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3 近江花音はアイドルですっ!

4.デビューライブ(1)

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 01年7月6日金曜日、夜。

 明日はいよいよライブの日。

 目覚まし時計のセットも大丈夫。

 明日はいつもより早く行って、リハーサルをして、ライブは午前と午後の全2公演。

 楽しみで、緊張して、寝付けない。

 失敗は、したくない。

 お客さんがパパとママだけだったらどうしよう……。

 たくさんいても緊張するけど、いないのは悲しい……。

 モヤモヤ、グルグル、思考は止まらない。

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 『桜中央市民公園』は、『桜月学園前駅』の近く、学校がある方向とは反対の場所にある大きな公園。

 ブランコや滑り台の遊具はもちろん、ライブができる野外ステージがある。

 夏には大きなお祭りをして、出店もたくさん並ぶ。

 今日はお祭りがある日ではないけど、私たちは今日、そこで初めてのライブを行う。

 01年7月7日土曜日。

 ついに、この日が来た。

 男女混合グループ『スカイアクア』として、その派生グループ男の子だけの『スカイブルー』、女の子だけの『アクアブルー』のデビューライブ。

 初めてのライブ。

 リハーサルを終えて、衣装に着替えて、最初の公演は10時から。

「緊張します」

 海さんが持つカメラに向かって話す。

 舞台裏を記録するとかで、海さんと空さんと青さんがよく時間を見つけてはカメラを回している。

「何してるんだ?」

 ぎゅうと、うしろから抱き付いてきた伊織ちゃん。

 カメラを見て、Vサインをつくる。

「イェイ! 伊織だよ!」

「意気込みはどう?」

 海さんの質問に伊織ちゃんは少し悩んでから答える。

「んー、楽しむ! 全力で楽しむよ!」

「緊張してる?」

「全然! なるようにしかならないよ!」

「花音ちゃんは緊張してるみたいだよ?」

「え? そうなのか? 大丈夫、大丈夫!」

 ぎゅうぎゅうと、抱きしめる伊織ちゃん。

「仲良いね」

「へへー、うらやましいだろー」

 控え室でそんな話をして、公演まで残り10分。

 舞台袖に向かう途中、チラシを持った人を見かけた。

 私たちの初ライブのためにつくったチラシを受け取ってくれた人がいる。

 恥ずかしさと嬉しさが込み上げてくる。

 ガッカリさせないように、楽しんでもらえるステージにしたい。

 天気は晴れ。

 リハーサルのときは曇っていたけど、今は晴れてくれてよかった。
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