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記憶を取り戻したシェリーは、すぐに行動に出た。
流刑を回避する道はいくらでもあったが、彼女が選んだのは最も確実で単純な方法。
ヒロインとヒーローは勝手にくっつくのだから、おとなしく身を引くとかふたりを応援するなんて余計なことはしなくていい。
「その人は絶対に嫌! わたしならもっとお父様の役に立てるわ。もっともっと、すごい人と結婚させて!」
最初からふたりに関わらず、別の人と婚約すればいいのよ!
それがシェリーの導き出した答えだった。
シェリーはとても努力をした。
サービス残業は当たり前。パワハラも翼を生やしてデスマーチも乗り越えてきた彼女にとって、学生の勉強など可愛いもの。ましてや魔法なんて本の中でしか見たことのなかったものを扱えるのだから、シェリーは第二の人生を謳歌しつつ、着実に結果を残していった。
そうしてついにもっともっとすごい人――ラッセルとの縁談が持ち上がる。
ラッセルは原作に名前だけ出てきたキャラだ。原作のシェリーは優秀ではないので、彼は常に成績トップ。ゆえに成績発表の流れになるたび名前が上がるのだが、直接の登場はしなかった。
かくして対面することになったふたり。
挿絵もない彼の容姿に期待はしていなかったが、初めて会った彼は想像の数百倍は上をゆく美男子だった。
(そういえば、モブ女子生徒が「またラッセルくんが1番なんだー! 顔もいいし最強!」みたいなこと言ってたっけ)
しかし性格は可愛いとは言えないものだった。
基本無口で無愛想、常に眉間にシワを寄せ、勉強以外に関心を示さない。
シェリーがどれだけ仲良くしようと試みても、「話しかけるな」と冷たくあしらわれる。
(ま、いくら嫌われようと親の決めた婚約なんだからわたしの勝ちは確定よ!)
なんて余裕をかましていたシェリー。
しかしふたり揃ってアストロフィーネ魔法学院に入学すると、少しだけその関係が変化する。
「すごいわねラッセル、1位なんて!」
「おまえは」
「わたし? わたしは5位」
「大したことないな。そんなんで俺の婚約者になるつもりなのか」
夕日に染まった放課後の実技室で、ラッセルはシェリーを冷めた目で見る。
「つ、次はもっと上を取るわ」
「おまえ、なにが目的だ」
「……何言ってるの?」
「俺くらいになると魔力が視える。今おまえが動揺したのもまるわかりだ」
言葉に詰まるシェリーを、ラッセルはびしっと指さした。
「腹の中を見せない婚約者と結婚などできない。父上に頼んで婚約を破棄させる」
「そ、そんな! 待ってラッセル……!」
シェリーはすぐさま移動魔法を使い、ラッセルより早く彼の実家へ飛んだ。
そして彼の両親になんとしても婚約を破棄させないでくれと懇願した。
必死に頭を下げる少女に、ふたりは顔を見合わせ困った様子。
「お願いです! どうしても息子さんと結婚したいんです……!」
「顔を上げてシェリーさん。そんなに息子を想ってくれているのね」
「ああ、あの子は幸せだ。わかった。婚約は破棄させない。ただし、条件をつける」
「その条件とは?」
シェリーに課せられた条件。それはミルワード家の妻にふさわしい女性になること。
ラッセルの成績からわかるように、ミルワード家はみな頭がいい。
だから成績は常に学年3位以内。一度でも4位以内に落ちたら、ラッセルの意向次第では婚約をなかったことにする、とのことだった。
原作ヒーローとの縁談がなくなれば、べつにラッセルにこだわる必要はない。
けれど原作の彼女に引きづられたのか、負けず嫌いでプライドが高く育ったシェリーは、迷うことなくこの条件を飲んだ。
そして必死で努力をした。前世のただただ従うしかできなかった弱い自分は仮面で隠し、常に強くあろうとした。
それは勉強だけでなく、容姿についても同じである。
元から可愛らしい少女ではあったが、今のように美に拘りはなかったシェリー。
一方ラッセルは子供の頃から大変きれいな顔立ちをしており、彼と会った日姿見の前に立ったシェリーはその落差に絶望した。
――このままじゃ、あの人に釣り合わない。それを理由に婚約破棄されたらたまったものではない。
こうして強く賢く美しい今のシェリーが出来上がった。
つまるところ、彼女が完璧になったのはすべてラッセルとの婚約のためだった。
その先には流刑回避という大事な目的があったはずだが、すでにそんなことはどうでもよくなっている。
これだけ努力をしたのに本人に否定されたから、シェリーは憤慨していた。
流刑を回避する道はいくらでもあったが、彼女が選んだのは最も確実で単純な方法。
ヒロインとヒーローは勝手にくっつくのだから、おとなしく身を引くとかふたりを応援するなんて余計なことはしなくていい。
「その人は絶対に嫌! わたしならもっとお父様の役に立てるわ。もっともっと、すごい人と結婚させて!」
最初からふたりに関わらず、別の人と婚約すればいいのよ!
