平民に転落した元令嬢、拾ってくれた騎士がまさかの王族でした

タマ マコト

文字の大きさ
10 / 20

第10話 「微笑みの裏に」

しおりを挟む
 花祭りの夜は、遅くまで笑いを抱えていた。
 けれど、笑いの種が土に沈んで眠りはじめた頃――靴音が、村の石を乱暴に叩いた。

 最初に気づいたのは、太鼓の皮を外していた若者の叫びだった。
「誰だ――!」
 返ってきたのは、冷えた号令。
「王都より来訪。門を開けよ。――王子暗殺未遂事件につき、全戸捜索を行う!」

 空気が一枚きしんだ。
 庵の囲炉裏に火を足していた私は、薪を持つ手を止めた。火の舌が、不安に舐めるように揺れる。
 カイルが扉へ歩き、閂に手をかける。
「俺が行く。君は、火のそば」

「うん」

 細い隙間から、夜の湿り気と、鉄の匂いが流れ込む。
 黒い上衣の兵が三人。背後に灯りの列。村の入口から、さらに影が増えてくる。

「この村に、王都訛りは似合わない」
 カイルは低く言う。
「用件だけ述べろ」

「王子暗殺未遂事件に関する――」
 兵士の口上は、磨かれた金属みたいに滑っている。
「関係者の潜伏が疑われる。読み書きに長け、身を偽ることに長けた若い女。名を――」

 喉の奥が熱くなった。
 私は思わず、胸に縫い付けた革袋を押さえる。鍵が指先に固く当たる。
 言うな。
 言うな。
 ――言われる。

「アメリア=レオンハルト」

 空気から、音がひとつ抜けた。
 そして、戻ってきた。強く。
 誰かの息、誰かの靴のきしみ、誰かの祈り。
 私は立ち上がろうとして、膝がかすかに笑った。笑うな、今は。

 乾物屋の老婆の杖の音が、どこかで二度、静かに鳴る。合図。
 広場へ集められる人々。尋問。名前。出身。指先の荒れ具合。――襟を立てろ、とあの声が耳で囁く。

 カイルは扉の外へ半歩出た。
 兵が灯りを持ち上げ、彼の顔を覗く。
「お前は」

「旅の騎士。ここで火を守っている」

「ならば協力しろ。怪しい女を出せ」

 庵の内側で、私は息を止めた。
 怪しい女。
 偽りの名。
 微笑みの裏。
 積み重ねた今日が、薄紙の束みたいに乱暴にめくられる音がした。

 カイルの声は、静かだった。
「この村で、誰も“怪しく”ない夜はない」

「戯言を」

「祭りの残り香がある。酒がある。笑いがある。冠の欠片が足元に落ちている。――それら全部を“怪しい”と言うなら、王都は花を知らない」

 兵が舌打ちし、二人が庵へ踏み込もうとした瞬間、カイルの腕が水平に伸びた。
 肩は上がらない。肘は閉じる。
 ただ、入れない線を夜に引いた。

「退け。命令だ」
「見せろ。命令を」

 兵が懐から布を取り出す。黒い封蝋。宰相印。
 私は指の中の鍵がいっそう硬くなるのを感じた。
 あの赤い封蝋の手紙。――“明朝に弁明を”。そして夜の兵。
 別の舌で書かれた命令。
 今夜も、同じ。

「王子暗殺未遂――」
「どの王子だ」

 カイルが問う。
 兵は短く言った。
「第一王子殿下」

 火がひとつ跳ねた。
 カイルの目の奥で、何かが小さく結び直されたのがわかる。
 第一王子。宰相。あの庭。
 私は唇の内側を噛む。血の味。
 彼が誰かが、こちら側に向かってくる。

「暗殺“未遂”だな」
「そうだ」

「なら、暗殺は失敗し、王子は生きている」

「当たり前だ」

「ならば、恐怖で村を縛る理由はない」

 兵は苛立ったように灯りを揺らした。火が風を食べ、庵の壁に影が伸びる。その影が、木箱の位置を撫でていく。
 私は視線を落とす。
 そこには銀の輪がある。紋章。――アルフォード家。
 今は、まだ箱の中。

