海異恋愛譚

タウタ

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第11話

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 フィンは慣れた手つきで電動の台車を潜水艇の下に押し込んだ。潜水艇を小屋から引き出し、浴室につながるドアの前を通って細い坂から砂浜へ下りていく。ルートグーヴァは預けられた鞄を持って、フィンのあとからついていった。
 砂の上の影はくっきりとして、別の意思を持った生物のように足に貼りついている。素足には砂が熱くてつい速足になる。途中、フィンはロープの切れ端や空き瓶を拾って台車の荷台に乗せた。海に出るときはいつもゴミを拾うらしい。
「少し待っていてください」
 フィンは潜水艇を海の中へ押していき、台車だけを引いて戻ってきた。台車は砂浜に置きっぱなしにするそうだ。ルートグーヴァは砂の熱さに耐え切れず、海に足を入れた。人間の体で感じる海は水道水のようによそよそしい。生ぬるい水が足首にまとわりついてくすぐったかった。
 フィンに続いて潜水艇によじ登る。上から見ると、潜水艇はアルファベットのEの真ん中の横線が円になったような形をしていた。実際には透明な球体で、耐圧殻と呼ぶ。人間が乗り込む部分だ。
 元々は海中散歩を楽しむための船種で、研究用ではないらしい。先生が購入後に勝手に改造し、試料採取のマニピュレータなどを取りつけた。左右の推進器の隙間には剣が収納されているそうだ。詳細を聞くと、フィンは
「凶悪なサメに襲われたときのためですが、今まで出番はありません」
 と無表情に答えた。この先も出番はないだろう。どんなに空腹なサメでも、潜水艇を食べようとはしないはずだ。
 フィンは耐圧殻上部のくぼみに指を入れて円形のカバーを外した。ハンドルを回すとハッチが開く。
「出るときは中からハンドルを回して開けますが、開かないときは外から助けてもらいます」
「周りに開けてくれる人がいないときはどうするんだ」
 フィンはルートグーヴァを見つめたまま、首を傾げた。
「今度、先生に聞いてみます」
 にわかに乗船が不安になった。
 潜水艇は二人乗りだ。耐圧殻の中は計器類と座席だけでとても狭い。フィンは前方の座席に座り、ごわごわした上着とズボンを着込んだ。靴下とスニーカーも履く。ルートグーヴァがあずかっていた荷物の中身だ。海に潜ると外の水温に合わせて艇内も冷えるので、防寒具は必須らしい。フィンや計器にぶつからずに着られる気がせず、ルートグーヴァは外で着た。
 ハッチを閉めると、耳の奥がキンと鳴った。波の音もカモメの声も聞こえない。かすかに電子機器の音がするだけだ。ふいにがくんと揺れが来て、ルートグーヴァは前の座席の背につかまった。潜水艇が発進したらしい。海底を移動してしばらくすると、横揺れが始まった。耐圧殻の一部を残して潜水艇は海面下にあったが、まだ浮いているようだ。
「注水します」
 フィンがコンソールで操作をすると、低いモーター音がして降下が始まった。フィンは潜水艇を操作しながら、機能について説明してくれた。この潜水艇は充電式なので、エネルギーを節約する必要がある。潜るときはタンクに海水を入れ、その重さで沈む。他にもバラストという重りを搭載しており、トラブルで排水できないときはバラストを切り離して浮上する。たまに海底で見つける鉄の塊の正体を初めて知った。
「浅瀬を移動するために先生がキャタピラを取り付けています。他の潜水艇より重いので、バラストは少なめです」
「キャタピラがついているなら、台車はいらないんじゃないか」
「浮力を当てにしているので、地上には向きません。それに、キャタピラを動かすと潜水艇自体のエネルギーを使ってしまいます」
