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1章
1話
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何処までも、果てしなく続く空。
吸い込まれそうなほどの蒼を携えボクたちを包み込む。
その下で、数えるのもバカらしくなるような無数の生命が、時の流れに身を委ね色鮮やかに活動しているのだ。
色も形もそれぞれな生命が。
生まれながらに平等なだとはよく言ったものだと思う。誰が言ったのだっけ?
まあ、それはいいか。
人間だけに限って話をしてみよう。
二十四時間三百六十五日。食事をするもの、スポーツをするもの、寝ているもの、笑うもの、怒るもの、悲しむもの。細胞まで見れば人間は休みなく……せわしなく動き続けている。どんなに怠けているものでも。
系統に分けて数えるのであれば、こちらも同じように数えきれない。
そして、その中には必ず“死ぬもの”が入っている。
地球では一秒間におよそ二人が死ぬ。
一分間では120人、一時間では7200人、一日では172800人。
こうしてみると、凄まじい数だ。
死とはとても身近なものだ。
しかしそれだけの人間が死んでいるのに、肝心の“死”については未だ詳しく知るものはいない。
死後の世界がある。だの、自然に還元されるだの。
情報もない、経験したこともない人間が勝手に描いているものだ。
正解でもあり、不正解でもあり、見当違いでもある。
まあ、『死』を理解するなんてことは、生命があるうちは絶対に無理なことだろうけど。
◇ ◇ ◇
光あるところに影あり。
人々が繁栄の道を進むことを光とするならば、その影の位置には太古より、魂を喰らう存在がいた。
ここ日本では『妖怪』と呼ばれている者たちだ。
いつからいたのか、どうして生まれたのか、何故魂を喰らうのか、等々疑問は尽きない。
一説によれば、生命と同時に誕生した、ともされている。
このように、妖怪については、様々な意見が飛び交っているのだが、どれも決定力に欠けていた。
そんな謎の多い妖怪。
人を軽く凌ぐ力を持ち、最大の脅威となる存在。
しかし人類も、黙って彼等の餌になっているわけではない。
国によって呼び方に差はあれど、その者たちと戦う、日本では退魔士と呼ばれている存在がいた。
遡れば平安……いや、奈良時代にはもう、退魔士と名乗る者たちは表れており、人々を妖怪の脅威から守ってきた。
それは時が流れた今も変わることはない。
退魔士は歴史の裏に埋もれることなく、今も存在し続けている。
◇ ◇ ◇
学校のチャイムが校内に鳴り響き、帰りのHRが終了したことを告げる。
日はもう傾いていて、とうに空は澄んだ赤に染まった。
お決まりのようにカラスも鳴いている。
各々は授業の疲れをとるように体を伸ばし、放課後の活動へと向かって行く。
教室で談笑している人もいれば、我先にと部活動へ向かう人もいる。
もちろん、すぐに帰る帰宅部という人もいるわけだ。
とは言っても、高校1年生の5月の時点で帰宅部という人はかなり少ない……いや、いないと言ってもいいくらいだろう。
高校生になり期待に胸を膨らませている生徒が大半であるため、青春を求めみな部活に入っているのだ。
もっとも、今教室を出て校門へと向かっている日本人らしい黒髪を持ち、線の細い顔立ちをした隻腕の少年。この少年はその『ほとんどいない』の中に含まれている。
「あれ、神代くんも今帰り?」
「うん。丘野さん、君も?」
「ええ」
少年が校門のところで一人の少女と出会った。
双方とも同じクラスで隣の席。互いの名前くらいは知っているようだ。
挨拶を交わし、知人同士の他愛もない話をしながら校門を離れる。
「あれ、今日は神代くんちゃんと歩いてるの?」
「どういうこと?」
「だって教室とか廊下とか……学校だといつもダルそうじゃない」
「ああ。それはね、四六時中気を張ってたら疲れるじゃん。だから気を抜いてるの」
「え、えぇーっと。とは言っても抜きすぎなんじゃ……」
呆れ気味で女の子が言う。
「そうかなあ。多分違うよ」
「ま、まあ。本人が言うんならそうなんだろうけど……」
「うん。そうなんだよ」
少年の方はとてもマイペースなようだ。
「あ、そういえば。神代くんの家もこっちのほうなんだ」
「家っていうか、アパートなんだけどね……
それじゃあ丘野さんの家もこっちの方なの?」
「ええ。妹と二人で暮らしてるの」
「あ、なんかごめん……」
『妹と二人』という言葉を聞いて少年は少女の家に複雑な事情があるのだと察した。
気分を害したかと思い、少女に向かい謝る。
「いいのよ。私が勝手に言ったことじゃない」
「まあ、確かに」
少女は謝罪に対して、『筋違いだよー』と笑って返した。
気にしていないようにカラカラと笑っているが時折笑顔に影が差す辺り、嫌なことを思い出してしまっているのだろう。
少年は表情を変えない。
そこに触れないように話を続ける。
基本的に少女が話しかけて少年が返す。という形だ。
分かれ道が見えてきた。
「あ、俺ここを右に曲がるから」
「神代くんのアパートって、そっちにあるんだ」
「いや、バイト先がそっちにあるんだ」
「へえ~。神代くんバイトしてるんだ。頑張ってね!」
激励の言葉を貰い、少年はその場を離れる。
すると少女が、はっとして少年の背中に声をかけた。
「あと、夜道には注意してねー。いくらこの山腹市が平和だと言っても、妖怪はいつ現れるか分からないんだから-!」
少年はそれに、唯一ある左腕をふって応えた。
妖怪というのは、古来からいる人間の“魂”を食すヤツらだ。
総じて高い身体能力を保有しており、個体によっては“妖気”や“能力”を使うものもいる。
そのような妖怪に対抗するために、“退魔士”という存在が日本にはいる。
人間が本来もつチカラ“霊力”を操り、妖怪を殺す人間達のことをそう呼ぶ。
退魔士はほとんど“退魔士協会”に所属しており、強さによってランク付けがされている。
退魔士協会に属していると依頼を受けられ、その依頼を達成することにより報酬金を得られる。
全ての市に、退魔士協会支部というのがあるはずなのだが、ここ山腹市は妖怪の被害がゼロ。
だから少女も、『平和だけど』と言ったのだ。
そのためこの市には支部がなく、退魔士も一人しかいない。
「今日もありがとな斬夜。お前はよく働いてくれて助かるぜ。
こんな夜の時間帯だと人手が少ないんだが……お前のがんばりでこの時間帯は成り立ってるようなもんだぜ」
「いやいや、皆さんの頑張りですよ。それぞれが頑張ってるからでしょう。
俺一人のチカラなんて微々たるものですよ」
少年はバイト先の宅配専門ピザ屋にいた。
ちょうど、少年の勤務時間が終わったところである。
何故宅配専門かというと、夜は妖怪がもっとも活動する時間帯なので外出する人が少ない。それはこの平和な街でも同じだ。
従って、その時間帯に宅配をすれば客が多くなり儲かるだろう。と経営者が考えたからだ。
事実、結構儲かっている。
少年もすでに15件以上の宅配を終えていた。
少年はバイトの先輩である、山崎さんと話している。
山崎さんはここの店長だ。
ちなみにこの職場には男しかいない。
夜の時間しか営業していないので、女性には不人気なのだ。
「ったく。おめえはもうちょっと誇れ。そんなんだと、他のヤツらの立場がねえんだよ」
「そ、そうは言いましても……」
他の働いている人からすれば、自分たちよりも仕事をしておりそれを何でも無いことのように言う少年は、決して好意的には見られないだろう。普通は。
ただ、ここの職場の人たちはみんな立派な大人なので『自分たちの仕事が減った』と喜んでおり、少年のことを好意的に捉えてくれてる。
「まあ、おめえにこれ以上言っても無駄かあ。
んじゃあ、夜だし気いつけて帰れよ」
「はい、ありがとうございました!」
従業員用の出入り口の外で、少年は山崎さんに向かい礼をして、住んでいるアパートへと向かっていった。
外出している人は誰一人おらず静まりかえっており、街灯だけが薄く夜道を照らしている。
立ち並ぶ家々は既に雨戸が下ろされており、生活の光を感じさせない。
少年はそこを歩いていた。
「ん……?」
ふと、何かがひっかかったように声を漏らす。
そのまま辺りを見回した。
何かを見つけたらしい。
少年はある方向を見つめたまま止まった。
「……はあ。今夜は残業か……」
そう呟くと、ダルそうに、少年はその方向に向かって不気味なほど静かに走り出した。
さっきまでとは比べ物にならない、機敏な動きで。
まるで音が死んでしまったかのように無音で。
◇ ◇ ◇
―――――ハァ……ハァ……ゼェゼェ…
俺は必死に背後から迫り来る化け物から逃げていた。
(くそっ。なんでこんなことに――――)
ここ山腹市には妖怪がおらず、退魔士が手薄。
隣の市で活動していてそこそこチカラのある鬼妖怪だった俺は、その情報を嗅ぎつけてこの市に来た。
ここを俺の陣地にして、勢力を伸ばしゆくゆくは――――――
そのような野心を持って。
事実、午前中この街に来たときは退魔士に気付かれることはなかった。
『ちょろい街だ』そう思った。
今思うと、このとき深く考えておけばよかったと後悔している。
なぜ、退魔士が一人しかいないのに被害がゼロなのかを。
だから夜になったら行動を起こし、この街の人間を恐怖に陥れてやろうと思い、事実その通りに行動を始めた。
早速一人目を見つけて襲いかかろうとした時―――――――その化け物に出会った
白髪に隻腕。
それがその化け物の特徴だ。
最初、俺は餌が増えたと喜んでそいつに襲いかかった。襲いかかってしまったのだ。
相手は片腕、退魔士でもない一般人。
負けるなどとは微塵も考えていなかった。
しかし、飛び込んだ俺を待ってたのはおぞましい死の気配。
本能に従い、俺は咄嗟に空中で体をひねった。
着地した俺の体には、両腕がきれいさっぱりなくなっていた。
両足には深さ10cmほどの切れ込みがいれられてもいた。
……両腕だけで済ませられた自分を褒めたい。
両腕を殺された俺は、相手に対して怒るでもなく、ただそう思った。
あそこで体をひねらなければ、今頃は四肢を亡くされていただろう。
いつ攻撃されたのかも分からない
こんなことは初めてだった。
鬼である俺は生まれながらに高い能力を保持しており、負けたことなど一度もなかった。
従って、攻撃を見切れなかったことも一度たりとも無い。
驚愕している俺をよそに、あの化け物は
「あれれ……殺し損ねた? ちょっと手加減し過ぎちゃったか……」
なんて笑いながらのたまった。
それを聞き背筋に尋常じゃない悪寒がはしった。
同時に、体中から冷や汗が滝のように流れる。
―――――勝てない
存在としてこの化け物はおかしい。
関わってはいけない、そんな存在だった。
そう判断した俺は一目散に逃げ出した。
鬼としての……妖怪としてのプライドをなげうって。
そうして、今に至るというわけだ。
「おいおい、ちょっと待ちなって」
後ろから化け物の声がするが、振り返る余裕などない。
立ち止まったらすぐに追いつかれ……て
「やあ、さっきぶり」
目の前には化け物がいた。
さっきと何ら変わらない笑顔で。
何故お前みたいなのがこの街にいる
何故退魔士協会は、こんな化け物をほうっておく
何故、何故、何故―――――
今更になって、そんな疑問がつきない。
「悪いんだけど、お前を殺さないといけないんだ。
だって、この街は“平和”だって話なんだから。
……支部が作られたりしたら困っちゃう。
上様が動き辛くなっちゃう」
そんな勝手な理由があるか。俺はそう叫びたかった。
だが、濃密な死の気配を前にして、俺の体はピクリとも動かない。
「っく……死神がァ……」
それを聞いた化け物は面白そうに笑い
「なるほど……死神か……よかった。ちゃんとそう見えたんだ。
うん、自信がついた。今度から堂々とそう名乗れるよ。
……それじゃあ。バイバイ」
虫でも払うかのように、右腕をふるった。
もの言わなくなった鬼人オーガの体。
まだ生の匂いがしっかりとある。
太い首筋。
美味しそう。
涎が垂れてきた。
そこに口を近づけ???
本日も普段と何ら変わりなく、この街は平和を謳歌した。
◇ ◇ ◇
残業を終え、数分ほど夜道を歩いたところで古く寂れた木造のアパートが見えてきた。
変なところで体力を使ってしまったから、いつもより少し疲れた。
ここが俺の……神代斬夜の住みかだ。
住んでる人? は、俺と管理人のお姉さんの二人しかいない。
俺も貧乏学生。
ここに決めた理由も単純に、家賃が安いからだ。
俺はここに8年前から住んでいる。
最初は、ボロボロで住むのがやっとという状態を覚悟してアパートの契約をしたのだが、俺のそんな覚悟はいとも簡単に裏切られた。
まず、アパートの内装が外装のボロさに合っていない。
どこぞの高級日本旅館っぽい、落ち着いていて清潔さを感じさせる内装だ。
お姉さんと食事をする食堂は畳張りで、い草の香りが心地よい。
お姉さんも美人で、こんなに良いアパートはないだろう。
……ところどころおかしなところがあるが。
一階にはなぜか川が流れており、建物の中に石庭もある。
川は黒いもやがあるところから流れ出ており、同じく黒いもやがあるところに流れ落ちている。
一度触ってみようかと思ったが、とてつもない悪寒が走ったためやめておいた。
お姉さんに聞いたところ、このアパートの趣味なんだそうだ。
アパートの趣味ってなんだ? と常々疑問に思っている。
ちなみに、このアパートには窓がない。
外から見たときにはあるだが……
一体、外から見えるあの窓はなんなのだろうと、俺はずっと不思議に思っている。
「おかえりなさい。斬夜さん」
玄関をくぐると、ポニーテールで包容力のある笑顔をした管理人のお姉さんがいた。
いつものことだが、『お帰りなさい』と言ってもらえるのはとても心が温まる。
帰る場所がある、ということを実感できるのだ。
だから俺もいつもの言葉。定型文を返す。
「ただいま。お姉さん」
「うん」
お姉さんは満足そうにうなずいた。
無邪気なその笑みを見ると、自然と俺の表情も優しいものに変わる。
靴を脱ぎ、スリッパに履き替えた。
脱いだ靴は、玄関の端にある下駄箱に入れる。
出しっ放しにするとお姉さんに怒られてしまう。
面倒くさくてもちゃんとしなくては。
「今日は珍しく少し遅かったですね、何かありましたか?」
「いや、ちょっと残業があってね」
お姉さんは、こういう細やかな気遣いをしてくれる。
女性としてとても魅力的だ。
「じゃあ、ご飯できてるから一緒に食べましょうか」
「今日はお姉さんの担当だったっけ。お姉さんの料理は美味しいからね、楽しみ」
「ふふ、ありがとう」
これまた和風の、ヒノキが香る廊下を抜けて食堂に入る。
住んでいるのは二人なので食費削減もかねて、朝と夜は一緒に食べている。
お姉さんと食べると一人で食べるよりずっと美味しいので、食費削減というのはもっぱら建前になっているのだが。
いつもアルバイトで遅くなる俺を、お姉さんは待っていてくれる。
とてもありがたく、嬉しいことだ。
ちなみに、食事当番。というものをここでは決めている。
俺がアルバイトで遅くなる平日は全てお姉さんの担当になっており、俺の担当は休日だけなのだ。
これではお姉さんに悪いと思い、
畳が敷き詰められた食堂に出る。
座布団が二人分、座卓を挟んでしかれており、座卓の上にはすでに食事が用意されていた。
いつも夕食は和食でありそれは今日も変わらない。
献立は焼き魚と漬け物、白米に味噌汁。飲み物は緑茶といった、いわゆる和食のテンプレといわれるものだ。
日本風のアパートなのだから、食事も日本風なのだろうか。
和食が好きなので、特に不満といったものはないけど。
「「いただきます」」
ふたりで手を合わせて、食事を始めた。
「……」
「……」
無言で食事を進める。
これは別に俺たちの仲が悪いからではない。
お姉さんが作ってくれた食事が俺たちの食欲を刺激する料理だからだ。
魚のふっくらとした身に醤油を数滴垂らし、小骨があるのも気にせず口に運ぶ。
魚本来の塩気と、醤油の塩気。
口に入れ舌で転がしただけで身が解けるほどの柔らかさ。
広がったしょっぱさで丁度米が欲しくなる。
口の中にまだ魚が残っている今、すぐにご飯も口の中に入れた。
お姉さんの惣菜は、とにかく白米に合う。
少し濃いめの味付けにされておりそのままではしょっぱいが、ご飯と一緒にかきこむことで箸が止まらなくなるのだ。
お米本来の甘みとしっとりとした味わい。
それと総菜の塩気が口の中で混じり合い、噛む度に味が染み渡っていく。
漬け物もまた然り。
流れるように、俺は味噌汁に手を伸ばし???
途端。轟音が空気を割ってアパート内を網羅した。
耳を劈くその音に、脳天までもが揺れる。
その後、木が軋み折れるような音が我先にと争うように、不協和音を奏でながら激しく続いた。
「うわっとおっ!」
「えっ!」
結構な衝撃だったのか、アパート全体が少し揺れた。
轟音と揺れに驚いた俺は、つかみかけていた味噌汁を。お姉さんは飲んでいた緑茶を盛大にまき散らした。
「あーあ。こりゃあ掃除大変だなあ」
畳に水分が染みこんで、色が変色してしまっている。
お姉さんは慌てて布巾を持ってきて水分を拭き取ったが、跡がくっきりと残ってしまった。
どうしよう。……と、オロオロするお姉さん。
うん、和む。
まあ、たぶん明日には跡形もなくなっているのだろう。
そういうことは俺がこのアパートで暮らし始めてから数え切れないほどあった。
今更驚くこともない。
原理は全く不明なのは当然。
「それより、何があったのか見に行かないと」
「は! 確かにそっちの方が重要ね」
音の発生源。玄関に向かって俺とお姉さんは歩みを進めた。
何故走らないのかというと、廊下は走ってはいけないからだ。
アパートが怒るらしい。
全てのものには命があるのだろう。
普段通り歩いて、30秒ほどで玄関につく。
大量の木くずの中にその姿はあった
「「女の子……?」」
吸い込まれそうなほどの蒼を携えボクたちを包み込む。
その下で、数えるのもバカらしくなるような無数の生命が、時の流れに身を委ね色鮮やかに活動しているのだ。
色も形もそれぞれな生命が。
生まれながらに平等なだとはよく言ったものだと思う。誰が言ったのだっけ?
まあ、それはいいか。
人間だけに限って話をしてみよう。
二十四時間三百六十五日。食事をするもの、スポーツをするもの、寝ているもの、笑うもの、怒るもの、悲しむもの。細胞まで見れば人間は休みなく……せわしなく動き続けている。どんなに怠けているものでも。
系統に分けて数えるのであれば、こちらも同じように数えきれない。
そして、その中には必ず“死ぬもの”が入っている。
地球では一秒間におよそ二人が死ぬ。
一分間では120人、一時間では7200人、一日では172800人。
こうしてみると、凄まじい数だ。
死とはとても身近なものだ。
しかしそれだけの人間が死んでいるのに、肝心の“死”については未だ詳しく知るものはいない。
死後の世界がある。だの、自然に還元されるだの。
情報もない、経験したこともない人間が勝手に描いているものだ。
正解でもあり、不正解でもあり、見当違いでもある。
まあ、『死』を理解するなんてことは、生命があるうちは絶対に無理なことだろうけど。
◇ ◇ ◇
光あるところに影あり。
人々が繁栄の道を進むことを光とするならば、その影の位置には太古より、魂を喰らう存在がいた。
ここ日本では『妖怪』と呼ばれている者たちだ。
いつからいたのか、どうして生まれたのか、何故魂を喰らうのか、等々疑問は尽きない。
一説によれば、生命と同時に誕生した、ともされている。
このように、妖怪については、様々な意見が飛び交っているのだが、どれも決定力に欠けていた。
そんな謎の多い妖怪。
人を軽く凌ぐ力を持ち、最大の脅威となる存在。
しかし人類も、黙って彼等の餌になっているわけではない。
国によって呼び方に差はあれど、その者たちと戦う、日本では退魔士と呼ばれている存在がいた。
遡れば平安……いや、奈良時代にはもう、退魔士と名乗る者たちは表れており、人々を妖怪の脅威から守ってきた。
それは時が流れた今も変わることはない。
退魔士は歴史の裏に埋もれることなく、今も存在し続けている。
◇ ◇ ◇
学校のチャイムが校内に鳴り響き、帰りのHRが終了したことを告げる。
日はもう傾いていて、とうに空は澄んだ赤に染まった。
お決まりのようにカラスも鳴いている。
各々は授業の疲れをとるように体を伸ばし、放課後の活動へと向かって行く。
教室で談笑している人もいれば、我先にと部活動へ向かう人もいる。
もちろん、すぐに帰る帰宅部という人もいるわけだ。
とは言っても、高校1年生の5月の時点で帰宅部という人はかなり少ない……いや、いないと言ってもいいくらいだろう。
高校生になり期待に胸を膨らませている生徒が大半であるため、青春を求めみな部活に入っているのだ。
もっとも、今教室を出て校門へと向かっている日本人らしい黒髪を持ち、線の細い顔立ちをした隻腕の少年。この少年はその『ほとんどいない』の中に含まれている。
「あれ、神代くんも今帰り?」
「うん。丘野さん、君も?」
「ええ」
少年が校門のところで一人の少女と出会った。
双方とも同じクラスで隣の席。互いの名前くらいは知っているようだ。
挨拶を交わし、知人同士の他愛もない話をしながら校門を離れる。
「あれ、今日は神代くんちゃんと歩いてるの?」
「どういうこと?」
「だって教室とか廊下とか……学校だといつもダルそうじゃない」
「ああ。それはね、四六時中気を張ってたら疲れるじゃん。だから気を抜いてるの」
「え、えぇーっと。とは言っても抜きすぎなんじゃ……」
呆れ気味で女の子が言う。
「そうかなあ。多分違うよ」
「ま、まあ。本人が言うんならそうなんだろうけど……」
「うん。そうなんだよ」
少年の方はとてもマイペースなようだ。
「あ、そういえば。神代くんの家もこっちのほうなんだ」
「家っていうか、アパートなんだけどね……
それじゃあ丘野さんの家もこっちの方なの?」
「ええ。妹と二人で暮らしてるの」
「あ、なんかごめん……」
『妹と二人』という言葉を聞いて少年は少女の家に複雑な事情があるのだと察した。
気分を害したかと思い、少女に向かい謝る。
「いいのよ。私が勝手に言ったことじゃない」
「まあ、確かに」
少女は謝罪に対して、『筋違いだよー』と笑って返した。
気にしていないようにカラカラと笑っているが時折笑顔に影が差す辺り、嫌なことを思い出してしまっているのだろう。
少年は表情を変えない。
そこに触れないように話を続ける。
