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<フリーター帰省編②> ~消えた金貨を探せ~
第五十四話:フリーター、帰省する
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ワーグナー城内、東の端の庭園。
チューリップに似た赤や黄や紫色の花に囲まれて、俺は猛烈に感動していた。
別に、花の美しさに心を奪われたわけではない。
どちらかといえば、食べ物の方がいい。
そう、花よりダンゴだ。
話が逸れた。
元に戻す。
花畑の脇には温泉がある。
直径三メートルほどの円形の露天風呂だ。
ためしに手を入れてみると、湯加減は丁度良い。
淡く白濁する湯のなかをのぞきこむと、半身浴できそうな浅い場所もある。
風呂のまわりには、テーブルのように平らな岩がいくつもあり、酒やツマミを持ち込んでの長風呂も楽しめそう。
うむ、実にスバらしい。
「リューキさまっ! この温泉は初代ワーグナー卿の時代からある由緒正しい露天風呂なんですよ!」
「ジーナ! すごくいいじゃないか! もっと早く教えてくれれば良かったのに」
「すいませーん」
「くっ、すぐにでも風呂に入りたいけど、ここは我慢だな」
「当たり前じゃ! 風呂はいいから、早うわらわの荷物を運んでくれなのじゃ」
エル姫に催促される。
俺は後ろ髪をひかれる思いで露天風呂をあとにした。
庭園の中央に建つ黒檀の塔に入る。
真っ黒い蔦に覆われて、魔女でも住んでいそうな外観に反して、塔の内部は快適な環境。
埃ひとつ落ちておらず、温度や湿度は程よく保たれていて住み心地良さそう。
ワーグナー棒の倉庫にしか使われていないのがモッタイナイくらいだ。
「たいしたものじゃ。わらわの生まれ育ったルシアナ皇国でも、このような造りの塔は見たことがないぞよ!」
「エル、何に感心してるんだ?」
「わからぬか? ほれ、石の継ぎ目がないであろう。この塔は巨大な岩をくりぬいて作られたのじゃ!」
「そっちか! やっぱスゴイことなんだよね、匠の技だよな!」
エル姫の説明を聞き、俺は素直に感嘆の声をあげる。
「ジーナ。塔を作ったのはオーク族か? それともゴブリン族の仕事か?」
「黒檀の塔はドワーフ族が作ったのです。むかーしむかしのことですけど」
「ドワーフ族って、カスパー領の? 地下資源の採掘で揉めてるっていう?」
「そうでーす。以前は、カスパー家のドワーフ族はワーグナー家と仲良しだったんです。ていうか、ワーグナー家の臣下だったんですよー」
「なんだか複雑な事情がありそうだな」
「今度の授業はカスパー家のドワーフ族の話にしましょー」
「わかりやすく簡潔にまとめてくれると嬉しいな」
「はーい、わっかりましたー!」
俺はこの世界の情勢を学ぶため、元領主で現城代のジーナ・ワーグナーと女騎士エリカ・ヤンセンにレッスンを受けている。
そのジーナ先生の次の講義のテーマが、いま決まった。
そういえば城を留守にしていたので、半月ばかり彼女の授業を受けていない。
ジーナ先生はここぞとばかりに張り切りそうだね。
また徹夜で講義を受けるのかな……頑張ろう。
収納袋からエル姫の引越し荷物を取り出す。
干からびた薬草が入った籐籠、獣の牙や角らしき怪しげな素材が収められた木箱、素材をすり潰すための乳鉢、鉄製の鍋、アルコールランプ、サイフォンのような形状の器具。すべて神紙の研究用資材だという。
だが、研究用資材以上に多いのが資料の類。
豪華な装丁が施された分厚い本から、息を吹きかけただけで崩れ落ちそうなくらいボロボロな古文書や巻物まで様々。まだ装丁されていない紙の束は書きかけで、エル姫自身の手によるものと推察された。
いまさらながら思うが、エル姫はお姫様というより、リケジョというか学芸員というか、研究者っぽい感じがする。
エル姫の荷物整理はあとでやってもらうとして、黒檀の塔の地下に降りる。
塔の地上は六階建てだが、地下はダンジョンのように広がっているとのこと。
採掘が得意なドワーフ族の真骨頂ってやつか。
地下室には、ワーグナー棒が保管されていた。
ひとつ十キロはある金の延べ棒が、何百本、いや何千本と山積みされている。
しかも同じような部屋がいくつもあるという。
あまりにも膨大な金の量に、俺はひとりで興奮する。
対して、ジーナはもちろん、ヴァスケルもエル姫も顔色ひとつ変えない。
人間界では金は貴重品だと説明しても、誰ひとりピンとこないようだ。
魔界の住人にとって、金塊は単なる石ころだからね。
まあ、いいさ。
金を売ったお金でお土産を山ほど買ってきて、みんなをビックリさせてやろうじゃないか。
収納袋にワーグナー棒を入れる。
ローン返済用に金貨一万枚を収納していたせいか、八十本ほどで満杯になる。
これで人間界に帰省する準備はすべて整った。
「リューキ、そろそろ行くかい!」
姐さんヴァスケルに促される。
てか、ヴァスケルは俺が思っていた以上にウキウキしているように見えた。
「ジーナ、エル、留守は頼んだぞ」
「はーい、おまかせくださーい。お土産忘れないでねー」
「リューキよ。気をつけて行ってくるのじゃぞ! それと、ジーナのことはわらわに任せるのじゃ!」
エル姫の自信満々な態度に、かえって妙な胸騒ぎを覚える。
おかしな騒動を起こさないことを祈るまでだ。
黒檀の塔にジーナとエル姫を残し、俺とヴァスケルは城の大広間に戻る。
いよいよ帰省するというのに、俺は懐かしさを覚えず、なぜか海外旅行にでも出かけるような気分になった。
◇◇◇
ワーグナー城の大広間。
人間界へと繋がる扉に青銅の鍵を近づける。
音もなく開いた扉をくぐると、そこはもう俺が元いた世界。
相変わらず「どこでも〇ア」並みの手軽さだ。
高層マンション最上階、三十三階からの眺望は抜群。
本日は晴天なり。
扉の前からエレベーターへ向かう通路に人影はない。
てか、このマンションで住人を見た覚えがない。
引っ越しの挨拶周りをしてないのを思い出すが、いまはそれどころではない。
時刻は午前十時。
明日の同時刻までに、ローンを払って、魔界の金貨を取り戻して、ジーナやエル姫へのお土産を買わなければならない。
もちろん、女騎士エリカ・ヤンセン用の抹茶スイーツやゴブリン・ロードのジーグフリードに渡す食料品も手に入れるつもりだ。
俺自身も買い物をしたい。
その前にワーグナー棒を日本円に換金して軍資金を手に入れなければならない。
いや、そもそも出所不明な金って売れるのかな?
ワケあり商品を扱うタナカ商会で要相談だな。
うむ、やらなきゃいけないことが満載だ。
あとは……そうだ、ヴァスケルのリクエストをまだ聞いてなかったな。
「ヴァスケル。お前は何か欲しいものはないのか? あれば遠慮なく言ってくれ」
「ホントにいいのかい? じつは、あたいさ……」
エレベーターが下降し始める。
密室でふたりきりのシチュエーション。
姐さんの潤んだ瞳が恥ずかしそうに下を向く。
ピアニストのように長い指は、腰まで伸びた黒髪をくるくると弄ぶ。
艶っぽい姐さんヴァスケルのもじもじする姿に、思わずクラッときてしまう。
……ヴァスケル、どうした? なにが恥ずかしいんだい? いつものお前らしくないじゃないか。もしかして、普段は強がっているだけなのかな? え? そんなことないって? うん、そうだね。実際に強いもんね。ホント、俺の味方でいてくれてありがとう。しかも愛人にまでなってくれるなんてさ。男冥利に尽きるってもんだ。ところで俺の卵を産んでくれるって話だけど……
意識を取り戻す。
ゆっくりと目を開けるが、何も見えない。
顔の周りは妙に熱っぽく、とてつもなく柔らかい。
わずかに酸味を感じるが、いい匂いもする。
なんじゃこりゃ!?
