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シェリーの怒りっぷりに、ラッセルは困惑しているようだった。
「家のことなら心配いらない」
「そんな心配してないわっ!」
「じゃあなにが心配なんだ」
「わかるでしょ!? あなたと結婚できないことよ!」
ラッセルはますます眉根のシワを深くする。
「それが、おまえの『隠し事』か?」
シェリーは口ごもり目をそらす。
「魔力の色なんて視なくてもわかる。隠し事が下手すぎじゃないか」
「……そうよ。わたしはあなたに隠していることがある」
「なんだ」
「言うわけ無いでしょ!」
「そうか。じゃあ吐かせるまでだ」
スゥっと、空気の流れが変わるのを感じた。
魔法だ――咄嗟に防ごうとするシェリーだが、動揺していたせいか防御魔法の展開に失敗した。
ラッセルの足元に青白い光の文様が浮かび上がり、続いて向けられた指先とシェリーの身体に同じ色の光が集っていく。
「ちょっとっ……何する気!」
「命ずる。『俺への1番の隠し事を吐け』」
これは他人を意のままに操る洗脳魔術の一種だ。
操りたい対象に大量の魔力を送り込み、自らの魔力で上書きすることで操るという高度な技術が必要で、大型の生物……とくに人を操るなど普通ならばできない。
が、ラッセルは洗脳術を専攻している上、動揺しきっているシェリーには効いてしまった。
彼女の意思に反して、口が勝手に開く。
「や、やめ……」
「聞こえなかったのか。『俺への1番の隠し事を吐け』」
「わ、わたし……シェリー・ヘイゼルは」
シェリーはおしまいだと思った。
彼女に秘密なんてひとつしかない。
じつは異世界から転生してきて、前世の記憶をもとに流刑回避のためラッセルと結婚したがっていたこと、それだけだ。
「わたし、シェリー・ヘイゼルは……ラッセル・ミルワードが大好きです……」
「は?」
「え?」
ラッセル、次いでシェリーが素っ頓狂な声を出す。
「おまえ……何言ってるんだ」
「わ、わたしが知りたいわよ!」
「まあいい。『続けろ』」
「ちょっと! ……ラッセル・ミルワードが大好きなので……婚約破棄は嫌です……絶対絶対、結婚してもらうからー!!」
静かな実技室に、シェリーの声が響き渡る。
ラッセルが手を下ろすと、指先の光、足元の文様、シェリーと、順番に光が消えていく。
「はぁっ……」
洗脳術から開放されたシェリーは床に手を付き、そのまま顔を上げられなくなってしまった。
なぜって、今自分の顔が真っ赤なのが、鏡を見るまでもなくわかっていたからである。
「シェリー……」
「な、ななな、なによ……」
「おまえ、そんなに俺が好きだったのか」
「なっ!」
咄嗟に否定しようと顔をあげると、ラッセルはそっぽを向いていた。
その頬は赤みがかって見える。夕日のせいではないだろう。
(もしかして、照れてる?)
今度はシェリーが困惑する番だ。
「家のことなら心配いらない」
「そんな心配してないわっ!」
「じゃあなにが心配なんだ」
「わかるでしょ!? あなたと結婚できないことよ!」
ラッセルはますます眉根のシワを深くする。
「それが、おまえの『隠し事』か?」
シェリーは口ごもり目をそらす。
「魔力の色なんて視なくてもわかる。隠し事が下手すぎじゃないか」
「……そうよ。わたしはあなたに隠していることがある」
「なんだ」
「言うわけ無いでしょ!」
「そうか。じゃあ吐かせるまでだ」
スゥっと、空気の流れが変わるのを感じた。
魔法だ――咄嗟に防ごうとするシェリーだが、動揺していたせいか防御魔法の展開に失敗した。
ラッセルの足元に青白い光の文様が浮かび上がり、続いて向けられた指先とシェリーの身体に同じ色の光が集っていく。
「ちょっとっ……何する気!」
「命ずる。『俺への1番の隠し事を吐け』」
これは他人を意のままに操る洗脳魔術の一種だ。
操りたい対象に大量の魔力を送り込み、自らの魔力で上書きすることで操るという高度な技術が必要で、大型の生物……とくに人を操るなど普通ならばできない。
が、ラッセルは洗脳術を専攻している上、動揺しきっているシェリーには効いてしまった。
彼女の意思に反して、口が勝手に開く。
「や、やめ……」
「聞こえなかったのか。『俺への1番の隠し事を吐け』」
「わ、わたし……シェリー・ヘイゼルは」
シェリーはおしまいだと思った。
彼女に秘密なんてひとつしかない。
じつは異世界から転生してきて、前世の記憶をもとに流刑回避のためラッセルと結婚したがっていたこと、それだけだ。
「わたし、シェリー・ヘイゼルは……ラッセル・ミルワードが大好きです……」
「は?」
「え?」
ラッセル、次いでシェリーが素っ頓狂な声を出す。
「おまえ……何言ってるんだ」
「わ、わたしが知りたいわよ!」
「まあいい。『続けろ』」
「ちょっと! ……ラッセル・ミルワードが大好きなので……婚約破棄は嫌です……絶対絶対、結婚してもらうからー!!」
静かな実技室に、シェリーの声が響き渡る。
ラッセルが手を下ろすと、指先の光、足元の文様、シェリーと、順番に光が消えていく。
「はぁっ……」
洗脳術から開放されたシェリーは床に手を付き、そのまま顔を上げられなくなってしまった。
なぜって、今自分の顔が真っ赤なのが、鏡を見るまでもなくわかっていたからである。
「シェリー……」
「な、ななな、なによ……」
「おまえ、そんなに俺が好きだったのか」
「なっ!」
咄嗟に否定しようと顔をあげると、ラッセルはそっぽを向いていた。
その頬は赤みがかって見える。夕日のせいではないだろう。
(もしかして、照れてる?)
今度はシェリーが困惑する番だ。
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