感性。

文芸部員N

文字の大きさ
2 / 2

ありもしない

しおりを挟む
暗い部屋で唯一、彼女の長い睫毛を照らすゲーム機から、短調な音楽が流れた。きっとゲームオーバーの調べなのだろう。証拠に、彼女はため息を吐くと、部屋の電気を着けた。

「もうこんなに暗くなってたんだねえ。君もそろそろ帰るかい?」

 彼女は座布団の上にあぐらをかいてスマホを触る僕に提案した。時刻は午後八時半をさしていて、僕たちは学校が終わると彼女の部屋へ直行した。

「そうだな」

 短く返す。帰らない理由も無いのだ。

「いやはや、君は良い友達だ。なんたってこの状況下で私に下心を抱かないんだから」

「下心あったら家上げないでしょ」

「ご名答」

 何も、彼女の容姿が醜いとか、性格がキツいとかいうわけではない。変わり者ではあるが。彼女の容姿はどちらかと言えば整っている。
 俗世間の一般的にいう可愛いとは違って、何かには例えがたい、独特な雰囲気だけど、でも可愛い。そんな感じだ。
 変わり者と言うのは事実で、彼女は上辺だけでの友達は多いが、こうして家に上げるのは僕だけらしい。彼女いわく、自分は女子からすれば扱い難い、男子からすれば気軽にヤれそうでヤれない女、だそう。
 彼女は背伸びをすると、カーテンを閉めた。
 横になって数時間もゲームをしていたせいか、制服のスカートにはシワが寄っている。

「男子で私と友達でいてくれるの、君くらいだよ」

「他の奴らは、少し経てばお前に告白してたからな」

「そう。悲しいね、友達のままでいたいから断るのに、距離を置かれる」

 普通は、それが妥当だろう。お互いに。けれど、彼女は本気で友達でいたいと思って断ったのだ。
 この普通というのは、何だか空気読みで、本気で相手と友達でいたい彼女に強制するのは、まるで幼子から玩具を取り上げるような感覚があった。

「きっと私たち前世でも友達だったよ。来世ではネ友から始めたいな。一緒にゲームしよう」

「・・・そうだな」

 前世でも友達だった。確かに、これだけ仲良くできるのであれば運命のひとつくらい信じてみたい。
 今世の僕らは好きなゲームや漫画の趣味が合うから、仲良くなれた。
 となれば、前世の僕らが仲良くなったきっかけは何だったのだろう。囲碁や将棋だろうか。
 そして、今よりももっとハイテクで技術の進んだであろう来世では、もっとテクノロジーなゲームで出逢う。

「また友達になって、くだらない話できたらいい」
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

サレ妻の娘なので、母の敵にざまぁします

二階堂まりい
大衆娯楽
大衆娯楽部門最高記録1位! ※この物語はフィクションです 流行のサレ妻ものを眺めていて、私ならどうする? と思ったので、短編でしたためてみました。 当方未婚なので、妻目線ではなく娘目線で失礼します。

いちばん好きな人…

麻実
恋愛
夫の裏切りを知った妻は 自分もまた・・・。

処理中です...