快感アプリ☆DREAMBOMB ~6:マッチョなランジェリーイケメンをイジめたい~

keino

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4 茉帆の場合

2 物欲しそうな表情をしている女が映っていた

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 好きな夢が見られるアプリ?
 なにこれ胡散クサ。
 シリアルにヨーグルトとミックスフルーツを少しのせた、簡単なブランチを食べながら、訝しみながら読む。
 しかし読めば読むほどに引き込まれていく。

 だって昨日、エッチなサンプルショット見ながら、夢心地でイジって寝ちゃったら、ちょっとエッチな夢見ちゃったもん。
 これってアリなんじゃ?
 今日は日曜日で予定がないし、しかも雨。お出掛けどころか家事もしたくない。

 雅斗は付き合いがあるって言ってたから、スカイブは夜までおあずけ。
 暇だしサンプル試してみようかな……。
 ドキドキしながらサンプルダウンロードボタンを押した。



________ ___ __ _




 昨日の夜は結局、雅斗とはスカイブしなかった。
 少し飲みで遅くなるとメッセしてきた雅斗に、気にしないで、今日は疲れたから早めに寝るから、と言う主旨で返信したのだ。
 時差は日本の方が2時間遅いから申し訳ない気持ちになるけれど、飲みに行くのだから構わないだろう。

 罪悪感があった。
 あのアプリだ。
 あのアプリは凄い物だった。
 まさにリアルかのような臨場感溢れるセックスを繰り広げられ、もう少しで私の待ち望んでいた、人の手によって極めるというところで目が覚めてしまった。
 私はその夢の中の人の名を呼びながら、夢中でバイブとローターを動かしてなんとか果てた。

 夢から覚めてのこれは、夢で昂っていたとはいえ、結局自らの手によってイったのと変わりなく、数時間後に目覚めた私は、罪悪感でいっぱいになってしまったのだった。
 もう忘れてしまったけれど、夢の中とはいえ、雅斗じゃない人の名を呼びながらイくなんて。
 そして、あの夢の中の快感を忘れられず、まだソフトは買ってはいないけれど、有料会員登録をしたのも罪悪感に拍車をかけていた。



 でも、やっぱりあれは、すごかった。
 満員電車に潰されているのも忘れて、思わず赤面し腿を擦り合わせてしまう。
 慌てて気を引き締めて、窓の外を見つめた。
 満員電車通勤も3ヶ月。
 雅斗の転勤が決まったときに結婚も決まり、2部屋家賃を払うのはもったいないからと、まず私の方を引き払うことになった。

 私が日本にいて仕事場へ通うんだから、雅斗の部屋の方を解約したかったけれど、部屋の大きさやセキュリティ面、仕事の資料の多さで、出国までに片付ける目処もないということで、私の方が引っ越してきたのだった。
 高校までは自転車、大学は一人暮らしを始めてバス、通勤は再び自転車にした私は、満員電車初心者だった。

 雅斗のマンションから、職場まで特急で30分。初めの頃は泣きそうだったけど今じゃさすがに慣れた。雨の日はまだ泣きたいけれど。
 その時だった。違和感を感じたのは。

 びくんっと体が波打つ。
 痴漢? ちょっと止めてよ、気持ち悪い!
 乗客に押し潰されて腕も動かせない私は、その手から逃れようと体をひねろうとした。
 けれど、くにくにと腰が振れるばかりで逃れられない。

「ひゃうっ」

 私があげた小さな悲鳴は、すれ違う電車との騒音にかき消される。
 柔らかいフレアスカートだったのがアダになり、お尻の割れ目から前方へ、指がすっと入ってきて上へ――つまりアソコへクッと押し込まれたのだった。

「えっ……」

 あまりのことに絶句する。
 嘘でしょ? 痴漢なんて私とは縁のない世界で、話を聞くと腹立つものの、現実味なく漠然とでしかわかっていなかった。
 一旦は手が引っ込んだものの、私が体を固めている間に、痴漢は再び触ってきてより大胆になっていく。
 痴漢ってこんなにも性急でこうも図々しいの!?
 ふざけんなと声を上げようとした瞬間、ビリッと快感が走って口を引き結んだ。

 何、今の? まさか感じたの!?
 ガクガクと震えてきて、心臓が早鐘を打つ。
 思わず手すりに両手で縋り付いて、ぎゅうっと目を固くつむる。
 次触ってきたら、絶対大声出してやるんだからッ!

 ピトッとスカート越しにではなく、ストッキング越しに太ももを触られ、びっくりしてまた固まってしまった。
 だっていつの間にスカートをめくりあげてた。
 驚いてる間に指先が肌をなぞり始めて――――

「痴漢ですね。次、降りてください」

 その声にビクッと大きく体を震わせた。

「な! 何を言っているんだ! そんなわけないだろう!!」

 ドスンと体を押されて隣の人の胸に飛び込んでしまった。
 注意されたらしき人物は、無理やり隣の車両に移っって行った。

「す、すみません」

「いいえ、大丈夫ですか?」

 胸に飛び込んでしまった人が助けてくれた人だった。
 慌てて離れて――と言ってもぎゅうぎゅうに混んでいるから、離れるというより寄りかかってしまっていたのを、ただ自分の足で立つというだけだけどとりあえず離れる。

「あ、ありがとうございました」

 お礼を言って相手の顔を見たら、自分と同世代で2、3コ上くらいのスーツ着用の男性だった。
 柔らかなイケメンで、でも芯はしっかりして真面目そうな男性だ。
 その男性が、ひゅっと息を呑む。
 なんだ?と思って瞬きしたら、ポロポロと涙がこぼれた。

「あっ、あぁ、ごめんなさい……」

 バッグからハンカチを取り出そうとするも、手が震えて覚束ない。
 すると男性が自分のハンカチを差し出してくれた。

「自分ので悪いけど、良かったら」

「重ね重ねすみません……」

「いいえ」

 助けてもらったのに断れる雰囲気じゃなかった。
 そのハンカチで涙を吸わせる。

「あの、すみません……、洗って返しますから」

「いいえ、そんなのお気になさらずに。
 あ、いいえその……、良かったら、これから一緒に乗りませんか」

「そんな、とんでもないです。今助けてもらったのだけで充分です」

「俺、毎朝これくらいの時間でこの路線なんです、ついでみたいなものですから。
 とりあえず明日、ハンカチを洗って返してくれるんでしょう? この電車、最後尾で待ってます」

 その時大きく電車が揺れた。
 その人は私を囲むようにドアに手をつく。

「それに、そんな無防備な顔で、電車に乗っちゃ駄目だ」

 目を眇められて見下ろされ、思わずサッと目を背けた。
 電車が地下に入る。

「し、失礼なこと言わないでください」

「ご自分の顔を見てみるといいですよ」

 顔を逸らして彼の方にむき出しになってしまった耳に囁かれる。
 また体がビクついて首を竦める。
 フッと小さく息を吐く音が聞こえた。

「ホラ、またそんな顔をする……。心配で心配で、たまらなくなります」

 軽くあごを持たれてドアの方を向かせられた。
 地下に入り鏡のようになったドアの窓には、真っ赤になって目を潤ませた、まるで物欲しそうな表情かおをしている女が映っていた。
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