異世界大正ロマン 帝都の魔導小町 ~悪魔なんて召喚しませんわ、猫を召喚しますの♪~

春古年

文字の大きさ
74 / 173
<大正:英国大使館の悪魔事件 解決編>

報告、諸々

しおりを挟む
屋敷の車止めに二台の車が停車している。
運転手はいつも通り、曹長さんと伍長さん。

あら?
伍長さんの運転する車に、布に巻かれた長い棒の様な物が……何かしら?
「諏訪さん、あの長い棒の様な物は何ですの?」
物干しざお?なんて事は無いでしょうけれど……。
「うふふ♪♪あれは私の秘密兵器よ♪♪」

私とイシャイニシュスさん、それと諏訪さんは曹長さんの車に乗り込む。
必然的に、爺はいつも通り伍長さんの車に。

車が走り出すと、諏訪さんから諸々の報告を受ける。
「先ず、保護対象だった旧降霊会の参加者だけれど、五名は無事保護出来たわ。でも……残念ながら二名が死亡、一名が重傷よ。死者と重傷者を出した現場を含む五か所で、眷属を使ったトラップが仕掛けられていたわ。因みに残りの三人は、アヘンの中毒者やチンピラを使って襲わせたみたいね。その三人は上手く逃げ込めたり、立て籠もれたり出来たらしく、無事保護出来たわ。で、今そのチンピラ連中を取り調べ中だけど……恐らくお金とアヘンで雇われただけみたいね。何も知らないと思うわ」
大熊さんも含めると三人もの方が……残念だわ……。
玉山さんは、またお二人もご友人を失う事に成るのね……御気の毒だわ。
もう少し早く手を打てていれば……いいえ、タラレバを言っても仕方が無いわ。

「それにしても、何故全員トラップを使わなかったのかしら?不思議だわ」
「諏訪さん、それは恐らく、丁度良い眷属が居なかったからだわ。あのトラップを仕掛ける為には、変異する直前か直後の者が必要だもの。まあ、小細工好きのその誰かさんにとっては、中途半端な小細工に成ってしまって、不本意でしたでしょうけれど♪それと、そのトラップに使われた眷属はどう成りましたの?」
「保護対象を殺害および、重傷を負わせたモノは、隊員が射殺、残りの二体は縛られたままだったから、確保できたわ」
「そうですの……」
仕方が無い事だわ。

「昨日徹夜で洋館の調査を行った結果も話すわね。地下のあの部屋からは、魔法陣が描かれたとおぼしき布も出てきたわ。まあ、ほとんど破損した物ばかりで、完全なものは数点しか見つからなかったけれど、トラップの眷属に巻かれていた目隠しと同じ魔法陣だったわ。それと……土手瓦さんの証言通り、庭から遺体が大量に出てきたわ。中には骨格が変形して、眷属と類似する特徴を持つものも八体有ったから、これも証言通りね。それでさらに……なんだけど、それとは別に大量の人骨が出てきたわ」

「それもお庭に?」
「ええ、でも埋まっていたのとは、チョット違うわ。蓋をされて、使っていない様に偽装した古井戸が有ったんだけど、その中から大量の人骨が発見されたの。それも……はぁ~……あんまり想像したくないんだけど、刃物で肉を削いだ跡が有ったり、煮たり、焼いたり、まあ、調理した跡が有ったわ。しかも、中には人の歯形が付いたものまで……」
まあ……想像はしていた事だけれど……。
「此処までのお話しを総合すると、恐らくですけれど、諏訪さんの御調べに成っていた行方不明事件。行方不明に成られていらっしゃった方達と言うのは、降霊会で贄にされた方、そして、それとは逆に彼らを贄としていた眷属……被害者と加害者の双方と言う事ですわね……」
「そうね、誰が被害者で、誰が加害者なのか……これからの裏付け調査が、思いやられるわ」
「まあ、密儀は一月ひとつきほど、行われていなかったという話ですから、それより以前の行方不明者は、概ね被害者とお考えして良いと思いますわ」

