51 / 59
第51話
しおりを挟むその場のまとめ役を男にまかせて、俺とパルルはさらに階段をのぼった。
同じような階層が広がっているが……やはり魔物と戦っていた別グループに手を貸し、人数を確保して誘導する。
「ひとつ下の階層に行ってくださあい! 今回の転移はトラブルですう。同級生と合流して、集団で動きましょーですう!」
パルルは自分の役割をよく理解している。
普段は俺を立ててくれているが、こういう時にはパルルの特A組という立場がわかりやすい。
相手もA組で優秀ということもあるが、有効に立ち回ってくれている。
なお、彼女の背中が、
「お師匠さまを差し置いてパルルは! パルルはああああああ!! って後でけなげさ振り回して泣きわめきますからちゃんと相手してくださいね」
と雄弁に語っているが、今は見ないふりをしておこう。
適当なところでまた階段をのぼり、合計で10数人ほどの学生たちと行き合っただろうか。
「ふたつ下の階層ですう! 見通しのいい通路の先に階段がありますう」
「わかった! ……ああ、ところで!」
パルルの誘導を受けた学生が、つとこちらを振り返る。
「あんたら、ファズマを見なかったか!?」
「ファズマ?」
「ああ、わからないか。ええと、黒い眼帯の男で、こう、わりといい身なりでな。斜に構えながらもわりとよくしゃべる槍使いなんだが」
よく知っている、と俺は話に割りこんだ。
「ファズマがどうした?」
「ああ。俺はあいつといっしょに、この縁魔界に転移してきたんだが」
「! 何人か先行したと言っていた……」
「そうなんだ、ファズマは行動力がすごいからな。つい乗せられて、俺と数人が先にやってきたんだが、転移が妙だったんだ」
「俺たちも同じだ。全員がばらばらの場所に現れている。だが、こっちでファズマには会っていないぞ」
「本当か。あいつ、さっきまで俺たちといっしょにいたんだが……」
A組なら当然そうするだろう。
「急に、知っている声がするって言って、1人で奥に走って行っちまったんだ! 止めようとしたんだが、俺らも嫌なタイミングで魔物に絡まれちまって」
「1人で……? 知っている声とは?」
「わからない、俺らには何も聞こえなかった。ただ、使用人がどうのこうの、とかわめいてたような……」
使用人。
俺はパルルと顔を見合わせた。
シーキーのことだ。
やはりシーキーも、この縁魔界のどこかに放り出されているのか。
ファズマがそれを見つけた……?
「ファズマはなんだかんだ、A組のリーダーめいたところがあるからな。あいつがいたら、みんなまとまるんだが」
「わかった。俺とパルルでさがそう」
「すまん。頼んだ」
階段をさがして走り去っていく学生を見送りながら、とはいえだ、とパルルにつぶやく。
「まったく手がかりめいたものがないな、この縁魔界」
「ですう……さっきまでいっしょにいた、って言ってましたから、この階層にはいるんでしょうけどね。あのオラオラバカ貴族」
「それはファズマのことか」
「名門イキリクソ野郎、でもいいですう」
「むちゃくちゃだな」
「あんなやつより、シーキーちゃんが1人でふらふらしてるっぽいことのほうが心配ですう。早く見つけてあげないと……!」
それはその通りだ。
ファズマが見つけて保護しているなら、ひと安心だが……
いや、この魔物の数では、その見通しも甘いか。
パルルはどうやら、ファズマがシーキーを保護するかどうかからして、疑ってかかっているようだがな。
「しかし縁魔界というのは、どこもこう、ややこしく面倒なものなのか……?」
「パルルはわからないですう!」
「俺もだ。ダメなコンビだなまったく」
「はうっ……! お、お師匠さまとコンビ扱い! パルルはパルルはしあわせでしあわせでトォオォオウ!!」
「スキルの無駄打ちはよせ」
土くれの壁と謎の天井という、シンプルといえばシンプルな作りのくせをして、妙に枝分かれの多い通路が探索の足を惑わす。
どうしても時間がかかってしまう。
一度戻って、A組の学生たちに協力を頼むか?
