上 下
118 / 182
<ヌアザの攻防>

ゴブリン・クイーン、二体

しおりを挟む
その人影は、壁の上を東に向かう。

そして、目線を東の方に向けると、巨大な影が二体。
その大きさはともかく、姿形すがたかたちには見覚えがある。
間違いない、女王クイーンだ。

一体は炎を避ける様に、東の方へ。
もう一体は、その炎を踏み消す様にこっちに向かって来る。

あの男が、これ見よがしに、壁の上を東に向かって走り出したのは、東に向かった女王クイーンは、自分が始末すると言っておるのだ。
そして、向かって来るもう一体は、ワシに任せると。

「うむ、承知した」

十四年式の空に成った弾倉を捨て、新たに弾倉を差し替える。
刻印は大と描かれたものだ。
この弾倉を使うのは、森を出て以来か。

今、眼前から向かって来るのは人では無く、まごう事無き化け物、遠慮は必要あるまい。
それに、壁からはいささか距離もある、そうそう目立つ事も無い。

「さて、いざ参る!」

あえて、女王クイーンの気を引く為に、殺気をぶつける。
あれ程の巨体、壁に近付ける分けには行かんからな。

女王クイーンの姿は、下半身が蜘蛛の様に成って居る。
その為か、先日のオーガより頭一つ分背が低く見えるが、その巨大な下半身の分、オーガより重量感がある。
実際、女王クイーンの方が重かろう。

アレが壁にぶち当たれば、まずひとたまりも無く突き崩され、ゴブリン共に雪崩れ込まれてしまう事に成る。
だが、そうは、させるモノか!

巨大な女王クイーンがワシに気付き、ガラスを引っ掻いた様な、耳障りな甲高い咆哮を上げ、向かって来る。
燃え盛る炎など、まるで意にも介して居らん。

ターン、ターン!
バン、バン、バン!

女王クイーンに従う様にはべるゴブリン共が、手にした銃を撃って来る。
思いの外、正確な射撃だが、ワシを捉える事など出来ん。

ズドン、ズドン!
ワシの放った弾丸は、ゴブリン共を数体まとめて薙ぎ払う。

だが、この大砲を以てしても、あの女王クイーンの巨体、一撃で撃ち抜けるとも思えん。
「と成れば、今一度」
ゴブリン共の銃撃を、飛び跳ねかわしつつ、左手に刀印を結んで、アモンの魔法陣を描き胸に押し当てる。

「くっ!」
一瞬、全身の筋肉に痛みが走る。
さすがに連続で三度もこの術を掛けると成れば、体に掛かる負荷は結構なものだ。
まあ、耐えられん程では無い、今のところはな、だが……明日は少々、筋肉痛に悩まされる事には成るだろうな……。

ズドン!

更に、女王クイーンの取り巻きのゴブリン共を薙ぎ払い、そして、十四年式の照星を迫りくる女王クイーンに重ね合わせ、引き金を引く。
ズドン!
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

保護者つきで異世界転生!

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:14pt お気に入り:6

精霊に愛された少女の妹は叶わないからこそ平凡を願う

恋愛 / 完結 24h.ポイント:894pt お気に入り:3,863

『私に嫌われて見せてよ』~もしかして私、悪役令嬢?! ~

恋愛 / 完結 24h.ポイント:142pt お気に入り:46

仮面令嬢と変わり者王子の甘い日々

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:14pt お気に入り:1,251

異世界に来ちゃったけど、甘やかされています。

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:14pt お気に入り:610

転生したら血塗れ皇帝の妹のモブでした。

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:1,178pt お気に入り:6,298

わたしはお払い箱なのですね? でしたら好きにさせていただきます

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:29,574pt お気に入り:2,540

処理中です...