巨乳だけど清楚系(のつもり)です!

井上無印

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第5話:夏祭り、帯がほどける五秒前!

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 七月の夕方。
 浴衣姿の人たちで賑わう神社の境内に、私は少し緊張しながら立っていた。

「うわぁ……すごい人……」
 頭上には提灯の明かり、甘い綿あめの匂い、子どもたちのはしゃぐ声。
 こういう賑やかな場所は久しぶりで、自然と胸が高鳴る。

 今日の浴衣は藍色に白い朝顔の柄。
 お母さんに手伝ってもらって着たけれど、帯だけは自分で頑張った。
 ……その“頑張り”が、後であんなことになるなんて、このときはまだ知らなかった。

「星野ー! こっち!」
 手を振っていたのは、同じクラスの篠原くん。
 祭りの実行委員で、今日はお手伝いの合間に私を案内してくれるらしい。
 Tシャツ姿に浴衣女子をエスコート。なんかドラマっぽい。

「浴衣、似合ってるな」
「えっ、ありがと……!」
 思わず背筋が伸びる。褒められ慣れてないから、すぐ顔に出ちゃう。
 しかも篠原くん、さらっと言うタイプだから余計にずるい。

「さて、どこから回る?」
「えっと……金魚すくいとか?」
「お、意外と王道。清楚系でもそういうの好きなんだ」
「清楚系“でも”って何!?」
「だって、今日の帯、ちょっと色っぽいじゃん」
「!?」
 な、なにその目線。下見ないで!

 屋台をまわりながら、ヨーヨー釣り、りんご飴、かき氷。
 気づけば笑いっぱなしだった。
 普段は学校で“真面目キャラ”を装ってるけど、こういう時間は素の自分でいられる。

「星野、氷ついてる」
 篠原くんが、私の口元についたかき氷の欠片を指で取ってくれた。
 その指先が頬をかすめて、心臓が一拍ずれる。

「……ありがと」
「いえいえ」
 彼は照れ隠しに笑ってるけど、私の方がずっと赤い。
 たぶん、浴衣のせい。いつもより、空気が近いせい。

 少し人の少ない神社の裏道を歩いていると、風が吹いた。
 その瞬間、帯の結び目がふわっと軽くなる。

 ……え?
 やな予感。

「ま、まって、帯が……!」
 手を当てたけど、するりと滑ってゆるむ感触。
 ぎゃあ! これ、ほどけるやつ!?

「ど、どうした!?」
「ちょ、ちょっと、動かないで! 今、帯が……!」
「帯?」

 篠原くんが覗き込む。
 ダメダメダメ、それ一番見られたくない位置!

「だめっ、見ないで!」
「見ないって言われても、もう半分外れてるけど!?」
「言わないでぇぇぇ!!」

 慌てて両手で押さえるけど、片手で浴衣、片手で帯は無理がある。
 動くたびに裾がずり落ちそうで、身動きが取れない。

「ちょ、篠原くん……お願い、後ろ結んで!」
「えっ!?」
「いいから早く!」
「い、いやでも俺、帯の結び方とか知らないし!」
「今そんなこと言ってる場合じゃないのっ!」

 背中を向けたまま、帯を後ろに差し出す。
 彼の指が、慎重に布をつまんで引っ張る。
 風がまた吹いて、髪が頬にかかる。
 その一瞬の静けさが、妙に息苦しい。

「……こんな近くで見るの、初めてだな」
「な、なにを……!?」
「浴衣の背中。なんか、すごい綺麗」
「~~~~っ!!」
 もう顔が爆発しそう。
 お願いだから、早く結んでぇ!

「よし、たぶんこれで大丈夫」
 帯をきゅっと締められて、やっと息ができた。
 けれど、あまりに強く結ばれたせいで、腰のあたりが苦しい。

「……うん、ちょっと苦しいけど助かった」
「そっか。でも、ほら」
 篠原くんがいたずらっぽく笑う。
「今の、けっこうレアなお願いだったよね」
「忘れてください!!」

 夜空に花火が上がる。
 ドン、と音が響いて、赤や金の光が空に散る。
 人混みの中、私たちは並んで立っていた。

「星野、さっきの帯のこと……」
「忘れてって言ったでしょ!」
「でも、あれも含めて、今日の星野……なんかすごく楽しそうだった」
 不意打ちの言葉に、胸の奥がきゅっとなる。
 浴衣の中の鼓動がうるさくて、花火の音に紛れてくれと祈る。

「……うん。楽しかったよ」
 私は笑って、空を見上げた。
 遠くで最後の花火が大輪を描く。
 その光が帯に反射して、少しだけきらめいた。
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