それがいいかもしれない……
と、足を止めて振り向いた、まさにそのとき。
土壁からにじみ出るように、人影が通路に現れていた。
0
あなたにおすすめの小説
『婚約破棄された悪役令嬢ですが、嫁ぎ先で“連れ子三人”の母になりました ~三人の「ママ」が聞けるまで、私は絶対に逃げません~』
放浪人
恋愛
「母はいりません」と拒絶された悪役令嬢が、最強の“ママ”になるまでの物語。
「君のような可愛げのない女は、王妃にふさわしくない」
身に覚えのない罪で婚約破棄され、“悪役令嬢”の汚名を着せられたクラリス。 彼女が新たに嫁いだのは、北方の辺境を守る「氷の公爵」ことレオンハルト・フォン・グレイフだった。
冷え切った屋敷で彼女を待っていたのは、無表情な夫と、心に傷を負った三人の連れ子たち。 「僕たちに、母はいりません」 初対面で突きつけられた三つの拒絶。しかし、クラリスは諦めなかった。
「称号はいりません。私が欲しいのは――あなたたち三人の『ママ』になれる日だけです」
得意の生活魔法『灯(ともしび)』で凍えた部屋を温め、『鎮(しずめ)』の歌で夜泣きを癒やし、家政手腕で荒れた食卓を立て直す。 クラリスの献身的な愛情は、頑なだった子供たちの心を解きほぐし、やがて不器用な夫の氷の心さえも熱く溶かしていく。
これは、不遇な悪役令嬢が「最強の母」となり、家族を脅かす元婚約者や魔獣たちを華麗に撃退し、最愛の家族から「ママ」と呼ばれるその日までを綴った物語。
異世界に転生したら?(改)
まさ
ファンタジー
事故で死んでしまった主人公のマサムネ(奥田 政宗)は41歳、独身、彼女無し、最近の楽しみと言えば、従兄弟から借りて読んだラノベにハマり、今ではアパートの部屋に数十冊の『転生』系小説、通称『ラノベ』がところ狭しと重なっていた。
そして今日も残業の帰り道、脳内で転生したら、あーしよ、こーしよと現実逃避よろしくで想像しながら歩いていた。
物語はまさに、その時に起きる!
横断歩道を歩き目的他のアパートまで、もうすぐ、、、だったのに居眠り運転のトラックに轢かれ、意識を失った。
そして再び意識を取り戻した時、目の前に女神がいた。
◇
5年前の作品の改稿板になります。
少し(?)年数があって文章がおかしい所があるかもですが、素人の作品。
生暖かい目で見て下されば幸いです。
異世界転生したので森の中で静かに暮らしたい
ボナペティ鈴木
ファンタジー
異世界に転生することになったが勇者や賢者、チート能力なんて必要ない。
強靭な肉体さえあれば生きていくことができるはず。
ただただ森の中で静かに暮らしていきたい。
転生してモブだったから安心してたら最恐王太子に溺愛されました。
琥珀
恋愛
ある日突然小説の世界に転生した事に気づいた主人公、スレイ。
ただのモブだと安心しきって人生を満喫しようとしたら…最恐の王太子が離してくれません!!
スレイの兄は重度のシスコンで、スレイに執着するルルドは兄の友人でもあり、王太子でもある。
ヒロインを取り合う筈の物語が何故かモブの私がヒロインポジに!?
氷の様に無表情で周囲に怖がられている王太子ルルドと親しくなってきた時、小説の物語の中である事件が起こる事を思い出す。ルルドの為に必死にフラグを折りに行く主人公スレイ。
このお話は目立ちたくないモブがヒロインになるまでの物語ーーーー。
転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。
克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります!
辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。
【完結】転生したら最強の魔法使いでした~元ブラック企業OLの異世界無双~
きゅちゃん
ファンタジー
過労死寸前のブラック企業OL・田中美咲(28歳)が、残業中に倒れて異世界に転生。転生先では「セリア・アルクライト」という名前で、なんと世界最強クラスの魔法使いとして生まれ変わる。
前世で我慢し続けた鬱憤を晴らすかのように、理不尽な権力者たちを魔法でバッサバッサと成敗し、困っている人々を助けていく。持ち前の社会人経験と常識、そして圧倒的な魔法力で、この世界の様々な問題を解決していく痛快ストーリー。
不遇スキルの錬金術師、辺境を開拓する 貴族の三男に転生したので、追い出されないように領地経営してみた
つちねこ
ファンタジー
【4巻まで発売中】
貴族の三男であるクロウ・エルドラドにとって、スキルはとても重要なものである。優秀な家系であるエルドラド家において、四大属性スキルを得ることは必須事項であった。
しかしながら、手に入れたのは不遇スキルと名高い錬金術スキルだった。
残念スキルを授かったクロウは、貴族としての生き方は難しいと判断され、辺境の地を開拓するように命じられてしまう。
ところがクロウの授かったスキルは、領地開拓に向いているようで、あっという間に村から都市へと変革してしまう。
これは辺境の地を過剰防衛ともいえる城郭都市に作り変え、数多の特産物を作り、領地経営の父としてその名を歴史轟かすことになるクロウ・エルドラドの物語である。
第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。
黒ハット
ファンタジー
前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる