23 / 49
3 更紗の場合
3 犬にペロされたと思えば
しおりを挟む
別に泣いてなんかないんだけど、これも様式美。呆然と立ちすくんでいたところに声がかかったと思ったら、とても容姿端麗なお兄さんがおられました。
しかし格好は真っ黒のロングローブでフードまでかぶり、怪しいことこの上ない。そんな怪しい自称魔法使いはズカズカ近づいてきたと思ったら、私の顎を持ち口付けてきた!!
あまりにも突然で、驚きすぎて固まってしまった。
ヌルッと唇をなめられ、舌が唇を割って入ってこようとする。歯列をなぞられてビクンッと体が震えた。
自分の体じゃなくなっちゃったみたいに、急速に力が抜けていく。
背筋を指先で辿られ、うなじをくすぐられる。ゾワゾワとした痺れが体中を駆け巡り、立っていられなくなって、情けなくもローブにすがる。
崩れる体を支えようとでも言うのか、魔法使いの足が私の足の間に入ってこようとしてドレスに阻まれ、それでもグイグイと腿が私の股に当たる。
「やあ……っ!」
拒む声を上げた瞬間ヌルリと舌が口内に侵入し、私の舌を絡め上げたと思ったら吸い出されて咥えられた。
チロチロと魔法使いの口の中でくすぐられて、ふにゃっと子猫が力なく鳴いてるみたいな声しか発せられない。
自分の気持ちでは精いっぱい両手で押してるつもりなのにビクともしない。
背中から腰に手を入れられて、魔法使いの足に私の股をこすり付けられるように動かされ、もう片手は胸をグリグリと揉んでくる。
何かが目の前でスパークしそうになったとき、私は何とか再起動した。スパークの恐怖に火事場のクソ力ってやつが発揮されたらしい。
ドンッと相手の胸を力いっぱい押して離れる。
「な! なにするんですかー!!」
「何って対価だよ。まさかタダなわけないでしょ」
「そういうのはきちんと条件の提示とこちらの了解を得て契約成立してからが常識です!」
「そっちの常識を僕に求められてもねぇ~」
本当に涙目になってギッと睨むと、魔法使いは「まぁ対価は頂いたんで……」と馬車と御者をデンと出してくれた。
「さっきの対価でできるのはこれくらいだね。ドレスや化粧は自分で――」
「これで大丈夫です!」
「えっ!? それで行くの!?」
「何か問題でも?」
「い、いやぁ、君がそれでいいならいいよ。最近の子のセンスはわからないなぁ」
じゃあ行きますんで!と馬車に乗り込もうとすれば、魔法使いが私の足に向かって杖を一振りした。
「ちょっぴり泣かせちゃったお詫びと、美味しい魔力のお礼に靴はサービスしとく。さすがにそのペタンコ靴じゃドレスに合わないでしょ」
踵は見えないから問題ないんですよ? 歩きやすいし。でも一応感謝いたします。
「ありがとうございます、魔法使いさん。セクハラした事は許しませんけど、馬車は感謝します。次私の目の前現れたら顔面ストレートぶっこみますので、気を付けてください」
人間社会の範疇外として今回だけは許しますけど、二度目はないですからね!
「君、お城にお見合いに行くんじゃないの? そんなんで大丈夫?」
「私の目的はお見合いじゃないので問題ないです」
「そう? でも結婚相手見つけないとご家族心配するでしょ」
「そうでもないと思います」
「それはそれで君が心配になるよ。まぁそんな君のための靴にしたからね。12時になったら馬車と御者は消えるから気を付けてね」
「わかりました。ありがとうございます」
よっしゃー、待ってろ新作ドレスぅ~!
あ。そういえば異性と普通に喋れてる。
まぁ出会い頭が最悪だったし魔法使いだし、異性じゃないね、動物よ動物。犬にペロされたと思えば私のメンタルは保たれるのだ!
しかし格好は真っ黒のロングローブでフードまでかぶり、怪しいことこの上ない。そんな怪しい自称魔法使いはズカズカ近づいてきたと思ったら、私の顎を持ち口付けてきた!!
