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<ガンスリンガー>

宿屋、不穏な気配

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思わぬ臨時収入だった。
ウーゴと云う男から巻き上げた銃も、二ドルでトマスに買い取って貰い、手持ちの現金は大体七百ドルほど。
ジムが言うには、これだけ有れば、贅沢さえし無ければ一年ほど食える金額らしい。

ジムからは、今度一緒にカジノを荒らしに行こうぜ、と誘われたが、丁重に断っておいた。

部屋に戻り、それとなく窓の外を見る。
暗闇の中、視線と気配を感じる。
結構な数だ。

どうやら、このまま何事もなく朝までとは行かんらしい。
だが、事が起こるとすれば深夜。
もう少し待つとするか。

ベッドに横になり、神経を研ぎ澄まして、周囲の気配を探りながら目を瞑る。
眠っているわけでは無い。


何時間か経ち、一階のバーから人の気配が消える。
その代わり、入り口とは反対側に有る、バーの奥に数人の気配。
恐らく奥に裏口が有り、何者かが入って来た様だ。

「さて、動き出した様だな。ならば、そろそろワシも」
ベッドから起き上がり、軍帽を冠り直す。
そして、右手で刀印を作り、魔法陣を一つえがく。

悪魔グラシャ=ラボラスの魔法陣。
その刀印の先に浮かぶ魔法陣を胸に押し当てる。
隠身かくりみ

これは、己が姿を隠す権能。
ただし、本当に見えなくなると言う物ではない。
気配を消し去り、存在感を極限まで無くすという権能だ。
もし、大声で話したり、銃を撃てば、直ぐに術は解ける。

ドアをそっと開け外に出る。廊下のランプは消され暗い。
だが、夜目の利くワシには、廊下の窓から差し込む月明かりで十分だ。

取り合えず、二階の廊下に人の気配は無い。
今の処、異常は無さそうだ。

慎重に、足音を立てず廊下を進む。
一階のバーに降りる階段。
バーの灯りは落ち、人の気配も無い。

そっと、慎重に階段を下りて行く。
問題は、ここから先だ。
この一階の奥。
恐らく厨房か何かだろう。
数人の人の気配。
微かだが、話し声も聞こえる。

更に忍び寄る。
奥の部屋の扉から、微かに灯りが漏れている。
これは……弾痕。
どうやら、扉に穿うがたれた弾痕から、中の灯りが漏れている様だな。

フッ、これは、おあつらえ向きだ、中の様子を覗かせて貰うとしよう。
そっと、扉の弾痕に顔を近付け向こうを覗く。

見た所やはり厨房だな。
数人の男が、なんぞ話をして居る。

正面のあ奴は、バーテンか。
で、そのバーテンと話をしている男共は……フッ、奴らか。
ワシがポーカーで遊んでやった、あの三人。

ワシが身ぐるみを剥いだウーゴと云う男も、腰にガンベルトを巻いておる。
どうやら、新調したらしい。

他には、見知った顔では無い男が、あと三人。
全部で七人……いや、もう一人居る……が、あれはもう死んでおるな。

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