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4章 少女と妖精
3.妖精の居場所
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「本当に、そんなことでいいの?」
妖精の願いは『ここに住むこと』だった。
けれどそれでは、少年が受けた恩の方がずっと大きいと、少年は思った。
「そんなことっていうけど、私にとっては死活問題よ?」
妖精は言った。
「もといた場所には戻れないし、代わりの場所を見つけないと、いつまでもあなたについて回るわけにもいかないし」
少年が花を手にしてからというもの、少年は花を枯らしてしまわないようにと世話をしていた。
けれど、それももう終わりにしようという妖精からの申し入れのように思えた。
「その辺のテキトーなところじゃ嫌よ? ちゃんと私が気に入るいい場所を見繕ってよね」
渋る少年を見かねてか、妖精はそんなことを言った。
「そっか。そういうことなら」
妖精が、快適に、何の不自由もなく、安心して暮らせる場所を探すということなら、少年も納得ができた。
「きっといい場所を見つけるよ」
もしも、またこの妖精の居場所を奪おうとする人間が現れたなら、少年が妖精を守ってあげられる、とも。
「キミはどんな場所がいい? 何か希望はある?」
「そうね。どうせなら、水の綺麗なところがいいわ」
「それなら私、ぴったりの場所を知ってるよ」
そう言ったのは少女だった。
「案内するね」
少女は、ずっと眠っていたなんて信じられないくらいに自然だった。
「大丈夫なの?」
「? うん」
少年の言葉に、少女は首を傾げてうなずいた。
「行こう」
手を差し出した少女は、本当に何もなかったかのようで、少年の方が夢をみていたんじゃないかと錯覚するほどに少女の様子は自然だった。
妖精の願いは『ここに住むこと』だった。
けれどそれでは、少年が受けた恩の方がずっと大きいと、少年は思った。
「そんなことっていうけど、私にとっては死活問題よ?」
妖精は言った。
「もといた場所には戻れないし、代わりの場所を見つけないと、いつまでもあなたについて回るわけにもいかないし」
少年が花を手にしてからというもの、少年は花を枯らしてしまわないようにと世話をしていた。
けれど、それももう終わりにしようという妖精からの申し入れのように思えた。
「その辺のテキトーなところじゃ嫌よ? ちゃんと私が気に入るいい場所を見繕ってよね」
渋る少年を見かねてか、妖精はそんなことを言った。
「そっか。そういうことなら」
妖精が、快適に、何の不自由もなく、安心して暮らせる場所を探すということなら、少年も納得ができた。
「きっといい場所を見つけるよ」
もしも、またこの妖精の居場所を奪おうとする人間が現れたなら、少年が妖精を守ってあげられる、とも。
「キミはどんな場所がいい? 何か希望はある?」
「そうね。どうせなら、水の綺麗なところがいいわ」
「それなら私、ぴったりの場所を知ってるよ」
そう言ったのは少女だった。
「案内するね」
少女は、ずっと眠っていたなんて信じられないくらいに自然だった。
「大丈夫なの?」
「? うん」
少年の言葉に、少女は首を傾げてうなずいた。
「行こう」
手を差し出した少女は、本当に何もなかったかのようで、少年の方が夢をみていたんじゃないかと錯覚するほどに少女の様子は自然だった。
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