公爵家を追い出された地味令嬢、辺境のドラゴンに嫁ぎます!

タマ マコト

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第11話 王都の影

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 昼の光が砦の石に斜めに入って、冷たい廊下に薄い金色の筋を置いていた。

 ローザは風の入口で「陽だまりの壁」をいじっていた。谷の河床で拾った浅い皿石に雪解けの水をため、芽のそばに置く。水は冷たいが、角のない冷たさになっていた。布の覆いを持ち上げ、芽に影がかからない角度を確かめる。指先はかじかんでいるのに、胸の中は落ち着いている。昨日より、まし。今日も、まし。

 そのとき、砦の鐘が鳴った。いつもの低い、腹の底にくる合図ではない。金属が無理やり打たれたような甲高い音が二度、間を置いて三度。来客。しかも、こちらの都合を聞く気がない客。

 回廊の影からカイゼルが現れた。いつもと同じ灰の上衣、銀の瞳。だが肩の線は少し硬い。風の流れが彼を避け、逆に彼が風を選ぶ。

「王都からの旗だ」

「誰?」

「“使者”。王の命令を口で運ぶ者」

 その言い方に、ローザはうなずいた。命令が紙に残らないとき、人は口を選ぶ。責任の行き先を軽くするために。

 砦の門の前で、色鮮やかな旗が風を噛んでいた。白地に金の冠、朱の縁取り。馬上の男は濃紺の外套に王の紋章。左右に二十騎ばかり、槍と騎槍の先が細く光る。先頭の男が兜を外すと、整った顔に薄い笑み。計算が好きな人間の笑みだった。

「辺境領主カイゼル殿」

 声は大きく、石壁にわざと響かせる。

「王の名において命ず。“竜の花嫁”を王都へ召喚せよ」

 ローザは胸の奥で何かが冷えるのを感じた。冷えは恐れではなく、空気が急に薄くなるときのあの感じ。カイゼルは門の内側に立ち、目だけで使者を測った。

「文は」

「口頭にて」

「口は燃えやすい」

「王の舌は燃えない」

 やりとりの最初から、互いの距離は決まっていた。使者は次の言葉を用意している顔で、わずかに顎を上げる。

「王都は噂を聞き及んでいる。辺境に竜が起き、“花嫁”を得たと。王国の均衡に関わる。即刻、王都にて取り調べを行う。花嫁の身柄は我らが保護する」

「保護」

 カイゼルの口元が動いた。

「言い換えがうまい」

「王都の言葉は礼節だ」

「礼節の箱に刃をしまう癖だろう」

 使者の笑みがわずかに細くなる。そのとき、隊列の後方でひそひそ声が流れた。村の方角から人が上がってきているのだ。ミルド、ゲル、テオの母。祈りの輪の布を巻いた女たち。皆、遠くから砦を見上げ、馬上の男を見、そしてこちらを見た。空気が波打つ。噂は風より速い。王の旗は、恐れを呼ぶ。

 ローザは一歩、前へ出た。従者が影で動き、彼女の背に音のない壁を作る。使者の目がこちらに向く。王都の目だ。値踏みの速い、鏡のような瞳。

「わたしが“花嫁”です」

 ローザははっきり言った。

「王都には行きません」

「召喚に逆らうと?」

「わたしは誘拐されるためにここに来たわけじゃない」

 使者の口角がわずかに上がり、すぐ消えた。

「王都に逆らうのか、竜の巣で。その言葉、後悔するな」

 彼はわざとらしく視線を村人に滑らせた。ざわめきが一段高まる。ゲルの肩に力が入り、テオが母の手をきつく握る。ミルドは杖を立て、表情を動かさない。恐れは言葉に感染する。感染の手前で止めなければ。

