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初等部
入学式
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小春の入学式。それは、僕の始業式と同じ日。そして、僕の小学校の入学式も同じ日にやる。つまり、僕は小春の入学式を見に行けない。
休みにしてくれればいいのに。そうすれば、僕は小春の入学式を見に行けるんだ。小春がいないのに、どうして入学式で新入生を迎えないといけない?
系列校の行事を全部同じ日程で組んでいる学校を恨んだ。
入学式も幼等部の卒園式と同じ。少し遅れて登校する小春と、一緒に登校することは叶わなかった。
どうせ始業式と、小春のいない入学式しかないのなら、休んでしまって小春の入学式を見に行こうかとも思ったけど、そんなカッコ悪いマネはできない。
年度末の修了式で発表される皆勤賞。それを逃した理由がズル休みだなんて、小春に幻滅される。
「小春」
一緒に登校することは叶わないけれど、入学式の朝、僕は小春の家を訪ねた。
「似合うね、制服」
出迎えてくれた小春は、登校までまだだいぶ時間があるというのに、既に制服に着替えていた。
僕の制服に似ているけれど、女子小学校のものだとすぐにわかる。見とれてしまうほどに愛らしくて、それでいて、本当に同じ小学校には通えないんだという現実を突きつけられる。
「ありがとう」
照れたように微笑む小春が、また可愛い。
「どうしたの?」
突然家を訪ねた僕に、小春は不思議そうに聞いてくる。そんな表情も愛らしい。
「入学式だから」
僕は、用意していたハンカチを渡す。小春のためにお小遣いを溜めて買ったんだ。ピンクの縁取りがされた花柄のハンカチ。
「入学祝い。入学、おめでとう」
本当は、卒園式の日にもプレゼントをあげたかったけど、お小遣いが足りなくて今日だけになっちゃった……。
「ありがとう、マナ君っ! 大事にするねっ!」
ぎゅっとハンカチを抱き締めるようにする小春に、胸が高鳴る。じっと僕を見て『ありがとう』と言ってくれる。小春にこうしてもらえるのは、世界中で僕だけ。ずっと、そうであればいい。
「じゃあ、僕行くね。明日からはまた一緒に行こうね」
「? でも、違う学校だよ?」
首を傾げる小春に、僕は笑んで見せた。
「小春が幼等部のときも、僕は初等部で違う学校だったよ。学校が違っていても近いから、途中まで送るね」
僕の通う桜月学園初等部は、小春が通う桜ノ女子小学校の前を通り過ぎた場所にある。言っていることは何も間違っていない。
「そっか」
小春は納得した様子で、笑って見せた。
「じゃあマナ君、ハンカチありがとう! また明日ね!」
玄関先で手を振る小春に満足して、僕は学校へと急いだ。
これからも小春と一緒に登校する約束を、取り付けることができた。
休みにしてくれればいいのに。そうすれば、僕は小春の入学式を見に行けるんだ。小春がいないのに、どうして入学式で新入生を迎えないといけない?
系列校の行事を全部同じ日程で組んでいる学校を恨んだ。
入学式も幼等部の卒園式と同じ。少し遅れて登校する小春と、一緒に登校することは叶わなかった。
どうせ始業式と、小春のいない入学式しかないのなら、休んでしまって小春の入学式を見に行こうかとも思ったけど、そんなカッコ悪いマネはできない。
年度末の修了式で発表される皆勤賞。それを逃した理由がズル休みだなんて、小春に幻滅される。
「小春」
一緒に登校することは叶わないけれど、入学式の朝、僕は小春の家を訪ねた。
「似合うね、制服」
出迎えてくれた小春は、登校までまだだいぶ時間があるというのに、既に制服に着替えていた。
僕の制服に似ているけれど、女子小学校のものだとすぐにわかる。見とれてしまうほどに愛らしくて、それでいて、本当に同じ小学校には通えないんだという現実を突きつけられる。
「ありがとう」
照れたように微笑む小春が、また可愛い。
「どうしたの?」
突然家を訪ねた僕に、小春は不思議そうに聞いてくる。そんな表情も愛らしい。
「入学式だから」
僕は、用意していたハンカチを渡す。小春のためにお小遣いを溜めて買ったんだ。ピンクの縁取りがされた花柄のハンカチ。
「入学祝い。入学、おめでとう」
本当は、卒園式の日にもプレゼントをあげたかったけど、お小遣いが足りなくて今日だけになっちゃった……。
「ありがとう、マナ君っ! 大事にするねっ!」
ぎゅっとハンカチを抱き締めるようにする小春に、胸が高鳴る。じっと僕を見て『ありがとう』と言ってくれる。小春にこうしてもらえるのは、世界中で僕だけ。ずっと、そうであればいい。
「じゃあ、僕行くね。明日からはまた一緒に行こうね」
「? でも、違う学校だよ?」
首を傾げる小春に、僕は笑んで見せた。
「小春が幼等部のときも、僕は初等部で違う学校だったよ。学校が違っていても近いから、途中まで送るね」
僕の通う桜月学園初等部は、小春が通う桜ノ女子小学校の前を通り過ぎた場所にある。言っていることは何も間違っていない。
「そっか」
小春は納得した様子で、笑って見せた。
「じゃあマナ君、ハンカチありがとう! また明日ね!」
玄関先で手を振る小春に満足して、僕は学校へと急いだ。
これからも小春と一緒に登校する約束を、取り付けることができた。
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