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群青は頷き湯呑を握った。
「何故、婚礼衣装を着ていたのかお訊ねしてもよろしいですか」
「菖蒲殿の写真趣味です」
「では、何方かと結婚するわけではないのですよね」
探りを入れるような問い方につい相手を睨んでしまった。
「まるでわたしにその権利があるような訊き方をするんですね」
「極彩様の口から答えを聞かないと夜も眠れません」
本当にろくでもないんですね。極彩は肩を竦めた。
「そろそろ帰ることです。成婚後憂鬱症というやつですか。やっぱり診療所が必要ですよ。風月国民の人口以上を収容できる規模の」
「極彩様…」
「これ以上軽蔑させないでください」
弟の好いた可憐な娘を娶ったくせ、この好色的な男はまだ満ち足りていないらしい。浮ついた既婚者を冷たく睨む。彼は湯呑を呷るとまるで酒を飲み干したように口元を拭った。
「帰ります」
「見送りはしません」
「はい」
群青は居間を出る前に極彩を振り返ったが彼女は視界にすら来訪者を入れなかった。
「一応、荷物を纏めておいてください」
玄関扉がからからと音を立てた。ぶつかった指が火傷をしように疼いている。冷蔵庫の中のもので簡単な夕飯を作りながら紅のことを出したのは二公子にさらなる脅迫の材料を与えただけだったのかも知れないと不安に陥った。白身魚のちり蒸し、松葉独活と赤青椒の胡麻和えを作り、台所でひとり飯を食った。紅と暮らせるのなら毎日粥でもいい。毎食考えなければ。歯はあるが舌が無ければ喉を詰まらせてしまう。
大して私物もなかったため寝る前に適当に持ち帰る物を纏めた。時雨塗りの寸延短刀の鞘や柄を柔らかな布で拭いて枕元に置いて眠った。
『ぺのんぺのん、んつつつつ、ぺのん』
妙な言語が意識の遠くで聞こえた。神経症は四つ足の怪物や青白い子供だけでなく幻聴まで現れるらしかった。夏の夜の蚊の羽音よりは不快ではなかった睡眠を妨害するにはある程度効き目があった。
『ぺのん、んつつ、んつんつ?ぺののん』
目蓋を開ける。声変わりのしていない子供のような声は消える。うつらうつらしながら枕元に据えられた寸延短刀を絹毛鼠の鉄柵籠をしまった書院窓の下の棚に入れた。
昼頃に二公子が訪れ、極彩は予期しない客人を目の前に激しい眩暈と吐き気に襲われた。彼は柔和に微笑み腹を撫でたため、とうとう吐き気は内容物を引き連れてきてしまう。耳鳴りがした。天藍は白い手袋を外し、胸や腿には上質な手巾が触れる。極彩は髪が汚れるのも構わず耳を塞いだ。
「そんなにオレに会うの嫌だった?でもさ、君のお願い、利いてあげられそうだよ」
口元を二公子の指が拭った。天藍は控えの者に濡布を持って来るよう言った。
「紅と…」
「うん、一緒に暮らしたらいいよ」
乱れた呼吸を整えながらおそるおそる天藍の口元まで見上げた。
「あのお店の床下にね、君の報告のとおり沢山、子供の遺骨があったよ。他の店の不始末を請け負っていたみたいだ。当初の目的とは違うけど、強制監査の口実はできた。ありがとう。志半ばで死んだ石黄も……いや、もう死んだんだった」
「お役に立てたなら幸いです」
持ってこられた濡布を受け取ろうとしたが天藍は渡さなかった。胸元や腹や腿は拭かれていく。
「伝えることは伝えたけど、君からは何かある?」
「短刀をお返しします」
「まだその時じゃないよ。君にはまだ務めがあるだろ?ほら、あいつ等のこと、まだ殺害してない。それはその時受け取る」
極彩は倒れそうになりながら二公子の前に平伏す。