 研究所であれば高電圧で短時間に充電でき、予備のバッテリーも常備されているが、個人所有ではそうもいかない。家庭用のコンセントで充電するので、限度いっぱいまで充電するには何日もかかるそうだ。
「今日はちゃんと充電しています」
 フィンが指した先には十段階の目盛りがあり、一番上の緑色のランプが灯っていた。
「今日は? 充電せずに潜る日もあるという意味か」
「宝石サンゴの産卵を観察したときは、毎日少しずつ、充電が空にならないように潜りました」
 宝石サンゴは水深百メートルほどに生息している。細い枝を複雑に伸ばす美しい種だ。王宮の庭でも、もっと深くで生きる別種が育てられている。
「先生とふたりで、時間が短いので、炭酸ガスのフィルターもそのままで」
 耐圧殻は密閉されているので、放っておいては炭酸ガスがたまって中毒になってしまう。ガスを吸収するフィルターで除去しなければならない。
「危険じゃないか」
「先生は、海の藻屑になるなら本望だと言っていました」
「発想が危険だ」
「今日はフィルターも新品です」
「それを聞いて安心した」
 フィンは思慮深く慎重だが、先生といっしょだとずいぶん大胆になるらしい。
「今まで潜っていてトラブルはなかったのか」
「一度だけ。ルートが来る少し前です」
 急にアラートが鳴り、舵が利かなくなったらしい。潜水艇が何かにぶつかり、フィンは衝撃で脳震盪を起こした。気づいたら浜辺に流れ着いていて、通りがかりの人に助けられたそうだ。
「原因はなんだったんだ」
「わかりません。修理に出しましたが、悪いところはないと言われました」
 王国に漂着したのは偶然のようだ。ただの事故では対策の立てようがない。ハイドラストイエは報告に困るだろう。ヒッポカムポスたちが騒がなければいいが。
 周囲は次第に暗くなった。潜水艇の内部には灯りがない。計器についている緑や黄色のランプがかろうじてフィンの輪郭を照らしている。フィンは未知の海域に放り出された魚のようだった。落ち着きなく頭を動かし、透明な耐圧殻の上下左右を見回している。時折ハッとした様子で計器に顔を向けるが、ほんの数秒だ。よほど海が気になるらしい。
「ライトを点けます」
 フィンがスイッチを押すと、潜水艇前方に光が走った。銀色の魚が横切り、鱗をきらめかせて闇の向こうへ泳ぎ去る。肌寒さを感じるようになった頃、白いものがちらほらと見え始めた。不揃いの粒が瞬間的にライトを反射し、上へ上へと飛んでいく。前方だけではない。光の届くところすべてで白い粒が幻想的に舞っている。
「これは何だ」
 微生物のようにも見えるが、数が多すぎる。
「マリンスノーです」
「ああ、そうか。私たちが沈む速度の方が速いからか」
 フィンはうなずいた。降ってくるはずのマリンスノーが昇っていく光景は不思議だった。海で暮らしていると、マリンスノーはただの塵でしかない。光を当てるとこんなに美しいのか。ルートグーヴァはマリンスノーが暗い海に吸い込まれていく境界線を見つめていた。
「いっしょに見られてよかったです」
 フィンの手がコンソールに伸び、スイッチを押した。モーターの音が変わる。
「ルートといっしょに見たかったんです」
 二人きりだ。狭くて静かで穏やかな空間。このまま果てしなく沈み続けられたらいいと思う。言葉を返したかったが、ルートグーヴァは黙っていた。何かが壊れてしまいそうで怖かった。
 フィンはT字型のレバーを握った。深度は王国よりもずっと浅い。フィンがライトを下に向けると、灰色の砂に覆われた海底が見えた。薄黄色のイソギンチャクがライトに反応して触手をすぼめる。
 潜水艇は砂を巻き上げない速度で進んでいった。海底に白い貝が転々と見える。貝は数を増やし、あっという間に海底を埋め尽くした。シロウリガイのコロニーらしい。フィンは座席から身を乗り出し、延々と続くシロウリガイを観察している。ルートグーヴァは腕を組み、座席に深く腰掛けて眺めるともなしにコロニーをながめていた。
