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第9話「トラウマ告白と、竜王の“巣”宣言」
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その夜、村はいつもより静かだった。
昼間の騒ぎが嘘みたいに、風の音と虫の声だけが聞こえる。
魔物の足跡は消され、壊れた柵も応急処置されて、村人たちは皆「とりあえず今日は寝よう」と言って家に引きこもった。
マリアもさすがに疲れたのか、「戸締まりだけしっかりしときなさいよ」と言い残して、早々に寝室に引っ込んでいった。
リラはといえば——。
寝床に入って、三十秒で諦めた。
「……無理だ。寝れない」
目を閉じれば、昼間の光景が鮮明に浮かぶ。
魔物の赤い目。飛び散る土。吹き飛ぶ人影。
そして、竜王の片鱗をのぞかせたアゼルの背中。
その全部が、頭の中でごちゃごちゃに混ざって、まるで別の悪夢のように脳を刺激してくる。
(落ち着けって言われても、無理なものは無理じゃん……)
結局、リラは布団から抜け出して、そっと家の方へ向かった。
夜の家の中は、いつもより広く感じる。
暖炉の火だけが小さく燃えていて、その橙色の光が壁や床にゆらゆらと揺れる影を落としている。
マリアの寝室の扉は閉まっていて、かすかな寝息が聞こえる。
他に起きている人間は——いない。
なのに、誰かの気配があった。
「眠れんか」
暖炉の前。
古い椅子に腰掛けていたアゼルが、火の向こうからこちらを見た。
黒い髪はゆるくほどかれていて、少し濡れている。
さっき外で風に当たっていたのか、シャツの胸元もほんの少し開いていて、鎖骨がちらりとのぞく。
(なんでそんな“月明かりに座るイケメン”みたいなポーズが自然にできんのこの竜……)
リラは心の中で全力ツッコミを入れながら、口から出そうになった感想を飲み込んだ。
「アゼルこそ、寝ないんですか」
「竜は、人間ほど眠りを必要とせん」
「そういうところだけファンタジーっぽいなあ……」
「“だけ”とは何だ」
「なんでもないです」
いつもの軽い応酬で、少しだけ肩の力が抜ける。
暖炉の前の床に座り込むと、じんわりと背中に火の熱が伝わってくる。
さっきまで冷えていた足先も、じわじわ温度を取り戻していく。
沈黙が、しばらく続いた。
パチ、パチ、と薪が爆ぜる音。
外の風が窓を撫でる音。
その合間に、心臓の鼓動がうるさいくらい響く。
「……ねえ、アゼル」
リラは、火を見つめたまま口を開いた。
「今日、怖かった?」
自分でも、変な質問だと思った。
竜王に向かって「怖かった?」はない。
でも、聞かずにはいられなかった。
アゼルは少しだけ目を瞬かせてから、首を横に振る。
「我は、あまり“恐怖”という感情を強くは感じない。
危険だと判断すれば回避するし、勝てないと判断すれば退く。
それは、ただの“選択”だ」
「……あー、なんか、らしいですね」
リラは小さく笑う。
「じゃあ、今日一番怖がってたのは、やっぱり私か……」
「怖がっていた割には、よく前に出ていたがな」
「いや、怖いからって足が止まるとは限らないですよ」
喉の奥まで出かかった言葉を、続けるかどうか迷う。
(今なら……言えるかもしれない)
アゼルは、ただ静かにこちらを見ている。
せかしたり、急かしたりする様子はない。
それが逆に、背中を押してくる。
「ねえ、アゼル」
「なんだ」
「聞いてくれます? ……ちょっと長くなるかもだけど」
「いくらでも」
即答だった。迷いがない。
それだけで、少し泣きそうになる。
暖炉の火を見つめたまま、リラは少しずつ、言葉を探し始めた。
◇
「神殿でのこと、あんまりちゃんと話してなかったですよね」
「ああ」
「……正直、そんなに楽しい話じゃないんですけど」
「楽しい話である必要はない」
アゼルのその一言が、胸の奥にすっと染み込む。
(“楽しい話じゃなくてごめん”って、いつもどこかで思ってたな……)
誰かに自分の過去を話すとき。
暗いところとか、嫌なところとか、聞く人を困らせるような部分は、意識的に飛ばしてきた。
でも、今は——それをやめてみようと思えた。
「私さ、小さいころ、神殿の前に捨てられてたんですよ」
淡々とした口調で、事実だけを述べる。
「名前も、家も、何にも覚えてなくて。