「ではまだこちらに…」
「そう。明日、あの片輪にしちゃった子を連れて来るよ。君が彼と妙な関係じゃないって信じてるからね。稚児趣味の女性は……素敵だよ。うん、君なら何だって素敵だ。淫乱でも、人肉食趣味でも、加虐趣味でも…」
天藍は立ち上がって極彩を見下ろした。見送ろうとするが休んでいるよう言われる。
「この屋敷はいいね。オレも好きだよ。こんな屋敷で夫婦生活をしたいものだな…9人目の紫煙も見ていてくれてることだしさ」
含んだ言い方で二公子は庭を一瞥した。
「爆弾犯に取り入ってでも頼むよ。捕縛が一番だけど、さすがにそこまでは…危ないし」
「寝首を掻けるなら契っても構わないのですか」
「ああ、片方は旦那さんに似てるんだっけ?いいよ、でも必ず殺してね。君の肌を知ってるのはこの日の下でオレだけなんだから」
でもさ。天藍は極彩のほうへ接近した。乾いた音が響いて、極彩の頭が揺れた。頬に熱が籠る。
「愛しの女性にそんなこと訊かれるオレの身にもなってよ。本音は嫌。でも目的のためなら仕方ないよね。同時に元旦那によく似た男と契りたがるの、ちょっと興奮した」
冷たい掌が熱から痛みに変わった頬に添えられる。
「元・夫に熱心な妻…いいな、とても。いいな…すごく、いい」
忘れてた、と言って二公子は衣嚢から小さな物を取り出し彼女の汚れた手に握らせる。貝紅だった。
「でも上手く隠しなよ。色々嗅ぎ回られて、心無い人の告げ口であの襤褸雑巾みたいに擦れた群青がやっと見つけた幸せいっぱいの新婚生活、壊しちゃ可哀想だろ?あずきちゃんには申し訳ないことをしたな。あんないい男はなかなか手に入らないからね。彼女には懇意の幼馴染がいたみただから断るつもりだっただろうけど。でも群青が心からアイシタ人と結婚させてあげたいだろ?残念だけど…それは君じゃなかった。残念だけど」
彼も色々と恨み買ってるからさ、上手く隠してあげて。天藍の口調は優しかった。重々承知しております。よろしく、と言って二公子は帰っていった。手の中に残った貝紅を窓の外に投げ捨てた。痛い、と声がして窓の外を確認した。
「誰です!」
天晴組の警備を掻い潜ってきたのだろうか。
「私です。若様がご訪問中だということでここで暇を潰しておりました」
淡藤はキジトラ模様の猫を持ち上げた。後ろ足がけんけんと彼の腕を蹴り地面に降ろされる。
「土筆が出てますよ、姫様。春の訪れです」
「醤油炒めなら作れます。食べますか」
「いいえ。もう少し春を楽しんでからにします。土筆のよく生える場所を知っているので今度教えて差し上げます。その時は白米を持ってお邪魔します」
「こだわりの米なんですか。白米ならこちらで用意できますけれど」
淡藤は足に擦り寄っている猫を無視できないらしく、求められると撫で続けた。土で遊んだのか手首に巻いた包帯が汚れて乱れていた。
「着替えるので少しお待ちください」
「お気遣いなく」
「淡藤殿に気を遣っているわけではありませんよ」
窓を閉めて吐物を片付け、汚れた衣類を着替える。玄関から出て裏庭に回った。淡藤は古井戸の近くで貝紅を掌に転がしている。
「これを拾いました。姫様の落し物では?」
「それは捨てたものです。また投げ捨てておいてください」
「お捨てになったんですか。こういった物に造詣は深くありませんが…立派な品に思えます。高かったのでは」
「頂き物です。わたしには必要のない物なので」
貝殻の表面は白金に塗られ桃の花が描かれていた。彼は何度かそれを指で拭う。
「必要のない物はここから投げ捨てるんですか…」