 小ぶりだが、おいしそうだ。できれば貝よりカニがいい。エビでもいい。生きている甲殻類を食べたい。初めはそんな感想しか浮かばなかったが、ふと違和感を覚えた。うまく表現できないが、このコロニーは何かがおかしい。
「海水温がいつもより高いです」
 フィンが首を傾げる。深海の水温は季節を問わずほぼ一定だ。太陽の光も雨も風も届かないので、水温が上がる要因は少ない。嫌な予感がする。
「ルート、見てください」
 潜水艇のライトが届くぎりぎりのところに灰色の砂がわだかまり、シロウリガイが埋もれている。半径数メートル程度の歪な円の中だけ、不自然に貝の密度が低かった。
「死んでいる」
「はい。そうみたいです」
 フィンがライトを左右へ動かすと、似たような円がそこかしこにあった。まるで何かに食い破られたようだ。フィンはマニピュレータを操作し、空白地帯の砂を採取した。
 コロニーから離れて砂地を移動していると、ライトが何かに反射した。白くてぼんやりしているのでマリンスノーかと思ったが、すぐに有櫛ゆうしつ動物――クシクラゲの一種だと気づいた。大量のクシクラゲがただよっている中に入ってしまったらしい。
「変です。有櫛動物は深海にたくさんいますが、こんなに密集しているのは初めて見ます」
 フィンがスクリューの出力を下げたらしく、潜水艇の速度が落ちた。スクリューにクラゲを巻き込みたくないのだろう。クシクラゲは繊毛を絶え間なく動かし、点滅するように光を放っている。フィンは操縦もそこそこに、潜水艇を取り囲む無数のきらめきを追いかけていた。
 海に異変が起こっている。噴火の前兆だろうか。王の力で抑えられているはずだが、予想より負荷が高いのかもしれない。ハイドラストイエは何も言ってこない。安心していいのか、急激な変化のため伝達が追いついていないのか。
 もう、一人で宝玉を探すような猶予はないのかもしれない。急がなければ。
 心臓が破裂しそうに鳴っている。首の後ろが熱くて、喉が渇いていた。
 フィンは宝玉の在処を知っている。でも、聞きたくない。
「ルート」
 フィンが振り返った。いつの間にかクシクラゲは一匹もいない。コンソールのランプがフィンの頬をぼんやりと照らしている。
「どうしたんですか」
 すぐには舌が動かなかった。
「少し、考え事をしていた」
「考え事?」
 聞きたくない。
「先生の、人魚の都市について……灯りはどうしていたのだろうか、と」
「先生は二つ仮説を立てています。発光する動植物を育成していたという説と、イルカのような音波を使っていたという説です。ルートはどちらだと思いますか」
 聞きたくない。
「育成説だろうか」
「僕もそう思います」
 聞きたくない。
「フィン」
「はい」
 背後にクラーケンがいて、八本の腕で四肢も喉もすべてを操られているような心地がした。
「フィンが見つけた球体を、私も見てみたい。どこにあるんだ」

 フィンは総務部で台帳に署名し、鍵を二つ借りた。風が強く、見張りのカモメたちが流されている。フィンの髪は縦横無尽に跳ねまわっていたが、本人はまるで気にせず丘の資料庫へ歩いていった。一つ目の鍵で資料庫の扉を開ける。階段を登り、通路を進む。フィンは螺旋階段から数えて二番目のドアに二つ目の鍵を差し込んだ。
 ドアと北面を除き、壁はガラス戸がついた棚で埋まっている。サメの歯、エイの皮、エソのホルマリン漬け、樹脂で固めたクモヒトデ。彼らは海で死ねなかった。海は彼らを忘れ去った。
「ここにあるのは全部先生の資料か」
「はい、そうです」
