フリーター、城を買う。 〜格安物件をローンで買ったら異世界のお城でした。ちくしょう!〜

きら幸運

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<フリーター探索編> ~ジーナはどこへ消えた?~

第六十九話:フリーター、龍の眷属になる

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 ワーグナーの領主ロード用の予備の居室。
 いわゆる俺の部屋マイルーム

 俺は、あねさんヴァスケルと並んでソファに座る。
 
 ソファはふかふか。
 けど、ヴァスケルの方がもっとふわふわなはず。
 ナニが柔らかいかなんて説明は不要だろう。はは。

「リューキ。ヤルならいまだと思うんだよね!」
「な、な、ナニを? いや、なにを?」

 思わず声がうわずる。

 うるんだ瞳に見つめられて、気持ちが高ぶる。
 経験ないわけじゃないけど久しぶりだ!
 ナンの経験かって聞かないでくれよな。
 おっと、ちょっとくどいか。えろうすんません。
 
「覚悟はイイかい? もう後戻りできないからね!」
「ヴァスケル。俺はいつだって準備万端さ。ドーンとこいだ!」

 セリフにムードもへったくれもない。
 経験の乏しさが如実にょじつにあらわれてしまう。
 こんなことなら恋愛物のハウツー本を読んでおけば良かったと後悔する。

 背徳的はいとくてきな格好のヴァスケルがじりじりと迫ってくる。

 俺は思わず身体からだを引いてしまう。

 ヘタレだ。

 ヴァスケルが覆いかぶさってくる。

 ただでさえ大きく開いたドレスの胸元がハッキリ見えてしまう。

 下向きになったふたつの山は、重力に負けることなく丸い形状を維持している。

 おおお……こんなにビッグなのにれないのか!
 すごいよすごいよー!!

 ヴァスケルは両手をのばし、俺の頭を抱える。
 あねさんの黒目がかった大きな瞳は涙があふれそうだ。

 ん? なんで?

 ちょっとだけ冷静になる。
 よく見ると、ヴァスケルが小刻みに震えているのが分かった。

「ヴァスケル、どうした? もしかして、お前、怖いのか?」
「あたい、はじめてなんだよ……」

 まさかのカミングアウトに驚く。

 ヴァスケルは何万年生きてるか分からない古龍エイシェントドラゴン
 経験豊富かどうかはともかく、まったくのはじめてだとは想定外だった。

 いや、そうか……そうだよな。
 セクシーな格好から決めつけちゃいけないよな。

 くっ、俺の馬鹿野郎! 
 俺も男だ!
 不安を取り除く言葉セリフのひとつも言ってやらねば!

「ヴァスケル。なにも心配ない。俺にすべて任せろ!」
「ほんとうかい? イイんだね。じゃあ、はじめるよ!」

 はじめる?
 
 なんだろう、そのヨーイ・ドン的な言葉は?

 途端に、あねさんヴァスケルの手に力がこもる。

 骨がミシミシって鳴りそうなくらい、俺の頭はガッチリと固定ホールドされる。
 
「ヴァ、ヴァスケル? もうちょっと優しくして!」
「はあ!? 泣き言いうんじゃないよ! もう後戻りできないって言ったろ!!」

 ヴァスケルの顔が近づく。

 肉感的で真っ赤な唇が、俺の口をふさぐ。

 そればかりか、彼女の長い舌が俺の口をこじ開け、ぐいぐい侵入してくる。

「もぐっ、うぐっ、うっ……」

 俺は抵抗をあきらめる。

 俺はソファの上で仰向あおむけ。ヴァスケルは俺の上に馬乗り。
 俺の下にはふかふかのソファ。俺の上にはふわふわのヴァスケル。

 正直、気持ち良いのなんのってもう最高なんだけど、思ってたのとなんか違う。

 あねさんヴァスケルの身体からだが白光する。

 え? うそ? マジで? 

