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第6話:保健室で、ナイショの検温。
しおりを挟む昼下がりの保健室。
カーテン越しにやわらかな光が差しこみ、そこだけ時間が止まったみたいに静かだった。
「……ちょっと、熱っぽいかも」
体育の後、頭がくらくらして、星野は先生に言われるままここへ来た。
でも運悪く、保健の先生は不在。
体温計を取りにきたところで――ガラッ。
「……星野?」
振り向くと、クラスの委員長・水瀬が立っていた。
「どうしたんだ、顔赤いけど」
「ちょっと、熱があるみたいで……。でも先生いなくて」
水瀬は困ったように笑って、
「そっか。体温計なら貸してあげるよ。俺、備品整理頼まれてて」
と、棚から取り出した。
けれど手にしたのは、どこか古めかしい銀色の体温計。
「……これ、水銀のやつ?」
「電子のほう、電池切れてるみたいだ。これしかない」
そう言われ、星野は一瞬ためらった。
脇に挟むタイプ。つまり――服を少し開けなきゃいけない。
(いや、でも仕方ないよね。検温くらい普通……普通……!)
心の中で必死に言い聞かせて、シャツのボタンを上から二つ外す。
すると、水瀬が一歩こちらに寄ってきた。
「俺、体温計の先、アルコールで拭いとくから。……手、出して」
「う、うん……ありがとう」
彼の手が少し触れた瞬間、びくりと体が跳ねる。
冷たいアルコールの綿が肌に触れるたび、そこだけ敏感になっている気がした。
「じゃ、測るね」
「……見ないでよ?」
「見ない見ない。ちゃんとカーテン閉めとくから」
水瀬は背を向け、星野は制服の隙間からそっと体温計を挟んだ。
……けど、なぜか上手く固定できない。
「えっと……落ちそう……」
「貸して。俺、支えててやるよ」
「え、ちょっ、水瀬くん!?」
振り向く間もなく、彼の手が星野の肩を軽く押さえ、
もう片方の手がそっと体温計を支える。
至近距離で見つめ合う二人。
息が触れそうなほど近い。
「……その、距離、近くない?」
「いや、これじゃないと角度が……。動くと落ちるって」
星野は思わず目をそらした。
顔から火が出そうだ。
さっきまでの“熱っぽさ”が、違う意味で上昇していく。
「……三十七度二分」
「う、うそ、上がってる……!」
「無理もない。こんなに顔赤いし」
水瀬は真面目な顔で言ったけど、
その耳まで真っ赤になっていた。
「……ありがと。もう大丈夫だから」
「無理すんなよ。今日は早く帰れ」
星野は体温計を受け取って、机に置いた。
その瞬間、カーテンの外から女子の声。
「星野さん、ここにいるー? 先生戻ってきたって!」
「ひゃっ……!」
星野は慌ててボタンを閉めようとして――手がもつれ、体温計がカランと落ちる。
水瀬が反射的に拾い上げようとして、二人の額がゴツン。
「いった……!」
「す、すみませんっ!」
星野は両手で顔を覆い、さらに真っ赤になった。
「……ほんとに、熱、上がったかも」
「……俺も、かも」
ふたりの視線が一瞬だけ交わり、
保健室の中には、静かすぎる心臓の音だけが響いていた。
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