基本的に少女が話しかけて少年が返す。という形だ。
分かれ道が見えてきた。
「あ、俺ここを右に曲がるから」
「神代くんのアパートって、そっちにあるんだ」
「いや、バイト先がそっちにあるんだ」
「へえ~。神代くんバイトしてるんだ。頑張ってね!」
激励の言葉を貰い、少年はその場を離れる。
すると少女が、はっとして少年の背中に声をかけた。
「あと、夜道には注意してねー。いくらこの山腹市が平和だと言っても、妖怪はいつ現れるか分からないんだから-!」
少年はそれに、唯一ある左腕をふって応えた。
妖怪というのは、古来からいる人間の“魂”を食すヤツらだ。
総じて高い身体能力を保有しており、個体によっては“妖気”や“能力”を使うものもいる。
そのような妖怪に対抗するために、“退魔士”という存在が日本にはいる。
人間が本来もつチカラ“霊力”を操り、妖怪を殺す人間達のことをそう呼ぶ。
退魔士はほとんど“退魔士協会”に所属しており、強さによってランク付けがされている。
退魔士協会に属していると依頼を受けられ、その依頼を達成することにより報酬金を得られる。
全ての市に、退魔士協会支部というのがあるはずなのだが、ここ山腹市は妖怪の被害がゼロ。
だから少女も、『平和だけど』と言ったのだ。
そのためこの市には支部がなく、退魔士も一人しかいない。
「今日もありがとな斬夜。お前はよく働いてくれて助かるぜ。
こんな夜の時間帯だと人手が少ないんだが……お前のがんばりでこの時間帯は成り立ってるようなもんだぜ」
「いやいや、皆さんの頑張りですよ。それぞれが頑張ってるからでしょう。
俺一人のチカラなんて微々たるものですよ」
少年はバイト先の宅配専門ピザ屋にいた。
ちょうど、少年の勤務時間が終わったところである。
何故宅配専門かというと、夜は妖怪がもっとも活動する時間帯なので外出する人が少ない。それはこの平和な街でも同じだ。
従って、その時間帯に宅配をすれば客が多くなり儲かるだろう。と経営者が考えたからだ。
事実、結構儲かっている。
少年もすでに15件以上の宅配を終えていた。
少年はバイトの先輩である、山崎さんと話している。
山崎さんはここの店長だ。
ちなみにこの職場には男しかいない。
夜の時間しか営業していないので、女性には不人気なのだ。
「ったく。おめえはもうちょっと誇れ。そんなんだと、他のヤツらの立場がねえんだよ」
「そ、そうは言いましても……」
他の働いている人からすれば、自分たちよりも仕事をしておりそれを何でも無いことのように言う少年は、決して好意的には見られないだろう。普通は。
ただ、ここの職場の人たちはみんな立派な大人なので『自分たちの仕事が減った』と喜んでおり、少年のことを好意的に捉えてくれてる。
「まあ、おめえにこれ以上言っても無駄かあ。
んじゃあ、夜だし気いつけて帰れよ」
「はい、ありがとうございました!」
従業員用の出入り口の外で、少年は山崎さんに向かい礼をして、住んでいるアパートへと向かっていった。
外出している人は誰一人おらず静まりかえっており、街灯だけが薄く夜道を照らしている。
立ち並ぶ家々は既に雨戸が下ろされており、生活の光を感じさせない。
少年はそこを歩いていた。
「ん……?」
ふと、何かがひっかかったように声を漏らす。
そのまま辺りを見回した。
何かを見つけたらしい。
少年はある方向を見つめたまま止まった。
「……はあ。今夜は残業か……」
そう呟くと、ダルそうに、少年はその方向に向かって不気味なほど静かに走り出した。
さっきまでとは比べ物にならない、機敏な動きで。
まるで音が死んでしまったかのように無音で。
◇ ◇ ◇
―――――ハァ……ハァ……ゼェゼェ…
俺は必死に背後から迫り来る化け物から逃げていた。
(くそっ。なんでこんなことに――――)
ここ山腹市には妖怪がおらず、退魔士が手薄。
隣の市で活動していてそこそこチカラのある鬼妖怪だった俺は、その情報を嗅ぎつけてこの市に来た。
ここを俺の陣地にして、勢力を伸ばしゆくゆくは――――――
そのような野心を持って。
事実、午前中この街に来たときは退魔士に気付かれることはなかった。
『ちょろい街だ』そう思った。
今思うと、このとき深く考えておけばよかったと後悔している。
なぜ、退魔士が一人しかいないのに被害がゼロなのかを。
だから夜になったら行動を起こし、この街の人間を恐怖に陥れてやろうと思い、事実その通りに行動を始めた。
