている。アルダが野菜ジュースを飲んでいるずずず・・・という音だけが聞こえる。
「ゼロさん、怒るかもしれないですけど・・・・、暫く、活動を休止させてください」
リーダーの顔も、ゼロの顔も見られなかった。何も言わないルークも、こちらを見ながら間食しているアルダも、視界に入れることが出来なかった。
「・・・・・ダンテちゃんは頑張ってきたと思うわよ。アリアちゃんが積んできたものを背負うのは重荷だったんじゃないかしら?」
ルークが眉毛から爪へと意識を移したようで、爪磨きで一生懸命になっている。
「解散ってわけでもないんだし、少しくらいならいいんじゃないの。半年くらいなら」
アルダは新しいスナック菓子を開けた。リーダーのだ。
「・・・・・すみません」
「そういうことだよ。ゼロ」
ぶすっとしているゼロにリーダーは言った。舌打ちが返ってきたがリーダーは表情ひとつ変えなかった。
「でもさ、ダンテ。本当のことは言うべきだと思うよ」
アルダのこの発言に、3人はダンテを凝視した。
「どういうことかな?アルダ。ダンテ」
「アルダさん?どういう・・・・」
アルダは口元に笑みを浮かべた。
「何か隠し事があるのは結構だけど、それで活動休止だなんて……ねぇ?」
くしゃくしゃとスナック菓子の袋を丸めてゴミ箱に投げ入れたが、縁にぶつかって床に落ちた。
「アルダ、面倒臭がらないでよ。それで?」
リーダーはアルダが入れ損じたゴミを拾ってゴミ箱に入れた。しかし視線はダンテから放れない。
「いや、あの…」
「んだよ、言えよ、じれってぇな」
ゼロはがりがりとクリーム色の髪を掻いた。番組のゲスト出演でしかこの髪を見せることはない。
「仕事してるんす、全く別の」
ダンテは言った。
「あら、バイトならあたしもやってるわよ」
「アルバイトで活動休止ってか。なんだよ、チェシャ猫は副業ですって?」
ゼロは項垂れる。
「お金に困ってるの?多額の借金?」
「違います。学校での職業見学とかそんなんですよ」
「あれ、お前、学校行ってたっけか」
「え、通ってますよ」
ゼロは顔を少し上げた。
「…19じゃなかったのか」
「17っすよ。さっきまでクソガキだなんだって言ってたじゃないすか」
「チェシャ猫上手くいかなかった時の保険かな?」
リーダーは訊ねた。ダンテは頷く。
「どんだけ自信ねぇんだよ。つか質問が質問だろ、リーダーさんよ」
「…とりあえずマネージャーさんと事務所長に活動休止しますって言っておけばいいでしょ。理由はまぁ、ゼロの産休とかね」
ゼロは舌打ちしてリーダーを睨んだ。
「仕事が終わりしだい、活動再開させますから…。我儘をすみません…」
ダンテは頭を下げる。
「ま、活動再開したときにまた会おうや」
「ちょっと待てよ、ゼロ。明日明後日の収録は」
「大事な大事なボーカルさんが怪我してんだぞ、キャンセルしちまえよ」
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