妄想世界から戻ってきたはずが、世界はすっかり様変わりしていた。
天変地異が起きたのか?
地球は、日本は、いったいどうなってしまったのだ?
チィーン! プシュー。
エレベーターが一階に到着した音がする。
扉が自動的に開く音もする。
だが、世界は相変わらず暗闇のまま。
マシュマロの柔らかさに包まれた俺は、芳醇な大人の香りに酔い続ける。
えも言われぬ幸福感に身を委ねながらも、次第に息苦しくなっていく。
「……リューキ様、大丈夫ですか?」
背後から俺の安否を尋ねる声がする。
頭を持ち上げた途端、世界に光が戻ってくる。
「ぷはっ! いったいなにが!? うおっ、ヴァスケル! なにするんだ!」
身体を起き上がらせた俺は、自分が姐さんヴァスケルに抱きしめられていたのに気づく。
どうやら、俺の頭はふたつの山に挟まれた深い谷にハマっていたようだ。
なるほど、どうりで柔らかかったわけだ。
「なんだい! あんたがフラッと倒れてきたから、支えてやったんじゃないか!」
ヴァスケルが強い口調で主張する。
「ごめん。うん、ヴァスケルのお陰で助かったよ。けど、シャツのボタンを外すのはふたつまでにしようか、俺、生き埋めになって天国に行きかけたからさ」
未練を断ち切るように、ヴァスケルから身を離す。
振り返ると、エレベーターの外からコンシェルジュがのぞき込んでいる。
てか、とんでもないところを目撃されてしまった。
「リューキ様、大丈夫ですか? ジーナ様に支えられえていましたが……あれ!? 奥様ではない! いえ、心配ご無用です。私はコンシェルジュ。お客様のプライバシーには立ち入りません!」
「はあ!? あんたはなに言ってんだい。あたいは奥様じゃなくて愛人だよ!」
「愛人!? うらやま……いえ、なんでもございません。リューキ様、愛人様、いってらっしゃいませ!」
思いのほか多弁なコンシェルジュに見送られる。
誤解を解こうかとも思ったが、時間がないので断念する。
あとはハンサムなコンシェルジュ君の口が固いことを願うのみだ。
まあ、よそでしゃべられても困らないけどね。
マンションを出て先を急ぐ。
目的地はローンを支払う不動産屋。
平日の午前中の街中は、こんなにも人が少ないのかと思いながら駆け足で進む。
十時半過ぎに不動産屋に到着。
店内を見ると今日も客はいない。
見慣れたベテランぽい感じのお姉さんがヒマそうにしている。
スムーズに手続きが進みそうで幸先良い。
「いらっしゃいませ! あら、ひと月振りね! えと……ドラゴンさん?」
「ん? なんであたいのことを知ってるんだい?」
「ヴァスケル。話がややこしくなるからここは俺に任せてくれ……で、俺はドラゴンじゃなくて辰巳竜騎です。『竜』に『騎る』と書いて『竜騎』。てか、俺は毎月自己紹介を繰り返さなきゃいけないのかよ」
「ごめんなさい! でも、本当にファンタジックで素敵な名前ね!」
不動産屋のお姉さんが適当なことを言う。
なぜかヴァスケルが満更でもなさそうな顔をして喜ぶ。
なんで嬉しがるのか、俺にはわからない。
無駄話をやめて、一万Gを支払う。
お姉さんはテキパキと金貨を金庫にしまう。
ともあれ、今月もローンも払い終えた。
これで俺の寿命が一カ月延びた。
やれやれだな。
さっさと店を出ようとする俺たちを、お姉さんが呼び止める。
「辰巳さん。当店ですが、来月を目途に閉店することになりそうです」
「マジで?」
「はい。辰巳さんの勤めておられた〇×電気工業だけでなく、系列会社も軒並み倒産しました。いまでは街から出ていく人ばかりで、家を探す人はほとんどいません。おかげで私も職探しです」
「それは……大変ですね。ところで、俺は来月からどうやってローンを払えばいいんですか?」