「王都は“家族”の願いも預かっている」

 使者が言った。用意された一手を、ここで切る。

「アーデルハイト家。姉君マリアンヌ様より訴えあり。“ローザは竜に惑わされ、王国に災いを招く。早急に保護を”と」

 ローザの指が冷えた。マリアンヌ。姉の香水の香りまで、雪の冷たさの上にふいに立ち上がる。心臓が一度だけ強く打ち、そのあと静かになる。

 ゲルが小さく吐き捨てた。

「魔女って、言われてる」

 祈りの輪の布を巻いた女が胸の前で手を組む。ミルドの眉がわずかに動く。テオの目が迷い、ローザと旗とを行き来する。空気が薄くなったのは、きっと皆も同じだ。

 カイゼルが一歩、前に出た。風が背中で折れて、音を変える。

「王都は“竜の力”を欲しがっている。花嫁を通路に使う気か」

「言葉が早い」

「刃はしまっても匂う」

「辺境は王国の一部だ。力は均すべきだ」

「均す、は奪うの丁寧語だ」

 使者の目が細くなった。彼は懐から細い巻物を取り出した。封蝋は王の印。だが、巻物は短い。正式の詔ではない。見せ札。空白に力を詰める術だ。

「王都の魔導師団は、すでに北の街道に布陣。花嫁の迎えは“剣”ではなく“術”が行う。安全は保証される」

「約束は嫌いだ」

 カイゼルの声は低く硬い。

「忘れられた約束の跡が、ここにある」

 彼の背の古傷が、ローザの掌の中で熱を思い出す。夜に触れた浅い凹み。王都の言葉は火を運ぶ。火は印になる。印は肌に残り、季節を間違えた熱で疼くのだ。

 ローザは前に出た。

「わたしはここに残る。村の薬草園を作る約束があるから。約束は灯り。灯りを消さない」

 使者は冷たい笑みを浮かべた。

「辺境の娘、よく喋る。王の命より畑の言葉が重いのか」

「重さじゃない。距離の話。ここにいる人の呼吸の近さは、王都の言葉より重い」

「民を盾にするか」

「違う。民を“理由”にする」

 ざわめきが変わった。恐れだけの音ではない。意味の探り合いの音。その音に、使者は退かなかった。彼は馬上でわざと肩をすくめ、声を広場に投げた。

「竜は怖れられ、同時に祈られる。どちらでもいい。王都は秩序を望む。“花嫁”が竜を縛るのなら、王都で縛らせる。“花嫁”が竜に縛られているのなら、王都でほどく。どちらにせよ、答えは王の前で」

 答え。ローザの中に、古い言葉が浮かぶ。〈竜は約束を重んじ、人は忘却を重んじる〉。忘却に流されない答えを、口ではなく、手で置くべき時だ。

「――わたしは行かない」

 言い切った。声は震えなかった。震えの代わりに、膝の裏が硬くなる。従者がわずかに近づき、影が濃くなる。

 使者は笑わない。

「ならば、王都は“手段”を選ばぬ」

 言い終わらないうちに、彼は手を上げた。騎士たちの槍が一斉に立ち、隊列が半歩前に出る。威嚇。広場の空気が縮み、悲鳴が喉で止まる。ミルドが杖で地面を二度叩いた。音は小さいが、足元から心臓へまっすぐ伸びる。

「領主様」

 ミルドの声は低い。

「輪の火を消させるな」

 カイゼルは目を細め、従者に短く合図した。門の内側の仕掛けが動き、外壁の上に細い影が揺れる。弓ではない。刃でもない。風の通り道を変える細工が、静かに息を始めた。雪は落ちていないのに、使者の旗の縁が一度だけ縦に跳ねた。騎馬の首が落ち着かない。目に見えない圧が、王都の隊列の足場を乱す。直接の敵意ではない。だが、ここが“牙”を持っていると、体が覚える程度には十分だ。

