異世界大正ロマン 帝都の魔導小町 ~悪魔なんて召喚しませんわ、猫を召喚しますの♪~

春古年

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<大正:英国大使館の悪魔事件 後編>

穏やかな朝

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朝日が部屋に差し込んで目が覚める。
昨日も、遅くまで魔法陣を描いていたわ。
でも、お蔭で、何とか猫召喚の御札が300枚以上揃ったわ。
正確には、昨夜は30枚描けたから、以前のと合わせて310枚よ。
それと、猫手の御札も六枚追加で、全部で十枚。
あと、戦いに使うものでは無いけれど、真犯人を追い詰める為の切り札になる魔法陣も一枚。
その方のお立場や地位を考えれば、恐らく、最終的にはこの魔法陣に頼る事に成りそうね。
素直に罪を認めてくれれば楽なのだけれど……

この他にも、いつもの手袋、セクメトの慧眼、ノワールとブラン、それと、優弥くんから貰ったどんぐり二個。
これが、今日の私の戦力。
猫召喚の御札は心もとないのは相変わらずだけれど、必要な最低枚数は超えているわ。
これなら、公使と同程度のウェンディゴなら互角以上に戦えるはずよ。
でも……もしそれ以上の敵だった場合は……止しましょ。
どのみち時間は無いわ。
私の推理通りなら、犯人はウェンディゴに呪われているもの。
そうなる前に、片を付け無いと、また大惨事だわ。

身支度を済ませて、ホールに降りると、イシャイニシュスさんが待ってらっしゃるわ。
昨日、お話しした手筈通り、コヨーテの姿で。

「まあ!!大きな犬ですわね。その大きな犬は……小町ちゃんが拾って来ましたの?」
丁度、お母様と道彦もホールに降りて来たところだわ。
「お早うございます、お母様、ミッチー」
「お早う、小町ちゃん」
「お早うございます、お姉さま♪」
すかさず、ミッチーに朝のスリスリ。

「実はお母様、此方のワンちゃんも、訳あって一晩お預かりしましたの。一晩だけでしたので、黙っていましたけれど、御免なさいですわ」
「良いのよ、小町ちゃん。でも、それにしても大きい犬だこと。では、折角ですから、ワンちゃんも一緒に朝食としましょ♪ワンちゃんは何が良いかしら?魚かしら?お肉かしら?」
「お肉が良いと思いますわ。焼き加減は……レア……それともミディアムレア……」
イシャイニシュスさん様子を見ながら、焼き加減の確認。
「ワン!」
「ではミディアムレアで焼いて差し上げるのが良いですわ、お母様♪」
「この子はお肉に火を通して食べますのね。良家で飼われていたワンちゃんかしら……。分かりましたわ、ではそうしましょ♪」

あら?
道彦が興味深そうに、イシャイニシュスさんを見ているわ。
「ミッチー、大人しいワンちゃんですから噛んだりしませんわ。少し頭を撫でさせて頂きなさい♪」
イシャイニシュスさんは、え?という表情をなさってるわ。
人の姿の時より、此方こちらの姿の方が表情が豊かな気がしますわ。
「一宿一飯の恩義と思って、宜しくですわ♪」
と、小声でささやくと、仕方がないと云う風に、道彦に頭を差し出して下さっている。
有難いですわ♪


その後、お母様と、道彦、それとコヨーテ姿のイシャイニシュスさんの四人で朝食。
お父様は、もうお仕事に、お出に成られた見たい。
一応、お母様にはイシャイニシュスさんは既に出かけたと、お話しすると、チョット残念がっていましたわ。

これから向かう大使館での事を思うと、まったく別世界の穏やかな日常。
私にとって、最も大切な時間よ。
この穏やかな時間が有るからこそ、洋館の地下の様な光景を目の当たりにしても、自分を見失わないで居られるんだわ。


食事を終え、リビングでお母様と、叔父様から頂いたセイロンティーを頂いていると、外に車が止まる音。
程無く千代さんが、諏訪さんと曹長さんが迎えにいらした事を告げる。

準備は出来ているわ。
リビングの絨毯の上で、くつろいでいたコヨーテ姿のイシャイニシュスさんも顔を上げ頷く。
「ではお母様、行ってまいりますわ。ミッチー、行って来ますわね」
出発前のスリスリでミッチー成分を充填する。

「行ってらっしゃい、小町ちゃん。でも、しつこく言って嫌われてしまうかも、ですけれど、危ない事はしてはダメよ♪」
「ええ、心配いりませんわ。危険な事なんて有りませんもの♪」
多分お母様は、全て御存じよ。
今まで起こった事も、これから始まるであろう事も……。
何しろ、爺が全て話しているはずだもの。
それでも、いつもの様に、学校へ向かう時と同じ様に、普段通り送り出して下さるお母様には、感謝ですわ。
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