快感アプリ☆DREAMBOMB ~6:マッチョなランジェリーイケメンをイジめたい~

keino

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2 桃音の場合

8 いよいよAV転身かと思って

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 今日は久々の学校。私立の芸能科で、出席日数は考慮してもらえるから、余計に来たくなくなる場所。
 教室に入ると、クラスの一部がこちらを見てクスクスヒソヒソとやりはじめた。

 なにあれウッザー。あ、真ん中にやっぱりあいつがいるよ、河野。
 彼女もグラビアアイドルだからか、私の事を目の敵にしてんのよね……。彼女が、私の足を学校から遠退ける一番の原因だったりする。
 テレビ露出は、たまに深夜バラエティーのアシスタントや、サクラくらいみたい。

 それでも、ほとんどの生徒がそういったヒヨコでもなく、所属劇団などの発表会や、エキストラのみのタマゴのため、彼女の業界話題――要するに自慢話にはいとまがない。
 今日のあの人の周りには、いつもの河野グループに、結構な数の男女がプラスされていた。

「ずいぶんお久しぶりねぇ? 西原さん」
「おはよう、河野さん。うん、ちょっと……」

 この学校に入ったのは高校からで、すでにデビューしていた私は、学校でも天然妹キャラを演じている。
 もう疲れるったらない。

「歯切れが悪いわね? お仕事?」

 歯切れが悪いのは、仕事と言うとあんたが露骨に嫌味言うからでしょうが。妹キャラの維持に、余分な労力を使わせないで欲しい。
 頷くと、何の?と突っ込んできた。何なのよ……。

「写真集の撮影だけど……」
「本当に?」
「え? そうだよ? それがどうかしたの?」

 何この遠回し。マジ疲れるから話あるなら早く本題入れっての。

「こんなの見つけたんだけどー、いよいよあなたがAV転身かと思って、ふふふ」

 何このドヤ顔、腹立つわー。
 とりあえずにこやかにスマホを受け取るとそこには。

 ――――!!
 これって――私?! なんで?!
 これは夢の中の――!?

「えぇ?! やだっ、これってアダルトムービーじゃない!」

 慌ててスマホを返す演技をする。目はしっかり凝視。ヤバイ興味津々がバレる。

「そっくりと言うか、コレあなたじゃないの? あんなエログラビア――もうあれはただの着エロよね? そんなの撮ってるんだもの。いよいよAVに転身かって話していたところなのよ。"北"原桃音さん?」

 河野は返されたスマホを、得意気にまた突きつけてくる。
 立派なヒール面しちゃってますけど大丈夫ですか、河野さん?

「ひどい……桃音そんな時間ないもん……昨日もバラエティーの収録だったもん」

 そんな私も、天然のフリしてさりげなく毒も含ませておく。
 言外に、世間露出が貴女とは違うのよ、と。

「ホントに桃音が出るなら、西原桃音の名を全面に出すんじゃないの? ってその前にうちの社長が許すわけないし」

 興味津々で聞いていた周りは、うんうんと頷いている。

「パロられるほど、売れてるって事だよなー」
「そうだよねー羨まし~い」
「そもそも、18じゃねーじゃん!」

 外野が口々に話はじめて、内心ホッとした。そういえばAVは18からだっけ。

「引っ張りだこの桃音ちゃんを、事務所が手放すワケないだろ河野ー」 

 お前ならともかくー、と付け加えられる。もちろんその男子は冗談で言ったんだけど。
 そんな場を和ませるためのジョークでも、今の彼女には通じない。
 というか、それって芸能界頑張ってる女の子にはタブーでしょ……。
 河野はバンッと机を叩いて立ち上がった。

「私、昨日撮影で遅かったの。保健室で休んでくるわ!」

 あ、やっぱり。怒るよね。
 河野は踵を鳴らして教室を出ていった。
 まだ朝のHRも始まってないんですけど。

「……河野さん大丈夫かなぁ? 桃音、何か怒らせたのかなぁ……」

「桃音のせいじゃないよー。悪いのはコイツ!」

 禁句を口走った男子は頭を叩かれている。

「あいつプライドだけは一人前だからさー」

「桃音ちゃんのこと、動揺させたかったんじゃないの?」

 みんな口々に私を慰めてくれて席に戻っていった。

 私も席に着き考える。
 何あれ、どうして……?
 あれは快感アプリで見た夢のはずで――?
 それがなんであいつがあんな動画持ってるの?
 私が河野にスマホを突き付けられていた時、輪の中に居た隣の席の男子に聞いてみた。

「ねぇ、あの動画……河野さんはどこから持ってきたの?」

「どっかのアダルトサイトのサンプルムービーらしいぜ? 気にするなよ桃音ちゃん。売れっ子の証拠だって」

「うん、ありがと大丈夫……」

 サンプルムービー? どっかのアダルトサイト?
 私が快感アプリ使用中のDVDが売られているってこと? どこかの投稿サイトに、盗撮してアップとかではなく商品として? そもそも盗撮っていうのが非現実的だけど。

 だってあれは夢だよ? いつもちゃんとベッドの中で目覚めてるし、例え、寝ている私を誰かが撮影現場へ連れていってるとしても、一晩でそれは無理がある。
 だって快感アプリで海外でしてる夢も見たし! 同じドリームソフトで夢見ても、毎回内容も違えば場所も違うし!

 つーかそのサイトどこよ!
 あいつもなんで皆に見せびらかしてんのよ!!
 あーマジ腹立ってきた。
 HR中、私は悶々と思考をめぐらせていた。

「桃音ちゃん? 次、特別教室だよ?」

「あ! ごめんぼーっとしてた」

「大丈夫? 顔赤いよ? ……さっきのことなら本当に気にしない方がいいよ。超そっくりさんをよく見つけてきたもんだよね」

「整形でしょ。桃音ちゃん今キてるもん!」

「そうかな……、ありがと」

 みんな、私がエロムービーを気にして落ち込んでいると思ってるみたいだけど、それは違う。
 私は心底怒っていた。
 快感アプリDreamBombと河野に。

 あんな動画、あのアプリが関与してないわけがない。……そりゃ方法も解らないし、証拠も無いけど。
 これはあとできっちり調べてやるわ! まずそのサンプルムービーを見つけないと!

 そして河野。
 今まで河野とその取り巻きだけが、こまごまと嫌みを言ってきていただけだから、面倒でもいちいち相手して、天然で返してきたけれど。
 今回ばかりはやり過ぎ。教室で動画出して、まわりを巻き込んでまで陥れようとしてくるなんて。

 でもある意味、あなたには感謝しているの。
 だから、最高の快楽と辱しめを与えてあげる。
 せめて河野グループと私だけの時に言ってくれれば、私だってこんなこと考えなかったのにね?

 やっぱり気分が悪いからと言って、友人に言伝てを頼むと保健室に向かった。

「あれ? 桃音ちゃんも気分悪いの?」

 保健医が軽口を叩く。この軽さとなかなかのイケメンで、結構人気があるらしい。
 熱を計りながら少しおしゃべりに付き合って、手持ちぶさたで玩ぶフリをしながらデスクから1本、マジックペンを拝借した。

「よし、熱は無いね。疲れが少し出たんだろ。俺はフィットネス機材の搬入でここには居られないけど、休んでいきなよ」

 はい、と大人しく返事して、そっと隣の部屋へ入った。

 一番奥のカーテンが閉まっている。
 良かった、河野一人だ。まだ朝一だし、当然か。
 間を一つ空けたベッドを選び、カーテンを引いた。

 やがて、規則正しい深い寝息が聞こえてくると、私はそっと彼女のカーテンの内側へ忍び込んだ。
 持ってきたペンをサイドテーブルに置き、快感アプリDreamBombの体験版アプリを開く。
 たしかこれ、見られる確率70%以上だったよね。

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