【完結】龍の姫君-序-

桐生千種

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第2話 学舎と姫君

学舎の規則

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 学舎に着き、これからの予定を告げられた龍麗は困惑した。

「別々……?」

 その瞳は、不安気に揺れる。

「学舎は年齢と学力で学年が決まってるから、みんな一緒ってわけにはいかないんだよね」

 凜音がカリカリと頭をかきながら告げる。

「でもホラ、バカだけど音葉が一緒だし、1人で知らない集団の中に放り込まれるわけじゃないから、安心して?」

 凜音の言葉を聞いても、龍麗の不安は晴れない。

「ルリ」

 紫季が、口を開く。

「狭い世界に閉じ籠って、視野を狭めるのは、よくない。世界には、いろんな人がいる。ここで、出会える。いろんな人と出会って、たくさん、知らないことを経験するといい。毎日が、楽しくなる」

 紫季の言葉に、龍麗はようやくわずかながらに笑顔を取り戻した。

「……うん! 私、頑張る!」

 学年が違うというみんなと別れ、龍麗が初めに向かう場所は学長室。

 傍らには、音葉がいる。

「大丈夫か?」

 音葉が問う。

 緊張のためか、龍麗の表情は堅い。

「大丈夫!」

 心配させまいと笑う龍麗は、自分にも言い聞かせるように言葉を紡いだ。

「私は、いろんな人と出会って、たくさん、いろんなことを経験するんだもん! これも経験、だよね?」

「そうだな」

 安心したように、音葉の表情は緩む。

「じゃ、入るぞ」

「うん」

 コン、コン、コン。

 音葉が、扉を叩く。

「はい。どうぞ」

 扉の向こうから聞こえてきたのは、女――史月(しづき)の声。

「失礼します」

「失礼しますっ」

 音葉に続いて、龍麗も学長室へと足を踏み入れると、紙とインクの匂いが鼻を掠めた。

「3年の音葉です。新入生を連れて来ました」

「ルリです! 今日からお世話になります! よろしくお願いします!」

 深々と、頭を下げる龍麗に史月はいぶかしげな視線を送った。

「ルリ?」

 史月は呟くと、手元の書類に目を落としてから再び龍麗を見遣る。

「受け取った書類と違うわね……。どういうことですか?」

 睨め付けるような視線を送る史月に、怯みそうになるも、龍麗はその心を奮い立たせ史月の問に答える。

「本当の名前は、龍麗と言います。でも、ルリと呼んでほしくて、そう名乗ってます。あの、違う名前を名乗るのは、いけませんか?」

「いいえ。どう名乗ろうと、その人の自由ですよ。ただ、今回のような場合では、提出した書類通りの名前を名乗るべきね」

「はい! 以後、気をつけます!」

「それから」

 史月の、睨め付けるような視線はなおも続いた。
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