追放後に拾った猫が実は竜王で、溺愛プロポーズが止まらない

タマ マコト

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第18話「揺らぐ辺境、守りたい場所」

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 最初に違和感に気づいたのは、風の匂いだった。

 竜族の領域を抜け、普通の空へ戻ってしばらく。
 リラは、アゼルの背にしがみついたまま、ふと鼻先をくすぐる匂いに眉をひそめた。

「……なんか、この風、嫌な匂いする」

『気づいたか』

 頭の中に届くアゼルの声は、いつもより少しだけ硬い。

 風が運んでくるのは、湿った土の匂いに混じる、鉄と腐敗の匂い。
 それに、鼻の奥をざらざらと引っかくような、魔力の焦げた匂い。

 うまく言葉にできないけど──
 “あ、これ嫌なやつだ”って、本能が警鐘鳴らしてくる感じ。

「王都の方じゃないよね? これ」

『違う。王都の瘴気が薄れた代わりに、別の場所の歪みが浮かび上がっている』

「別の場所……」

 リラは、視線を前に向けた。

 見慣れた山のライン。
 森の影。
 遠くに見える、小さな煙。

 帰りたい、帰る場所。

「……まさか」

『ああ』

 アゼルの翼が、わずかに角度を変える。
 速度が上がった。風の圧が強まる。

『王都の結界が崩れた余波で、各地の魔力の流れが乱れている。
 その中でも、辺境のこのあたりは、“もともと境界が薄い分”揺らぎやすい』

「境界が薄い……?」

『世界と“外”の、だ』

 さらっと怖いこと言われた。

「それって、つまり」

『嫌なものが、顔を出しやすい』

「ニュアンスで理解したくなかった……」

 冗談みたいな会話をしているうちに、村が見えてきた。

 その時点で、すでにおかしかった。

 本来なら、夕方の村は、煙突からゆるい煙がのぼって、
 家畜の鳴き声が聞こえて、子どもたちが走り回って──
 そんな穏やかなざわめきに包まれているはずだ。

 今、聞こえてくるのは──悲鳴と、怒号と、獣の唸り声。

「……っ!」

 胸の鼓動が、嫌な音を立てた。

「アゼル!」

『わかっている』

 竜の体が、急降下する。
 風が鋭い刃になって頬を打つ。

 目を開けたまま耐える。
 見なきゃいけない。
 目をそらしたら、きっと後悔するから。

 村の外れが視界に飛び込んできた。

 森の側──いつも子どもたちが遊んでいた草地が、ぐちゃぐちゃにめくれていた。

 地面が、まるで病気みたいに黒ずんでいる。
 草は枯れ、土から黒いもやが立ち上っている。

 その真ん中で、何かが暴れていた。

「……なに、あれ」

 リラは思わず息を呑んだ。

 それは、知っている“魔物”の姿からは、少し外れていた。

 獣のような四足。
 でも、体の一部は樹木のようにねじれ、
 別の部分は岩のように硬く、
 ところどころから黒い触手のようなものが生えている。

 形が定まっていない。
 “世界の外”から無理やり引きずり出された何かが、
 この世界の素材を適当にくっつけて体を作りました、みたいな──そんな歪さ。

 家畜小屋の柵は破られ、牛や羊が血を流して倒れていた。
 生き残った数頭が、パニックになって走り回る。

 村人たちは、必死でそれを追い返そうとしていた。

「こっちだ! こっちにおびき寄せろ!」
「槍を持ってこい! 近づきすぎるな!!」
「子どもたちを家に入れろ──!」

 叫び声。泣き声。
 そのどれもが、瘴気に呑まれそうなほど薄く震えている。

「……間に合って、よかった」

 リラは、小さく呟いた。

 間に合ってないものもたくさん見えるけれど。
 それでも、“まだ誰かが戦ってる”光景を見ると、
 ここで止まれたことに、少しだけ安堵してしまう。

『降りるぞ』

「うん!」

 アゼルが村の手前に着地するや否や、リラは慣れた動きで背から飛び降りた。

 足が地面を踏んだ瞬間、
 ふわりと、足首から嫌な冷気が伝ってきた。

 地面の下に、何か黒いものがうごめいている。

「……土地まで、侵されかけてる」

『魔力の流れが歪み、瘴気に変質している。
 このまま放置すれば、そのうち“魔物の方が自然”な土地になる』

「それは絶対に嫌だ」

 即答だった。

 あの畑でとれた野菜の味。