「繰り返す。アメリア=レオンハルト。匿っていれば――」

 言葉が、庵の外で割れた。
 乾いた布が裂ける音。
 市場の端で、誰かが倒れたような鈍い音。
 人々のざわめき。
 兵の視線が一瞬そちらへ向く。
 その瞬間、カイルが半歩だけ前へ出た。

「広場でやれ。火のそばで人を脅すな」

「命令するな!」

 剣の柄に手がかかる。
 私の指は、革袋をもっと強く握っていた。
 ――やめて。
 ――でも、止められない。
 私の声は、今夜、火より弱い。

 広場は灯りで満ちていた。
 太鼓は外されて片隅に転がり、柱の花は半分ほど落ちて、地面に色が散っている。
 子どもたちは家へ押し戻され、女たちは戸口で腕を抱き、男たちは口を結ぶ。
 乾物屋の老婆が杖をつき、私に見えない合図をひとつ送る。――襟を立てろ。

 兵士の隊長格が布告を読み上げる。
「王都にて、第一王子殿下の行幸の途上、刃を向ける者あり。未遂に終わり、下手人は逃走。関係者は――」

「未遂なら、殿下は無事だね」

 と、誰かが言った。酔いの残った若者の声。
 兵が鋭く睨む。
「口を挟むな」

「口、挟むさ。祭りの夜に、村全部を敵に回すつもりなら」

 隊長が顎を上げ、私たちの列をじろじろと舐めるように見た。
「読み書きに長け、身のこなしが良い女。年は――」

「やめて」

 自分の声が、思ったより遠くへ飛んだ。
 私が前に出たからだ。
 足が動いた。
 止められなかった。
 止めたら、誰か別の人の名前がここに刻まれる気がした。
 「ミリア!」と誰かが呼んだ。子どもの声。
 私は振り返らない。襟を立てる。外套の中の心臓を抱えるように。

「書くのは私。教えたのも私。……でも、私はこの村で生まれてない。だから、村を責めないで」

 兵の目が細くなる。
「名は」

 喉が硬くなった。
 偽りの名は、軽い。
 でも今夜、その軽さで誰かを守れるなら。
「ミリア」

「姓は」

 空気が固まる。
 吐息の形まで目に見える。
 ――アメリア。
 喉で、名が喧嘩した。
 言えば、全部が、変わる。
 言わなければ、誰かが、傷つく。

「名乗る必要は――」

 カイルの声が、私の背中の骨を支えた。
 彼は列から半歩出て、兵士と向かい合う。
「彼女は今、この村の“ミリア”だ。それ以上でも、以下でもない」

「法は――」

「法? 誰の法だ。誰の舌で書かれた」
 彼の瞳が、冷えた星みたいに硬くなる。
「“明朝に弁明を”と書いて、夜に扉を破る舌の法か」

 宰相の印。
 第一王子。
 王都の庭。
 すべてが、今夜ここに重なって、カイルの肩に載る。

 隊長が痺れを切らし、合図をした。
 兵が二人、前へ出る。
 剣が半歩、鞘から滑った。
 刃は、まだ出ていない。
 けれど、出るつもりの音が、夜の骨を鳴らす。

「やめて――」

 私の声は、火より弱い。
 だが、次の瞬間、火が“ぱちん”と大きく笑った気がした。
 カイルが、剣を抜いたからだ。

 月を吸う刃ではない。火を映す、夜のための線。
 肩は上がらない。肘は閉じる。
 踏み込まないのに、距離が変わる。
 兵の刃が抜けきる前に、視界から目的地を奪われ、手首の角度が少し狂う。
 金属が短く鳴り、火花は散らない。
 カイルは打たない。崩す。
 膝が勝手に折れ、足が地面の“低いほう”に吸われる。
 一人、二人――倒れない。倒れる“前”で止まる。剣の線が、もう一歩を許さない。

 村の人々が息を呑む音が、ひとつになって夜に浮いた。
 隊長が歯を食いしばる。
「何者だ。命は――」

「命は、火のそばにしか置かない」

 カイルは刃を寝かせ、私の前へわずかに斜めに立つ。
 盾ではなく、風よけのような位置。
 その背中は大きくないのに、風向きが変わった。
 彼は短く言った。
「この人を傷つける者は、俺が許さない」

 許さない。
 その言葉が、夜の板に釘のように打ち込まれる。
 私は喉の奥で、名の不一致が音を立ててほどけていくのを感じた。
 ミリア。アメリア。
 ――今は、守られている人。
 それで十分だ、と、はじめて思えた。