神殿の人が“女神様が授けてくれた子だ”って言って、拾ってくれて。
“リラ”って名前も、そのときつけてもらったやつ」
「女神からの贈り物を、“補欠”扱いとはな」
「やめてください、今そこ突っ込まれると笑っちゃうから」
涙腺のすぐ横で笑いのツボをつつかないでほしい。
「でもまあ、当時の私は、本気でありがたいと思ってたんですよ。
だって、“捨てられてた”はずの私が、“拾ってもらえた”んだもん」
そこに疑問を挟む余地なんてなかった。
「だから、どんな扱いされても、“拾ってもらったんだから文句言えない”って、自分に言い聞かせてて。
雑用ばっかりでも、“役に立つから置いてもらえてるんだ”って」
「本気で、そう思っていたのか」
「今から思えば、かなり洗脳に近いですけどね」
自嘲気味に笑う。
「……でも、当時の私には、それしか拠り所がなかったんです」
ぽつり、ぽつりと、言葉がこぼれていく。
「レイナ様は、最初から光みたいな人で。
人当たりよくて、笑顔がきれいで、周りからもすごく期待されてて。
でも、私には優しくて、“同じ大聖女候補だよ”って、よく声をかけてくれて」
そのたびに、胸がくすぐったくなって。
同時に、どこかで「そんなわけない」とも思っていた。
「わかってたんですよ、本当は。
“同じ”なんかじゃないって。
私は、力も足りないし、出自もよくわからないし、何かあれば真っ先に切られる側の存在だって」
でも、その現実を認めるのが怖かったから。
「だから、しがみついてたんです。
神殿に。
レイナ様に。
“ここしか居場所がない”“ここで頑張れば、いつか必要としてもらえる”って、必死に思い込んでた」
薪がはぜる音が、やけに耳に残る。
「“見て見ないふり”も、いっぱいしました。
測定の結果がどう考えても変だなって思ったときも。
レイナ様の目が、たまに冷たく光るときも。
“私の気のせいだ”“私が卑屈なだけだ”って、自分を責めて、全部見ないようにして」
「……」
「だって、そんなこと認めたら、本当に居場所なくなっちゃう気がして。
“神殿が間違ってる”って思うより、“私が間違ってる”って思う方が、怖くなかったから」
それが、あの日まで。
「追放宣告されたときも……正直、“やっぱりな”ってどこかで思ってました」
悔しくて、悲しくて。
同時に、「ほら、やっぱり。こうなるって知ってたくせに」って、もう一人の自分が冷めた声で笑っていた。
「それでも、最後の最後まで、“レイナ様だけは違う”って思いたくて。
“庇えなかったごめんね”って言われたときも、“しょうがない”って自分に言い聞かせて。
でも、その目の奥に、ちょっと安堵が見えた瞬間に——」
胸をぎゅっと掴まれたような感覚が蘇る。
「何かが、壊れた感じがしたんです」
ぱきん、と。
心の中のガラスが割れる音。
「“ああ、私、ここにしがみついてただけなんだ”って。
“誰も、本気で『居てほしい』って言ってくれてなかったんだ”って」
そこから先は、早かった。
「門を出たあとも、“いらない”“役立たず”“基準以下”って言葉が、ずっと頭の中で繰り返されて。
森で雨に打たれてるときも、“どこでもいいから消えたいな”って、本気で思ってた」
猫の泣き声が、全部を変えたんだけど——それは、もう話した。
暖炉の火が、少し小さくなった気がする。
薪を足そうと腰を浮かしかけたとき、「そのままでいい」とアゼルが静かに言った。
「……今の話、暗くなかったですか」
リラは、半分冗談のつもりで尋ねる。
アゼルは首を横に振った。
「暗い話だ」
「ですよね」
「だが、“暗いから話すべきではない”ということにはならん」
その言葉に、肩の力がまたひとつ抜ける。
アゼルは腕を組んだまま、少しだけ視線を落とした。
「お前は、自分の居場所を“与えられるもの”だと思い込まされていた」
「……与えられた、って感覚は、ずっとありました」
拾われた命。
置いてもらっている場所。
与えられた肩書き。
どれも、自分から取りにいったものじゃない。
「でもな、リラ」
アゼルの声が、少しだけ低く、柔らかくなる。
「“居場所”とは、本来、与えられるものではない」
その言葉は、暖炉の火よりもあたたかく感じた。
「お前自身が、『ここにいたい』と選んだ場所。
そこで、『ここで笑っていたい』と思えた時間。
それが、本物の“巣”だ」
