箱庭サークルでは恋愛を禁止しています。

しゃこじろー

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「あ、宮本先輩、こんちわっす」
「あぁ遠州か」

 目の前の宮本先輩はどこか顔色が悪く、目つきもなんだかうつろな様子だった。なんだかこういう疲れた表情をする女性も魅力的だな。

「どうしたんすか、顔色悪いですよ」

「それは、お前たちの横暴が許され、生徒会は手のひら返すかのように花屋敷さんの意思を尊重、箱庭サークルは前代未聞の廃部撤回で復活を果たす、私のこれまでの働きかけはいったい何だったんだろうかと思うとここ最近気分が晴れなくてな」

「あ、あぁ、それはなんかすんません、あと責任とらなくてすんません」
「なんの話だ?」

 キョトンとする宮本先輩に俺も何を言ってるのだろうと思ったが、そんなこともはやどうでもよかった。

「いや、でも、なんかいろいろすんませんでした宮本先輩」
「気にするな、これはもう決まったことだ、今更お前たちにどうこう言うつもりはない、ちゃんとしたサークルとして成立することになったんだ、よかったな遠州」

「ありがとうございます」
「あぁ、それでなんだがな遠州」

「なんすか?」
「このサークルの会長は誰だ?」

 そういうと、いつになくけだるげな様子の宮本先輩はついに近くにあるパイプ椅子に腰かけてしまった。よほど疲労がたまっている様子だ、肩で揉んであげれば少しは喜んでくれるだろうか?
 なんてことを思いつつ、思えば会長という役職に就く人間がいなかった事に気づいた俺は、年長者であるガミネ先輩に目を付けた。

「えっと、そうですね、じゃあガミネ先輩で」
「霧ヶ峰、お前が会長なのか?」

 このサークルで一番の年上であるガミネ先輩を指名すると、先輩は薄ら笑いを浮かべていた。

「何言ってるんだミヤチ、ミヤチともあろう女がこのサークルの会長も知らないなんて、まだまだだな」

「どういう意味かは分からないが、ここの会長はお前じゃないのか?」

「当然だ、私のような奴が会長になれるわけがないだろう」

「あの、まさか俺とか言わないでくださいよ先輩」

 唐突に嫌な予感がしてそういってみると、ガミネ先輩は涼しい顔しながら首を横に振った。

「案ずるな遠州、お前でもいいとは思っているが、会長っていうのはすでにいるもんだ」

「誰だ霧ヶ峰、教えてくれ」

「いいだろう、では初めに、お前たちはこのサークルに小森 桐人《こもり きりと》という名前の男がいたことをご存知か?」
「小森?知らない人っすね、そんな人がいたんすか?」

「そうだ、あの人はこのサークルの裏番長ならぬ裏会長だ」

「そんな話初めて聞きましたよガミネ先輩、どうしてもっと早くいってくれなかったんすか」

 そう尋ねるとガミネ先輩は無言になった、どうやらこの様子だと今の今までその小森とかいう人を忘れていたのだろう。

「まぁ、そういうことでだなミヤチ、このサークルの会長に用があるなら小森会長のところに行け」

「なるほど、ではその会長とやらはどこにいるんだ霧ヶ峰」

「会長なら大学の近くにある『アトム荘』ってところにいる」

「なんだ、学内にいないのか?」

 『アトム荘』その名に聞き覚えがある、なぜならそこは俺が下宿している場所だからだ。

 超激安で借りられる下宿先であり、俺以外の住人はほとんどいないと聞いていたその下宿先に、まさかそんな先輩が住んでいるなんてこと、もはや運命的としか思えない。

「ちなみだがミヤチ、会長は休学中とかいってしばらく大学には来てないみたいだ。だから、行くならあの人の自宅に行くしかない」
「自宅に行かないといけないのか?」

 宮本先輩は明らかに嫌そうな声色と顔でそうつぶやくと、小さくため息を吐いた。

「そうだ、でもミヤチは美人さんだからなぁ、一人であの人の自宅に訪れるものなら、それこそ飢えた獣のように無理やり部屋に引きずり込まれて、あんなことやこんなことされるかもしれないなぁ」
「な、なにを言っているんだ霧ヶ峰、そんなことをするわけないだろう」

 動揺した様子の宮本先輩はなぜか俺の背後に回って身を隠してきた。相変わらずガミネ先輩は宮本先輩には強気のようだ。

「冗談冗談、大丈夫だ行ってくるんだミヤチ」
「そ、そんなことを言われたら行けるわけないだろっ」

「でも、小森会長はそこにしかいないからそこに行くしかないんだよなぁ」
「いや、私はいかないぞ、ほらサークル会合の案内だ、お前たちが小森会長とやらに渡しておいてくれ」

 宮本先輩は俺の背後からそういって、俺に一枚の紙を手渡してきた。

「あ、ちょっと宮本先輩、サークル会合って何すか?」
「会合というのはサークルの会長たちがそろって集まり今後の活動報告や、功績を発表する場だ、毎月行われている、絶対に参加するんだ」

「へぇ」
「まぁ、お前たちがこの会合に出たところで何の影響もないだろうが、一応渡しておく、じゃあ私はこれで失礼するからなっ」

 宮本先輩はそういうと勢いよく部室から出て行った。まぁ俺が宮本先輩の立場だったら間違いなくいかないだろう。そう思い、さっきまで宮本先輩が座っていた椅子に腰かけ、改めて手渡された紙に目を移した。そこには会合の場所と時間がかかれており、各サークルや部活の長は出席するようにと書かれていた。
 何やら面倒くさそうな文字の並び思わずため息を漏らしつつ、これに出席してもらうための会長について話を切り出すことにした。

「で、ガミネ先輩はその小森会長とはどういう関係なんすか?」
「関係?」

「はい」
「関係も何も、私は会ったこともない」

「え?」
「だからあれだ、頑張ってくれ遠州お前だけが頼りだ」

「な、なんでっすか、めちゃくちゃ知り合いみたいな口調だったじゃないっすかっ」
「なにをいう、私に知り合いがいるわけないだろう、まだそんなこともわからんのか」

「でも、なんかいろいろ知ってるじゃないですか、どこからその情報仕入れてるんですか?」
「そんなものは秘密だ、とっとと行ってこい遠州」

「そ、そんなぁ」
「ほら行け遠州、お前はこのサークルで唯一の男なんだ、男の相手は男って決まっているだろう」

 何を言っているのだろうと困惑していると、突如として室内に明るい声が響き渡った。

「はいはい、私もそう思いますっ」

 突然同調してきたのは、ハイテンションな美琴さんだった、彼女はガミネ先輩の言葉に興奮した様子でいたが、すぐに我にかえり静かに座りなおした。急にハイテンションになった理由がわからないが、美琴さんもまた不思議な人なのかもしれない。
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