箱庭サークルでは恋愛を禁止しています。

しゃこじろー

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「な、なに?」
「ところでユーは誰、ここの主?」

「俺?」
「うん、ユーはここを統べる者?支配者?魔王?」

「いや、俺はこの部屋の・・・・・・えっと、こ箱庭サークルっていうんだけど、そこに所属してる遠州っていう人」
「トース?」

「そう、で、あそこで君のことをじろじろ見てるのが、霧ヶ峰先輩」
「ガミネ先輩?」

 なんとも面白い略し方に、霧ヶ峰先輩もといガミネ先輩はびくんと反応した。良い名だ、俺も今日からそう呼ばせてもらおう。

「そうそうガミネ先輩」
「おい遠州、変な呼び方をするな、訴えるぞ」

「いやいや、結構いい名前だと思いますよ、俺も気に入りましたガミネ先輩」
「いや、そのネーミングはどうかと思うんだが」
「ガミネ先輩っ」

 そんな、少し抵抗を覚えた様子のガミネ先輩のもとへ、金髪美少女が一目さんに近づいて行った、すると、先輩は顔を引きつらせた。

「な、なんだ」
「ガミネ先輩、嫌?」

「い、嫌じゃない、お嬢さんがそういうなら仕方がないな、ガミネ先輩って呼んでいいぞ」
「本当?」

「あぁ、ガミネ先輩でいい」
「ふふ、ガミネ先輩好き、ホヤ子みたいで好き」

 ホヤ子、それはマイナーホラー漫画に出て来る黒髪ロングの幽霊キャラだ、その名の通りホヤを両手に持った彼女は何が何でもホヤを食べさせようとしてくる奇妙な幽霊であり、確かにガミネ先輩とホヤ子はそっくりに思えた。いや、それよりも日本のマイナー漫画のことまでも知っている子の金髪美少女は一体何者なんだろうか?
 そんな、唐突に現れた金髪美少女のアタックに、ガミネ先輩は呆然とした様子をしばらく見せた後、俺に顔を向けてきた。

「なぁ遠州」
「なんすか?」

「この娘をおもちかえりしてもよいのだろうか、私はこの娘に心を奪われた」
「ダメです」

「そうか、それは残念だ、しかしだお嬢さん、お嬢さんはいったい何者なんだ?」
「私?」

 そう思えば気になっていたことをガミネ先輩は聞いてくれた。すると、金髪美少女はしばらく考え込んだ後、口を開いた。

「私はシャナハ」

「シャナハ?」

「うん、花屋敷(はなやしき)シャナハ」

 もはや漫画の主人公、こんな名前の人が本当に存在するものかと疑いの目をかけていると、突然霧ヶ峰先輩が肩を叩いてきた。今まではさほど気にしていなかったが、肩を叩かれすぐ目の前に霧ヶ峰先輩がいるのは意外と恐ろしい状況のようだ。
 
「遠州」
「な、なんすか先輩、怖いっすよ?」

「怖い?それは意味わからんが、この子はまるで物語に出てくるキャラのようだ、金髪美少女に巨乳おまけに名前もぶっ飛んでると来た、これは何か始まるんじゃないか?」
「そうっすね、それにしてもずいぶんと珍しい名前が集まるもんですね、類は友を呼ぶってこのことっすか?」

「そうだな、霧ヶ峰に花屋敷に、遠州お前もなかなか珍しい名前だと思うぞ」
「俺は普通じゃないっすか?」

「普通じゃない、これで唯一普通の名前はミヤチだけだな」
「あぁ、宮本ですもんね、普通です」

「うむ、宮本といえば、金髪、丸太、ゾンビなどなどなど・・・・・・意外と使われている名前だ、もちろん偉大なる剣豪から、髭、勇者、ゴリラを召喚する偉大なる神もいる」
「なんとなくわかるようでわからない、意味の分からない言葉ですね」

「まぁいい、それでこの子はうちに入ってくれるのか?」
「ここは廃部が決まってますから、入れることもできないっすよ」

「そうか、それは残念だな」
「はい、とても残念ですね」

 そうだ、もしもこんな美少女が我がサークルに入ってくれようものならばもう、最高にたのしいサークル生活が始まるかもしれなかったってのに。

「この、見てるだけでも幸せになるシャナたんがうちのサークルに入ってくれたらさぞかし充実したものになるだろうな」
「先輩、その呼び方はちょっと・・・・・・」

「シャナハなんだからシャナたんと呼んでも何らおかしくはないだろう」
「まぁ、そうですけど」

 どうにも信じがたい名前をしている人の登場に動揺が収まらないが、それでもガミネ先輩が上機嫌なら何でもいいのかもしれない。

「しかし、本当にかわいいなこの娘、本を読んでいるだけでかわいいとは何事だ。ムラムラしてきたな」
「そ、そうっすか」

 俺とガミネ先輩が話し込んでしまっている間、パイプ椅子に座って漫画を読みふける花屋敷さんは確かにかわいかった。

「あの乳、あれも目を見張るものがあるな」
「・・・・・・」

 何も言っちゃいけない、男たるもの女性に対して四の五の言うべきではないことくらい承知している。むっつりだのなんだの言われようと知ったこっちゃない。ここでは沈黙だ。

「ふむ、揉んで本物か偽物か確かめようか」
「ちょっとっ、何言ってんすか」
「なぁに、女の子同士の特権だ、ほら、お前ら男子達もよく意味もなく肩を組んだりするだろ、あんな感じだ」

 そういうとガミネ先輩は両手をワキワキさせながら不吉な笑みを浮かべた。

「それとこれでは全然違うと思うんですけど」
「そうか、じゃあ行ってくる」

「いやいや、ちょっと待ってください」
「止めるな遠州、これは全国の男子諸君のための貞淑なミッションだ」
「何言ってんすか、そういうのはゲームの中だけでいいっす、バーチャルでお願いします」

 そんな引き止めの言葉にガミネ先輩は動きを止めた。まったくもってコミュ障なのかコミュ障じゃないのかわからんガミネ先輩は、何やら静かにそのワキワキしていた両手をおろした。

「ふむ、確かにそうか、少し早すぎるスキンシップだったな」
「そうっすよ、大体根暗な先輩がどうしてそんなにアクティブなんですか?」

「それはあれだ、ここにはお前くらいしかいない空間であり、なおかつ金髪巨乳美少女が目の前にいるからだ、ほら、遠州だってシャナたんと二人きりになったらそういう気分になるだろ?」
「・・・・・・な、なりません」

 たっぷりと含みを持たせた沈黙を作ってしまった俺はガミネ先輩にじろりとにらみつけられている様な気がした。

「おいなんだその間は、即答しろ遠州、ハレンチが」
「ほっといてくださいよ」

 一人増えた箱庭サークルの室内は少し華やかで、俺とガミネ先輩は珍しく漫画を読みふけることなく、花屋敷さんを見つめているという妙な一日を過ごした。

 それからというと、わが箱庭サークルに花屋敷さんがたびたび訪れるようになった。

 そんな幸せと不幸せが混同しているような日々を過ごしていたある日、俺はガミネ先輩と二人でいつものように今か今かと花屋敷さんの来訪を待ちわびていると、部室の扉が開かれた。
 箱庭サークルのアイドル「花屋敷さんがやってきたっ」そう思いながらひらいた扉に目を向けると、そこには怖い顔した宮本先輩が立っていた。そしてすぐにガミネ先輩がため息を漏らした。

「なんだ、ミヤチか」
「なんだとはなんだ霧ヶ峰」

 ガミネ先輩の言葉に宮本先輩はいつになく厳しい顔つきでそう言い返した。なぜか威圧感を感じるその言葉にガミネ先輩も何かを察したかのように、ただでさえうつむけている顔をさらにうつむけた。

