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走れ至恩
トレーニング1
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眠い目を擦りながら学校のグラウンドで白井先生を待っていた。
春の早朝とはいえジャージだけでは少し肌寒い。
僕と恵さんは互いの体をぴったり密着させて暖を取っていた。
左腕に当たる胸の柔らかさを堪能していると。
「おーすっ月島」
背後から挨拶された。
白井先生ではなく気だるそうで、感情のない声だった。
スタスタと歩く足音は近づいて来て、僕の右隣りで止まった。
「あなた誰?」
僕よりも先に訊いたのは恵さんだった。
恵さんは僕の体の左側からひょっこりと顔を出して、僕の右隣りに立つ女子を見ていた。
「誰だと思う月島」
恵さんではなく僕に質問を質問で返してきた。
少し面倒な女だなと思いながら右に立つ女子の顔を見て思ったことは。
「本当に誰ですか?」
そう訪ねたらその子は勝ち誇った表情をしてた。
いやそんなに顔されても正直あなたのことは分からないし、初対面なんだから勿体ぶらずに自己紹介してくれよと思った。
「当てたらご褒美にデートしてやってもいいぞ」
ウインクをして投げキッスしてきた。
随分と挑発的な人だ。
当然、恵さんは怒る。
「だめに決まってるでしょ。至恩は私の彼氏よ、目の前で浮気なんてありえないから」
「それじゃ私と月島をシェアするか?」
そう言うと謎の女子は僕の右腕を抱き込んで挑発的に微笑む。
何だか素晴らしい春の朝になった気がする。
僕の両手に花、両腕に胸、早朝だけに素晴らしい朝が来た。
しかし右隣りの彼女は何者だろうか。
向こうは僕を知っているようだけど、僕は彼女に心当たりはない。
じっくりと彼女を観察する。
背丈は僕と同じくらい、スーパーモデルのようにスレンダーで僕よりも足が長い。
髪型は妹の亜希よりも少し短い黒髪のショート。
目は特徴的な切れ長で二重まぶた、日本美人といったような印象。
スッとした鼻筋に唇は大きい。
右腕に当たる胸の感触からして、それほど胸は大きくはないようだ。
観察をすればするほど右隣りの彼女の謎は深まるばかり。
僕は本当に心当たりなかった。
「コラアアア、ふざけるなよ月島」
突然、背後から聞こえた野太い男の声。
ドタドタとした足音と「畜生めえええ」の叫び声が近づいてくる。
もう振り向かなくても白井先生であることは明らかだった。
僕ら三人の前に立つと、僕に右の人差し指をビシッとさしてから興奮気味に言った。
「独身、四十二歳の白井健太郎の前で男女のイチャイチャを見せつけるとか、なんたる不敬。ええい離れなれろ神山、町田」
「え、町田? 君は町田さんなのか?」
「どうだ驚いたか月島。そういえばちゃんと自己紹介してなかったな。私は町田麗だ。よろしくな」
「ギャルじゃない。いつもはぱっちりした目の、バッチリギャルメイクだったのに。何があったんですか?」
「白井先生に説得されて私もリレーを走ることになった。過去に色々あって陸上やめていたけど、もう一度頑張ってみようと思ったんだ」
「過去? もう一度? なんのこと?」
「今は教えない。二人きりの時にゆっくりとな」
「だめ、絶対だめ。至恩と二人きりにさせたりはしないから」
「彼女面すんなよなパイセン」
「至恩の彼女ですがなにか?」
恵さんと町田さんはバチバチやりあっていた。
二人が興奮して言い争うほど、抱え込まれた僕の腕に胸が強く当たる。
春の到来と共にモテ期到来。
僕は今日という日を忘れることはないだろう。
悦に浸っていると、鼓膜が破れそうなほどの大声で白井先生が号令する。
「イチャイチャするなと言っただろうが。全員、気をつけ!」
僕を中心として横列になった。
姿勢を正して気をつけをする。
胸の感触と人肌が恋しいと思えた。
白井先生は鋭い目付きで僕ら三人を睨む。
ギラついた目玉を右、左、右と何度も往復させていた。
「おいお前たち、これからトレーニングをするのにそんなふざけた態度でいたら怪我をするぞ。大体お前たちがトレーニングする目的はなんだ? 答えてみろ月島」
「男女混合リレーに勝つことです」
「そうだ。次、神山」
「至恩と楽しく過ごせるハッピータイムです」
「……次、町田」
「月島とお近づきになってイイ関係になること。トレーニングは、まあついでかな」
「……月島意外は不正解。罰として月島は俺と一緒に地獄のトレーニングをしてもらう」
「何で僕が罰を受けるんですか。おかしいですよ白井先生」
「口答えするな月島。これはモテモテなお前への八つ当たりだ」
「理不尽です」
「問答無用」
白井先生は僕を腕を引っ張り、恵さんと町田さんから引き離された。
「二人には別メニューを作成してきた。このプリント通りにトレーニングだ」
白井先生はジャージのポケットから四つ折のくしゃくしゃのプリントを恵さんと町田にそれぞれ手渡した。
「月島は俺と一緒にグラウンドを二十周だ」
「え、そんなに。てか短距離ですよね? 何で長距離を?