「お客様の支払通貨のGは、金融機関では扱っていないので、弊社系列店舗で直接お支払いして頂く必要があります。ちなみにここから一番近い店舗の所在地は×○県△□市になります」
「はあ!? そんな田舎に! 片道だけで三、四時間かかるじゃないか!」
「そう仰られても……この店が奇跡的に持ち直せば別ですが、私にはどうすることもできません」
晴天の霹靂ってやつだ。
今月分のローン支払いが済んでホッとしたのも束の間。
俺は新たな問題を抱えて店を出ることになってしまった。
ガッカリして歩く俺に、姐さんヴァスケルが声をかけてくる。
「なんだい! こんなに天気がいいってのにウジウジしちゃってさ」
「はは……そうだな。よし、気を取り直して魔界の金貨を回収に行こう! まずは、タナカ商会に行って情報収集だ。ついでにワーグナー棒を売って軍資金も調達する。ヴァスケル、万が一ってこともあるから、俺をしっかりと護ってくれ」
「わかったよ! あたいはそのために来たんだしね」
任せろとばかりに、姐さんヴァスケルが胸を叩く。
ぽよんぷよんと波を打つ。
ナニが波打ったかは説明不要だろう。
でもまあ、良いものを見たら少し元気が出てきた。
自制心を総動員して、波打つナニから視線を外す。
ヴァスケルが小脇に抱えたカラフルな雑誌が目に留まる。
二十代から三十代の女性が読むようなファッション誌のようだ。
「ヴァスケル、その雑誌は?」
「こ、これかい!? 不動産屋の姉さんから貰ったのさ。それだけさ、なんでもないよ!」
なんでもなくはないだろうと思いながら、雑誌の表紙をチラ見する。
少しよじれた表紙には、マジックペンで「タナカ不動産」と大きく書いてある。
最新号ではなく、廃棄予定の少し古いのを貰ってきたようだ。
「ヴァスケルはファッションに興味があるんだ。ワーグナー棒が換金できたら、服でも買うか?」
「あたいは服はいくらでも変化できるからいいよ。どちらかといえば化粧品の方が……」
「そうか。ひと仕事終えたら買いに行こうか」
「いいのかい!? あたい、すっごく嬉しいよ!!」
姐さんヴァスケルが、むにゅんと抱きついてくる。
うむ、良き感触かな。
俺は、ご機嫌なヴァスケルを腕にからませたまま歩き続ける。
車が一台通るのがやっとの道幅の路地を進む。
のんきに散歩していた黒いノラ猫が慌てて逃げていく。
本能的にヴァスケルの正体に気づいて、ビビったのかもしれない。
赤い屋根の家の角を曲がると、見覚えのあるオンボロアパートが見えてくる。
俺が働いていた工場で人事担当だった竹本さんの住まいだ。
ミシミシと階段をきしませながらアパートの二階に上がる。
「竹本」の表札のかかった戸を叩くが返事はない。
タナカ商会に行くのに同行してもらいたかったが、留守のようだ。
恩人ともいうべき竹本さんの不在を残念に思いながら階段を下りる。
俺たちは道を横断し、向かいにあるタナカ商会の大きな敷地に入る。
タナカ商会の事務所には鍵がかかっていたので、倉庫の方に向かう。
巨大な倉庫の扉は半開きで、中からヒトの声がする。
「こんちわー、失礼しまーす」と声をかけながら中に入ると、そこはちょっとした修羅場だった。
「待て! 早まるんじゃない!」
「竹ちゃん! 止めてくれるな! 俺が死ねば竹ちゃんは助かるんだ!」
「バカ! そんなことされてもうれしくない!」
パンチパーマのタナカが、刃を腹に突き立てようとして暴れている。
ドスを持ったタナカの手を、竹本さんが必死の形相で押さえている。
「ちょっ!? なにしてんだ! やめろよ!!」
タナカのオッサンの乱心を止めるべく、俺は倉庫の中に飛び込んだ。