 鉄製の書棚が図書室のように並び、重そうな革装丁の本や膨らんだ封筒が詰め込まれている。棚板に置かれたノートは資料の貸出簿らしく、日付と本のタイトルと名前が書かれていた。すべてフィンの署名だ。フィンは字が汚い。折れ曲がった釘を握ったて書いたような字だ。日付は一ヶ月から二ヶ月の間隔がある。一冊読むのにそれくらいかかってしまうのだろう。
「私も何か借りてもいいか」
「はい」
 ルートグーヴァは手近な本を一冊抜き取り、白衣の胸ポケットに差していたペンでノートにタイトルと日付を書いた。八月二十一日。あと十日もしない内に最後の満月が昇る。署名する手元をフィンがじっと見つめている。
「ルートは字がきれいですね」
 魔女の薬の効果だが、練習もした。褒められると悪い気はしない。
「球体は?」
「あちらです」
 フィンが背を向ける。ルートグーヴァはノートを閉じ、その上にペンを置いた。
 北の壁は全面が巨大な金庫だった。扉には潜水艇のハッチと同じく円形のハンドルがついており、中心に握りこぶし大のダイヤルがはめられている。細い線がびっしりと入り、周囲に数字が彫られていた。フィンはダイヤルを握り、ためらいなく左右へ回す。数字が小さい上に、フィンの手で隠れてしまってよく見えない。左右の順番と、計十三回回すことしか覚えられなかった。
 ごとん、と重い音がした。フィンが体重を後ろにかけて扉を引き開けると、扉と同じ大きさの金属製の棚が現れる。ルートグーヴァの目は緑色の球体に吸い寄せられた。視線より少し上、円形の台座に載っている。ようやく見つけた。
 フィンが手を伸ばし、宝玉を下ろす。
「どうぞ」
 無邪気に差し出され、ルートグーヴァは戸惑った。王国の結界を成す大切な宝玉だ。おいそれと触っていいはずはないが、受け取らないと不自然だろう。ルートグーヴァは本を小脇に挟み、落とさないように注意深く宝玉を受け取った。重い。腕にも胸にものしかかってくる。
 宝玉の表面はなめらかだった。明るい黄緑色から、深く青みがかった緑へ、光の当たり方で色合いが変わる。石柱に安置されていたときは中心に光が宿っていたが、今は光っていない。王の魔力が失われているからだろう。
「ガラス質の多い岩石だと思いますが、はっきりしません」
 先生が帰ってきて一通り調べ終わったら、首都の大きな研究所に送る予定らしい。この研究所には鉱物の専門家がおらず、分析機器もないそうだ。
 フィンは饒舌だった。祭具ではないかと意見を述べ、日常的に使うには重いし大きすぎると理由を付け加えた。早く先生に見せたい、意見を聞きたいと言って、薄いブルーの瞳を輝かせながら宝玉の表面を撫でる。
「ルートは何だと思いますか」
「さあ、なんだろう」
 いっしょに笑いたかったが、うまくできなかった。喉が詰まって息苦しい。
「用途はわからないが、とても大切なものだと思う」
「僕もそう思います。丁寧に磨かれています。きっと誰かが心を込めて磨いたんです」
 火山を抑えるために、神々が海の王へ与えた。王は結界を張り、海を守ってきた。宝玉には、平和であれという王の願いがこもっている。ルートグーヴァは宝玉をフィンに返した。フィンは供え物をするように宝玉を金庫に戻し、扉を閉めた。錠の落ちる音が腹に響いた。
 来たときと反対の順番に鍵をかけ、資料庫の外へ出る。風はまだ強く、フィンの髪と白衣の裾をはためかせた。ルートグーヴァは声を出そうと息を吸い、ただ吐いた。フィンのうれしそうな顔を見るのではなかった。決心が揺らぎそうだ。
 総務部がある建物が見えてきた。このまま鍵を返されては宝玉の場所がわかっていても取り戻すのが難しい。十歩で声を出すと決める。九歩。フィンの気持ちを考えてはいけない。七歩。宝玉を海に持ち帰るのが任務だ。五歩。私情を挟んでいる時間はない。三歩。宝玉を取り戻せても取り戻せなくても、次の満月が昇ればもうフィンといっしょにはいられない。
 あと、一歩。
「フィン、鍵を貸してくれるか。ペンを置いてきてしまったみたいだ。たぶん、貸出簿を書いたときだと思う」
