【完結】龍の姫君-序-

桐生千種

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第5話 結

輝く世界

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 返事ができずにいるキバの背中を押すように、真っ先に声をあげたのは音葉だ。

「俺はルリの味方だからな!」

「私も、主はルリだから」

 続くのは、沙花。

「わ、私だって!」

 少し慌てたように、遅れを取り戻すように口早に凜音も宣言する。

「仕えてるのは、当主代行の龍雅じゃなくて、ルリなんだからね!」

 龍麗を咎める者は、ここにはいない。

 みんなが龍麗の味方だと言って応援してくれている。

「それでも、やっぱり!」

 キバは叫ぶ。

 野良の自分と仲良くして、怒られるのは龍麗たちだ。

 それが、キバの心を痛めつける。

「大丈夫。2人きりだから、龍雅が怒る。2人きりじゃなきゃ、いい」

「は?」

「今日からは、俺たちも、一緒。ルリの友達は、俺たちも友達」

 何を言い出すのかと、キバは目の前の紫季の言葉を疑った。

 家位持ちの男が、野良の自分と友達だと言っている。

 野良と仲良くすると、宣言している。

「よろしく、キバ」

 いつの間に傍へ寄ったのか、沙花がキバの手を取って言った。

「っ!?」

 あまりにも、現実離れした状況に声も出せないキバと、微かなほほ笑みを見せてキバの手を握りその顔を見つめる沙花。

 さっと、割って入った音葉の手がキバと沙花を引き離す。

「沙花に馴れ馴れしく触ってんじゃねーよ」

「!? 俺!? 俺が悪いのか!?」

「ふふっ」

 ようやく、龍麗が笑顔を見せた。

 色を失った世界が、再び色づき始める。

 13歳。

 初めて学舎に通い、友ができた。

 恋を知った。

 味方がいる。

 大丈夫。

 新たに始まる日常は、きっと楽しいものになる。

 世界が、キラキラと輝き始めた。



 *** 龍の姫君-序- 終 ***
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