 使者は歯を見せない笑みを浮かべた。

「威嚇は王に対する反逆とみなされる」

「威嚇は王が先だ」

 カイゼルの声は静かなまま。

「帰って、そう伝えろ。王が本当に“均す”気があるなら、まず冬の食糧を出せ。祈りの輪の灰を新しくする薪を送れ。口で均すな、手でやれ」

「領主が王に条件を?」

「条件ではない。やるべき順番だ」

 使者は舌打ちを飲み込み、手綱を引いた。

「猶予は三日。三日のうちに“花嫁”を王都に送れ。さもなくば、魔導師団がここに秩序を持ち込む」

 彼は振り返りもせず旗を翻した。騎士たちが揃って踵を返し、雪を蹴る。鉄の音が遠ざかるのと、広場の息が一斉に吐き出されるのは、ほとんど同時だった。

 沈黙。言葉が戻るまで、数えるように長い沈黙。最初に動いたのはテオだった。彼はローザの方へ数歩走り、止まり、言った。

「行かないで」

 短く、まっすぐな声。次に、ゲルが唇を噛んだまま言った。

「……魔導師団が来たら、村は巻き込まれる」

「巻き込ませない」

 ローザは答えた。

「畝をもう一本増やす。祈りの輪に“手の言葉”を増やす。井戸の布を巻き替える。風の口を移す。三日でできることは全部やる」

 ミルドが杖をコツンと鳴らした。

「言葉は聞いた。手を見せろ。わしらは手を重ねる」

 祈りの布の女がうなずく。

「祈りは残す。手も使う」

 ゲルはまだ迷いの目だったが、子の額に当てた布の温かさを確かめて、短く頷いた。

「……やれることをやる」

 砦に戻る途中、カイゼルはほとんど喋らなかった。銀の瞳は遠くを見、足音は一定。門をくぐる前に、彼がふっと息を吐いた。

「王都は悪手を早く打つ」

「姉が後ろにいる」

「マリアンヌ」

「ええ。あの人は“舞台”が好き。王の目の前は、彼女にとって最高の舞台」

「舞台は落ちる。床が弱ければ」

「だから、手で床を厚くする」

「面倒だ」

「わたしの得意分野」

 彼はわずかに口角を上げた。笑い、という形の手前。部屋に戻る前、ローザは窓辺の土に掌を置いた。芽は小さいが、背筋が強い。三日。短い。けれど、時間は作業の味方だ。

 その日の午後から、砦と村は忙しくなった。祈りの輪に新しい灰。井戸の布の巻き替え。畝の増設。石の角度の調整。風の入口の壁に重ねの石。鉄の従者は黙って動き、村の子どもは石を運ぶ。女たちは蜂蜜の瓶の底を集め、男たちは雪の下から枯れ枝を掘り出す。手が増えるほど、恐れは薄まる。

 夕刻、文庫でミルドと簡単な段取りを確認していると、廊下の端で影が動いた。従者ではない、軽い足音。王都の言葉の残り香。ローザは気配で誰かを知った。エミリアではない。ここにはいないはずの——。

 扉が静かに開き、薄い灰のマントをまとった細身の人物が姿を見せた。兜はない。編み上げの靴。腰には短剣。顔を上げると、黒い瞳がまっすぐこちらを射抜いた。王都の装いなのに、足取りは山の者の静けさを持っている。

「伝令です」

 女は短く言った。

「北の街道、魔導師団の一隊が峠を越えました。兵の動員は少数、術者多め。先導に“公爵家の旗”」

 ローザの胃が縮む。

「マリアンヌ」

「もう一つ」

 伝令の女は視線だけでカイゼルを探し、彼が柱の影に立っているのを確かめてから言葉を続けた。

「辺境の警備隊の一部が、買収されています。砦の内情に通じた者が混じっている可能性」

 空気の温度が落ちた。ミルドが杖を握り直す。カイゼルは目を閉じず、瞬きを一度だけ。怒りはしまう部屋に押し込められ、鍵がかかる音がした。

「――三日を待たずに、来る」

 ローザは呟いた。

「なら、こちらも三日を詰める」

 夜。暖炉の火は低く、窓の外は冴え冴えと澄んでいる。ローザは机に向かい、手帳を開いた。今日という日の輪郭を落ち着かせるために。

〈王都の使者。召喚。姉の名。村のざわめき。恐れの感染。ミルドの杖の音。テオの“行かないで”。カイゼルの“順番”。三日。――三日でできることをする。畝、井戸、輪、壁。言葉より手。灯りより火。〉

 書き終え、ペン先を拭うと、扉が二度叩かれた。カイゼルだ。手には小さな包み。開くと、中には薄い銀色の粉が少し。鉱脈を削って集めたのだろう。

「何これ」

「“雪返し”。雪の冷たさを鈍らせる粉だ。古いやり方だが、役に立つ」

「どこで」

「昔、王都に降りた時に覚えた」

 彼は言いながら、炉の火に視線を落とした。火は彼の頬を橙に染めるが、銀の瞳は色を持たない。

「行くのか」

「どこへ」

「王都へ」

「行かない。ここで、あなたと“まし”を作る」

 沈黙が降りた。ふたりの間に、短いが確かな合図。彼は頷きもしない。頷かない代わりに、窓辺の水の皿に粉をひとつまみ落とした。水面が一度だけふるえ、すぐ静まる。冷たさの刃が丸くなった。

「明日、輪の“火送り”を村でやる」

 カイゼルが言った。

「魔導師団が来る前に。火は人を集め、集まる人は“目”になる」

「見張るのね」

「居場所のためだけではない」

 窓の外、山の端が黒く重なり、星の針がその上に刺さっている。ローザは胸の奥の薄い熱を確かめた。恐れの横に置いた“やれること”が、形を持ち始めている。

「——愛は、血と嘘の中で試される」

 自分でも驚くほど静かな声が、口からこぼれた。言ってから、火がぱちりと鳴った。カイゼルの目が、わずかに細くなる。

「誰の言葉だ」

「今の私の」

「なら、試される準備をしろ」

「うん。手で」

 夜は長く、しかし敵ではない。作業の時間だ。ローザは毛布を肩に掛け、窓辺の芽に小さく囁いた。

「明日も、ましにする」

 芽は答えない。けれど、土の静けさは確かに“返事”をくれた。砦のどこかで、氷が細くきしむ。遠くの街道で、靴鉄と術の鐘が鈍く鳴る。三日を待たない足音。試される愛。血と嘘の匂いが、風の向こうで混ざり始めていた。

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