「庭を汚したことは謝ります」
「何故、婚礼衣装を着ていたのかお訊ねしてもよろしいですか」
「菖蒲殿の写真趣味です」
「では、何方かと結婚するわけではないのですよね」
探りを入れるような問い方につい相手を睨んでしまった。
「まるでわたしにその権利があるような訊き方をするんですね」
「極彩様の口から答えを聞かないと夜も眠れません」
本当にろくでもないんですね。極彩は肩を竦めた。
「そろそろ帰ることです。成婚後憂鬱症というやつですか。やっぱり診療所が必要ですよ。風月国民の人口以上を収容できる規模の」
「極彩様…」
「これ以上軽蔑させないでください」
弟の好いた可憐な娘を娶ったくせ、この好色的な男はまだ満ち足りていないらしい。浮ついた既婚者を冷たく睨む。彼は湯呑を呷るとまるで酒を飲み干したように口元を拭った。
「帰ります」
「見送りはしません」
「はい」
群青は居間を出る前に極彩を振り返ったが彼女は視界にすら来訪者を入れなかった。
「一応、荷物を纏めておいてください」
玄関扉がからからと音を立てた。ぶつかった指が火傷をしように疼いている。冷蔵庫の中のもので簡単な夕飯を作りながら紅のことを出したのは二公子にさらなる脅迫の材料を与えただけだったのかも知れないと不安に陥った。白身魚のちり蒸し、松葉独活と赤青椒の胡麻和えを作り、台所でひとり飯を食った。紅と暮らせるのなら毎日粥でもいい。毎食考えなければ。歯はあるが舌が無ければ喉を詰まらせてしまう。
大して私物もなかったため寝る前に適当に持ち帰る物を纏めた。時雨塗りの寸延短刀の鞘や柄を柔らかな布で拭いて枕元に置いて眠った。
『ぺのんぺのん、んつつつつ、ぺのん』
妙な言語が意識の遠くで聞こえた。神経症は四つ足の怪物や青白い子供だけでなく幻聴まで現れるらしかった。夏の夜の蚊の羽音よりは不快ではなかった睡眠を妨害するにはある程度効き目があった。
『ぺのん、んつつ、んつんつ?ぺののん』
目蓋を開ける。声変わりのしていない子供のような声は消える。うつらうつらしながら枕元に据えられた寸延短刀を絹毛鼠の鉄柵籠をしまった書院窓の下の棚に入れた。
昼頃に二公子が訪れ、極彩は予期しない客人を目の前に激しい眩暈と吐き気に襲われた。彼は柔和に微笑み腹を撫でたため、とうとう吐き気は内容物を引き連れてきてしまう。耳鳴りがした。天藍は白い手袋を外し、胸や腿には上質な手巾が触れる。極彩は髪が汚れるのも構わず耳を塞いだ。
「そんなにオレに会うの嫌だった?でもさ、君のお願い、利いてあげられそうだよ」
口元を二公子の指が拭った。天藍は控えの者に濡布を持って来るよう言った。
「紅と…」
「うん、一緒に暮らしたらいいよ」
乱れた呼吸を整えながらおそるおそる天藍の口元まで見上げた。
「あのお店の床下にね、君の報告のとおり沢山、子供の遺骨があったよ。他の店の不始末を請け負っていたみたいだ。当初の目的とは違うけど、強制監査の口実はできた。ありがとう。志半ばで死んだ石黄も……いや、もう死んだんだった」
「お役に立てたなら幸いです」
持ってこられた濡布を受け取ろうとしたが天藍は渡さなかった。胸元や腹や腿は拭かれていく。
「伝えることは伝えたけど、君からは何かある?」
「短刀をお返しします」
「まだその時じゃないよ。君にはまだ務めがあるだろ?ほら、あいつ等のこと、まだ殺害してない。それはその時受け取る」
極彩は倒れそうになりながら二公子の前に平伏す。
「ではまだこちらに…」