早速一人目を見つけて襲いかかろうとした時―――――――その化け物に出会った
白髪に隻腕。
それがその化け物の特徴だ。
最初、俺は餌が増えたと喜んでそいつに襲いかかった。襲いかかってしまったのだ。
相手は片腕、退魔士でもない一般人。
負けるなどとは微塵も考えていなかった。
しかし、飛び込んだ俺を待ってたのはおぞましい死の気配。
本能に従い、俺は咄嗟に空中で体をひねった。
着地した俺の体には、両腕がきれいさっぱりなくなっていた。
両足には深さ10cmほどの切れ込みがいれられてもいた。
……両腕だけで済ませられた自分を褒めたい。
両腕を殺された俺は、相手に対して怒るでもなく、ただそう思った。
あそこで体をひねらなければ、今頃は四肢を亡くされていただろう。
いつ攻撃されたのかも分からない
こんなことは初めてだった。
鬼である俺は生まれながらに高い能力を保持しており、負けたことなど一度もなかった。
従って、攻撃を見切れなかったことも一度たりとも無い。
驚愕している俺をよそに、あの化け物は
「あれれ……殺し損ねた? ちょっと手加減し過ぎちゃったか……」
なんて笑いながらのたまった。
それを聞き背筋に尋常じゃない悪寒がはしった。
同時に、体中から冷や汗が滝のように流れる。
―――――勝てない
存在としてこの化け物はおかしい。
関わってはいけない、そんな存在だった。
そう判断した俺は一目散に逃げ出した。
鬼としての……妖怪としてのプライドをなげうって。
そうして、今に至るというわけだ。
「おいおい、ちょっと待ちなって」
後ろから化け物の声がするが、振り返る余裕などない。
立ち止まったらすぐに追いつかれ……て
「やあ、さっきぶり」
目の前には化け物がいた。
さっきと何ら変わらない笑顔で。
何故お前みたいなのがこの街にいる
何故退魔士協会は、こんな化け物をほうっておく
何故、何故、何故―――――
今更になって、そんな疑問がつきない。
「悪いんだけど、お前を殺さないといけないんだ。
だって、この街は“平和”だって話なんだから。
……支部が作られたりしたら困っちゃう。
上様が動き辛くなっちゃう」
そんな勝手な理由があるか。俺はそう叫びたかった。
だが、濃密な死の気配を前にして、俺の体はピクリとも動かない。
「っく……死神がァ……」
それを聞いた化け物は面白そうに笑い
「なるほど……死神か……よかった。ちゃんとそう見えたんだ。
うん、自信がついた。今度から堂々とそう名乗れるよ。
……それじゃあ。バイバイ」
虫でも払うかのように、右腕をふるった。
もの言わなくなった鬼人オーガの体。
まだ生の匂いがしっかりとある。
太い首筋。
美味しそう。
涎が垂れてきた。
そこに口を近づけ???
本日も普段と何ら変わりなく、この街は平和を謳歌した。
◇ ◇ ◇
残業を終え、数分ほど夜道を歩いたところで古く寂れた木造のアパートが見えてきた。
変なところで体力を使ってしまったから、いつもより少し疲れた。
ここが俺の……神代斬夜の住みかだ。
住んでる人? は、俺と管理人のお姉さんの二人しかいない。
俺も貧乏学生。
ここに決めた理由も単純に、家賃が安いからだ。
俺はここに8年前から住んでいる。
最初は、ボロボロで住むのがやっとという状態を覚悟してアパートの契約をしたのだが、俺のそんな覚悟はいとも簡単に裏切られた。
まず、アパートの内装が外装のボロさに合っていない。
どこぞの高級日本旅館っぽい、落ち着いていて清潔さを感じさせる内装だ。
お姉さんと食事をする食堂は畳張りで、い草の香りが心地よい。
お姉さんも美人で、こんなに良いアパートはないだろう。
……ところどころおかしなところがあるが。
一階にはなぜか川が流れており、建物の中に石庭もある。
川は黒いもやがあるところから流れ出ており、同じく黒いもやがあるところに流れ落ちている。
一度触ってみようかと思ったが、とてつもない悪寒が走ったためやめておいた。
お姉さんに聞いたところ、このアパートの趣味なんだそうだ。
アパートの趣味ってなんだ? と常々疑問に思っている。
ちなみに、このアパートには窓がない。
外から見たときにはあるだが……
一体、外から見えるあの窓はなんなのだろうと、俺はずっと不思議に思っている。
「おかえりなさい。斬夜さん」
玄関をくぐると、ポニーテールで包容力のある笑顔をした管理人のお姉さんがいた。