 マリアが“まずいまずい”と言いながらもニヤニヤして食べてたスープの味。
 子どもたちが走り回ってた草地の感触。

 それが、“魔物が当たり前の場所”に書き換えられるなんて、冗談じゃない。

 村の入口で、誰かが叫んだ。

「──リラ!!」

 マリアだった。

 息を切らし、額に汗を浮かべ、手には鍬を握ったまま。
 全力疾走してきたんだろう、足元がおぼつかない。

「アンタ……! 遅い!!」

「ただいま戻りました!!」

「挨拶してる場合かバカ!!」

 言いながらも、その目には安堵が浮かんでいる。

「無事? みんなは……!」

「とりあえず、死んでない。
 何頭か家畜はやられたけど、人間はなんとか避難させてる。
 でも、あれ──」

 マリアは森側を顎でしゃくった。

「ちょっと今までの魔物とレベル違う。
 村の男衆だけじゃ、押し返しきれない」

 その言葉に、リラの中で何かがカチッと音を立てた。

「……大丈夫」

 自分で言って、自分で驚くくらい、声はぶれなかった。

「やるよ」

 胸の奥が、じわじわと熱くなる。

「ここは、私が“帰る”って決めた場所だから」

 その宣言に、マリアの目がほんの一瞬だけ見開かれた。
 すぐに、ニヤリと口元が曲がる。

「言うじゃない」

「言いました」

「じゃ、信じるわ」

 それだけ言うと、マリアは鍬を肩に担ぎ直した。

「私らは後ろの避難誘導と、遠くからの援護に回る。
 アンタとあの竜王で、前どうにかして」

「了解」

 短く頷き、リラはアゼルの方へ向き直った。

 竜王は、すでに人の姿に戻っている。
 いや、人の、というには、その瞳に宿る光は“竜のそれ”そのものだったが。

「どうする?」

『広域の魔力の流れを押さえるのは、我がやる。
 現状、辺り一帯の魔力が渦を巻いていて、あの魔物に“素材”を供給し続けている』

「だから、あんなに形が安定してないんだ」

『ああ。
 魔力の海に落ちた肉片と、森と土と瘴気が、無秩序に混ざっている』

「うわ、聞けば聞くほどキモい」

『見た目で理解したのではないのか』

「見た目キモいし中身の説明聞いてもキモいんだよ!!」

 叫びながらも、胸の奥では理解している。

(アゼルが“広いところ”で抑えてくれるなら──)

 自分の役目は、その中で“細かいところ”を見ていくこと。

「前線、私がやる」

 言い切ると、アゼルがわずかに目を見開いた。

『危険だぞ』

「危険なのはいつものことでしょ」

『そういうことを“いつものこと”で済ませるな』

「でも、今はさ」

 リラは、自分の胸に手を当てた。

「前に出たいんだよ」

 膝は震えている。
 怖くないわけがない。
 あの異形に近づくことを想像するだけで、胃がきゅっとなる。

 それでも──。

「誰かの後ろに隠れて、終わるの待つのは、もう嫌だから」

 神殿でそうしてきた。
 神官たちの背中に隠れて、
 “候補”という名の観客席から、祈りの声だけあげてきた。

 あの時の自分を思い出すと、今も少し吐き気がする。

「ここは、私が“守りたい”って思って選んだ場所だから。
 私の手で、まずはやってみたい」

 アゼルは、しばらく黙っていた。

 やがて、小さく息を吐く。

『……わかった』

 その声は、諦めではなく、どこか誇らしさを含んでいた。

『だが、約束しろ。
 自分の限界を見誤るな。
 危険が過ぎれば、迷わず下がれ』

「うん」

『我は上空から周囲の魔力の流れを押さえ込む。
 魔物の“材料”になっている瘴気の供給源を断つ。
 その間、お前は前線で、村人と土地への影響を抑えろ』

「了解。治癒と、ピンポイントの浄化だね」

『そうだ。
 お前の“竜系統の治癒”は、“局所の魔力の質”を変えるのに向いている』

 自分の魔法が、ちゃんと分析されているのが、なんだかくすぐったい。

「じゃあ、行く」

『行け』

 アゼルの黒髪が風になびく。
 彼の体がふわりと浮き上がり、再び巨大な竜へと変わっていく。

 翼が広がる。影が地面を覆う。

 それを背に受けながら、リラは魔物のいる方向へ走り出した。



 近づくほど、空気は重くなっていった。

 森の手前は、すでに“空気の色”が違う。
 薄い紫がかった、ぬるぬるした感触。

 息を吸うたび、肺の中に冷たいものが入り込む。

「ッ……」

 思わず背筋が震える。

(負けない)

