15 / 48
15 黒歴史再来
しおりを挟む寝るしたくを全て済ませてベッドに転がる。
早速、電話のあとお風呂で春希と練習した電話番号メール(SMSと言うらしい、ややこしい)を開く。
ああその前にアドレス帳に四ッ橋先生を登録しないといけないのか。
大丈夫だ。声さえ聞かなきゃただのありふれたイケメン。へーきへーき。むりやりテンションを上げていく。
『本原若葉です 先程はお世話になりました 私のSNSIDです』
……先程はお世話になりましたって嫌味っぽくない?
さっきはどうも、とかにする? うーん、馴れ馴れしくて無理だわ。
うんうん悩むがすでにもう2時近い。悩むのがバカらしくなってきた。
まだ店にいるのかどうかは知らないけど、いいや送っちゃえ。
ふぃーやりきったーとスマホから手を放して目をつぶった瞬間、ヴヴヴっとスマホが震えた。
早っ、マジですか。
『四ッ橋旺佑です。連絡ありがとう。送れていますか?』
しっかりと全文がセンター通知に表示される短さで、そして寝落ち言い訳が使えない速さで返事きた。
SMSの方じゃなくてちゃんと教えたSNSの方で、アイコンはフクロウ、IDはO-sukeとなっている。キリッとしてる真ん丸フクロウがかわいい。って今はそんなのどうでもよくてっ。
見事に最後は疑問形。しかも送信確認の基本形。敵ながらあっぱれ、返事をしないわけにはいかないやつだ。
自分だったらこれで返事来なかったら凹む。
しばらくセンター通知を眺める。意を決してSNSを開き、でも『本原若葉です 』まで打ち込んで指が止まった。
こんばんは? フレ登録あり? え、こんなときなんて言うの?
ややややや、四ッ橋先生待ってるよ、あっちには私がメッセージ開いた瞬間にすかさず既読ついてるはずだもん!
『本原若葉です 大丈夫です、入っています』
ば、ばかー……。なんちゅう返信なの、コミュ症か。
でもでも話振るとか、さっきの話蒸し返すのとかごめんだし。
もちろんこちらにも、メッセージを送信したそばから既読はついた。
『連絡くれて本当にありがとう。すごく嬉しい』
うぐあああああーーーっっっ!
これダメなやつ、これダメなやつ、これダメなやつー!
四ッ橋先生の声で再生されるぅー!?
誰だよ、声さえ聞かなきゃ大丈夫とか言った無責任な奴はよぅっ。私だよぉっ!
うん。だめだ。これはダメ。ブロるしかない。うん、ムリ、私には早すぎたよ春希、ごめんね頑張れなかった。いや、むしろここまで良く頑張った。
だってマジ無理、死んじゃう。恥ずかしくて死んじゃう。心臓破裂して死んじゃう。脳の血管いって死んじゃう。
これあれだ。
なんて言うか、恋愛シミュレーションゲームしてるみたいな感覚と言いますか。いや、そういうゲームしたことないけどっ。CMで見たことあるやつっ。
なんだろ、ちっちゃい頃、RPGのヒロイン名を自分にしてて――あぁそういえば、ヒロインだと思っていたのに途中で死んじゃって、しかもそのキャラばっかりパーティーに入れて使ってたから、他キャラ全然育ってなくて、今更レベル上げ面倒だわヒロイン死んでショックだわで、そこからやる気が急激に削がれて投げたゲームがあってだね……。
そこからゲームキャラの名前変えるのやめたんだっけ。ハンドルネームつけるのすらためらうようになっちゃって、でもネットゲームこそ自分だし……、うあぁ黒歴史。
ヤバイ、変なトラウマまで掘り起こされちゃってんじゃん。もう無理。とにかく無理。
よし謝ろう。ごめんなさいしよう。
『ごめんなさい やっぱり無理です』
よし、これで万事解決、さようならです。
さっきのお店であったみたいに押されるかもしれないけど、今度は生声じゃない。頑張ってごめんなさい送り続ければ、いつかは折れるはず。
そこまではメッセージも我慢しよう、頑張ろう。うん、私頑張ってる!
