【完結】AnimaRoom

桐生千種

文字の大きさ
3 / 15
ミヨちゃんは居候

3.波乱!! ケン兄さんとお散歩

しおりを挟む
 現在、どういうわけか探さんが私の隣に座っていて、どういうわけか肩に腕が回されている奇妙な状況になっている。

「もう、部屋から出るなってあれほど言ったのに」

 そう言う探さんは目の前の男の子たちを見る。

 不機嫌そうに床に座る男の子たち。

 と、綺麗なお姉さん。

 ただし、全員耳がついている。

 人の耳じゃなくて、いわゆるケモミミ。

 お姉さんに至ってはクルンとしたツノがついている。

 作り物かも、とも思ったけどピクンピクンと意思を持って動いている様を見せつけられたら本物だと思わざるを得なくて……。

「えーっと、これは……」

「俺の家族。元々は普通のイヌとネコとウサギとヒツジだったんだけどね」

 あ、少し先が読めたかも。

「動物と意思疎通ができる薬を作ろうと思っていたんだけど、ちょっとした事故で」

「事故?」

「俺が飲むはずだった薬をこいつらが飲んじゃって、こうなった」

 ――なにそのふぁんたじー。

 現実に、こんなことが起こって良いのでしょうか、お母さん。

「なあ! 俺、散歩行きたいんだけど!!」

 そう言うのは、さっき私に抱き付いてきた男の子。

 その耳は、イヌ。

「今日の散歩は、まだだったか」

「散歩! 散歩! 散歩!」

 人の姿だけど、イヌの耳があって、「散歩、散歩」と強請るあたり、本当にイヌなんだ……。

「仕方ない、散歩に行くか」

「俺、ミヨがいい!!」

「は?」

「え?」

「ミヨと散歩! ミヨと散歩! ミヨと散歩!」

 結局、私が散歩に連れて行くことになった。

 そうと決まったとき、ブンブンとしっぽが振られてその姿はまさにイヌだった。

 姿は人間だけど。

「気を付けてね。ケン兄、ミヨちゃんに変なことするなよ」

「大丈夫ですよ。敷地内をぐるっと回るだけでいいんですよね」

 それくらい、お安い御用。

 だけど、いくらイヌの散歩とは言え、見た目がほぼ人間なのにリードをするのには抵抗があるなぁ……。

 探さんが絶対だって言うから仕方ないけど……。

「ミヨよ散歩! ミヨと散歩!」

 ワンコのケン君はご機嫌で、さっきからしっぽをブンブン振っている。

「それじゃ、行って来ます」

 家を出て、散歩を始める。

「わわっ! ちょっ……」

 ケン君は人の姿で私より大きくて、パワーもあるみたいで、私がどんどん引っ張られちゃう。

「散歩ー! 散歩ー!」

 ケン君はご機嫌で、私のことなんてお構いなし。

「ケン君、もう少しゆっくり行こうよー」

 そう言っても、ケン君のイヌミミには届いていないのか、聞こえないフリをされているのか……。

「あ、ちょっと! そっちはダメ!」

 ケン君が行こうとしている先には、敷地の外に繋がる門がある。

 「外には出ないように」って言われてるのに!!

「ダメだってケン君!!」

 焦る私を余所に、グイグイと歩いて行くケン君。

「待ちなさい、ケン!!」

 ビクッと、ケン君の肩が震えて、その歩みを止めた。

「そっちはダメって、探さんにも言われてるでしょう!?」

 しゅん……と、ケン君のイヌミミが垂れた。

 これは、可愛いかもしれない……。

「ミヨ、ごめんなさい」

 そう言うケン君はしっぽも垂れていて、うん、可愛い。

「わかってくれたならいいの。いい子いい子」

 思わず、その頭を撫でた。

「ミヨー!!」

「ちょっ!!」

 ガバリと抱き付かれて、頬ずりされて、くすぐったい。

「やめなさい、こら!」

「ミヨ好きー! いい匂い……」

 スンスンと、鼻先が首筋まで降りて来て……。

「ちょ、ちょっとっ……」

 何でか、とっても恥ずかしい格好になってしまっているような……。

「好き、ミヨ……」

 かぷ――

「うひゃあ!?」

 かぷって! 今、首筋、かぷって!!

「ミヨうるさい。耳……耳が……」

 ケン君は耳を抑えて震えている。

 耳元で、大声を出してしまったのは申し訳ないとは思うけど、これは自業自得です。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される

clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。 状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。

10年前に戻れたら…

かのん
恋愛
10年前にあなたから大切な人を奪った

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

いまさら謝罪など

あかね
ファンタジー
殿下。謝罪したところでもう遅いのです。

とある令嬢の断罪劇

古堂 素央
ファンタジー
本当に裁かれるべきだったのは誰? 時を超え、役どころを変え、それぞれの因果は巡りゆく。 とある令嬢の断罪にまつわる、嘘と真実の物語。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

サレ妻の娘なので、母の敵にざまぁします

二階堂まりい
大衆娯楽
大衆娯楽部門最高記録1位! ※この物語はフィクションです 流行のサレ妻ものを眺めていて、私ならどうする? と思ったので、短編でしたためてみました。 当方未婚なので、妻目線ではなく娘目線で失礼します。

処理中です...