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3 更紗の場合
2 今宵、あなたとシンデレラ
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即タップした。
【夢のようなお城、きらめくシャンデリア、
優雅な音楽の中、さざめきあう着飾った紳士淑女――】
説明が書かれた背景には、親指の爪より一回り大きいくらいしかない写真が無数に散っている。
そのどれもが、輝くシャンデリアや彫刻、豪勢に飾られた花や、きれいで美味しそうな食べ物、デザート、そしてドレスを着た女性たちや、正装した紳士たちが映されていた。
「ドレス……っ!」
これ。本当に見られたら、勉強に――私の将来にすごく役立ちそう。
と言うか本物のドレス見たい!
体験版でさえためらって試さなかったのに、私は一瞬も迷うことなく購入ボタンをタップした。
ドリームソフト1本を丸々無制限購入だとお高いけど、バージョン別を1回分レンタルならワンコイン以下だったし。
女性向けで、顔面レベル上バージョンを選択する。
手っ取り早くスマホ料金払いを選択し、使用前の注意に従ってバスタオルをベッドに敷く。もうパジャマだし着替えるまではしない。あと部屋の鍵を確認しとこ。
「よし。とりあえず、1回音と映像が消えるまで、眠らずに見てればいいのね」
ドキドキしながらマイページの購入ソフト一覧を開き、そこにちゃんと表示されている【今宵、あなたとシンデレラ】をタップした。
________ ___ __ _
「サラ! マーガレット嬢からドレス催促の手紙が来てるわよ!」
「サラ! わたくしたちのドレスが最優先ですわよ、わかっているわよね!」
「サラ! ダリア様のドレスのデザインは上がったんでしょうね! たっぷり御礼金いただいてるんだからね!」
「はい、いますぐー!!」
私は恐るべき速さでミシンの足ふみペダルを踏んでいる。
父が亡くなり、後妻である継母と継姉に、趣味であった裁縫の力を買われ、そして勝手に売られてしまった。
でもまぁそれはいい。このままでは我が家は没落する一方だし、裁縫は大好きだから。
けれども仕事を詰めすぎなのですよ! 私の体は一つしかないんですからね!
……私の腕を見込んで注文に訪れてくれるご婦人を見ると、ついその人に合うデザインをあれやこれや考えてしまって、請け負ってしまう私が自業自得なんですけどねぇ。わかってるよーだ、だって嬉しいんだもん。
そんな忙しい毎日を送っていたところに、さらなる爆弾が落とされた。
なんと王宮で、王太子様のお嫁さん探しのための舞踏会を開くと言うのだ!
なにそれ行きたいっ、超行きたいっ!
自分が作ったドレスを着飾ったお嬢様がたや、他人が作ったドレスが超見たい!
でも行けないの……。
こんなに忙しいんじゃ、自分のドレスが作れないわ。
ああ、でもどうしても行きたい。
ハッ、そうよ、別に王子様を狙いに行くわけじゃないんだから、体裁が整っていればいいのよ。私ったらあったまいいーっ!
そうと決まったら端切れをかき集めておきましょう。お姉様たちが舞踏会に出発したら、超特急で縫い合わせればオッケー。
え? 寝る時間を少し削ればいいんじゃないかって?
なにをおっしゃっていますの。忙しくて倒れるように眠る以外に睡眠時間なんてなくってよ! けれどわたくしこの生活嫌いじゃなくってよ!
さぁじゃんじゃん作るわよ~。
って私バカ!
ドレス出来てもお城まで行く馬車と御者手配してなかったじゃないの~~~!
お姉様たちに置いて行かれたなんてとんでもない!
ドレスが出来上がってお姉様に着付けた瞬間、死んだように眠った私を、近くのソファーまで運んで布団をかけてくださったわ。意識のない人間を運ぶのがどんなに大変かあなたご存知? しかも私が作ったドレスを着てよ?
「あぁサラ泣かないで! 私が助けてあげよう!」
「まぁなんて親切な人! ありがとう、魔法使いのおばあ――お兄さん?」
【夢のようなお城、きらめくシャンデリア、
優雅な音楽の中、さざめきあう着飾った紳士淑女――】
説明が書かれた背景には、親指の爪より一回り大きいくらいしかない写真が無数に散っている。
そのどれもが、輝くシャンデリアや彫刻、豪勢に飾られた花や、きれいで美味しそうな食べ物、デザート、そしてドレスを着た女性たちや、正装した紳士たちが映されていた。
「ドレス……っ!」
これ。本当に見られたら、勉強に――私の将来にすごく役立ちそう。
と言うか本物のドレス見たい!
体験版でさえためらって試さなかったのに、私は一瞬も迷うことなく購入ボタンをタップした。
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ドキドキしながらマイページの購入ソフト一覧を開き、そこにちゃんと表示されている【今宵、あなたとシンデレラ】をタップした。
________ ___ __ _
「サラ! マーガレット嬢からドレス催促の手紙が来てるわよ!」
「サラ! わたくしたちのドレスが最優先ですわよ、わかっているわよね!」
「サラ! ダリア様のドレスのデザインは上がったんでしょうね! たっぷり御礼金いただいてるんだからね!」
「はい、いますぐー!!」
私は恐るべき速さでミシンの足ふみペダルを踏んでいる。
父が亡くなり、後妻である継母と継姉に、趣味であった裁縫の力を買われ、そして勝手に売られてしまった。
でもまぁそれはいい。このままでは我が家は没落する一方だし、裁縫は大好きだから。
けれども仕事を詰めすぎなのですよ! 私の体は一つしかないんですからね!
……私の腕を見込んで注文に訪れてくれるご婦人を見ると、ついその人に合うデザインをあれやこれや考えてしまって、請け負ってしまう私が自業自得なんですけどねぇ。わかってるよーだ、だって嬉しいんだもん。
そんな忙しい毎日を送っていたところに、さらなる爆弾が落とされた。
なんと王宮で、王太子様のお嫁さん探しのための舞踏会を開くと言うのだ!
なにそれ行きたいっ、超行きたいっ!
自分が作ったドレスを着飾ったお嬢様がたや、他人が作ったドレスが超見たい!
でも行けないの……。
こんなに忙しいんじゃ、自分のドレスが作れないわ。
ああ、でもどうしても行きたい。
ハッ、そうよ、別に王子様を狙いに行くわけじゃないんだから、体裁が整っていればいいのよ。私ったらあったまいいーっ!
そうと決まったら端切れをかき集めておきましょう。お姉様たちが舞踏会に出発したら、超特急で縫い合わせればオッケー。
え? 寝る時間を少し削ればいいんじゃないかって?
なにをおっしゃっていますの。忙しくて倒れるように眠る以外に睡眠時間なんてなくってよ! けれどわたくしこの生活嫌いじゃなくってよ!
さぁじゃんじゃん作るわよ~。
って私バカ!
ドレス出来てもお城まで行く馬車と御者手配してなかったじゃないの~~~!
お姉様たちに置いて行かれたなんてとんでもない!
ドレスが出来上がってお姉様に着付けた瞬間、死んだように眠った私を、近くのソファーまで運んで布団をかけてくださったわ。意識のない人間を運ぶのがどんなに大変かあなたご存知? しかも私が作ったドレスを着てよ?
「あぁサラ泣かないで! 私が助けてあげよう!」
「まぁなんて親切な人! ありがとう、魔法使いのおばあ――お兄さん?」
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