 ここでドラゴンモードに変化チェンジするの? 
 ドラゴンの下敷きになったら潰れちゃうな。

 なーんて他人事ひとごとのように考えたが、そうはならなかった。

 代わりに、ザワザワした熱いモノがヴァスケルの口から注ぎ込まれてくる。

「ふおっ! ふもっ! ほごごっ……」

 火傷やけどしそうなくらい熱い流動体がのどを通る。

 ひたすら苦しい。

 一瞬、拘束こうそくから逃れようと考えてしまったが、ヴァスケルが苦悶くもんの表情を浮かべるので、熱さに耐えることにした。
 
 そうとも。

 ヴァスケルが俺に危害を加えるはずがない。

 ヴァスケルの熱が俺の全身に広がる。
 頭の上から足のつま先まで、すべてが置き換わったかのような錯覚に陥る。

 ちゅぽん!

 ヴァスケルのぷるぷるとした唇が離れてしまう。

 キスしていたのが数秒か数時間かわからないが、ものすごく名残なごり惜しい。
 
「俺、こんなスリリングな経験、はじめてだよ……」
「……あたいもさ。けど、これであんたはあたいの眷属けんぞくさ」

「そうか、俺はヴァスケルの眷属けんぞくになったのか……って、おい、てことは、俺は人間ヒトじゃなくなったのか?」
「……いまさらナニ言ってんだい。何度も尋ねたじゃないか? いったいナニをすると思ったのさ?」

 返す言葉がない。

 確かに俺は、ドラゴン眷属けんぞくになり、精霊の祝福ブレスをうけ、魔人まじんになると宣言した。

 エッチな展開の妄想は俺の早とちりだ。
 なんとも恥ずかしいな。

 うむ、仕方ない。
 ここはひとつ、盛大にしらばっくれよう。

「なーんでもーないさー! うん、すっかり生まれ変わった気分だよ! これで俺もカッコいいドラゴン変化チェンジできるのかな?」
「……できないよ。あんたはドラゴンじゃなくて竜人ドラゴニュートだからね」

「じゃあ、翼を生やして空を飛んだり、敵をガンガンやっつけたりは?」
「……ムリだね、リューキの身体能力は変わらないからね」

 とても残念なお知らせだ。

 俺、人間ヒトやめました。
 けど、何も変わりませんでした。

 そう、凡人ぼんじんのまま。
 いや、凡竜人ドラボニュートか。

 なんのこっちゃ? 畜生ちくしょう

「リューキ。あたい、疲れたよ……」

 ヴァスケルがボソリと言う。

 言われてみれば、彼女の声に張りはないし、顔色も青い。
  
 俺はヴァスケルを抱きかかえ、ベッドに運ぶ。

 栄養ドリンクを飲むかと尋ねるが「いらない」と断られる。

眷属けんぞく化って、相当疲労するんだな」
「……まあね。龍の魂ドラゴン・ソウルを分け与えるんだからね。あたいは当分ここで休ませてもらうよ。あんたは頑張って、一日も早く魔人になるんだよ」

「わかった。で、俺はこの先どうすればいいんだ?」
「……ジーナに尋ねな。姫さんもいろいろと詳しそうだから相談するといいさ」

 あねさんヴァスケルの目がトロンとする。
 全身脱力な感じでベッドに腹這いになる。

 大きく開けた背中があらわわになり、のぼりゅう紋々もんもんが目に入る。

「ヴァスケル。前にも話したけど、俺はマッサージ屋に半年ほど勤めたことがあるんだ。リラックスして休めるようにマッサージしてやるよ。これでもそこそこうまいんだぜ」
「そういえばそんなこと言ってたね。んじゃあ、頼むよ」

 俺はヴァスケルの肩から背中から腰までみほぐす。

 思っていた以上にも筋肉が強張こわばっている。

 戦闘だけでなく、ヴァスケルには不眠不休で飛びまわってもらった。

 彼女は平気そうな顔をしていたが、実はかなり疲労が溜まっていたみたいだ。

「ああ、すっごく、気持ちイイよ」
「ヴァスケル。お前には無茶させちまったな」

「いいよ。だから、あんたも……」

 ヴァスケルの言葉が途切れる。

 眠ってしまったようだ。

 いままで、どんなトラブルに陥っても最後はヴァスケルが何とかしてくれた。

 俺は彼女に甘えすぎていた。
 
「ゆっくり休んでくれ。次に会うとき、俺は魔人に、立派に魔界の住人になってるから」

 寝息を立てはじめたヴァスケルに声をかけ、俺は居室をあとにした。 
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