【完結】近江花音はアイドルですっ!

桐生千種

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2 近江花音は小学生

5.パパの色(4)

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 リオちゃんがそんなことを言うので驚く。

「萌果と麗だけずるい! 花音ちゃん来るなら私も呼んでよ!」

 「私も!」「私も!」と、クラス中からそんな声があがって驚く以外に何もない。

「ちょ、ちょっと待って! ウチにそんなに呼べないよ!」

 わたわたと慌てる萌果ちゃんに、少し心配になる。

「急に、どうしたの? 何かあった?」

 心配そうに、麗ちゃんに聞かれた。

「何もないよ」

 嬉しくて、頬が緩んでしまう。

「習いごと、辞めたの。パパが、友達との時間をつくるべきだって言ってくれて。だから今は習いごとは1つだけ」

「ふーん。良かったね」

「え?」

 麗ちゃんからそんな言葉が返ってくるとは思わなかった。

「花音ちゃん、たくさん習いごとしてたけど、どれも全然楽しそうじゃなかったんだもん。楽しそうに教室を出る花音ちゃんなんて幼等部以来見てないもん」

 知らなかった……。

 そんなふうに、見えていたなんて。

「残った習いごとは楽しくやれるの?」

「……そうなればいいなって、思ってる」

 なだ、わからないけど、キラキラに1歩、近づけた気がする。

「ま、また退屈だったとしても、そんなこと忘れられるくらい楽しませてあげるけどね。これからは時間、あるんでしょ?」

 麗ちゃんの言葉に、ぽかぽかと胸が熱くなる。

「うん」

 ずっと、遠い人だと思ってた。

 学校の中の、限られた空間の中でしか近づくことのできない人なのだと。

 でも、彼女はこうして近くにいてくれた。

 いつでも見ていてくれたんだ。

 少しずつ、少しずつ、私の世界が変わっていく。

 少しずつ、少しずつ、気づいていく。

 世界は灰色なんかじゃないってこと。

 近江花音、小学6年生、12歳。

 少しずつ、キラキラの私に近づいています。
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