「月島は圧倒的に基礎体力が足りない。 先ずは記憶喪失になる前の体力に戻す事が先だ」
「ああ、はい」
「何だその腑抜けた返事は!」
「はいっ!」
「よーし。グラウンド二十周行くぞ」
「はいっ!」
白井先生の直接指導の下、地獄のトレーニングが始まった。
春の早朝とはいえジャージだけでは少し肌寒い。
僕と恵さんは互いの体をぴったり密着させて暖を取っていた。
左腕に当たる胸の柔らかさを堪能していると。
「おーすっ月島」
背後から挨拶された。
白井先生ではなく気だるそうで、感情のない声だった。
スタスタと歩く足音は近づいて来て、僕の右隣りで止まった。
「あなた誰?」
僕よりも先に訊いたのは恵さんだった。
恵さんは僕の体の左側からひょっこりと顔を出して、僕の右隣りに立つ女子を見ていた。
「誰だと思う月島」
恵さんではなく僕に質問を質問で返してきた。
少し面倒な女だなと思いながら右に立つ女子の顔を見て思ったことは。
「本当に誰ですか?」
そう訪ねたらその子は勝ち誇った表情をしてた。
いやそんなに顔されても正直あなたのことは分からないし、初対面なんだから勿体ぶらずに自己紹介してくれよと思った。
「当てたらご褒美にデートしてやってもいいぞ」
ウインクをして投げキッスしてきた。
随分と挑発的な人だ。
当然、恵さんは怒る。
「だめに決まってるでしょ。至恩は私の彼氏よ、目の前で浮気なんてありえないから」
「それじゃ私と月島をシェアするか?」
そう言うと謎の女子は僕の右腕を抱き込んで挑発的に微笑む。
何だか素晴らしい春の朝になった気がする。
僕の両手に花、両腕に胸、早朝だけに素晴らしい朝が来た。
しかし右隣りの彼女は何者だろうか。
向こうは僕を知っているようだけど、僕は彼女に心当たりはない。
じっくりと彼女を観察する。
背丈は僕と同じくらい、スーパーモデルのようにスレンダーで僕よりも足が長い。
髪型は妹の亜希よりも少し短い黒髪のショート。
目は特徴的な切れ長で二重まぶた、日本美人といったような印象。
スッとした鼻筋に唇は大きい。
右腕に当たる胸の感触からして、それほど胸は大きくはないようだ。
観察をすればするほど右隣りの彼女の謎は深まるばかり。
僕は本当に心当たりなかった。
「コラアアア、ふざけるなよ月島」
突然、背後から聞こえた野太い男の声。
ドタドタとした足音と「畜生めえええ」の叫び声が近づいてくる。
もう振り向かなくても白井先生であることは明らかだった。
僕ら三人の前に立つと、僕に右の人差し指をビシッとさしてから興奮気味に言った。
「独身、四十二歳の白井健太郎の前で男女のイチャイチャを見せつけるとか、なんたる不敬。ええい離れなれろ神山、町田」
「え、町田? 君は町田さんなのか?」
「どうだ驚いたか月島。そういえばちゃんと自己紹介してなかったな。私は町田麗だ。よろしくな」
「ギャルじゃない。いつもはぱっちりした目の、バッチリギャルメイクだったのに。何があったんですか?」
「白井先生に説得されて私もリレーを走ることになった。過去に色々あって陸上やめていたけど、もう一度頑張ってみようと思ったんだ」
「過去? もう一度? なんのこと?」
「今は教えない。二人きりの時にゆっくりとな」
「だめ、絶対だめ。至恩と二人きりにさせたりはしないから」
「彼女面すんなよなパイセン」
「至恩の彼女ですがなにか?」
恵さんと町田さんはバチバチやりあっていた。
二人が興奮して言い争うほど、抱え込まれた僕の腕に胸が強く当たる。
春の到来と共にモテ期到来。
僕は今日という日を忘れることはないだろう。
悦に浸っていると、鼓膜が破れそうなほどの大声で白井先生が号令する。
「イチャイチャするなと言っただろうが。全員、気をつけ!」
僕を中心として横列になった。
姿勢を正して気をつけをする。
胸の感触と人肌が恋しいと思えた。
白井先生は鋭い目付きで僕ら三人を睨む。
ギラついた目玉を右、左、右と何度も往復させていた。
「おいお前たち、これからトレーニングをするのにそんなふざけた態度でいたら怪我をするぞ。大体お前たちがトレーニングする目的はなんだ? 答えてみろ月島」
「男女混合リレーに勝つことです」
「そうだ。次、神山」
「至恩と楽しく過ごせるハッピータイムです」
「……次、町田」
「月島とお近づきになってイイ関係になること。トレーニングは、まあついでかな」
「……月島意外は不正解。罰として月島は俺と一緒に地獄のトレーニングをしてもらう」
「何で僕が罰を受けるんですか。おかしいですよ白井先生」
「口答えするな月島。これはモテモテなお前への八つ当たりだ」
「理不尽です」
「問答無用」
白井先生は僕を腕を引っ張り、恵さんと町田さんから引き離された。
「二人には別メニューを作成してきた。このプリント通りにトレーニングだ」
白井先生はジャージのポケットから四つ折のくしゃくしゃのプリントを恵さんと町田にそれぞれ手渡した。
「月島は俺と一緒にグラウンドを二十周だ」
「え、そんなに。てか短距離ですよね? 何で長距離を?
「月島は圧倒的に基礎体力が足りない。 先ずは記憶喪失になる前の体力に戻す事が先だ」
「ああ、はい」
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