異世界花嫁物語〜婚約破棄された私が異世界で選ばれし花嫁になるまで〜

タマ マコト

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第20話:選ばれし花嫁、恐れの先で交わす誓い

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 その夜、城は眠らなかった。
 眠れないのではなく、眠ることを許されなかった。
 風がないのに燭台の火は揺れ、廊下の影は濃淡を勝手に変える。誰かが歩けば床が微かに軋み、誰かが息をすれば空気が重くなる。

 ――呪いが、城全体の呼吸になっている。

 リリアーナは花嫁用区画の鏡の前で、自分の顔を見つめていた。
 淡い銀髪はいつもより丁寧にまとめられ、白に近い衣装の胸元には小さな紋章の刺繍が入っている。神殿が用意した“儀式の衣”。
 豪奢なのに、鎧みたいだった。

 手首の紋章は静かに熱い。
 熱は痛みではなく、確信の温度だ。
 逃げない。選ぶ。並ぶ。
 それを身体が覚えてしまっている。

 けれど、心はまだ揺れる。

 怖い。
 怖いのは死ぬことだけじゃない。
 自分の選択が、誰かを傷つける未来を呼ぶこと。
 自分が“愛してしまう”ことで、また何かを失うこと。

 イリスが、そっと背後に立った。

「……本当に、行かれますか」

 いつも丁寧な声が、今は小さく震えている。
 侍女である前に、人として怖がっている声。

 リリアーナは鏡越しにイリスを見て、頷いた。

「行く。私が決めた」

「陛下は……お優しい方です。でも、その優しさは危うくて……」

「知ってる」

 リリアーナは笑ってしまった。
 笑うと喉が痛い。
 笑うのは余裕じゃなく、怖さをごまかす癖だ。

「だから、行くんだよ」

 イリスは唇を噛み、最後に小さく言った。

「……どうか、戻ってきてください」

 戻ってきて。
 その言葉に、胸が締まる。
 誰かが自分の帰りを願ってくれる。
 それは、元の世界で失ったものだった。

「うん。戻る」

 リリアーナは言い切った。
 約束は軽いものじゃない。
 だから、言い切る。

 ***

 神殿へ向かう回廊は、薄暗かった。
 壁の装飾が影に沈み、床の模様が奥へ奥へと吸い込まれていく。
 レオンハルトが先導し、神官たちが左右を固める。
 護衛というより、“儀式の見届け人”だ。

 レオンハルトは振り返らずに言った。

「今から先、迷いは命取りになる」

「迷いはあるよ」

 リリアーナは正直に返した。

「でも、逃げ道は作らない」

 レオンハルトの肩が僅かに動いた。
 感情を出さない男が、少しだけ呼吸を深くした。

「……それでいい」

 短い肯定。
 それがこの男なりの激励だと、もう分かる。

 巨大な扉が開く。
 白い神殿。
 甘い花の香りと鉄の匂い。
 冷たい空気が肺を洗い、心の余計な飾りを剥がしていく。

 聖壇の中心には、砕けた指輪の核――神器の欠片が浮かんでいた。
 淡い光。
 それは優しい光じゃない。
 選択を迫る光だ。

 祭壇の前に、カイゼルが立っていた。
 黒い礼装。
 肩はまっすぐ、背は高い。
 王として完璧な姿。
 だが、彼の指先が微かに震えている。
 恐れと闘っている震え。