「い、いや、何でもない・・・・・・ふへ」 
「そうか、それより遠州、今日は期限日だぞ」
「え、何言ってるんですか、期限日はまだじゃないですか宮本先輩」

 そう、今日は退去命令の期限日、もちろんこんなこと忘れるわけないが、俺はとにかくすっとぼけた。すると、宮本先輩は怒った顔して詰め寄ってきた。

「とぼけるなっ、ちゃんと言っていただろっ」
「いやー、うーん、そーですねー、五月病ですかね、体が動かないなぁ」

「何を言っているのかはわからないが、今日中にここにあるものはすべて外に出してもらう」
「ど、どうしてもですか?」

「どうしてもだ」
「個人的にはこのままっていうのも・・・・・・」

「だめだ、今日は期限日なんだからつべこべ言わずに外に出せ」
「いやでも、やっぱりこのまま」

「わがままはよせ遠州、全部外に出せっ」
「でも、直感というか本能がそう告げているっていうか、なんというか」

「な、なぜだっ?」
「これは遺伝子に刻まれた抗いようのない欲望なんです、だからどうかこのまま」

「な、何を言っている早く外に出せっ、今日が期限日だっ」
「いやです、どうかこのままっ」

 何をかってに二人で盛り上がっているのだろうとはおもったが、俺は何が何でもこの場所を譲りたくはない。

 それに、あの本に書いてあった願いもあるし、俺の快適空間を手放さないためにも何が何でも抵抗するしかないのだ。だが、そんな俺の思いとは裏腹に、今日も一緒にいるガミネ先輩はなぜか白けた顔で俺と宮本先輩を交互に見ていた。そういえばさっきからまるで入ってこない先輩はどうしてこんな顔をしているのだろう。

「何やってんすかガミネ先輩、先輩も何とか宮本先輩を説得してくださいよ」

 俺の必死の言葉に対いてガミネ先輩は随分と白けた顔をしていた。

「正直に言って今のやり取りは相当に気持ちが悪い」
「は?何のことですか、今は真剣な話をしているんですよ」

「いや、どう考えてもお前らの会話は少しおかしい、薄い本を読んでいる気分になったわ」
「何がおかしいんすかガミネ先輩」

「そうだ、なにがおかしいんだ霧ヶ峰、私たちは真剣だぞっ」
「いや、おかしいだろ?」

 そういうと霧ヶ峰先輩はなぜか何もない所に視線を向けた。それはまるで誰かに同意を求めるような動きであり、まるで幽霊でも見えているようだった。

「ど、どこを見て言ってるんだ霧ヶ峰、いったい何がおかしいというんだ、答えろっ」
「いや、まぁいいんだが、話を合わせるなら私も遠州同様に反対だミヤチ、ここは譲れん」

「霧ヶ峰までそんなことを言うのか、いいかお前ら、ここはもうすでに廃部が決まっているんだ、お前たちが譲る譲らんの問題ではないんだぞ」
「でもですね宮本先輩っ」

「なんだ遠州」
「ここは、俺や先輩はもちろんこれまでのここにいた人たちにとってとても大切な場所なんすよ」

「だから何なんだ」
「いや、だから、だからここから立ち退くのは無理なんすよっ」

 俺の言葉に宮本先輩は小さくため息をついた。そして首を何度か横に振った後、あきれた様子で俺を見つめてきた。

「もういい、遠州が素直に立ち退いてくれればよかったのだが、お前がそう言うのなら仕方がない、もう少し見込みのある男だと思ってはいたが、どうやら私の見込み違いだったようだ」

「な、なんすか急に?」
「お前たちには悪いが撤去部隊を用意している」

「えっ?」
「入ってください」

 宮本先輩の合図で部室前に集まったのは、なぜかアメフトのユニフォームで身をつつんだ屈強そうな人、いや、さながらオークたちだった。それも大群で押し寄せてきており、その威圧感たるやすさまじいものだった。
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