チューリップに似た赤や黄や紫色の花に囲まれて、俺は猛烈に感動していた。
別に、花の美しさに心を奪われたわけではない。
どちらかといえば、食べ物の方がいい。
そう、花よりダンゴだ。
話が逸れた。
元に戻す。
花畑の脇には温泉がある。
直径三メートルほどの円形の露天風呂だ。
ためしに手を入れてみると、湯加減は丁度良い。
淡く白濁する湯のなかをのぞきこむと、半身浴できそうな浅い場所もある。
風呂のまわりには、テーブルのように平らな岩がいくつもあり、酒やツマミを持ち込んでの長風呂も楽しめそう。
うむ、実にスバらしい。
「リューキさまっ! この温泉は初代ワーグナー卿の時代からある由緒正しい露天風呂なんですよ!」
「ジーナ! すごくいいじゃないか! もっと早く教えてくれれば良かったのに」
「すいませーん」
「くっ、すぐにでも風呂に入りたいけど、ここは我慢だな」
「当たり前じゃ! 風呂はいいから、早うわらわの荷物を運んでくれなのじゃ」
エル姫に催促される。
俺は後ろ髪をひかれる思いで露天風呂をあとにした。
庭園の中央に建つ黒檀の塔に入る。
真っ黒い蔦に覆われて、魔女でも住んでいそうな外観に反して、塔の内部は快適な環境。
埃ひとつ落ちておらず、温度や湿度は程よく保たれていて住み心地良さそう。
ワーグナー棒の倉庫にしか使われていないのがモッタイナイくらいだ。
「たいしたものじゃ。わらわの生まれ育ったルシアナ皇国でも、このような造りの塔は見たことがないぞよ!」
「エル、何に感心してるんだ?」
「わからぬか? ほれ、石の継ぎ目がないであろう。この塔は巨大な岩をくりぬいて作られたのじゃ!」
「そっちか! やっぱスゴイことなんだよね、匠の技だよな!」
エル姫の説明を聞き、俺は素直に感嘆の声をあげる。
「ジーナ。塔を作ったのはオーク族か? それともゴブリン族の仕事か?」
「黒檀の塔はドワーフ族が作ったのです。むかーしむかしのことですけど」
「ドワーフ族って、カスパー領の? 地下資源の採掘で揉めてるっていう?」
「そうでーす。以前は、カスパー家のドワーフ族はワーグナー家と仲良しだったんです。ていうか、ワーグナー家の臣下だったんですよー」
「なんだか複雑な事情がありそうだな」
「今度の授業はカスパー家のドワーフ族の話にしましょー」
「わかりやすく簡潔にまとめてくれると嬉しいな」
「はーい、わっかりましたー!」
俺はこの世界の情勢を学ぶため、元領主で現城代のジーナ・ワーグナーと女騎士エリカ・ヤンセンにレッスンを受けている。
そのジーナ先生の次の講義のテーマが、いま決まった。
そういえば城を留守にしていたので、半月ばかり彼女の授業を受けていない。
ジーナ先生はここぞとばかりに張り切りそうだね。
また徹夜で講義を受けるのかな……頑張ろう。
収納袋からエル姫の引越し荷物を取り出す。
干からびた薬草が入った籐籠、獣の牙や角らしき怪しげな素材が収められた木箱、素材をすり潰すための乳鉢、鉄製の鍋、アルコールランプ、サイフォンのような形状の器具。すべて神紙の研究用資材だという。
だが、研究用資材以上に多いのが資料の類。
豪華な装丁が施された分厚い本から、息を吹きかけただけで崩れ落ちそうなくらいボロボロな古文書や巻物まで様々。まだ装丁されていない紙の束は書きかけで、エル姫自身の手によるものと推察された。
いまさらながら思うが、エル姫はお姫様というより、リケジョというか学芸員というか、研究者っぽい感じがする。
エル姫の荷物整理はあとでやってもらうとして、黒檀の塔の地下に降りる。
塔の地上は六階建てだが、地下はダンジョンのように広がっているとのこと。
採掘が得意なドワーフ族の真骨頂ってやつか。
地下室には、ワーグナー棒が保管されていた。
ひとつ十キロはある金の延べ棒が、何百本、いや何千本と山積みされている。
しかも同じような部屋がいくつもあるという。
あまりにも膨大な金の量に、俺はひとりで興奮する。
対して、ジーナはもちろん、ヴァスケルもエル姫も顔色ひとつ変えない。
人間界では金は貴重品だと説明しても、誰ひとりピンとこないようだ。
魔界の住人にとって、金塊は単なる石ころだからね。
まあ、いいさ。
金を売ったお金でお土産を山ほど買ってきて、みんなをビックリさせてやろうじゃないか。
収納袋にワーグナー棒を入れる。
ローン返済用に金貨一万枚を収納していたせいか、八十本ほどで満杯になる。
これで人間界に帰省する準備はすべて整った。
「リューキ、そろそろ行くかい!」
姐さんヴァスケルに促される。
てか、ヴァスケルは俺が思っていた以上にウキウキしているように見えた。
「ジーナ、エル、留守は頼んだぞ」
「はーい、おまかせくださーい。お土産忘れないでねー」
「リューキよ。気をつけて行ってくるのじゃぞ! それと、ジーナのことはわらわに任せるのじゃ!」
エル姫の自信満々な態度に、かえって妙な胸騒ぎを覚える。
おかしな騒動を起こさないことを祈るまでだ。
黒檀の塔にジーナとエル姫を残し、俺とヴァスケルは城の大広間に戻る。
いよいよ帰省するというのに、俺は懐かしさを覚えず、なぜか海外旅行にでも出かけるような気分になった。
◇◇◇
ワーグナー城の大広間。
人間界へと繋がる扉に青銅の鍵を近づける。
音もなく開いた扉をくぐると、そこはもう俺が元いた世界。
相変わらず「どこでも〇ア」並みの手軽さだ。
高層マンション最上階、三十三階からの眺望は抜群。
本日は晴天なり。
扉の前からエレベーターへ向かう通路に人影はない。
てか、このマンションで住人を見た覚えがない。
引っ越しの挨拶周りをしてないのを思い出すが、いまはそれどころではない。
時刻は午前十時。
明日の同時刻までに、ローンを払って、魔界の金貨を取り戻して、ジーナやエル姫へのお土産を買わなければならない。
もちろん、女騎士エリカ・ヤンセン用の抹茶スイーツやゴブリン・ロードのジーグフリードに渡す食料品も手に入れるつもりだ。
俺自身も買い物をしたい。
その前にワーグナー棒を日本円に換金して軍資金を手に入れなければならない。
いや、そもそも出所不明な金って売れるのかな?
ワケあり商品を扱うタナカ商会で要相談だな。
うむ、やらなきゃいけないことが満載だ。
あとは……そうだ、ヴァスケルのリクエストをまだ聞いてなかったな。
「ヴァスケル。お前は何か欲しいものはないのか? あれば遠慮なく言ってくれ」
「ホントにいいのかい? じつは、あたいさ……」
エレベーターが下降し始める。
密室でふたりきりのシチュエーション。
姐さんの潤んだ瞳が恥ずかしそうに下を向く。
ピアニストのように長い指は、腰まで伸びた黒髪をくるくると弄ぶ。
艶っぽい姐さんヴァスケルのもじもじする姿に、思わずクラッときてしまう。
……ヴァスケル、どうした? なにが恥ずかしいんだい? いつものお前らしくないじゃないか。もしかして、普段は強がっているだけなのかな? え? そんなことないって? うん、そうだね。実際に強いもんね。ホント、俺の味方でいてくれてありがとう。しかも愛人にまでなってくれるなんてさ。男冥利に尽きるってもんだ。ところで俺の卵を産んでくれるって話だけど……
意識を取り戻す。
ゆっくりと目を開けるが、何も見えない。
顔の周りは妙に熱っぽく、とてつもなく柔らかい。
わずかに酸味を感じるが、いい匂いもする。
なんじゃこりゃ!?
妄想世界から戻ってきたはずが、世界はすっかり様変わりしていた。
天変地異が起きたのか?
地球は、日本は、いったいどうなってしまったのだ?
チィーン! プシュー。
エレベーターが一階に到着した音がする。
扉が自動的に開く音もする。
だが、世界は相変わらず暗闇のまま。
マシュマロの柔らかさに包まれた俺は、芳醇な大人の香りに酔い続ける。
えも言われぬ幸福感に身を委ねながらも、次第に息苦しくなっていく。
「……リューキ様、大丈夫ですか?」
背後から俺の安否を尋ねる声がする。
頭を持ち上げた途端、世界に光が戻ってくる。
「ぷはっ! いったいなにが!? うおっ、ヴァスケル! なにするんだ!」
身体を起き上がらせた俺は、自分が姐さんヴァスケルに抱きしめられていたのに気づく。
どうやら、俺の頭はふたつの山に挟まれた深い谷にハマっていたようだ。
なるほど、どうりで柔らかかったわけだ。
「なんだい! あんたがフラッと倒れてきたから、支えてやったんじゃないか!」
ヴァスケルが強い口調で主張する。
「ごめん。うん、ヴァスケルのお陰で助かったよ。けど、シャツのボタンを外すのはふたつまでにしようか、俺、生き埋めになって天国に行きかけたからさ」
未練を断ち切るように、ヴァスケルから身を離す。
振り返ると、エレベーターの外からコンシェルジュがのぞき込んでいる。
てか、とんでもないところを目撃されてしまった。
「リューキ様、大丈夫ですか? ジーナ様に支えられえていましたが……あれ!? 奥様ではない! いえ、心配ご無用です。私はコンシェルジュ。お客様のプライバシーには立ち入りません!」
「はあ!? あんたはなに言ってんだい。あたいは奥様じゃなくて愛人だよ!」
「愛人!? うらやま……いえ、なんでもございません。リューキ様、愛人様、いってらっしゃいませ!」
思いのほか多弁なコンシェルジュに見送られる。
誤解を解こうかとも思ったが、時間がないので断念する。
あとはハンサムなコンシェルジュ君の口が固いことを願うのみだ。
まあ、よそでしゃべられても困らないけどね。
マンションを出て先を急ぐ。
目的地はローンを支払う不動産屋。
平日の午前中の街中は、こんなにも人が少ないのかと思いながら駆け足で進む。
十時半過ぎに不動産屋に到着。
店内を見ると今日も客はいない。
見慣れたベテランぽい感じのお姉さんがヒマそうにしている。
スムーズに手続きが進みそうで幸先良い。
「いらっしゃいませ! あら、ひと月振りね! えと……ドラゴンさん?」
「ん? なんであたいのことを知ってるんだい?」
「ヴァスケル。話がややこしくなるからここは俺に任せてくれ……で、俺はドラゴンじゃなくて辰巳竜騎です。『竜』に『騎る』と書いて『竜騎』。てか、俺は毎月自己紹介を繰り返さなきゃいけないのかよ」
「ごめんなさい! でも、本当にファンタジックで素敵な名前ね!」
不動産屋のお姉さんが適当なことを言う。
なぜかヴァスケルが満更でもなさそうな顔をして喜ぶ。
なんで嬉しがるのか、俺にはわからない。
無駄話をやめて、一万Gを支払う。
お姉さんはテキパキと金貨を金庫にしまう。
ともあれ、今月もローンも払い終えた。
これで俺の寿命が一カ月延びた。
やれやれだな。
さっさと店を出ようとする俺たちを、お姉さんが呼び止める。
「辰巳さん。当店ですが、来月を目途に閉店することになりそうです」
「マジで?」
「はい。辰巳さんの勤めておられた〇×電気工業だけでなく、系列会社も軒並み倒産しました。いまでは街から出ていく人ばかりで、家を探す人はほとんどいません。おかげで私も職探しです」
「それは……大変ですね。ところで、俺は来月からどうやってローンを払えばいいんですか?」