 リリアーナの胸が痛んだ。
 この男は“強いふり”が上手い。
 強いふりをするほど、心が折れそうな証拠だ。

 セラフィナが一歩前へ出た。
 白い衣、淡い銀の髪。
 瞳は静かな水面みたいに冷たい。

「最終儀式を開始します」

 宣言は短い。
 短いのに、世界が息を止める。

 神官たちが円を描き、床の魔法陣に手を置く。
 光が走る。
 空気が震える。
 城の外で、遠い雷鳴が鳴った。
 裂ける音ではない。
 “終わりに向かう音”だ。

 セラフィナが告げる。

「花嫁の紋章が完全に開く条件は、ひとつ」

 リリアーナは息を呑む。
 カイゼルも、ほんの僅かに喉を鳴らした。

「恐れを知ったまま、選ぶこと」

 その言葉が胸に落ちた瞬間、手首の紋章が熱く脈打った。
 痛いほどの熱。
 だがそれは、痛みというより“覚悟の圧”だった。

 セラフィナは続ける。

「愛は条件ではありません。
 しかし愛が生まれたなら、それもまた刃となり盾となる」

 刃となり、盾となる。
 その表現が、リリアーナの胸を刺した。
 愛は甘いだけじゃない。
 守るための刃にもなる。
 傷つけるための刃にもなる。

 カイゼルが低く言った。

「……やめろ」

 神殿に向けた言葉。
 だが、本当は自分に向けた言葉だ。
“愛するな”。
“失うな”。
“繰り返すな”。

 黒い紋が、カイゼルの首筋に微かに浮かび上がった。
 影が濃くなる。
 空気が重くなる。
 呪いが、最後の抵抗を始める。

 レオンハルトが一歩前に出ようとするが、セラフィナが手で制した。

「止めないでください。今、必要なのは力ではない」

 力ではない。
 意思だ。

 カイゼルが、リリアーナを見た。
 金の瞳。
 今夜の金は、氷ではない。
 燃えそうで燃えない、ぎりぎりの金。

「……行け」

 その声は命令みたいに聞こえる。
 でも、命令じゃない。
 懇願だ。

「お前は、俺の呪いに縛られるな」

 胸が痛くなった。
 優しさの裏返し。
 守るための拒絶。
 それが、今も彼の口から出る。

 リリアーナは一歩、聖壇へ近づいた。
 足が震える。
 怖い。
 でも止まらない。

「縛られるんじゃない」

 声が掠れる。
 涙が滲む。
 でも笑ってしまう。
 怖いのに笑うのは、もう癖になっている。

「選ぶの」

 カイゼルの瞳が揺れた。
 拒む理由が崩れる揺れ。
 そして、受け取ってしまう揺れ。

「……それでも、俺を選ぶのか」

 カイゼルはもう一度問う。
 昨夜問うた同じ言葉。
だが今夜は、その言葉が儀式の中心になる。
王が花嫁に問うのではない。
ひとりの男が、ひとりの女に問う。

 リリアーナは息を吸った。
 肺の奥まで冷たい空気を入れる。
 冷たさが、怖さを現実にする。
 現実になった怖さは、逃げるためじゃなく、立つための支えになる。

「怖い」

 リリアーナは言った。
 正直に。
 飾らずに。
 逃げ道を作らないように。

「あなたを愛してしまうのが怖い」

 言った瞬間、神殿の空気が震えた。
 神官たちが息を止める。
 レオンハルトが目を見開く。
 セラフィナだけが、微動だにしない。

 リリアーナは続けた。
 涙が落ちる。
 頬を伝い、唇に触れて塩辛い。

「愛したら、失うかもしれない。
 失ったら、もう立てなくなるかもしれない。
 あなたの呪いが暴走して、誰かが死ぬかもしれない」

 怖いことを言葉にするたびに、胸が締まる。
 でも言葉にしない怖さは、もっと強い。
 言葉にすれば、共有できる。
 共有できれば、制御できる。

「でも――」

 リリアーナは一歩、カイゼルの前に立った。
 触れない距離。
 触れられる距離。
 境界線。

「あなたを失う未来を、私は選ばない」

 その瞬間、手首の紋章が眩しく光った。
 白い光が迸り、床の魔法陣が呼応して輝く。
 神器の欠片が高く浮かび、光が天へ伸びる。

 影が裂けた。
 濃い影が、真っ二つに割れる。
 雷鳴が鳴り、今度は空が裂ける音じゃない。
 鎖が解ける音だった。

 カイゼルの首筋の黒い紋が、暴れかけて――止まった。
 消えない。
 消えないまま、沈む。
 嵐が海の底に沈むみたいに。

 カイゼルが息を呑み、膝が僅かに揺れた。
 強い男の身体が、ほんの一瞬だけ弱さを見せる。
 それは崩れではない。
 力を抜けた証拠だ。
 ひとりで握りしめていた拳を、開けた証拠だ。

「……やめろ」

 カイゼルの声が掠れた。
 でも、もう拒絶の声じゃない。

「そんなふうに言うな。……俺は、また失う」

 リリアーナは首を振った。
 涙の向こうで笑った。

「失うかもしれない。うん。
 でも、失うかもしれないからって、最初から捨てるのは――もう嫌」

 婚約破棄。
 捨てられた夜。
 あの痛みが、背中を押した。

「私は、選ぶ権利を取り戻したの。
 だから、あなたも選んで」

 カイゼルの金の瞳が、揺れる。
 王の目ではない。
“男の目”だ。
怖がっているのに、欲している目。

「……俺が選べば、お前を巻き込む」

「巻き込まれるんじゃない」

 リリアーナは、もう一度言った。

「並ぶの」

 セラフィナが淡々と告げる。

「皇帝カイゼル・ヴァルディオス。
 花嫁リリアーナ・アルフェン。
契約を結ぶのではありません。
あなた方は、互いの恐れを共有し、世界の均衡を保つ」

 神官たちが詠唱を始める。
 音が重なり、天井が光を反射する。
 神器の欠片が、二人の間に光の糸を垂らした。

 糸は細い。
 細いのに切れない。
 糸が二人の手首へ伸び、紋章へ触れる。

 リリアーナの紋章が開いた。
 門の形が、花の形へ変わる。
 花びらのような線が広がり、中心に小さな光が宿る。

 カイゼルの首筋の黒い紋が、同じリズムで脈打った。
 暴れるのではなく、呼吸する。
 獣ではなく、生き物としての痛みになる。

 カイゼルが、ゆっくり手を上げた。
 触れないはずの距離を越え、リリアーナの頬の涙を、指先で拭った。
 触れた瞬間、リリアーナの身体が震えた。
 怖い。
でも、温かい。