「巣……」
聞き慣れない言い回しに、リラは首を傾げる。
「竜は、広い空も大地も持っているが、“巣”と呼べる場所はそう多くない」
アゼルは、少しだけ遠くを見るような目つきになった。
「体を休めるだけなら、どこでもいい。
だが、“心を下ろせる場所”は、そう何度も作らない」
「……なんか、ちょっとわかるかも」
村の納屋。
干し草とシロの体温。
マリアのぶっきらぼうな優しさ。
外の世界に出る前の神殿にはなかったものが、ここにはある。
「神殿は、お前にとって“檻”ではあったが、“巣”ではなかった」
「檻……」
その言葉が、妙にしっくり来てしまう。
「お前は、“ここにいたい”と思っていたわけではない。
“ここにいるしかない”と思い込んでいた」
「……そう、ですね」
違いは、痛いほどわかる。
「じゃあ、今は?」
アゼルが問う。
「今、お前はここをどう思っている?」
リラは、暖炉の火を見た。
マリアが残していったカップ。
さっきまで泣いていた子どもたちの顔。
昼間、必死で牛を守っていた村人たちの背中。
そして。
猫の姿でひざに乗ってきて、人の姿で隣に座る竜王。
「……“ここにいたい”って、思ってます」
少し照れくさくて、声は小さくなった。
「すごく、居心地がいいわけじゃないです。
大変だし、貧しいし、明日どうなるかもわからないし。
でも、“ここから追い出されたくないな”って、本気で思いました。今日」
魔物が襲ってきたとき。
この場所が壊されるのが、心底怖かった。
「それは、お前がここを“巣”にし始めている証だ」
アゼルは、静かに頷いた。
「巣は、最初から用意されているものではない。
自分で枝を集めて、形を整えて、少しずつ居心地よくしていくものだ」
「枝っていう例えが妙にリアル……」
「竜も、昔はよく巣作りの真似事をしたものだ」
「可愛い話をサラッと挟まないでください」
危うく変な想像をしてしまう。
アゼルは、ふっと笑った。
「そして——」
そこで、彼は少しだけ表情を変えた。
柔らかくて、どこか照れたような笑み。
竜王の顔というより、少し不器用な青年の顔。
「我は、もう、とっくにお前を“自分の巣”だと思っている」
「…………は?」
リラの頭の中で、何かがショートした。
「えっと、ごめん、今なんて?」
「聞こえなかったか? ではもう一度——」
「ちょちょちょちょっと待って、一回で十分です!!」
慌てて両手で耳を塞ぐ。
でも、さっきの言葉はしっかり脳内リピートされていた。
(“お前を自分の巣だと思っている”って、なに……?)
鼓動がバクバクとうるさい。
顔から耳まで、一気に熱くなる。
「ちょっと待って、整理させて……!」
「またか」
「必要なんですよ!!」
両膝を抱えて、頭を抱え込む。
(竜の“巣”論はわかった。
“心を下ろせる場所”が巣。
“ここにいたい”って思える場所が巣)
そこまではいい。
問題は、その“巣”という単語を、今この人(竜)が自分に向けて使ったことだ。
「……それって」
顔を上げる。
アゼルは、いつも通り、というか少しだけ楽しそうな顔でこちらを見ている。
「それって告白なの?
それとも竜の比喩?
文化の違いによる誤解? どれ?」
連射のように言葉が飛び出した。
「竜文化的には、“巣”ってそんな軽々しく使う単語なんですか?
“お気に入りのカフェ”くらいの軽さ? それとも“人生で一度だけ選ぶ伴侶”くらいの重さ?
今どっちに怯えればいいんですか私は!!」
「落ち着け、リラ」
「落ち着けるかー!!」
椅子の脚を軽く蹴ってしまう。
アゼルは「椅子に当たるな」とだけ冷静に注意した。そこじゃない。
彼は少しだけ考えるように間を置いてから、真面目な声で言った。
「竜にとって、“巣”というのは——」
「うん」
「“最も守りたいもの”のことだ」
「…………」
「場所であることもあれば、存在そのものを指すこともある。
我がさっき言ったのは、後者だ」
「存在そのもの……」
リラの脳内で、「巣=守りたい存在=私」に変換される。
情報量が多すぎる。
「じゃあやっぱり告白じゃん!!」
「そこまで恋愛一択の解釈をする必要があるのか?」
「いやそういう言い方以外にどうとればいいんですか!!」
リラは両手で顔を覆い、そのままテーブルに突っ伏した。
「だって、“お前は俺の巣”って、かなりのパワーワードですよ!?
