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3 更紗の場合
3 犬にペロされたと思えば
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別に泣いてなんかないんだけど、これも様式美。呆然と立ちすくんでいたところに声がかかったと思ったら、とても容姿端麗なお兄さんがおられました。
しかし格好は真っ黒のロングローブでフードまでかぶり、怪しいことこの上ない。そんな怪しい自称魔法使いはズカズカ近づいてきたと思ったら、私の顎を持ち口付けてきた!!
あまりにも突然で、驚きすぎて固まってしまった。
ヌルッと唇をなめられ、舌が唇を割って入ってこようとする。歯列をなぞられてビクンッと体が震えた。
自分の体じゃなくなっちゃったみたいに、急速に力が抜けていく。
背筋を指先で辿られ、うなじをくすぐられる。ゾワゾワとした痺れが体中を駆け巡り、立っていられなくなって、情けなくもローブにすがる。
崩れる体を支えようとでも言うのか、魔法使いの足が私の足の間に入ってこようとしてドレスに阻まれ、それでもグイグイと腿が私の股に当たる。
「やあ……っ!」
拒む声を上げた瞬間ヌルリと舌が口内に侵入し、私の舌を絡め上げたと思ったら吸い出されて咥えられた。
チロチロと魔法使いの口の中でくすぐられて、ふにゃっと子猫が力なく鳴いてるみたいな声しか発せられない。
自分の気持ちでは精いっぱい両手で押してるつもりなのにビクともしない。
背中から腰に手を入れられて、魔法使いの足に私の股をこすり付けられるように動かされ、もう片手は胸をグリグリと揉んでくる。
何かが目の前でスパークしそうになったとき、私は何とか再起動した。スパークの恐怖に火事場のクソ力ってやつが発揮されたらしい。
ドンッと相手の胸を力いっぱい押して離れる。
「な! なにするんですかー!!」
「何って対価だよ。まさかタダなわけないでしょ」
「そういうのはきちんと条件の提示とこちらの了解を得て契約成立してからが常識です!」
「そっちの常識を僕に求められてもねぇ~」
本当に涙目になってギッと睨むと、魔法使いは「まぁ対価は頂いたんで……」と馬車と御者をデンと出してくれた。
「さっきの対価でできるのはこれくらいだね。ドレスや化粧は自分で――」
「これで大丈夫です!」
「えっ!? それで行くの!?」
「何か問題でも?」
「い、いやぁ、君がそれでいいならいいよ。最近の子のセンスはわからないなぁ」
じゃあ行きますんで!と馬車に乗り込もうとすれば、魔法使いが私の足に向かって杖を一振りした。
「ちょっぴり泣かせちゃったお詫びと、美味しい魔力のお礼に靴はサービスしとく。さすがにそのペタンコ靴じゃドレスに合わないでしょ」
踵は見えないから問題ないんですよ? 歩きやすいし。でも一応感謝いたします。
「ありがとうございます、魔法使いさん。セクハラした事は許しませんけど、馬車は感謝します。次私の目の前現れたら顔面ストレートぶっこみますので、気を付けてください」
人間社会の範疇外として今回だけは許しますけど、二度目はないですからね!
「君、お城にお見合いに行くんじゃないの? そんなんで大丈夫?」
「私の目的はお見合いじゃないので問題ないです」
「そう? でも結婚相手見つけないとご家族心配するでしょ」
「そうでもないと思います」
「それはそれで君が心配になるよ。まぁそんな君のための靴にしたからね。12時になったら馬車と御者は消えるから気を付けてね」
「わかりました。ありがとうございます」
よっしゃー、待ってろ新作ドレスぅ~!
あ。そういえば異性と普通に喋れてる。
まぁ出会い頭が最悪だったし魔法使いだし、異性じゃないね、動物よ動物。犬にペロされたと思えば私のメンタルは保たれるのだ!
しかし格好は真っ黒のロングローブでフードまでかぶり、怪しいことこの上ない。そんな怪しい自称魔法使いはズカズカ近づいてきたと思ったら、私の顎を持ち口付けてきた!!
あまりにも突然で、驚きすぎて固まってしまった。
ヌルッと唇をなめられ、舌が唇を割って入ってこようとする。歯列をなぞられてビクンッと体が震えた。
自分の体じゃなくなっちゃったみたいに、急速に力が抜けていく。
背筋を指先で辿られ、うなじをくすぐられる。ゾワゾワとした痺れが体中を駆け巡り、立っていられなくなって、情けなくもローブにすがる。
崩れる体を支えようとでも言うのか、魔法使いの足が私の足の間に入ってこようとしてドレスに阻まれ、それでもグイグイと腿が私の股に当たる。
「やあ……っ!」
拒む声を上げた瞬間ヌルリと舌が口内に侵入し、私の舌を絡め上げたと思ったら吸い出されて咥えられた。
チロチロと魔法使いの口の中でくすぐられて、ふにゃっと子猫が力なく鳴いてるみたいな声しか発せられない。
自分の気持ちでは精いっぱい両手で押してるつもりなのにビクともしない。
背中から腰に手を入れられて、魔法使いの足に私の股をこすり付けられるように動かされ、もう片手は胸をグリグリと揉んでくる。
何かが目の前でスパークしそうになったとき、私は何とか再起動した。スパークの恐怖に火事場のクソ力ってやつが発揮されたらしい。
ドンッと相手の胸を力いっぱい押して離れる。
「な! なにするんですかー!!」
「何って対価だよ。まさかタダなわけないでしょ」
「そういうのはきちんと条件の提示とこちらの了解を得て契約成立してからが常識です!」
「そっちの常識を僕に求められてもねぇ~」
本当に涙目になってギッと睨むと、魔法使いは「まぁ対価は頂いたんで……」と馬車と御者をデンと出してくれた。
「さっきの対価でできるのはこれくらいだね。ドレスや化粧は自分で――」
「これで大丈夫です!」
「えっ!? それで行くの!?」
「何か問題でも?」
「い、いやぁ、君がそれでいいならいいよ。最近の子のセンスはわからないなぁ」
じゃあ行きますんで!と馬車に乗り込もうとすれば、魔法使いが私の足に向かって杖を一振りした。
「ちょっぴり泣かせちゃったお詫びと、美味しい魔力のお礼に靴はサービスしとく。さすがにそのペタンコ靴じゃドレスに合わないでしょ」
踵は見えないから問題ないんですよ? 歩きやすいし。でも一応感謝いたします。
「ありがとうございます、魔法使いさん。セクハラした事は許しませんけど、馬車は感謝します。次私の目の前現れたら顔面ストレートぶっこみますので、気を付けてください」
人間社会の範疇外として今回だけは許しますけど、二度目はないですからね!
「君、お城にお見合いに行くんじゃないの? そんなんで大丈夫?」
「私の目的はお見合いじゃないので問題ないです」
「そう? でも結婚相手見つけないとご家族心配するでしょ」
「そうでもないと思います」
「それはそれで君が心配になるよ。まぁそんな君のための靴にしたからね。12時になったら馬車と御者は消えるから気を付けてね」
「わかりました。ありがとうございます」
よっしゃー、待ってろ新作ドレスぅ~!
あ。そういえば異性と普通に喋れてる。
まぁ出会い頭が最悪だったし魔法使いだし、異性じゃないね、動物よ動物。犬にペロされたと思えば私のメンタルは保たれるのだ!
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