 胸の奥の光を意識する。
 あの日、満月の夜にアゼルと繋いだ、竜の理に近い光。

 あれを、今度は自分で引き寄せる。

 魔物がこちらに気づいた。

 ぐわ、と歪んだ顔がこちらを向く。
 目があるのかないのかわからないのに、“見られている”ことだけは理解できる。

「うわ、近くで見るとさらにキモッ……」

 思わず口から本音が漏れる。

 その瞬間、後ろから聞き慣れた声が飛んだ。

「リラ! 悪口言ってないで気合い入れな!!」

「悪口言わないとメンタル保てないんですよこういうの!!」

 マリアと村の男衆数人が、少し離れた位置で矢と石を構えている。
 彼らは魔物の“注意”を引きつける役。
 リラは、その隙に治癒と浄化を行う。

「来るぞ!!」

 誰かが叫んだ。

 異形の魔物の体が、ぶるん、と波打つ。
 次の瞬間、触手のようなものが数本、地面を殴りつけるように伸びてきた。

 土が爆ぜる。
 黒い液体が飛び散る。

「わっ──!」

 リラは慌てて飛び退いた。
 着地した足元から、じゅっ、と嫌な音がする。

 液体が触れた場所の草が、瞬く間に黒く溶けた。

「土地にまで……!」

 このままだと、村全体が“じわじわ腐っていく”未来が見える。

(やだ)

 強く思う。

(そんなの、絶対にやだ)

「────っ」

 リラは、両手を地面にかざした。

 胸の奥の泉を、アゼルの魔力の記憶ごと開く。

「お願い──」

 呟く。

「ここを、“あの子たちが走り回ってた草地のまま”にして」

 掌から、淡い光が溢れた。

 竜の理と相性のいい治癒。
 それは“傷ついた肉体”だけでなく、“傷ついた土地”にも届く。

 黒い液体に触れた部分から、じゅっ、と音が逆再生されるみたいに、色が戻っていく。
 腐食されかけた土が本来の茶色に戻り、枯れた草が少しだけ青さを取り戻す。

「よし……!」

 光はまだ弱い。
 でも、“奪われた場所を取り返せる”感覚が、確かな手応えとして指先に残った。

「リラ、右!」

 マリアの声で反射的に振り向く。

 別の触手が、横から振り下ろされるところだった。

「わッ──!」

 ぎりぎりで転がるように避ける。
 髪の先がかすめられ、少しだけ焦げた匂いがした。

「危ない!」

「大丈夫!! ……多分!!」

「“多分”って言うな!!」

 叫びながらも、足は止めない。

 魔物の周囲には、瘴気をまとったもやが渦を巻いている。
 そこに近づけば近づくほど、頭がぼんやりしてくる。

(アゼル──!)

 心の中で呼ぶ。

 上空で巨大な影が動いた。

 アゼルの竜の姿が、森の上を旋回している。
 彼の周囲の空気だけ、異様なほど澄んでいるのが見て取れた。

 竜王の力が、“広域の魔力の流れ”を押さえ込んでいる。

 大地の深いところから、瘴気の源に向かおうとする魔力が無理やり方向転換させられている。
 その結果、魔物の体は、さっきより明らかに“痩せて”見えた。

 供給を断たれ、形を保つのが難しくなってきている。

(今が、押し返すチャンス)

 リラは息を整えた。

 懐に手を当てる。
 そこには、村に来た頃マリアが渡してくれた、小さな布切れと紐──お守りみたいなものが入っている。

「“生きて帰ってきなさい”って渡されたやつ、ちゃんと守るからね」

 自分に言い聞かせてから、両手を前に突き出した。

「ここは──」

 声が自然と大きくなる。

「私が、“帰る”って決めた場所だから!!」

 胸の奥から、光が走った。

 竜の理に触れた治癒魔法。
 それを、今度は“攻撃”ではなく、“押し返す浄化”として放つ。

 魔物の体に、淡い蒼緑の光がぶつかる。
 じゅ、と音を立てて、黒い部分が削られていく。

 ただ焼き払うのではない。
 “この世界の一部として許せる形”だけを残し、
 それ以外の、世界の外から来た“余計なもの”だけを削ぎ落としていくような感覚。

 アゼルと繋がる感覚が、少しだけ強くなる。

『やれるか』

「やる!」

 短い言葉で応える。

 村人たちも、それぞれの位置で戦っていた。

 石を投げる者。
 矢を放つ者。
 遠くから祈る声をあげる者。
 子どもたちを抱きしめて震えながらも、目だけは前を見ている者。

 その全部が、「ここで生きたい」と訴えているみたいだった。

(守りたい)

 はっきりと、そう思った。

 その言葉は、胸の奥で、“誰かのために”じゃなく、“自分のために”鳴った。

(みんなを守りたいし──)

 マリアがぶっきらぼうに笑う顔。
 子どもたちが“リラお姉ちゃん!”と抱きついてくる腕。
 アゼルがいつもここにいる、暖炉の前の空気。

(この景色を、守りたい)