人間界に置き換えたら、“お前が俺の帰る場所だ”ですよ!?
プロポーズの一歩手前じゃん!!」
「人間界の比喩に換算するのはやめてくれないか」
「こっちの方がわかりやすいんです!!」
自分で言っておいて、自分でさらに恥ずかしくなる。
ほんとやめてほしい、この脳みそ。
顔を覆ったままのリラの横で、アゼルが小さく息を吐いた。
「……まあ、完全に的外れでもない」
「え、否定しないの!?」
「我は、基本的に嘘はつかん」
「今はちょっと嘘ついても良かった場面じゃない!?」
もう、どこに顔を向けても恥ずかしい。
暖炉の火さえ、こちらを生温かく見ている気がする。
「誤解がないように言っておくが」
アゼルは、少しだけ言い方を変えた。
「“伴侶”だの“所有”だの、そういう意味で言ったわけではない。
“お前がここにいたいと望むなら、我はその場所を全力で守る”という宣言だ」
「……」
「お前がここを去りたいと言うなら、その選択も尊重する。
だが、“ここにいたい”と選ぶ限り——
我にとってお前は、“守るべき巣”だ」
少しだけ、息が止まった。
さっきまで暴走していた頭の中が、すっと静かになる。
恋愛だの告白だの、そういう甘い言葉よりも。
今の言い方の方が、よっぽど重くて、響いた。
「……ずるいなあ、やっぱり」
リラは小さく笑って、顔を上げた。
「ずるいよ、アゼル」
「そうか?」
「そうですよ。そんなふうに言われたら、“ここにいたい”って、もっと思っちゃうじゃん」
頬がまだ熱い。
恥ずかしさも、照れも、全部混ざっているけれど——嫌じゃない。
むしろ、胸の奥にあった冷たいものが、少しずつ溶けていく感覚の方が強い。
「……ありがと」
リラは、ちゃんと目を見て言った。
「“巣”って言ってくれて。
“守る”って言ってくれて。
それから——私の話、ちゃんと聞いてくれて」
「礼を言われることではない」
「あります」
即答する。
「“暗い話でもいい”って言ってもらえたの、すごく、救われました」
アゼルは、少しだけ視線をそらした。
竜王らしからぬ、照れたような仕草。
その横顔を見て、リラはふっと笑う。
「……ねえ」
「なんだ」
「私も、そのうち言えるようになるのかな。“アゼルが私の巣だよ”って」
冗談半分、本気半分。
自分で言って、自分で顔が熱くなる。
アゼルは驚いたように目を瞬いたあと、ゆっくりと微笑んだ。
「それは——」
「うわ待って答えなくていい!! 今の忘れて!!」
慌てて両手をぶんぶん振る。
「今日の私はちょっとテンションがおかしいだけです!! 疲れてるから!!」
「ふむ。では、今日のところは聞かなかったことにしておこう」
“今日のところは”と言いつつ、二度と忘れないタイプの言い方だった。
「やっぱりずるい……」
もう一度ぼやいて、リラは立ち上がる。
「……そろそろ、本当に寝ないと。明日も畑ありますし」
「ああ」
「アゼルは?」
「しばらく火を見ている。すぐ眠る気分ではないからな」
「そっか」
背を向けかけて、ふと振り返る。
「ねえ」
「まだ何か?」
「……おやすみ、“巣”の主」
からかうように言ったつもりだったのに、途中で自分で恥ずかしくなって、語尾がしぼんだ。
アゼルは、少し目を見開き、それから柔らかく笑う。
「おやすみ、“我の巣”」
「それ、やっぱり破壊力高いからやめよ!? 心臓に悪い!!」
顔を真っ赤にして、リラは逃げるように寝室——という名の納屋に戻った。
干し草の匂い。
シロとしてのアゼルの体温がまだ残っている布団。
布団に潜り込むと、さっきまでの緊張が嘘みたいに、まぶたが重くなった。
(“居場所は与えられるものじゃない”か……)
胸の中で、その言葉を反芻する。
(“ここにいたい”って、私が選ぶ場所)
なら——。
(たぶん、今の私は、ここを選んでる)
神殿の冷たい床ではなく。
王都の誰も知らない石畳でもなく。
この小さな村と。
干し草の寝床と。
竜王であり、猫のシロである存在と。
それが、今の彼女にとっての「巣」の形だった。
少しだけ甘くて、少しだけ苦くて、でも確かにあたたかい感情を抱えたまま——
リラはようやく、深い眠りへと落ちていった。
昼間の騒ぎが嘘みたいに、風の音と虫の声だけが聞こえる。