いつものことだが、『お帰りなさい』と言ってもらえるのはとても心が温まる。
帰る場所がある、ということを実感できるのだ。
だから俺もいつもの言葉。定型文を返す。
「ただいま。お姉さん」
「うん」
お姉さんは満足そうにうなずいた。
無邪気なその笑みを見ると、自然と俺の表情も優しいものに変わる。
靴を脱ぎ、スリッパに履き替えた。
脱いだ靴は、玄関の端にある下駄箱に入れる。
出しっ放しにするとお姉さんに怒られてしまう。
面倒くさくてもちゃんとしなくては。
「今日は珍しく少し遅かったですね、何かありましたか?」
「いや、ちょっと残業があってね」
お姉さんは、こういう細やかな気遣いをしてくれる。
女性としてとても魅力的だ。
「じゃあ、ご飯できてるから一緒に食べましょうか」
「今日はお姉さんの担当だったっけ。お姉さんの料理は美味しいからね、楽しみ」
「ふふ、ありがとう」
これまた和風の、ヒノキが香る廊下を抜けて食堂に入る。
住んでいるのは二人なので食費削減もかねて、朝と夜は一緒に食べている。
お姉さんと食べると一人で食べるよりずっと美味しいので、食費削減というのはもっぱら建前になっているのだが。
いつもアルバイトで遅くなる俺を、お姉さんは待っていてくれる。
とてもありがたく、嬉しいことだ。
ちなみに、食事当番。というものをここでは決めている。
俺がアルバイトで遅くなる平日は全てお姉さんの担当になっており、俺の担当は休日だけなのだ。
これではお姉さんに悪いと思い、
畳が敷き詰められた食堂に出る。
座布団が二人分、座卓を挟んでしかれており、座卓の上にはすでに食事が用意されていた。
いつも夕食は和食でありそれは今日も変わらない。
献立は焼き魚と漬け物、白米に味噌汁。飲み物は緑茶といった、いわゆる和食のテンプレといわれるものだ。
日本風のアパートなのだから、食事も日本風なのだろうか。
和食が好きなので、特に不満といったものはないけど。
「「いただきます」」
ふたりで手を合わせて、食事を始めた。
「……」
「……」
無言で食事を進める。
これは別に俺たちの仲が悪いからではない。
お姉さんが作ってくれた食事が俺たちの食欲を刺激する料理だからだ。
魚のふっくらとした身に醤油を数滴垂らし、小骨があるのも気にせず口に運ぶ。
魚本来の塩気と、醤油の塩気。
口に入れ舌で転がしただけで身が解けるほどの柔らかさ。
広がったしょっぱさで丁度米が欲しくなる。
口の中にまだ魚が残っている今、すぐにご飯も口の中に入れた。
お姉さんの惣菜は、とにかく白米に合う。
少し濃いめの味付けにされておりそのままではしょっぱいが、ご飯と一緒にかきこむことで箸が止まらなくなるのだ。
お米本来の甘みとしっとりとした味わい。
それと総菜の塩気が口の中で混じり合い、噛む度に味が染み渡っていく。
漬け物もまた然り。
流れるように、俺は味噌汁に手を伸ばし???
途端。轟音が空気を割ってアパート内を網羅した。
耳を劈くその音に、脳天までもが揺れる。
その後、木が軋み折れるような音が我先にと争うように、不協和音を奏でながら激しく続いた。
「うわっとおっ!」
「えっ!」
結構な衝撃だったのか、アパート全体が少し揺れた。
轟音と揺れに驚いた俺は、つかみかけていた味噌汁を。お姉さんは飲んでいた緑茶を盛大にまき散らした。
「あーあ。こりゃあ掃除大変だなあ」
畳に水分が染みこんで、色が変色してしまっている。
お姉さんは慌てて布巾を持ってきて水分を拭き取ったが、跡がくっきりと残ってしまった。
どうしよう。……と、オロオロするお姉さん。
うん、和む。
まあ、たぶん明日には跡形もなくなっているのだろう。
そういうことは俺がこのアパートで暮らし始めてから数え切れないほどあった。
今更驚くこともない。
原理は全く不明なのは当然。
「それより、何があったのか見に行かないと」
「は! 確かにそっちの方が重要ね」
音の発生源。玄関に向かって俺とお姉さんは歩みを進めた。
何故走らないのかというと、廊下は走ってはいけないからだ。
アパートが怒るらしい。
全てのものには命があるのだろう。
普段通り歩いて、30秒ほどで玄関につく。
大量の木くずの中にその姿はあった
「「女の子……?」」
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