「お客様の支払通貨のGは、金融機関では扱っていないので、弊社系列店舗で直接お支払いして頂く必要があります。ちなみにここから一番近い店舗の所在地は×○県△□市になります」
「はあ!? そんな田舎に! 片道だけで三、四時間かかるじゃないか!」
「そう仰られても……この店が奇跡的に持ち直せば別ですが、私にはどうすることもできません」
晴天の霹靂ってやつだ。
今月分のローン支払いが済んでホッとしたのも束の間。
俺は新たな問題を抱えて店を出ることになってしまった。
ガッカリして歩く俺に、姐さんヴァスケルが声をかけてくる。
「なんだい! こんなに天気がいいってのにウジウジしちゃってさ」
「はは……そうだな。よし、気を取り直して魔界の金貨を回収に行こう! まずは、タナカ商会に行って情報収集だ。ついでにワーグナー棒を売って軍資金も調達する。ヴァスケル、万が一ってこともあるから、俺をしっかりと護ってくれ」
「わかったよ! あたいはそのために来たんだしね」
任せろとばかりに、姐さんヴァスケルが胸を叩く。
ぽよんぷよんと波を打つ。
ナニが波打ったかは説明不要だろう。
でもまあ、良いものを見たら少し元気が出てきた。
自制心を総動員して、波打つナニから視線を外す。
ヴァスケルが小脇に抱えたカラフルな雑誌が目に留まる。
二十代から三十代の女性が読むようなファッション誌のようだ。
「ヴァスケル、その雑誌は?」
「こ、これかい!? 不動産屋の姉さんから貰ったのさ。それだけさ、なんでもないよ!」
なんでもなくはないだろうと思いながら、雑誌の表紙をチラ見する。
少しよじれた表紙には、マジックペンで「タナカ不動産」と大きく書いてある。
最新号ではなく、廃棄予定の少し古いのを貰ってきたようだ。
「ヴァスケルはファッションに興味があるんだ。ワーグナー棒が換金できたら、服でも買うか?」
「あたいは服はいくらでも変化できるからいいよ。どちらかといえば化粧品の方が……」
「そうか。ひと仕事終えたら買いに行こうか」
「いいのかい!? あたい、すっごく嬉しいよ!!」
姐さんヴァスケルが、むにゅんと抱きついてくる。
うむ、良き感触かな。
俺は、ご機嫌なヴァスケルを腕にからませたまま歩き続ける。
車が一台通るのがやっとの道幅の路地を進む。
のんきに散歩していた黒いノラ猫が慌てて逃げていく。
本能的にヴァスケルの正体に気づいて、ビビったのかもしれない。
赤い屋根の家の角を曲がると、見覚えのあるオンボロアパートが見えてくる。
俺が働いていた工場で人事担当だった竹本さんの住まいだ。
ミシミシと階段をきしませながらアパートの二階に上がる。
「竹本」の表札のかかった戸を叩くが返事はない。
タナカ商会に行くのに同行してもらいたかったが、留守のようだ。
恩人ともいうべき竹本さんの不在を残念に思いながら階段を下りる。
俺たちは道を横断し、向かいにあるタナカ商会の大きな敷地に入る。
タナカ商会の事務所には鍵がかかっていたので、倉庫の方に向かう。
巨大な倉庫の扉は半開きで、中からヒトの声がする。
「こんちわー、失礼しまーす」と声をかけながら中に入ると、そこはちょっとした修羅場だった。
「待て! 早まるんじゃない!」
「竹ちゃん! 止めてくれるな! 俺が死ねば竹ちゃんは助かるんだ!」
「バカ! そんなことされてもうれしくない!」
パンチパーマのタナカが、刃を腹に突き立てようとして暴れている。
ドスを持ったタナカの手を、竹本さんが必死の形相で押さえている。
「ちょっ!? なにしてんだ! やめろよ!!」
タナカのオッサンの乱心を止めるべく、俺は倉庫の中に飛び込んだ。
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