 隊長が合図をしかけ、止めた。
 彼は見たのだ。
 カイルの左手が、鞘口からわずかに離れ、胸元へ上がるのを。
 そして、衣の内から、小さな布に包まれた物が、夜の灯りに一瞬だけ銀を返したのを。

 紋章。
 二頭の獣が盾を支え、上に小さな王冠。
 アルフォード家の指輪。
 王族の印。

 村に、低い波が走った。
 兵たちの目が、ものの数拍で“命令を待つ兵”の目から、“誰の命令を待つべきか測る兵”の目に変わる。
 隊長の喉仏が上下する。
「貴殿は――」

 カイルは剣をわずかに下げ、はっきりと名を名乗った。
「第二王子、カイル・アルフォード」

 時間が、薄く伸びた。
 村の犬が一度だけ吠え、また黙る。
 乾物屋の老婆が杖を握り直し、「やっぱりね」と唇が動いた気がした。
 私の胸の中で、何かが静かに砕け、同時に、別の何かが静かに立ち上がる。

「……殿下」

 隊長の膝が、浅く折れた。
 兵の列がざわめき、すぐに沈む。
 宰相の印と、王子の名。
 どちらの舌が正しいか――兵にもわかる。彼らは“今夜、自分の首を守る舌”に従う。

「命令を」

 カイルは指輪を布に戻し、胸にしまった。
 剣はまだ手にある。けれど、刃の上に言葉が降りたから、鋼の温度が少しだけ下がった。
「この村を荒らすな。布告は広場で読んだ。もう十分だ。帰れ」

「しかし、関係者の女――」

「連れて行く先はどこだ。宰相の執務室か。第一王子の寝所か。あるいは、夜のどこかか」
 言葉に、薄い刃があった。
「“明朝に弁明を”と書いて、夜に扉を破る舌の先へ、俺の見ている人間を渡すと思うのか」

 隊長は沈黙した。
 その沈黙は、初めて彼の味方になった。
 彼は深く息を吸い、吐く。
「……了解いたしました。今夜は引き上げます。だが、王都の目は長い」
「目だけなら、怖くない」

 兵たちが灯りを引いて退き、靴音が遠ざかっていく。
 村人たちの肩から、音にならない息が一斉に外にこぼれた。
 太鼓の皮が風で少し鳴った。
 花の柱から、最後の花びらが一枚、静かに落ちる。

 私は、いつの間にか、膝が少し震えていた。
 立っているのが不思議なくらい、体の芯が空っぽになっていた。
 それでも、倒れなかったのは――背中に、熱があったからだ。
 カイルの視線。
 剣の線。
 「許さない」の音。

「……殿下」
 誰かが、そう呼んだ。
 私ではない。
 村の誰か。あるいは、夜そのもの。
 カイルがわずかに首を振った。
「“殿下”は、王都の石の上に置いてきた」

 私は一歩、二歩、彼へ近づいた。
 口の中の名が、また喧嘩をはじめる。
 ミリア。アメリア。
 どちらで呼ぶべきか。
 どちらで呼んでも、今夜はきっと割れてしまう。

「……カイル」
 やっと出せたのは、いちばん短い名前。
 彼は目で応えた。
 剣を鞘に収める。
 金属が静かに、夜に戻る。

「怖かった」
 やっと出てきた私の声は、小さかった。
「うん」
「でも、ありがとう」
「うん」

 それだけ。
 それだけで、胸の奥の何かが、ようやく体温を取り戻す。
 乾物屋の老婆が近づいてきて、私の袖をちょいと引いた。
「襟、立ってたよ。よくやった」
 私は笑って、涙が一粒、頬を転がるのを許した。
 花祭りの約束の結び目は、まだ台の上にある。
 その上に、今夜の言葉を、もう一つ結ぶ。

 庵に戻る途中、村人たちが小さく頭を下げた。
 誰も“殿下”とは呼ばない。
 「騎士さん」
 「カイル」
 「ミリア先生」
 名前は、今夜も村の温度で、生きている。

 扉を閉め、閂を落とす。
 囲炉裏に火を足すと、炎がほっと息をした。
 私は台の前で立ち止まり、木箱に目をやる。
 カイルは先に外套を壁へかけ、剣を所定の位置に置いた。
 そして、箱の前に来ると、留め具に触れ――手を離した。
「見せたな」
「見せた」
「出したら、戻せる?」
「戻す」

 私はうなずいて、囲炉裏のそばに座った。
 膝を抱える。
 胸の中で、芽が暴れている。
 “再び失う”予感。
 柔らかいくせに、抜けない。
 でも、その芽に布をかける方法を、私は知り始めている。
 火。
 言葉。
 約束。
 軽い結び目。毎日結び直せる結び目。

「カイル」
「なに」
「あなたが“殿下”で、私が“レオンハルトの娘”でも――今夜の“ありがとう”は、変わらない」
「うん」
「それと、明日も“お”の尾っぽ、教える」
「うん」
「渡し板、探す。流れたやつ」
「君は、靴」
「干す。忘れない」

 火が「ぱち」と笑い、庵の板が夜を受け止める。
 外では、兵の灯りが完全に消えて、星が戻ってきた。
 私は毛布を肩に引き寄せ、深く息を吸う。
 花の匂いは薄くなった。
 代わりに、薪の匂いが濃い。
 ――微笑みの裏に、刃があった夜。
 それでも、ここに微笑みは残る。
 軽くて、ほどけやすい。
 だから、明日も結べる。

 目を閉じる前、胸の革袋に触れる。鍵は確かだ。
 いつか、扉を開ける。
 でも今夜は、火を守る。
 眠る前、彼の方から言葉が落ちた。
「もう一度、言う。――この人を傷つける者は、俺が許さない」

 私は頷いた。
 それが、私の“今”を支える最短の文だ。
 火が応えるように、静かに揺れた。
 夜は、ようやく、眠りの形を思い出した。
 笑いは土に戻り、刃は鞘に戻り、名は胸の中に戻る。
 そして、明日へ。
 微笑みを、表へ連れていくために。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

一級魔法使いになれなかったので特級厨師になりました

しおしお
恋愛
魔法学院次席卒業のシャーリー・ドットは、 「一級魔法使いになれなかった」という理由だけで婚約破棄された。 ――だが本当の理由は、ただの“うっかり”。 試験会場を間違え、隣の建物で行われていた 特級厨師試験に合格してしまったのだ。 気づけばシャーリーは、王宮からスカウトされるほどの “超一流料理人”となり、国王の胃袋をがっちり掴む存在に。 一方、学院首席で一級魔法使いとなった ナターシャ・キンスキーは、大活躍しているはずなのに―― 「なんで料理で一番になってるのよ!?  あの女、魔法より料理の方が強くない!?」 すれ違い、逃げ回り、勘違いし続けるナターシャと、 天然すぎて誤解が絶えないシャーリー。 そんな二人が、魔王軍の襲撃、国家危機、王宮騒動を通じて、 少しずつ距離を縮めていく。 魔法で国を守る最強魔術師。 料理で国を救う特級厨師。 ――これは、“敵でもライバルでもない二人”が、 ようやく互いを認め、本当の友情を築いていく物語。 すれ違いコメディ×料理魔法×ダブルヒロイン友情譚! 笑って、癒されて、最後は心が温かくなる王宮ラノベ、開幕です。

『追放令嬢は薬草(ハーブ)に夢中 ~前世の知識でポーションを作っていたら、聖女様より崇められ、私を捨てた王太子が泣きついてきました~』

とびぃ
ファンタジー
追放悪役令嬢の薬学スローライフ ~断罪されたら、そこは未知の薬草宝庫(ランクS)でした。知識チートでポーション作ってたら、王都のパンデミックを救う羽目に~ -第二部(11章~20章)追加しました- 【あらすじ】 「貴様を追放する! 魔物の巣窟『霧深き森』で、朽ち果てるがいい!」 王太子の婚約者ソフィアは、卒業パーティーで断罪された。 しかし、その顔に絶望はなかった。なぜなら、その「断罪劇」こそが、彼女の完璧な計画だったからだ。 彼女の魂は、前世で薬学研究に没頭し過労死した、日本の研究者。 王妃の座も権力闘争も、彼女には退屈な枷でしかない。 彼女が求めたのはただ一つ——誰にも邪魔されず、未知の植物を研究できる「アトリエ」だった。 追放先『霧深き森』は「死の土地」。 だが、チート能力【植物図鑑インターフェイス】を持つソフィアにとって、そこは未知の薬草が群生する、最高の「研究フィールド(ランクS)」だった! 石造りの廃屋を「アトリエ」に改造し、ガラクタから蒸留器を自作。村人を救い、薬師様と慕われ、理想のスローライフ(研究生活)が始まる。 だが、その平穏は長く続かない。 王都では、王宮薬師長の陰謀により、聖女の奇跡すら効かないパンデミック『紫死病』が発生していた。 ソフィアが開発した『特製回復ポーション』の噂が王都に届くとき、彼女の「研究成果」を巡る、新たな戦いが幕を開ける——。 【主な登場人物】 ソフィア・フォン・クライネルト 本作の主人公。元・侯爵令嬢。魂は日本の薬学研究者。 合理的かつ冷徹な思考で、スローライフ(研究)を妨げる障害を「薬学」で排除する。未知の薬草の解析が至上の喜び。 ギルバート・ヴァイス 王宮魔術師団・研究室所属の魔術師。 ソフィアの「科学(薬学)」に魅了され、助手(兼・共同研究者)としてアトリエに入り浸る知的な理解者。 アルベルト王太子 ソフィアの元婚約者。愚かな「正義」でソフィアを追放した張本人。王都の危機に際し、薬を強奪しに来るが……。 リリア 無力な「聖女」。アルベルトに庇護されるが、本物の災厄の前では無力な「駒」。 ロイド・バルトロメウス 『天秤と剣(スケイル&ソード)商会』の会頭。ソフィアに命を救われ、彼女の「薬学」の価値を見抜くビジネスパートナー。 【読みどころ】 「悪役令嬢追放」から始まる、痛快な「ざまぁ」展開! そして、知識チートを駆使した本格的な「薬学(ものづくり)」と、理想の「アトリエ」開拓。 科学と魔法が融合し、パンデミックというシリアスな災厄に立ち向かう、読み応え抜群の薬学ファンタジーをお楽しみください。

社畜OLが異世界転生したら、冷酷騎士団長の最愛になっていた

タマ マコト
ファンタジー
過労死寸前の社畜OL・神谷美咲が、目を覚ますと中世風の王国《アルセリア》の伯爵令嬢エレナに転生していた。 混乱の中で出会ったのは“冷酷”と恐れられる騎士団長ルーカス。 命を狙われ、家は「魔女の血」と噂される中、美咲は社畜仕込みの“段取り力”と現代知識で必死に状況を整理しながら生き延びようとする。 だが、冷たく見えたルーカスの瞳に隠された優しさを知り、彼の鎧の下にある孤独に惹かれていく。 「守られるだけじゃなく、働いて、この世界で生きていく」―― 異世界での再スタートが、静かに始まる。

ゲームちっくな異世界でゆるふわ箱庭スローライフを満喫します 〜私の作るアイテムはぜーんぶ特別らしいけどなんで?〜

ことりとりとん
ファンタジー
ゲームっぽいシステム満載の異世界に突然呼ばれたので、のんびり生産ライフを送るつもりが…… この世界の文明レベル、低すぎじゃない!? 私はそんなに凄い人じゃないんですけど! スキルに頼りすぎて上手くいってない世界で、いつの間にか英雄扱いされてますが、気にせず自分のペースで生きようと思います!

契約結婚のはずが、気づけば王族すら跪いていました

言諮 アイ
ファンタジー
――名ばかりの妻のはずだった。 貧乏貴族の娘であるリリアは、家の借金を返すため、冷酷と名高い辺境伯アレクシスと契約結婚を結ぶことに。 「ただの形式だけの結婚だ。お互い干渉せず、適当にやってくれ」 それが彼の第一声だった。愛の欠片もない契約。そう、リリアはただの「飾り」のはずだった。 だが、彼女には誰もが知らぬ “ある力” があった。 それは、神代より伝わる失われた魔法【王威の審判】。 それは“本来、王にのみ宿る力”であり、王族すら彼女の前に跪く絶対的な力――。 気づけばリリアは貴族社会を塗り替え、辺境伯すら翻弄し、王すら頭を垂れる存在へ。 「これは……一体どういうことだ?」 「さあ? ただの契約結婚のはずでしたけど?」 いつしか契約は意味を失い、冷酷な辺境伯は彼女を「真の妻」として求め始める。 ――これは、一人の少女が世界を変え、気づけばすべてを手に入れていた物語。

追放令嬢、辺境王国で無双して王宮を揺るがす

yukataka
ファンタジー
王国随一の名門ハーランド公爵家の令嬢エリシアは、第一王子の婚約者でありながら、王宮の陰謀により突然追放される。濡れ衣を着せられ、全てを奪われた彼女は極寒の辺境国家ノルディアへと流される。しかしエリシアには秘密があった――前世の記憶と現代日本の経営知識を持つ転生者だったのだ。荒廃した辺境で、彼女は持ち前の戦略眼と人心掌握術で奇跡の復興を成し遂げる。やがて彼女の手腕は王国全土を震撼させ、自らを追放した者たちに復讐の刃を向ける。だが辺境王ルシアンとの運命的な出会いが、彼女の心に新たな感情を芽生えさせていく。これは、理不尽に奪われた女性が、知略と情熱で世界を変える物語――。

婚約者を姉に奪われ、婚約破棄されたエリーゼは、王子殿下に国外追放されて捨てられた先は、なんと魔獣がいる森。そこから大逆転するしかない?怒りの

山田 バルス
ファンタジー
王宮の広間は、冷え切った空気に満ちていた。  玉座の前にひとり、少女が|跪い《ひざまず》ていた。  エリーゼ=アルセリア。  目の前に立つのは、王国第一王子、シャルル=レインハルト。 「─エリーゼ=アルセリア。貴様との婚約は、ここに破棄する」 「……なぜ、ですか……?」  声が震える。  彼女の問いに、王子は冷然と答えた。 「貴様が、カリーナ嬢をいじめたからだ」 「そ、そんな……! 私が、姉様を、いじめた……?」 「カリーナ嬢からすべて聞いている。お前は陰湿な手段で彼女を苦しめ、王家の威信をも|貶めた《おとし》さらに、王家に対する謀反を企てているとか」  広間にざわめきが広がる。  ──すべて、仕組まれていたのだ。 「私は、姉様にも王家にも……そんなこと……していません……!」  必死に訴えるエリーゼの声は、虚しく広間に消えた。 「黙れ!」  シャルルの一喝が、広間に響き渡る。 「貴様のような下劣な女を、王家に迎え入れるわけにはいかぬ」  広間は、再び深い静寂に沈んだ。 「よって、貴様との婚約は破棄。さらに──」  王子は、無慈悲に言葉を重ねた。 「国外追放を命じる」  その宣告に、エリーゼの膝が崩れた。 「そ、そんな……!」  桃色の髪が広間に広がる。  必死にすがろうとするも、誰も助けようとはしなかった。 「王の不在時に|謀反《むほん》を企てる不届き者など不要。王国のためにもな」  シャルルの隣で、カリーナがくすりと笑った。  まるで、エリーゼの絶望を甘美な蜜のように味わうかのように。  なぜ。  なぜ、こんなことに──。  エリーゼは、震える指で自らの胸を掴む。  彼女はただ、幼い頃から姉に憧れ、姉に尽くし、姉を支えようとしていただけだったのに。  それが裏切りで返され、今、すべてを失おうとしている。 兵士たちが進み出る。  無骨な手で、エリーゼの両手を後ろ手に縛り上げた。 「離して、ください……っ」  必死に抵抗するも、力は弱い。。  誰も助けない。エリーゼは、見た。  カリーナが、微笑みながらシャルルに腕を絡め、勝者の顔でこちらを見下ろしているのを。  ──すべては、最初から、こうなるよう仕組まれていたのだ。  重い扉が開かれる。

貴族令嬢、転生十秒で家出します。目指せ、おひとり様スローライフ

ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞にて奨励賞を頂きました。ありがとうございます! 貴族令嬢に転生したリルは、前世の記憶に混乱しつつも今世で恵まれていない環境なことに気が付き、突発で家出してしまう。 前世の社畜生活で疲れていたため、山奥で魔法の才能を生かしスローライフを目指すことにした。しかししょっぱなから魔物に襲われ、元王宮魔法士と出会ったり、はては皇子までやってきてと、なんだかスローライフとは違う毎日で……?

処理中です...