魔物の足跡は消され、壊れた柵も応急処置されて、村人たちは皆「とりあえず今日は寝よう」と言って家に引きこもった。
マリアもさすがに疲れたのか、「戸締まりだけしっかりしときなさいよ」と言い残して、早々に寝室に引っ込んでいった。
リラはといえば——。
寝床に入って、三十秒で諦めた。
「……無理だ。寝れない」
目を閉じれば、昼間の光景が鮮明に浮かぶ。
魔物の赤い目。飛び散る土。吹き飛ぶ人影。
そして、竜王の片鱗をのぞかせたアゼルの背中。
その全部が、頭の中でごちゃごちゃに混ざって、まるで別の悪夢のように脳を刺激してくる。
(落ち着けって言われても、無理なものは無理じゃん……)
結局、リラは布団から抜け出して、そっと家の方へ向かった。
夜の家の中は、いつもより広く感じる。
暖炉の火だけが小さく燃えていて、その橙色の光が壁や床にゆらゆらと揺れる影を落としている。
マリアの寝室の扉は閉まっていて、かすかな寝息が聞こえる。
他に起きている人間は——いない。
なのに、誰かの気配があった。
「眠れんか」
暖炉の前。
古い椅子に腰掛けていたアゼルが、火の向こうからこちらを見た。
黒い髪はゆるくほどかれていて、少し濡れている。
さっき外で風に当たっていたのか、シャツの胸元もほんの少し開いていて、鎖骨がちらりとのぞく。
(なんでそんな“月明かりに座るイケメン”みたいなポーズが自然にできんのこの竜……)
リラは心の中で全力ツッコミを入れながら、口から出そうになった感想を飲み込んだ。
「アゼルこそ、寝ないんですか」
「竜は、人間ほど眠りを必要とせん」
「そういうところだけファンタジーっぽいなあ……」
「“だけ”とは何だ」
「なんでもないです」
いつもの軽い応酬で、少しだけ肩の力が抜ける。
暖炉の前の床に座り込むと、じんわりと背中に火の熱が伝わってくる。
さっきまで冷えていた足先も、じわじわ温度を取り戻していく。
沈黙が、しばらく続いた。
パチ、パチ、と薪が爆ぜる音。
外の風が窓を撫でる音。
その合間に、心臓の鼓動がうるさいくらい響く。
「……ねえ、アゼル」
リラは、火を見つめたまま口を開いた。
「今日、怖かった?」
自分でも、変な質問だと思った。
竜王に向かって「怖かった?」はない。
でも、聞かずにはいられなかった。
アゼルは少しだけ目を瞬かせてから、首を横に振る。
「我は、あまり“恐怖”という感情を強くは感じない。
危険だと判断すれば回避するし、勝てないと判断すれば退く。
それは、ただの“選択”だ」
「……あー、なんか、らしいですね」
リラは小さく笑う。
「じゃあ、今日一番怖がってたのは、やっぱり私か……」
「怖がっていた割には、よく前に出ていたがな」
「いや、怖いからって足が止まるとは限らないですよ」
喉の奥まで出かかった言葉を、続けるかどうか迷う。
(今なら……言えるかもしれない)
アゼルは、ただ静かにこちらを見ている。
せかしたり、急かしたりする様子はない。
それが逆に、背中を押してくる。
「ねえ、アゼル」
「なんだ」
「聞いてくれます? ……ちょっと長くなるかもだけど」
「いくらでも」
即答だった。迷いがない。
それだけで、少し泣きそうになる。
暖炉の火を見つめたまま、リラは少しずつ、言葉を探し始めた。
◇
「神殿でのこと、あんまりちゃんと話してなかったですよね」
「ああ」
「……正直、そんなに楽しい話じゃないんですけど」
「楽しい話である必要はない」
アゼルのその一言が、胸の奥にすっと染み込む。
(“楽しい話じゃなくてごめん”って、いつもどこかで思ってたな……)
誰かに自分の過去を話すとき。
暗いところとか、嫌なところとか、聞く人を困らせるような部分は、意識的に飛ばしてきた。
でも、今は——それをやめてみようと思えた。
「私さ、小さいころ、神殿の前に捨てられてたんですよ」
淡々とした口調で、事実だけを述べる。
「名前も、家も、何にも覚えてなくて。
神殿の人が“女神様が授けてくれた子だ”って言って、拾ってくれて。
“リラ”って名前も、そのときつけてもらったやつ」
「女神からの贈り物を、“補欠”扱いとはな」
「やめてください、今そこ突っ込まれると笑っちゃうから」
涙腺のすぐ横で笑いのツボをつつかないでほしい。
「でもまあ、当時の私は、本気でありがたいと思ってたんですよ。
だって、“捨てられてた”はずの私が、“拾ってもらえた”んだもん」
そこに疑問を挟む余地なんてなかった。
「だから、どんな扱いされても、“拾ってもらったんだから文句言えない”って、自分に言い聞かせてて。
雑用ばっかりでも、“役に立つから置いてもらえてるんだ”って」
「本気で、そう思っていたのか」
「今から思えば、かなり洗脳に近いですけどね」
自嘲気味に笑う。
「……でも、当時の私には、それしか拠り所がなかったんです」
ぽつり、ぽつりと、言葉がこぼれていく。
「レイナ様は、最初から光みたいな人で。
人当たりよくて、笑顔がきれいで、周りからもすごく期待されてて。
でも、私には優しくて、“同じ大聖女候補だよ”って、よく声をかけてくれて」
そのたびに、胸がくすぐったくなって。
同時に、どこかで「そんなわけない」とも思っていた。
「わかってたんですよ、本当は。
“同じ”なんかじゃないって。
私は、力も足りないし、出自もよくわからないし、何かあれば真っ先に切られる側の存在だって」
でも、その現実を認めるのが怖かったから。
「だから、しがみついてたんです。
神殿に。
レイナ様に。
“ここしか居場所がない”“ここで頑張れば、いつか必要としてもらえる”って、必死に思い込んでた」
薪がはぜる音が、やけに耳に残る。
「“見て見ないふり”も、いっぱいしました。
測定の結果がどう考えても変だなって思ったときも。
レイナ様の目が、たまに冷たく光るときも。
“私の気のせいだ”“私が卑屈なだけだ”って、自分を責めて、全部見ないようにして」
「……」
「だって、そんなこと認めたら、本当に居場所なくなっちゃう気がして。
“神殿が間違ってる”って思うより、“私が間違ってる”って思う方が、怖くなかったから」
それが、あの日まで。
「追放宣告されたときも……正直、“やっぱりな”ってどこかで思ってました」
悔しくて、悲しくて。
同時に、「ほら、やっぱり。こうなるって知ってたくせに」って、もう一人の自分が冷めた声で笑っていた。
「それでも、最後の最後まで、“レイナ様だけは違う”って思いたくて。
“庇えなかったごめんね”って言われたときも、“しょうがない”って自分に言い聞かせて。
でも、その目の奥に、ちょっと安堵が見えた瞬間に——」
胸をぎゅっと掴まれたような感覚が蘇る。
「何かが、壊れた感じがしたんです」
ぱきん、と。
心の中のガラスが割れる音。
「“ああ、私、ここにしがみついてただけなんだ”って。
“誰も、本気で『居てほしい』って言ってくれてなかったんだ”って」
そこから先は、早かった。
「門を出たあとも、“いらない”“役立たず”“基準以下”って言葉が、ずっと頭の中で繰り返されて。
森で雨に打たれてるときも、“どこでもいいから消えたいな”って、本気で思ってた」
猫の泣き声が、全部を変えたんだけど——それは、もう話した。
暖炉の火が、少し小さくなった気がする。
薪を足そうと腰を浮かしかけたとき、「そのままでいい」とアゼルが静かに言った。
「……今の話、暗くなかったですか」
リラは、半分冗談のつもりで尋ねる。
アゼルは首を横に振った。
「暗い話だ」
「ですよね」
「だが、“暗いから話すべきではない”ということにはならん」
その言葉に、肩の力がまたひとつ抜ける。
アゼルは腕を組んだまま、少しだけ視線を落とした。
「お前は、自分の居場所を“与えられるもの”だと思い込まされていた」
「……与えられた、って感覚は、ずっとありました」
拾われた命。
置いてもらっている場所。
与えられた肩書き。
どれも、自分から取りにいったものじゃない。
「でもな、リラ」
アゼルの声が、少しだけ低く、柔らかくなる。
「“居場所”とは、本来、与えられるものではない」
その言葉は、暖炉の火よりもあたたかく感じた。
「お前自身が、『ここにいたい』と選んだ場所。
そこで、『ここで笑っていたい』と思えた時間。
それが、本物の“巣”だ」
「巣……」
聞き慣れない言い回しに、リラは首を傾げる。
「竜は、広い空も大地も持っているが、“巣”と呼べる場所はそう多くない」