「……俺は」

 カイゼルの声が震える。
 王の声じゃない。
 告白の声。

「俺は、愛すれば壊すと思っていた。
 だから拒んだ。
拒んで、世界を守ったつもりだった」

 言葉が詰まる。
喉が痛い。
十年前の影が、今も彼の胸を締めている。

「だが……お前が来て、俺の拒絶が崩れた。
崩れたのに……世界が壊れない」

 彼は笑った。
小さく、信じられないみたいに。

「……お前がいるからだ」

 その言葉は、救済ではない。
依存でもない。
“共有”の言葉だった。
俺だけじゃない。
お前だけじゃない。
二人で生きる、という言葉。

 リリアーナは頷いた。
涙がまた溢れる。
でも今の涙は、痛みだけじゃない。
温かさが溢れてしまう涙だ。

「私も、怖いまま愛する」

 やっと言えた。
昨夜、心の中に燃えていた言葉。
今夜、口に出せた。

「怖いまま、あなたを選ぶ。
それが私の愛だよ」

 カイゼルの金の瞳が、柔らかくなる。
氷じゃない。
夜会で一瞬揺れたあの光が、今はちゃんとそこにある。

「……なら」

 カイゼルは深く息を吸い、吐いた。
吐いた息が、長い。
長い年月の拒絶が、息として出ていくみたいだった。

「俺も選ぶ。
お前を、花嫁としてじゃない。
俺の隣に立つ者として」

 その瞬間、神器の欠片が眩しく輝いた。
光が神殿を満たし、床の魔法陣が静かに沈む。
影が薄くなり、空気が軽くなる。
遠くの雷鳴が、ようやく止む。

 呪いは消えない。
黒い紋は薄く残る。
でも、暴走の牙は引っ込んだ。
恐怖は消えない。
でも、恐怖は鎖ではなくなる。

 セラフィナが淡々と告げた。

「裁定完了。
花嫁は選び、皇帝は受け取った。
世界の均衡は、二人により安定した」

 神官たちが詠唱を止め、頭を下げる。
レオンハルトは目を閉じ、短く息を吐いた。
生き残った者の息だ。

 リリアーナは、カイゼルの前で立っていた。
守られるために立っていない。
勝つために立っていない。
罵るために立っていない。

 ただ、並ぶために立っている。

 カイゼルが、小さく言った。

「……まだ怖いか」

 リリアーナは笑った。
涙の跡を残したまま。

「怖いよ。ずっと怖いと思う」

「それでいい」

 カイゼルの声が、初めて優しかった。
優しいのに、甘くない。
刃のない優しさ。
守るために拒まない優しさ。

「怖いまま、離れるな」

 命令みたいに聞こえる。
でも命令じゃない。
それは誓いの形だった。

 リリアーナは頷いた。

「離れない。
でも、私を縛らないでね」

 カイゼルの口角が僅かに上がる。

「縛れるほど器用なら、こんな呪いは背負っていない」

「それはそう」

 リリアーナは吹き出してしまった。
笑い声が神殿に響き、白い壁に柔らかく返ってくる。
その返り方が、あの日の舞踏会と違う。
嘲笑ではない。
生きている笑いだ。

 神殿の外へ出ると、空は静かだった。
雲は流れ、星が瞬き、風が普通に頬を撫でる。
世界が、ようやく“普通”に戻っていく。

 リリアーナは夜空を見上げた。

 元の世界では、今頃どんな空だろう。
真実が公開され、エドワードとマリエッタは逃げられない事実に焼かれている。
自分の名誉は、静かに取り戻されていく。

でも――それはもう、リリアーナの中心ではない。

 中心にいるのは、今ここにいる自分。
そして、隣に立つ男。

 カイゼルが、夜風の中で呟いた。

「……ようやく、息ができる」

 リリアーナは頷き、そっと答えた。

「私も。やっと、自分の人生が自分のものだって思える」

 選ばれし花嫁とは、選ばれるだけの存在ではない。
選び、恐れ、愛し、並び、世界を安定させる存在だ。

 リリアーナは、手首の紋章を見た。
淡い光が、静かに灯っている。
その光は、逃げ道の光ではなく――帰る場所の光だった。

 怖いまま、愛する。
 怖いまま、選ぶ。
 怖いまま、並ぶ。

 それが、二人の誓い。
そして、この世界の新しい均衡だった。
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