「それと、その……なんと言いますか……お疲れ様ですわ。徹夜はお肌に良く無いと、お母様が仰っていましたわ。今度お母様に選んで頂いて、化粧水か何か差し入れいたしますわね」
「ふふ♪気を使ってくれてアリガト、小町ちゃん♪」

「ふ~」と、一呼吸置いて、報告が続く。
「次に、公使の金庫の中身に付いて、分った事を報告するわね。例の見つかった腕は、やはりローレンスさんのもので間違いない様よ。血液型、それに切断面も御遺体の物と一致したわ。それと、覆面に付いては、玉山さんと無事に保護出来た、五人の旧降霊会参加者の方々に確認して貰ったわ。これも、想定通り、前大使の死後、降霊会の主催者と成った男の物だと、皆さん証言してらっしゃるわ」
まあ、この辺は思っていた通りね。
それは、恐らく真犯人の思惑通りでもあるのでしょうね。
ローレンスさんの殺害と、怪しげなカルトとの関係、あえて、そう云う証拠をあの金庫に残したんだわ。

「それで、アヘンの方なんだけど……元日の夜、アヘン中毒者達に、小町ちゃんを襲撃する様に指示を出して、翌朝死体で見つかったアヘンの売人。彼が売りさばいていたアヘンと成分が一致したわ」
元日の夜、ウルタールが路地裏で見聞きした光景。
あの時の公使の素振りは、フードの男から、襲撃の失敗の報を受けて怒っていた風だったわ。
襲撃は、公使からフードの男を通して、アヘンの売人へ、そしてアヘン中毒者達と命令が流れたのだわ。
その後、フードの男はアヘンの売人を始末して、自分に繋がる糸を絶ったと云う事ね。

あの襲撃事件に関しては、フードの男が関連している証拠は、ウルタールの記憶にしか無い以上、立証する事は無理そう……。
この件に付いては、実害も無かった事だし、諦めるしか無いわ。

「最後に、帳簿の件ね。魔技取締分隊うちと警視庁、外務省の三者合同で調査したんだけれど、どうやら、帳簿に記載されている人物や、団体の関係者……土手瓦さんの様な、主にその団体の責任者ね。はほとんど行方不明と成っていたわ。もっとも、昨日地下で発見された方は居るみたいだけれど」
ほとんど、と仰いましたけれど、行方不明に成っておられ無かった方も、何人かいらした、と云う事かしら?」
「うーーん、それが……何人かいた事は居たんだけれど、人を向かわせた途端、それを察してか姿をくらませたり、逃亡したり……。まあ、後ろめたい事が有るのかしらね……。それで、何とか二人ほど身柄の拘束は出来たんだけど……。その二人とも、取り調べ前に憲兵司令部の留置所で突然、眷属に変異したわ。幸い死者や怪我人は出なかったけれど」

成るほど……ですわね。
「諏訪さん、恐らく意図した物では無いかもですけれど、帳簿は実質、降霊会参加者名簿を形成していたのかも知れませんわね。アヘンは古い参加者順に取引が始まった筈ですわ。ですから帳簿には、古い参加者順に記載されていたと思いますの。そして、洋館の地下で行われていた、例の密儀で、神に選ばれる順番もその古参順だとすれば……」
「じゃあ、小町ちゃんは、帳簿は眷属の名簿にも成っていると!?」
「ええ、そうなっていると思いますわ」
「分かったわ!そう言う事なら、帳簿に記載されている人物を重点的に探せば、帝都に潜む眷属を捕縛出来るかも知れないわね。でもそう成ると、帳簿の後ろ半分も気になるわ。いったい何処に在るのかしら……?」
公使の金庫に隠されていた帳簿は、後ろ半分が切り取られていたわ。
それは、恐らく……。
「真犯人がお持ちだと思いますわ」

