【完結】守り姫[完全版]

桐生千種

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4章 少女と妖精

4.新しい居場所

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 「いいところじゃない! 気に入ったわ!」

 少女が案内してくれた場所は、妖精が希望した通り、水の綺麗な――澄んだ泉のほとりだった。

 空気も穏やかで、人の気配もまるでない。

 そんな場所が村の近くにあったなんて、今まで村で過ごしてきた少年も知らなかった。

「ここはね、私の秘密の場所なの」

 少女の言葉に、少年は目を見開いた。

「村の誰も知らないから、妖精さんもきっと安心して住めると思うの」

「そんな場所に、僕を連れて来てよかったの?」

 少年は、焦りを覚えた。

 少女の秘密の場所に、少年は何も考えずについて来てしまった。

 もしかしたら、とても大切な場所だったかもしれない。

 村の誰にも知られないように、守ってきた特別な場所だったかもしれない。

 けれど少女は、何でもないことのように言ってのけた。

「あなたはあの妖精さんのお友達でしょう?」

 『友達』だから、良いのだと。

 けれど、『友達』と言ってもいい仲なのかどうか、少年にはわからなかった。

 妖精は、少年が頼み込んで連れて来たようなものだったから。

「ここに決めたわ!」

 あちこちと見て回っていた妖精は、ついに定住の地を見つけたらしい。

 少年は、妖精に言われるままに妖精の花を植えた。

「僕、絶対この場所のこと、誰にも言わないよ」

 花を植えながら、少年は言った。

「……そうね。そうしてちょうだい」

 そう言う妖精は、どこか寂しそうに見えたけど、村の誰かが興味本位で荒らしに来るよりはずっと良いと思った。

 森の中の澄んだ泉と1輪の花。

 初めからそこにあったかのように、花はその場所に馴染んでいた。
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