アゼルは、少しだけ遠くを見るような目つきになった。
「体を休めるだけなら、どこでもいい。
だが、“心を下ろせる場所”は、そう何度も作らない」
「……なんか、ちょっとわかるかも」
村の納屋。
干し草とシロの体温。
マリアのぶっきらぼうな優しさ。
外の世界に出る前の神殿にはなかったものが、ここにはある。
「神殿は、お前にとって“檻”ではあったが、“巣”ではなかった」
「檻……」
その言葉が、妙にしっくり来てしまう。
「お前は、“ここにいたい”と思っていたわけではない。
“ここにいるしかない”と思い込んでいた」
「……そう、ですね」
違いは、痛いほどわかる。
「じゃあ、今は?」
アゼルが問う。
「今、お前はここをどう思っている?」
リラは、暖炉の火を見た。
マリアが残していったカップ。
さっきまで泣いていた子どもたちの顔。
昼間、必死で牛を守っていた村人たちの背中。
そして。
猫の姿でひざに乗ってきて、人の姿で隣に座る竜王。
「……“ここにいたい”って、思ってます」
少し照れくさくて、声は小さくなった。
「すごく、居心地がいいわけじゃないです。
大変だし、貧しいし、明日どうなるかもわからないし。
でも、“ここから追い出されたくないな”って、本気で思いました。今日」
魔物が襲ってきたとき。
この場所が壊されるのが、心底怖かった。
「それは、お前がここを“巣”にし始めている証だ」
アゼルは、静かに頷いた。
「巣は、最初から用意されているものではない。
自分で枝を集めて、形を整えて、少しずつ居心地よくしていくものだ」
「枝っていう例えが妙にリアル……」
「竜も、昔はよく巣作りの真似事をしたものだ」
「可愛い話をサラッと挟まないでください」
危うく変な想像をしてしまう。
アゼルは、ふっと笑った。
「そして——」
そこで、彼は少しだけ表情を変えた。
柔らかくて、どこか照れたような笑み。
竜王の顔というより、少し不器用な青年の顔。
「我は、もう、とっくにお前を“自分の巣”だと思っている」
「…………は?」
リラの頭の中で、何かがショートした。
「えっと、ごめん、今なんて?」
「聞こえなかったか? ではもう一度——」
「ちょちょちょちょっと待って、一回で十分です!!」
慌てて両手で耳を塞ぐ。
でも、さっきの言葉はしっかり脳内リピートされていた。
(“お前を自分の巣だと思っている”って、なに……?)
鼓動がバクバクとうるさい。
顔から耳まで、一気に熱くなる。
「ちょっと待って、整理させて……!」
「またか」
「必要なんですよ!!」
両膝を抱えて、頭を抱え込む。
(竜の“巣”論はわかった。
“心を下ろせる場所”が巣。
“ここにいたい”って思える場所が巣)
そこまではいい。
問題は、その“巣”という単語を、今この人(竜)が自分に向けて使ったことだ。
「……それって」
顔を上げる。
アゼルは、いつも通り、というか少しだけ楽しそうな顔でこちらを見ている。
「それって告白なの?
それとも竜の比喩?
文化の違いによる誤解? どれ?」
連射のように言葉が飛び出した。
「竜文化的には、“巣”ってそんな軽々しく使う単語なんですか?
“お気に入りのカフェ”くらいの軽さ? それとも“人生で一度だけ選ぶ伴侶”くらいの重さ?
今どっちに怯えればいいんですか私は!!」
「落ち着け、リラ」
「落ち着けるかー!!」
椅子の脚を軽く蹴ってしまう。
アゼルは「椅子に当たるな」とだけ冷静に注意した。そこじゃない。
彼は少しだけ考えるように間を置いてから、真面目な声で言った。
「竜にとって、“巣”というのは——」
「うん」
「“最も守りたいもの”のことだ」
「…………」
「場所であることもあれば、存在そのものを指すこともある。
我がさっき言ったのは、後者だ」
「存在そのもの……」
リラの脳内で、「巣=守りたい存在=私」に変換される。
情報量が多すぎる。
「じゃあやっぱり告白じゃん!!」
「そこまで恋愛一択の解釈をする必要があるのか?」
「いやそういう言い方以外にどうとればいいんですか!!」
リラは両手で顔を覆い、そのままテーブルに突っ伏した。
「だって、“お前は俺の巣”って、かなりのパワーワードですよ!?