あまりにも突然で、驚きすぎて固まってしまった。
ヌルッと唇をなめられ、舌が唇を割って入ってこようとする。歯列をなぞられてビクンッと体が震えた。
自分の体じゃなくなっちゃったみたいに、急速に力が抜けていく。
背筋を指先で辿られ、うなじをくすぐられる。ゾワゾワとした痺れが体中を駆け巡り、立っていられなくなって、情けなくもローブにすがる。
崩れる体を支えようとでも言うのか、魔法使いの足が私の足の間に入ってこようとしてドレスに阻まれ、それでもグイグイと腿が私の股に当たる。
「やあ……っ!」
拒む声を上げた瞬間ヌルリと舌が口内に侵入し、私の舌を絡め上げたと思ったら吸い出されて咥えられた。
チロチロと魔法使いの口の中でくすぐられて、ふにゃっと子猫が力なく鳴いてるみたいな声しか発せられない。
自分の気持ちでは精いっぱい両手で押してるつもりなのにビクともしない。
背中から腰に手を入れられて、魔法使いの足に私の股をこすり付けられるように動かされ、もう片手は胸をグリグリと揉んでくる。
何かが目の前でスパークしそうになったとき、私は何とか再起動した。スパークの恐怖に火事場のクソ力ってやつが発揮されたらしい。
ドンッと相手の胸を力いっぱい押して離れる。
「な! なにするんですかー!!」
「何って対価だよ。まさかタダなわけないでしょ」
「そういうのはきちんと条件の提示とこちらの了解を得て契約成立してからが常識です!」
「そっちの常識を僕に求められてもねぇ~」
本当に涙目になってギッと睨むと、魔法使いは「まぁ対価は頂いたんで……」と馬車と御者をデンと出してくれた。
「さっきの対価でできるのはこれくらいだね。ドレスや化粧は自分で――」
「これで大丈夫です!」
「えっ!? それで行くの!?」
「何か問題でも?」
「い、いやぁ、君がそれでいいならいいよ。最近の子のセンスはわからないなぁ」
じゃあ行きますんで!と馬車に乗り込もうとすれば、魔法使いが私の足に向かって杖を一振りした。
「ちょっぴり泣かせちゃったお詫びと、美味しい魔力のお礼に靴はサービスしとく。さすがにそのペタンコ靴じゃドレスに合わないでしょ」
踵は見えないから問題ないんですよ? 歩きやすいし。でも一応感謝いたします。
「ありがとうございます、魔法使いさん。セクハラした事は許しませんけど、馬車は感謝します。次私の目の前現れたら顔面ストレートぶっこみますので、気を付けてください」
人間社会の範疇外として今回だけは許しますけど、二度目はないですからね!
「君、お城にお見合いに行くんじゃないの? そんなんで大丈夫?」
「私の目的はお見合いじゃないので問題ないです」
「そう? でも結婚相手見つけないとご家族心配するでしょ」
「そうでもないと思います」
「それはそれで君が心配になるよ。まぁそんな君のための靴にしたからね。12時になったら馬車と御者は消えるから気を付けてね」
「わかりました。ありがとうございます」
よっしゃー、待ってろ新作ドレスぅ~!
あ。そういえば異性と普通に喋れてる。
まぁ出会い頭が最悪だったし魔法使いだし、異性じゃないね、動物よ動物。犬にペロされたと思えば私のメンタルは保たれるのだ!
0
あなたにおすすめの小説
月弥総合病院
僕君☾☾
キャラ文芸
月弥総合病院。極度の病院嫌いや完治が難しい疾患、診察、検査などの医療行為を拒否したり中々治療が進められない子を治療していく。
また、ここは凄腕の医師達が集まる病院。特にその中の計5人が圧倒的に遥か上回る実力を持ち、「白鳥」と呼ばれている。
(小児科のストーリー)医療に全然詳しく無いのでそれっぽく書いてます...!!
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
大嫌いな歯科医は変態ドS眼鏡!
霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
……歯が痛い。
でも、歯医者は嫌いで痛み止めを飲んで我慢してた。
けれど虫歯は歯医者に行かなきゃ治らない。
同僚の勧めで痛みの少ない治療をすると評判の歯科医に行ったけれど……。
そこにいたのは変態ドS眼鏡の歯科医だった!?
診察室の午後<菜の花の丘編>その1
スピカナ
恋愛
神的イケメン医師・北原春樹と、病弱で天才的なアーティストである妻・莉子。
そして二人を愛してしまったイケメン御曹司・浅田夏輝。
「菜の花クリニック」と「サテライトセンター」を舞台に、三人の愛と日常が描かれます。
時に泣けて、時に笑える――溺愛とBL要素を含む、ほのぼの愛の物語。
多くのスタッフの人生がここで楽しく花開いていきます。
この小説は「医師の兄が溺愛する病弱な義妹を毎日診察する甘~い愛の物語」の1000話以降の続編です。
※医学描写はすべて架空です。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる