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小話
1.名前について
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探さんは、ケン君のことをケン兄と呼んでいる。
そして、ニィ君のことをネコ兄と。
ウサニさんはウサニさん。
メェ子さんはメェ子さん。
ふと、気になって聞いてみた。
「探さん、どうしてケン君のことケン兄って呼んでるんですか?」
「……長男だから? ケン兄が1番はじめにウチに来た家族だから」
なるほど。
「じゃあ、ニィ君は2番目?」
はじめは「ネコニィ」なのかと思ったんだけど、「ネコ兄」であっているらしい。
「ネコ兄が拗ねるからね。ケン兄の弟分なのが嫌らしい」
なるほど、たしかに。
ニィ君はケン君に対抗心を燃やしているようで、よく張り合っている。
本人は隠してるつもりみたいだけど、隠しきれてないんだよね。
「じゃあ、ウサニさんは? そもそも、ウサニってなんなんですか?」
「ただのウサギじゃ味気ないから」
センスっ!!
独特というか、かなり個性的なネーミングセンスだと思う。
「……メェ子さんは、どうしてメェ子さんに? 男の子ですよね?」
「男所帯だからね。1人くらい女の子がいてもいいかと思って」
「……男の子って、わからなかったんですか?」
「うん? 知ってたよ? でも名前くらい女の子っぽくしてもいいと思って」
名前って、そんなふうにつけていいの?
人間で例えるなら、男所帯の家でそろそろ女の子が生まれてもいいよね、でも男の子が生まれたね……名前くらい女の子でもいいよね、花子にしよう、みたいなそんなノリだよ?
いいの?
思わず、メェ子さんを見た。
「あら、あたしは気に入ってるわよ。かわいいもの」
そっか。
メェ子さんがいいならいいけど……、ホントにいいの?
「メェ子はもともと、名前で識別されてなかったからね。男の名前だとか女の名前だとか気にしてないよ」
そっか……。
ヒツジさんだもんね。
そもそも名前をつける習慣って、人間以外の動物にあるんだろうか?
性別でつける名前が変わる、とか動物には関係ないのかな?
「ミヨちゃん、ミヨちゃん」
「なに? ウサニさん」
こうやって私が誰かと話しているとき、ウサニさんはよく割り込んでくる。
最近は振ってくる話題も空気を読めるようになってきていて……。
「僕のウサギにも名前があるんだよ」
それは、ウサニさんがよく抱っこしているウサギのぬいぐるみで、噛みついているのかところどころ噛み跡があったり、綿が飛び出していたりする……。
だけど、大事そうにしてはいるから、大事なのだと思いたい。
ウサギが抱っこする、ウサギのぬいぐるみ。
「そうなの? なんて名前?」
「ジョン・ウサコビッチ・百助」
名付け親は絶対探さんじゃないってことだけはわかる。
すごいでしょ? すごいでしょ? ほめて、ほめて、と言わんばかりのウサニさんの笑顔。
「ジョン君かー、すごいねー」
なにがすごいのかは、まったくもってわからないけどウサニさんは嬉しそうだから、まあ、いっか。
「ミヨー! 俺とも遊べよー!」
「俺に構え」
割り込んで来たケン君に、続くようにニィ君もやって来た。
「あー、はいはい」
「ミヨちゃん? 無理しなくていいからね? イヤならイヤって断ってくれていいんだよ?」
探さんは言ってくれる。
無理してケン君やニィ君、ウサニさんやメェ子さんに付き合う必要はないって。
でも。
「全然平気ですよ。私、居候ですし。こんなことで役に立てるならどんどん遊びますよ」
みんなと遊ぶのも、最近楽しくなってきたし。
「いそうろう? ミヨは家族だろ?」
キョトン、と首を傾げたケン君に探さんが同意した。
「そうだね。ミヨちゃんはもう家族だよ。だから、他人行儀に頑張らなくていいんだよ」
――私、家族って認めてもらえてるんだ。
それが嬉しくて……ちょっぴり悲しい。
だって、みんながそう思ってくれているのは、「薬のせい」だと思うから……。
◇◆◇◆◇◆
ジョン・ウサコビッチ・百助:
イラストレーター谷町クダリ様にキャラクタービジュアルを制作していただいた際に誕生したウサニさんのウサギのぬいぐるみ。名前も谷町様にいただきました。ありがとうございます!