人間界に置き換えたら、“お前が俺の帰る場所だ”ですよ!?
プロポーズの一歩手前じゃん!!」
「人間界の比喩に換算するのはやめてくれないか」
「こっちの方がわかりやすいんです!!」
自分で言っておいて、自分でさらに恥ずかしくなる。
ほんとやめてほしい、この脳みそ。
顔を覆ったままのリラの横で、アゼルが小さく息を吐いた。
「……まあ、完全に的外れでもない」
「え、否定しないの!?」
「我は、基本的に嘘はつかん」
「今はちょっと嘘ついても良かった場面じゃない!?」
もう、どこに顔を向けても恥ずかしい。
暖炉の火さえ、こちらを生温かく見ている気がする。
「誤解がないように言っておくが」
アゼルは、少しだけ言い方を変えた。
「“伴侶”だの“所有”だの、そういう意味で言ったわけではない。
“お前がここにいたいと望むなら、我はその場所を全力で守る”という宣言だ」
「……」
「お前がここを去りたいと言うなら、その選択も尊重する。
だが、“ここにいたい”と選ぶ限り——
我にとってお前は、“守るべき巣”だ」
少しだけ、息が止まった。
さっきまで暴走していた頭の中が、すっと静かになる。
恋愛だの告白だの、そういう甘い言葉よりも。
今の言い方の方が、よっぽど重くて、響いた。
「……ずるいなあ、やっぱり」
リラは小さく笑って、顔を上げた。
「ずるいよ、アゼル」
「そうか?」
「そうですよ。そんなふうに言われたら、“ここにいたい”って、もっと思っちゃうじゃん」
頬がまだ熱い。
恥ずかしさも、照れも、全部混ざっているけれど——嫌じゃない。
むしろ、胸の奥にあった冷たいものが、少しずつ溶けていく感覚の方が強い。
「……ありがと」
リラは、ちゃんと目を見て言った。
「“巣”って言ってくれて。
“守る”って言ってくれて。
それから——私の話、ちゃんと聞いてくれて」
「礼を言われることではない」
「あります」
即答する。
「“暗い話でもいい”って言ってもらえたの、すごく、救われました」
アゼルは、少しだけ視線をそらした。
竜王らしからぬ、照れたような仕草。
その横顔を見て、リラはふっと笑う。
「……ねえ」
「なんだ」
「私も、そのうち言えるようになるのかな。“アゼルが私の巣だよ”って」
冗談半分、本気半分。
自分で言って、自分で顔が熱くなる。
アゼルは驚いたように目を瞬いたあと、ゆっくりと微笑んだ。
「それは——」
「うわ待って答えなくていい!! 今の忘れて!!」
慌てて両手をぶんぶん振る。
「今日の私はちょっとテンションがおかしいだけです!! 疲れてるから!!」
「ふむ。では、今日のところは聞かなかったことにしておこう」
“今日のところは”と言いつつ、二度と忘れないタイプの言い方だった。
「やっぱりずるい……」
もう一度ぼやいて、リラは立ち上がる。
「……そろそろ、本当に寝ないと。明日も畑ありますし」
「ああ」
「アゼルは?」
「しばらく火を見ている。すぐ眠る気分ではないからな」
「そっか」
背を向けかけて、ふと振り返る。
「ねえ」
「まだ何か?」
「……おやすみ、“巣”の主」
からかうように言ったつもりだったのに、途中で自分で恥ずかしくなって、語尾がしぼんだ。
アゼルは、少し目を見開き、それから柔らかく笑う。
「おやすみ、“我の巣”」
「それ、やっぱり破壊力高いからやめよ!? 心臓に悪い!!」
顔を真っ赤にして、リラは逃げるように寝室——という名の納屋に戻った。
干し草の匂い。
シロとしてのアゼルの体温がまだ残っている布団。
布団に潜り込むと、さっきまでの緊張が嘘みたいに、まぶたが重くなった。
(“居場所は与えられるものじゃない”か……)
胸の中で、その言葉を反芻する。
(“ここにいたい”って、私が選ぶ場所)
なら——。
(たぶん、今の私は、ここを選んでる)
神殿の冷たい床ではなく。
王都の誰も知らない石畳でもなく。
この小さな村と。
干し草の寝床と。
竜王であり、猫のシロである存在と。
それが、今の彼女にとっての「巣」の形だった。
少しだけ甘くて、少しだけ苦くて、でも確かにあたたかい感情を抱えたまま——
リラはようやく、深い眠りへと落ちていった。
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