それがシェリーの導き出した答えだった。
シェリーはとても努力をした。
サービス残業は当たり前。パワハラも翼を生やしてデスマーチも乗り越えてきた彼女にとって、学生の勉強など可愛いもの。ましてや魔法なんて本の中でしか見たことのなかったものを扱えるのだから、シェリーは第二の人生を謳歌しつつ、着実に結果を残していった。
そうしてついにもっともっとすごい人――ラッセルとの縁談が持ち上がる。
ラッセルは原作に名前だけ出てきたキャラだ。原作のシェリーは優秀ではないので、彼は常に成績トップ。ゆえに成績発表の流れになるたび名前が上がるのだが、直接の登場はしなかった。
かくして対面することになったふたり。
挿絵もない彼の容姿に期待はしていなかったが、初めて会った彼は想像の数百倍は上をゆく美男子だった。
(そういえば、モブ女子生徒が「またラッセルくんが1番なんだー! 顔もいいし最強!」みたいなこと言ってたっけ)
しかし性格は可愛いとは言えないものだった。
基本無口で無愛想、常に眉間にシワを寄せ、勉強以外に関心を示さない。
シェリーがどれだけ仲良くしようと試みても、「話しかけるな」と冷たくあしらわれる。
(ま、いくら嫌われようと親の決めた婚約なんだからわたしの勝ちは確定よ!)
なんて余裕をかましていたシェリー。
しかしふたり揃ってアストロフィーネ魔法学院に入学すると、少しだけその関係が変化する。
「すごいわねラッセル、1位なんて!」
「おまえは」
「わたし? わたしは5位」
「大したことないな。そんなんで俺の婚約者になるつもりなのか」
夕日に染まった放課後の実技室で、ラッセルはシェリーを冷めた目で見る。
「つ、次はもっと上を取るわ」
「おまえ、なにが目的だ」
「……何言ってるの?」
「俺くらいになると魔力が視える。今おまえが動揺したのもまるわかりだ」
言葉に詰まるシェリーを、ラッセルはびしっと指さした。
「腹の中を見せない婚約者と結婚などできない。父上に頼んで婚約を破棄させる」
「そ、そんな! 待ってラッセル……!」
シェリーはすぐさま移動魔法を使い、ラッセルより早く彼の実家へ飛んだ。
そして彼の両親になんとしても婚約を破棄させないでくれと懇願した。
必死に頭を下げる少女に、ふたりは顔を見合わせ困った様子。
「お願いです! どうしても息子さんと結婚したいんです……!」
「顔を上げてシェリーさん。そんなに息子を想ってくれているのね」
「ああ、あの子は幸せだ。わかった。婚約は破棄させない。ただし、条件をつける」
「その条件とは?」
シェリーに課せられた条件。それはミルワード家の妻にふさわしい女性になること。
ラッセルの成績からわかるように、ミルワード家はみな頭がいい。
だから成績は常に学年3位以内。一度でも4位以内に落ちたら、ラッセルの意向次第では婚約をなかったことにする、とのことだった。
原作ヒーローとの縁談がなくなれば、べつにラッセルにこだわる必要はない。
けれど原作の彼女に引きづられたのか、負けず嫌いでプライドが高く育ったシェリーは、迷うことなくこの条件を飲んだ。
そして必死で努力をした。前世のただただ従うしかできなかった弱い自分は仮面で隠し、常に強くあろうとした。
それは勉強だけでなく、容姿についても同じである。
元から可愛らしい少女ではあったが、今のように美に拘りはなかったシェリー。
一方ラッセルは子供の頃から大変きれいな顔立ちをしており、彼と会った日姿見の前に立ったシェリーはその落差に絶望した。
――このままじゃ、あの人に釣り合わない。それを理由に婚約破棄されたらたまったものではない。
こうして強く賢く美しい今のシェリーが出来上がった。
つまるところ、彼女が完璧になったのはすべてラッセルとの婚約のためだった。
その先には流刑回避という大事な目的があったはずだが、すでにそんなことはどうでもよくなっている。
これだけ努力をしたのに本人に否定されたから、シェリーは憤慨していた。
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