 昨日まで当たり前だと思っていた風景が、
 今日、こんなふうに簡単に壊れかけた。

 だからこそ、余計に。

「戻させないよ」

 リラは、魔物に向かってそう言い放った。

「ここを、“当たり前に壊れてる世界”にさせない。
 だってここは──」

 言葉の代わりに、光で訴える。

 もう一度、強く魔力を流す。
 アゼルが上空で押さえ込んでくれているおかげで、
 暴走しかけた魔力も、ちゃんと“治癒と浄化”の形に収まってくれる。

 魔物の体が、ボロボロと崩れていった。

 樹木の部分が、本物の木の枝に戻って地面に落ちる。
 岩の部分が、ただの石となって砕ける。
 黒い触手が、煙のように霧散して風に溶ける。

 最後に残った“核”みたいな黒い塊が、ふらふらと揺らぎながらリラの方へ伸びた。

 反射的に身構える。

 が──。

 上空から、一筋の影が降ってきた。

 アゼルの爪が、その“核”を掴み、ぎりりと握り潰す。

 黒い霧が、一瞬広がって、すぐに蒼い光に呑まれた。

 静寂。

 森のざわめきだけが戻ってくる。

 さっきまで凶暴な唸り声で満ちていた世界から、急に音が引いた。

「……終わった?」

 リラは、肩で息をしながら呟いた。

 膝が笑っている。
 背中も、腕も、全身がだるい。

 でも──生きている。

 村人たちも、生きている。

 マリアが鍬を肩に担いだまま、こちらへ歩いてきた。

「やるじゃない」

「やりました」

「“やりました”ってドヤ顔していいの、今日ばかりは許すわ」

 マリアは、リラの額に軽く手を当てた。

「熱は……あるけど、まあ、“生きてる熱”ね」

「死にそうな熱あったらどうしよう……」

「そのときは叩き起こすから大丈夫」

 大丈夫の使い方、独特すぎない?

 そうツッコミながらも、リラは笑った。

 周囲では、村人たちが倒れた家畜の数を数え、
 傷ついた人の手当てをし始めていた。

 リラは、息を立て直しながら、ひとりひとりのもとへ足を運ぶ。

「傷、見せてください」
「ちょっとしみるかもですけど、すぐ楽になりますからね」
「大丈夫。怖かったね。……でも、もう大丈夫」

 言葉が、自然に出てきた。

 “治してあげなきゃ”じゃなくて、“治したいから治す”。
 その感覚が、手のひらの光とぴったり噛み合う。

 アゼルは、少し離れたところで人の姿に戻り、
 村全体を見渡していた。

 魔力の流れを確認しているらしい。
 さっきまで暴れていた“渦”は、かなり落ち着いてきているようだ。

「……アゼル」

 ひと段落ついたところで、リラは彼の隣に立った。

「どう?」

『今のところ、“元に戻せる範囲”で収まった』

 アゼルは静かに答える。

『土地の瘴気も、お前の浄化のおかげで深くまでは入り込んでいない。
 しばらくすれば、自然の魔力が上書きしてくれるだろう』

「よかった……」

 力が抜けて、その場に座り込みそうになる。
 ぐらりとした体を、アゼルの手が支えた。

『よくやったな』

「……ありがと」

 その言葉は、子ども扱いでも慰めでもなく、
 ちゃんと“ひとりの戦い終えた人間”への言葉として届いた。

 村の方から、誰かが叫ぶ。

「リラ!」「リラお姉ちゃん!」「アゼルさんも!」

 子どもたちが、泥だらけの足で走ってくる。
 リラの腰に抱きつき、アゼルの足にしがみつき、わあわあと騒ぎ始める。

「怖かったぁ……!」「でも、また助けてくれた!」「すごかった!!」

「……ふふ」

 リラは、その小さな頭を一人ずつ撫でながら、
 胸の奥で自分の感情がはっきりと形を持っていくのを感じていた。

(守りたい)

 さっきまで、ふわっとした言葉だったその感情が、
 今は、具体的な顔と声と匂いを伴って、胸に鎮座している。

(アゼルが“世界の均衡”を見てるみたいに──
 私は、“この村の空気”を見ていたい)

 大げさな使命とか、世界とか、女神とか。
 そういうものは、今はとりあえず脇に置いておく。

 この笑い声。
 この夕飯の匂い。
 この、焚き火の暖かさ。

 それを守りたいと思う自分が、たしかにここにいる。

「ねえ、アゼル」

『なんだ』

「さっき、長老たちに“要監視”とか言われたけどさ」

『ああ』

「監視されてもいいから、ここは守るから」

 笑いながら言うと、アゼルは少しだけ目を丸くし、
 すぐにふっと笑った。

『それはまた、竜族が聞いたら頭を抱えそうな宣言だ』

「いいじゃん。
 “竜王の伴侶、守りたいものが具体的すぎ問題”って記録されといて」

『なるほど、新しい項目だな』

 二人で笑う。

 王都の空は、遠く。
 竜族の世界も、遠く。

 それでも、その全部と繋がりながら──
 リラの心は、今、この小さな村に、しっかりと根を下ろしつつあった。
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