「そう。明日、あの片輪にしちゃった子を連れて来るよ。君が彼と妙な関係じゃないって信じてるからね。稚児趣味の女性は……素敵だよ。うん、君なら何だって素敵だ。淫乱でも、人肉食趣味でも、加虐趣味でも…」
天藍は立ち上がって極彩を見下ろした。見送ろうとするが休んでいるよう言われる。
「この屋敷はいいね。オレも好きだよ。こんな屋敷で夫婦生活をしたいものだな…9人目の紫煙も見ていてくれてることだしさ」
含んだ言い方で二公子は庭を一瞥した。
「爆弾犯に取り入ってでも頼むよ。捕縛が一番だけど、さすがにそこまでは…危ないし」
「寝首を掻けるなら契っても構わないのですか」
「ああ、片方は旦那さんに似てるんだっけ?いいよ、でも必ず殺してね。君の肌を知ってるのはこの日の下でオレだけなんだから」
でもさ。天藍は極彩のほうへ接近した。乾いた音が響いて、極彩の頭が揺れた。頬に熱が籠る。
「愛しの女性にそんなこと訊かれるオレの身にもなってよ。本音は嫌。でも目的のためなら仕方ないよね。同時に元旦那によく似た男と契りたがるの、ちょっと興奮した」
冷たい掌が熱から痛みに変わった頬に添えられる。
「元・夫に熱心な妻…いいな、とても。いいな…すごく、いい」
忘れてた、と言って二公子は衣嚢から小さな物を取り出し彼女の汚れた手に握らせる。貝紅だった。
「でも上手く隠しなよ。色々嗅ぎ回られて、心無い人の告げ口であの襤褸雑巾みたいに擦れた群青がやっと見つけた幸せいっぱいの新婚生活、壊しちゃ可哀想だろ?あずきちゃんには申し訳ないことをしたな。あんないい男はなかなか手に入らないからね。彼女には懇意の幼馴染がいたみただから断るつもりだっただろうけど。でも群青が心からアイシタ人と結婚させてあげたいだろ?残念だけど…それは君じゃなかった。残念だけど」
彼も色々と恨み買ってるからさ、上手く隠してあげて。天藍の口調は優しかった。重々承知しております。よろしく、と言って二公子は帰っていった。手の中に残った貝紅を窓の外に投げ捨てた。痛い、と声がして窓の外を確認した。
「誰です!」
天晴組の警備を掻い潜ってきたのだろうか。
「私です。若様がご訪問中だということでここで暇を潰しておりました」
淡藤はキジトラ模様の猫を持ち上げた。後ろ足がけんけんと彼の腕を蹴り地面に降ろされる。
「土筆が出てますよ、姫様。春の訪れです」
「醤油炒めなら作れます。食べますか」
「いいえ。もう少し春を楽しんでからにします。土筆のよく生える場所を知っているので今度教えて差し上げます。その時は白米を持ってお邪魔します」
「こだわりの米なんですか。白米ならこちらで用意できますけれど」
淡藤は足に擦り寄っている猫を無視できないらしく、求められると撫で続けた。土で遊んだのか手首に巻いた包帯が汚れて乱れていた。
「着替えるので少しお待ちください」
「お気遣いなく」
「淡藤殿に気を遣っているわけではありませんよ」
窓を閉めて吐物を片付け、汚れた衣類を着替える。玄関から出て裏庭に回った。淡藤は古井戸の近くで貝紅を掌に転がしている。
「これを拾いました。姫様の落し物では?」
「それは捨てたものです。また投げ捨てておいてください」
「お捨てになったんですか。こういった物に造詣は深くありませんが…立派な品に思えます。高かったのでは」
「頂き物です。わたしには必要のない物なので」
貝殻の表面は白金に塗られ桃の花が描かれていた。彼は何度かそれを指で拭う。
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