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03 忘れられない過去
03
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アイラは1度、文字通り死にかけた。
いや、本当に死を目前にアイラ自身もこれが最期だと悟っていた。
アイラの身体に起きた異変は、「死」そのものだった。
誰もが悔やんだ。
誰もが悲しんだ。
アイラだけが、それを受け入れていた。
だから、最期に見る大好きな人たちの顔は笑っていてほしいとわがままを言った。
本当に最期だと覚悟していたから。
けれど、そうさせなかったのがアイだった。
アイラから受け取った、生きる力。
はじめはすべてを奪いつくす勢いだった。
それが、カイトとレイナとサイトの力を得たことでアイラの力はなくてもよいものになった。
だから、アイは返した。
アイラが持つべき、アイラが生きるための、アイラがネオとしてその身体を維持するための力を。
そのおかげで、アイラは消えることはなかった。
今でも生き続けることができていた。
けれど、1度失ってしまったものの代償は大きかった。
1度手放してしまった、アイラがアイラたる自覚。
生きて来た記憶、思い出、はぐくまれていた心。
アイラはすべてを失っていた。
カイトを見ても、レイナを見ても、サイトも、リンも、シノも、何を見ても、誰を見てもアイラは何の反応も示さなかった。
アイラにとっては何もかもが知らないもので、知らない人で、知らない生命体だった。
けれど、それでよかったのかもしれないと、はじめに言ったのはレイナだった。
「何も覚えていないなら、これからまた覚えていけばいいよ。今度は普通の女の子として一緒に生きていけるでしょう?」
普通の女の子。
もう、以前のように部屋の中だけがアイラの世界ではなかった。
好きなときに外出して、好きなところへ行けた。
身体は不自由になってしまったけれど、いつも一緒にいたいと思っていた人たちと一緒にいられた。
どこへでも連れて行ってくれた。
アイラは、普通の女の子として自分の人生を送り始めていた。
いや、本当に死を目前にアイラ自身もこれが最期だと悟っていた。
アイラの身体に起きた異変は、「死」そのものだった。
誰もが悔やんだ。
誰もが悲しんだ。
アイラだけが、それを受け入れていた。
だから、最期に見る大好きな人たちの顔は笑っていてほしいとわがままを言った。
本当に最期だと覚悟していたから。
けれど、そうさせなかったのがアイだった。
アイラから受け取った、生きる力。
はじめはすべてを奪いつくす勢いだった。
それが、カイトとレイナとサイトの力を得たことでアイラの力はなくてもよいものになった。
だから、アイは返した。
アイラが持つべき、アイラが生きるための、アイラがネオとしてその身体を維持するための力を。
そのおかげで、アイラは消えることはなかった。
今でも生き続けることができていた。
けれど、1度失ってしまったものの代償は大きかった。
1度手放してしまった、アイラがアイラたる自覚。
生きて来た記憶、思い出、はぐくまれていた心。
アイラはすべてを失っていた。
カイトを見ても、レイナを見ても、サイトも、リンも、シノも、何を見ても、誰を見てもアイラは何の反応も示さなかった。
アイラにとっては何もかもが知らないもので、知らない人で、知らない生命体だった。
けれど、それでよかったのかもしれないと、はじめに言ったのはレイナだった。
「何も覚えていないなら、これからまた覚えていけばいいよ。今度は普通の女の子として一緒に生きていけるでしょう?」
普通の女の子。
もう、以前のように部屋の中だけがアイラの世界ではなかった。
好きなときに外出して、好きなところへ行けた。
身体は不自由になってしまったけれど、いつも一緒にいたいと思っていた人たちと一緒にいられた。
どこへでも連れて行ってくれた。
アイラは、普通の女の子として自分の人生を送り始めていた。
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