画面を消し、ふいーっと額の汗を拭う。
またもや速攻ヴヴヴっとスマホが手の中で震えた。
ひぃっとスマホを持ってた腕が伸びる。恐る恐る薄目で通知を読む。
『ごめん、体調不良で早退したんだったよね。ゆっくり休んで下さい』
なぜ早退したの知ってるの。
店で名指ししたのだろうか。誰に聞いた? 内線で? フロントで?
あーーー、明日のバイト行きたくないよぉ!
店員の名指しは珍しくないんだけど、あれほどのイケメン揃いは珍しいから悪目立ちしてしまってると思う。早退してきちゃったし。
またヴヴヴっと通知が入った。
『それなのに連絡先送ってくれて本当にありがとう。また連絡します。お休みなさい』
伝わってないじゃん!
違う、そうじゃない。私の言った『やっぱ無理』はそういう意味じゃないんだけど、私は問題を先送りにした。
キャパオーバーで考えられない。ここから巻き返すとか今日は本当無理。精魂尽き果てた。
とりあえず、お休みなさいのスタンプだけ送ると、さっきからは考えられないほど時間がかかってからスマホがブルり、おやすみのスタンプが返ってきた。
これで心置きなくスマホを放置できる。
ちなみに四ッ橋先生のおやすみスタンプは、ステッカーか道路標識みたいなデザインの、棒人間のやつだった。
うん、スタンプならまだ大丈夫そう。
0
あなたにおすすめの小説
人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている
井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。
それはもう深く愛していた。
変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。
これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。
全3章、1日1章更新、完結済
※特に物語と言う物語はありません
※オチもありません
※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。
※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。
幼馴染みのメッセージに打ち間違い返信したらとんでもないことに
家紋武範
恋愛
となりに住む、幼馴染みの夕夏のことが好きだが、その思いを伝えられずにいた。
ある日、夕夏のメッセージに返信しようとしたら、間違ってとんでもない言葉を送ってしまったのだった。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
鬼上官と、深夜のオフィス
99
恋愛
「このままでは女としての潤いがないまま、生涯を終えてしまうのではないか。」
間もなく30歳となる私は、そんな焦燥感に駆られて婚活アプリを使ってデートの約束を取り付けた。
けれどある日の残業中、アプリを操作しているところを会社の同僚の「鬼上官」こと佐久間君に見られてしまい……?
「婚活アプリで相手を探すくらいだったら、俺を相手にすりゃいい話じゃないですか。」
鬼上官な同僚に翻弄される、深夜のオフィスでの出来事。
※性的な事柄をモチーフとしていますが
その描写は薄いです。
【R18】幼馴染がイケメン過ぎる
ケセラセラ
恋愛
双子の兄弟、陽介と宗介は一卵性の双子でイケメンのお隣さん一つ上。真斗もお隣さんの同級生でイケメン。
幼稚園の頃からずっと仲良しで4人で遊んでいたけど、大学生にもなり他にもお友達や彼氏が欲しいと思うようになった主人公の吉本 華。
幼馴染の関係は壊したくないのに、3人はそうは思ってないようで。
関係が変わる時、歯車が大きく動き出す。
若社長な旦那様は欲望に正直~新妻が可愛すぎて仕事が手につかない~
雪宮凛
恋愛
「来週からしばらく、在宅ワークをすることになった」
夕食時、突如告げられた夫の言葉に驚く静香。だけど、大好きな旦那様のために、少しでも良い仕事環境を整えようと奮闘する。
そんな健気な妻の姿を目の当たりにした夫の至は、仕事中にも関わらずムラムラしてしまい――。
全3話 ※タグにご注意ください/ムーンライトノベルズより転載
大嫌いな歯科医は変態ドS眼鏡!
霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
……歯が痛い。
でも、歯医者は嫌いで痛み止めを飲んで我慢してた。
けれど虫歯は歯医者に行かなきゃ治らない。
同僚の勧めで痛みの少ない治療をすると評判の歯科医に行ったけれど……。
そこにいたのは変態ドS眼鏡の歯科医だった!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる