【完結】EACH-愛を胸に眠る-

桐生千種

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03 ひとり 出会う

01

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 小さな私の身体では、手が届かない天井。
 無機質な蛍光灯が、私を見下ろす。

 私がどんなに手を伸ばしても届かない天井に迫るまで、高く積み木を積み上げていたあの子はいない。

 大人たちが、イジワルをして隠していたぬいぐるみ。
 どこに隠されても簡単に見つけだして、彼女をぎゅっと抱きしめていたあの子も、もういない。

 あなたも、ひとりね。

 そんなことを思っても、答えは返ってこない。

 誰もいなくなってしまった、ひとりぼっちのこの部屋は私には広すぎる。

 ROは『AIは、まだ』と、そう言っていた。

 それなら、AIはいつ?
 AIは、いつになったら「みんな」と同じになれるの?

 そんなことばかりを考えた。

 周りに大人はたくさんいる。

 寂しくて、広すぎる部屋を取り囲むガラスの窓の向こうから、大人たちはいつも私たちを見ていた。

 今も、ひとりになった私を見ている。
 大人たちは、見ているだけ。

 誰も、助けてはくれない。

 毎日お腹が空く頃にご飯はくれる。
 毎日イジワルをして、手の届かないところに置いたり、透明な箱の中に入れて来たり。

 だけど私が何もできずに泣きだして、しばらくするとガッカリしてご飯を目の前に置いていく。

 ため息をついて、落胆する大人の姿を何度も見た。

 手の届かない場所に取りに行ける子も、箱の中のものを呼び寄せられる子も、「みんな」逝ってしまったのに。

 「みんな」がいたときと同じように大人はイジワルをして、だけど私には何もできない。

 そのイジワルをどうにかできていた「みんな」は、もういない。

 「みんな」がしていたようなことを、私ができるようになることを大人たちは望んでいて、それだけ。

 ただ、それだけ。

 寂しい気持ちを拭い去ってはくれない。
 「みんな」と同じになる方法を、教えてもくれない。

 良くも悪くも、私はただの子供で、何の能力もなくて、ただ、私が「みんな」と同じになるときを――私が死ぬときを、待つことしかできなかった。

 彼女が現れたのは、私がそうやって死のときを待ちながら、ただ生かされていただけの日々――
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