今のは勇者スキルではない、村人スキルだ ~複合スキルが最強すぎるが、真の勇者スキルはもっと強いに違いない(思いこみ)~

ねぎさんしょ

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第51話

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 その場のまとめ役を男にまかせて、俺とパルルはさらに階段をのぼった。
 同じような階層が広がっているが……やはり魔物と戦っていた別グループに手を貸し、人数を確保して誘導する。

「ひとつ下の階層に行ってくださあい! 今回の転移はトラブルですう。同級生と合流して、集団で動きましょーですう!」

 パルルは自分の役割をよく理解している。
 普段は俺を立ててくれているが、こういう時にはパルルの特A組という立場がわかりやすい。
 相手もA組で優秀ということもあるが、有効に立ち回ってくれている。

 なお、彼女の背中が、

「お師匠さまを差し置いてパルルは! パルルはああああああ!! って後でけなげさ振り回して泣きわめきますからちゃんと相手してくださいね」

 と雄弁に語っているが、今は見ないふりをしておこう。
 適当なところでまた階段をのぼり、合計で10数人ほどの学生たちと行き合っただろうか。

「ふたつ下の階層ですう! 見通しのいい通路の先に階段がありますう」
「わかった! ……ああ、ところで!」

 パルルの誘導を受けた学生が、つとこちらを振り返る。

「あんたら、ファズマを見なかったか!?」
「ファズマ?」
「ああ、わからないか。ええと、黒い眼帯の男で、こう、わりといい身なりでな。斜に構えながらもわりとよくしゃべる槍使いなんだが」

 よく知っている、と俺は話に割りこんだ。

「ファズマがどうした?」
「ああ。俺はあいつといっしょに、この縁魔界に転移してきたんだが」
「! 何人か先行したと言っていた……」
「そうなんだ、ファズマは行動力がすごいからな。つい乗せられて、俺と数人が先にやってきたんだが、転移が妙だったんだ」
「俺たちも同じだ。全員がばらばらの場所に現れている。だが、こっちでファズマには会っていないぞ」
「本当か。あいつ、さっきまで俺たちといっしょにいたんだが……」

 A組かれらなら当然そうするだろう。

「急に、知っている声がするって言って、1人で奥に走って行っちまったんだ! 止めようとしたんだが、俺らも嫌なタイミングで魔物に絡まれちまって」
「1人で……? 知っている声とは?」
「わからない、俺らには何も聞こえなかった。ただ、使用人がどうのこうの、とかわめいてたような……」

 使用人。
 俺はパルルと顔を見合わせた。

 シーキーのことだ。
 やはりシーキーも、この縁魔界のどこかに放り出されているのか。
 ファズマがそれを見つけた……?

「ファズマはなんだかんだ、A組おれたちのリーダーめいたところがあるからな。あいつがいたら、みんなまとまるんだが」
「わかった。俺とパルルでさがそう」
「すまん。頼んだ」

 階段をさがして走り去っていく学生を見送りながら、とはいえだ、とパルルにつぶやく。

「まったく手がかりめいたものがないな、この縁魔界」
「ですう……さっきまでいっしょにいた、って言ってましたから、この階層にはいるんでしょうけどね。あのオラオラバカ貴族」
「それはファズマのことか」
「名門イキリクソ野郎、でもいいですう」
「むちゃくちゃだな」
「あんなやつより、シーキーちゃんが1人でふらふらしてるっぽいことのほうが心配ですう。早く見つけてあげないと……!」

 それはその通りだ。
 ファズマが見つけて保護しているなら、ひと安心だが……

 いや、この魔物の数では、その見通しも甘いか。
 パルルはどうやら、ファズマがシーキーを保護するかどうかからして、疑ってかかっているようだがな。

「しかし縁魔界というのは、どこもこう、ややこしく面倒なものなのか……?」
「パルルはわからないですう!」
「俺もだ。ダメなコンビだなまったく」
「はうっ……! お、お師匠さまとコンビ扱い! パルルはパルルはしあわせでしあわせでトォオォオウ!!」
「スキルの無駄打ちはよせ」

 土くれの壁と謎の天井という、シンプルといえばシンプルな作りのくせをして、妙に枝分かれの多い通路が探索の足を惑わす。
 どうしても時間がかかってしまう。

 一度戻って、A組の学生たちに協力を頼むか?
 それがいいかもしれない……
 と、足を止めて振り向いた、まさにそのとき。

 土壁からにじみ出るように、人影が通路に現れていた。

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