【完結】守り姫[完全版]

桐生千種

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1章 不思議な少女

6.森の小屋の中で

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 大人たちは考えた。
 どうすれば、自分たちが生き残ることができるだろう、と。

 恐怖に煽られ、起こりえない未来に怯え、知恵を絞り、こっそりと準備を進めていった。

「森の中の小屋に、みんなでおいで。あの子も一緒に」

 ある日の夜に、大人が告げた。

 どうして?

 森の小屋には入っちゃいけない。

 大人たちはいつもそう言っていたはずだった。

「今日は特別な日だ。だから今日だけ、小屋に入ってもいいんだ」

 様子がおかしいと、何人かは気づいたけれど、小屋の中を見ればそんなことはすぐにどこかへ飛んで行ってしまった。

「わあ、すごいや! おかしだ!」
「おもちゃもある!」

 子供たちは、決して買ってもらえない甘いお菓子やおもちゃに心を奪われ、喜んで小屋の中に入って行った。

 普段は口にすることのできない甘いお菓子は、子供たちの表情をほころばせた。

 手にすることのできないおもちゃは、心を躍らせた。

 たとえ、一緒に入ってくる大人が1人もいなかったとしても。

 窓のない小屋に、子供だけが集められていたとしても。

 扉の鍵が閉められて、閉じ込められているのだとしても。

 普段とは違う空間に、子供たちは喜んではしゃいでいた。

 ただ1人、真っ白な少女を除いて。

 少女はきっとわかっていたんだ。

 明日の天気を言い当てられる少女だから、ほんの数時間先に起こることがわからないはずがない。

 大人が何をしようとしているのか。

 贅沢品と言って、買い与えることをしなかったお菓子やおもちゃを用意してまで、子供たちを閉じ込めた理由。

 そして、これから何が起こるのか。

 わかっていたから、楽しそうにする子供たちの中で1人、ずっと1人で悲しそうにしていたんだ。
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