「いっしょに行きます」
「チョウザメはいいのか?」
 一昨日から始まった新しい実験は、数日にわたり同じ時間に観察が必要だ。フィンはためらっていたが、ルートグーヴァが代わりに返却すると言うと、鍵を貸してくれた。
「総務部に一言伝えておいてくれると助かる」
「はい、わかりました」
 フィンと別れ、ルートグーヴァは金庫の前に戻った。ダイヤルを回すと、かすかにカチカチと音がする。人間の体ではこの程度だが、クラーケンの姿であればもっとはっきりと振動が感じられるだろう。正しい数字の組合せもわかるはずだ。
 ルートグーヴァはペンを取って廊下へ出た。ドアの鍵は閉めない。フィンが最後に書いた貸出簿の日付は半月前だった。恐らくあと半月、フィンはこの部屋に来ない。丘の上につながる扉の鍵が開いていることを再確認し、資料庫自体の鍵を閉める。これで、金庫へ至る道は確保できた。ルートグーヴァは大きく息を吐いた。
 総務部へ鍵を返したときも、フィンにペンは見つかったかと聞かれてうなずいたときも、自分の体に実感がなかった。ずっと、あの金庫の前にひとり佇んでいるような気がした。ベッドの中で抱きしめたフィンすら現実味がなく、憂鬱になる。
 上弦の月が沈もうとしていた。
 宝玉について報告すると、ハイドラストイエはえらに水をかけるのをやめた。
「どーすんだよ。金庫開けられないんだろ」
「ダイヤルの数字は見えなかったが、回す回数と左右の順番は覚えている。元の体に戻れば開けられる」
「まあ、お前がそう言うならそうなんだろうな。わかった」
「王の力はどれくらいもつ?」
 シロウリガイのコロニーにできた空白部分と大量のクシクラゲが目に焼きついている。
「王様的にはまだいけるらしいけど、完璧に抑えとくのは難しいってよ。宝玉がない柱から、だんだん魔力がもれちまうんだって」
 やはり、ほころび始めている。
「そんな思いつめた顔すんなよ。間に合いそうなんだからいいじゃん」
「まだ終わったわけではない。油断はできない」
 丘の上の扉が開くか、当日まで毎日確認した方がいいだろう。部屋のドアも同様だ。衣類や許可証の処分には、泡沫の精霊たちの協力がいる。すべきことは多い。余計な考えにはとらわれず、着実にこなしていかなければ。
「なあ、後悔してるか」
 余計な考えにとらわれず、と思った矢先にこれだ。
「何が」
 あえて知らない振りをする。
「宝玉の場所を聞き出したこと」
 ハイドラストイエは見逃してくれなかった。いつもそうだ。そっとしておいてくれない。
「もうした。し終わった」
 これ以上聞かれたくなくて、ルートグーヴァは嘘をついた。ルートグーヴァの意思が伝わったのか、ハイドラストイエは黙った。今も後悔している。これからも後悔し続けるだろう。
「それより、当日いっしょに来てくれ」
「なんで。宝玉がしまってある部屋から海まで近いんだろ」
「念のためだ。クラーケンに戻ったら地上では素早く動けない」
「そっか、人間に見つかって追いかけられたりしたら困るもんな」
 ハイドラストイエは勝手に納得したようだが、人間に見つかりはしないだろう。忍び込むのは月が昇る直前だし、警備員の巡回経路もわかっている。気がかりなのは自分の運命だ。ルートグーヴァは海で死ねない。魔女にも、陸へ行ったらそれきりだと言われている。海まで辿り着けずに死ぬとしたら、宝玉はハイドラストイエに託すしかない。
「人間に見つかってもオレ一人で逃げたりしないからな。ちゃんと助けるから安心しろよ」
 魔女との取引を知ったら、ハイドラストイエは怒るだろう。宝玉を取り戻す前に無用ないさかいは避けたい。まだ、黙っていよう。
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