そして、ニィ君のことをネコ兄と。
ウサニさんはウサニさん。
メェ子さんはメェ子さん。
ふと、気になって聞いてみた。
「探さん、どうしてケン君のことケン兄って呼んでるんですか?」
「……長男だから? ケン兄が1番はじめにウチに来た家族だから」
なるほど。
「じゃあ、ニィ君は2番目?」
はじめは「ネコニィ」なのかと思ったんだけど、「ネコ兄」であっているらしい。
「ネコ兄が拗ねるからね。ケン兄の弟分なのが嫌らしい」
なるほど、たしかに。
ニィ君はケン君に対抗心を燃やしているようで、よく張り合っている。
本人は隠してるつもりみたいだけど、隠しきれてないんだよね。
「じゃあ、ウサニさんは? そもそも、ウサニってなんなんですか?」
「ただのウサギじゃ味気ないから」
センスっ!!
独特というか、かなり個性的なネーミングセンスだと思う。
「……メェ子さんは、どうしてメェ子さんに? 男の子ですよね?」
「男所帯だからね。1人くらい女の子がいてもいいかと思って」
「……男の子って、わからなかったんですか?」
「うん? 知ってたよ? でも名前くらい女の子っぽくしてもいいと思って」
名前って、そんなふうにつけていいの?
人間で例えるなら、男所帯の家でそろそろ女の子が生まれてもいいよね、でも男の子が生まれたね……名前くらい女の子でもいいよね、花子にしよう、みたいなそんなノリだよ?
いいの?
思わず、メェ子さんを見た。
「あら、あたしは気に入ってるわよ。かわいいもの」
そっか。
メェ子さんがいいならいいけど……、ホントにいいの?
「メェ子はもともと、名前で識別されてなかったからね。男の名前だとか女の名前だとか気にしてないよ」
そっか……。
ヒツジさんだもんね。
そもそも名前をつける習慣って、人間以外の動物にあるんだろうか?
性別でつける名前が変わる、とか動物には関係ないのかな?
「ミヨちゃん、ミヨちゃん」
「なに? ウサニさん」
こうやって私が誰かと話しているとき、ウサニさんはよく割り込んでくる。
最近は振ってくる話題も空気を読めるようになってきていて……。
「僕のウサギにも名前があるんだよ」
それは、ウサニさんがよく抱っこしているウサギのぬいぐるみで、噛みついているのかところどころ噛み跡があったり、綿が飛び出していたりする……。
だけど、大事そうにしてはいるから、大事なのだと思いたい。
ウサギが抱っこする、ウサギのぬいぐるみ。
「そうなの? なんて名前?」
「ジョン・ウサコビッチ・百助」
名付け親は絶対探さんじゃないってことだけはわかる。
すごいでしょ? すごいでしょ? ほめて、ほめて、と言わんばかりのウサニさんの笑顔。
「ジョン君かー、すごいねー」
なにがすごいのかは、まったくもってわからないけどウサニさんは嬉しそうだから、まあ、いっか。
「ミヨー! 俺とも遊べよー!」
「俺に構え」
割り込んで来たケン君に、続くようにニィ君もやって来た。
「あー、はいはい」
「ミヨちゃん? 無理しなくていいからね? イヤならイヤって断ってくれていいんだよ?」
探さんは言ってくれる。
無理してケン君やニィ君、ウサニさんやメェ子さんに付き合う必要はないって。
でも。
「全然平気ですよ。私、居候ですし。こんなことで役に立てるならどんどん遊びますよ」
みんなと遊ぶのも、最近楽しくなってきたし。
「いそうろう? ミヨは家族だろ?」
キョトン、と首を傾げたケン君に探さんが同意した。
「そうだね。ミヨちゃんはもう家族だよ。だから、他人行儀に頑張らなくていいんだよ」
――私、家族って認めてもらえてるんだ。
それが嬉しくて……ちょっぴり悲しい。
だって、みんながそう思ってくれているのは、「薬のせい」だと思うから……。
◇◆◇◆◇◆
ジョン・ウサコビッチ・百助:
イラストレーター谷町クダリ様にキャラクタービジュアルを制作していただいた際に誕生したウサニさんのウサギのぬいぐるみ。名前も谷町様にいただきました。ありがとうございます!
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