「え!?どいう事なの?」
「恐らくですけれど、公使閣下がウェンディゴに成って御暴れに成った時にでも、どさくさに紛れて、金庫を開けて帳簿の半分をもって行ったのですわ」
「それは、おかしいわ。だったら帳簿を全部持って行けば、証拠を隠滅出来る筈よ」
「諏訪さん、この犯人は、小細工が大好きな方ですわ。ですかられもその一環ですわ。下手にローレンスさん殺害事件の捜査に集中されるより。眷属の存在をトラップで知らしめて、帝都を混乱させて、眷属の捜査に人手を割かせるという辺りが、狙いかもしれませんわね」

「なら、何故土手瓦さん達をわざわざ地下に閉じ込めたの?混乱させるのが目的なら、帝都で暴れる眷属が多い方が良い筈だわ」
「その方達が全員、真犯人の都合の良い時に、変異し、かつ知性も理性も失ってくれるなら、そうですわね」
「それは……どう云うことかしら?」
「口封じですわ。チヴィントンさんと仰いましたかしら。土手瓦さんはその方は、フードに仮面姿の密議の主催者の方を良くご存じだったと、仰いましたわ。恐らくあそこに閉じ込められた眷属の皆さんは、何かしら真犯人に繋がる情報をお持ちだったかも知れませんわね。実際、土手瓦さんの情報は真犯人に迫る情報でしたもの」
「成るほど、そう言う事ね。万が一、自分の情報を持っている人物が、眷属に変異する前に身柄を確保されてしまって、自分の情報が漏れるのを恐れた、と言う事ね」
「ええ、真犯人は、トラップの目隠しに使っていた魔法陣で、ある程度変異を遅らせる事が出来ても、任意に変異を早める手段は持ち合わせていなかったのね。だから、地下に閉じ込めると言う手段を取らざるを得なかった、と云う事かしら」

「じゃあ、逆に何故、真犯人は帳簿の後ろ半分を持ち去ったの?」
「それは、単純な動機ですわ。今後は御自身で、御商売なさる積りなのですわ♪」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

断罪後のモブ令息、誰にも気づかれずに出奔する

まる
ファンタジー
断罪後のモブ令息が誰にも気づかれないよう出奔して幸せを探す話

真祖竜に転生したけど、怠け者の世界最強種とか性に合わないんで、人間のふりして旅に出ます

難波一
ファンタジー
"『第18回ファンタジー小説大賞【奨励賞】受賞!』" ブラック企業勤めのサラリーマン、橘隆也(たちばな・りゅうや)、28歳。 社畜生活に疲れ果て、ある日ついに階段から足を滑らせてあっさりゲームオーバー…… ……と思いきや、目覚めたらなんと、伝説の存在・“真祖竜”として異世界に転生していた!? ところがその竜社会、価値観がヤバすぎた。 「努力は未熟の証、夢は竜の尊厳を損なう」 「強者たるもの怠惰であれ」がスローガンの“七大怠惰戒律”を掲げる、まさかのぐうたら最強種族! 「何それ意味わかんない。強く生まれたからこそ、努力してもっと強くなるのが楽しいんじゃん。」 かくして、生まれながらにして世界最強クラスのポテンシャルを持つ幼竜・アルドラクスは、 竜社会の常識をぶっちぎりで踏み倒し、独学で魔法と技術を学び、人間の姿へと変身。 「世界を見たい。自分の力がどこまで通じるか、試してみたい——」 人間のふりをして旅に出た彼は、貴族の令嬢や竜の少女、巨大な犬といった仲間たちと出会い、 やがて“魔王”と呼ばれる世界級の脅威や、世界の秘密に巻き込まれていくことになる。 ——これは、“怠惰が美徳”な最強種族に生まれてしまった元社畜が、 「自分らしく、全力で生きる」ことを選んだ物語。 世界を知り、仲間と出会い、規格外の強さで冒険と成長を繰り広げる、 最強幼竜の“成り上がり×異端×ほのぼの冒険ファンタジー”開幕! ※小説家になろう様にも掲載しています。

ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活

天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

処理中です...