【完結】守り姫[完全版]

桐生千種

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2章 眠り続ける少女

6.少年の叫び

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 少年は目を覚ました。

 そこにあったのは、いつもの見慣れてしまった景色と静かに流れ続ける時間。

 そして、変わらず眠り続ける少女の姿。

 昨日までと何ひとつ変わることのない日常の一片。

 少年は、ああ……、と息を吐いた。

 夢だったのか、と。

 熱い炎や息苦しさ、助けを求める子供たちの姿に声。

 薄れる意識と、少女の祈り。

 否応にもなく現実味を帯びていたそれらのすべてが夢だった。

 少年は、少女が目覚めるわけではなかったことに落胆しながらも、再び自分の身が焼かれようとしているわけではないのだと安堵していた。

 そして少年は、気づいた。

「今のは、キミがみている夢なんだね」

 そう話しかける少年に、少女が答えることはなかったけれど、少年はそうであると疑わなかった。

 少女は、あの日にずっと囚われていたんだ。

 身を焼かれる熱い炎の中、煙に巻かれながら、不安と恐怖と苦しみの中、助けを求める子供たちと、少女はずっと一緒にいるんだ。

 そして、祈り続けている。

 みんなを助けてください。

 その少女の言葉が、いつまでも少年の耳から離れなかった。

 少年は、答えることはないとわかっていても、眠る少女に訴えずにはいられなかった。

「もう火は消えたよ」

 キミが消してくれたんだろう?

「みんな助かったんだよ」

 キミが祈ってくれたから。

「だからもう起きてよ」

 もう、すべて終わったんだ。
 祈る必要はない。
 夢の中に、囚われる必要はないんだ。

 だからもう、救われてほしい。

 少年は、最後には叫ぶように訴えていた。
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