『体の中にナニカが居る』 1人だけ安全な異世界転移

石のやっさん

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第18話 横取りなんて考えなければ

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「凄いね理人くん、毎日、そんなに採取できるなんて」

確かにあの場所での採取は凄く稼げる。

手加減して採取していても大体金貨10枚(約100万円)は必ず稼げるんだから凄いよな。

「しかも、安全な場所みたいで、折角、武器を購入したのに、未だに使う機会は無いんだ」

《もしかしたら『ナニカ』が居るのかな…そうじゃないと魔物に此処迄会わないなんて普通はあり得ないよね》

「そうなんだ…凄いね、理人くんは凄く運が良いみたいだね」

「偶々かも知れないけど、魔物が俺を見ると何故か避けてくれるんだ…もしかしたら、案外魔物って猪や熊みたいに向こうも避けてくれるのかもな」

「はははっ、そうだね…それにしても理人くん、その剣」

「カッコ良いだろう? 柄の所に女神みたいなレリーフが彫ってあって刀身には偶に女神みたいに奇麗な女性が浮かぶんだ」

《私にはまるでゴーゴンの様な怪物女のレリーフにしか見えないんだけどな》

そう言って俺は剣を抜いて見せた。

ついている事に、今はあの綺麗な女性が刀身からこちらを見ていた。

「ほら、凄く綺麗な人が見えるだろう?」

「え~と理人くん、見えないよ」

「見えないの?」

「うん」

そうか、これは剣に宿っている精霊みたいな者なのか…もしかしたら所有者にしか見えないのかも知れない。

こんな女神みたいな神々しい存在を見せられないなんて残念だ。

『…』

お互いに話せないのは少し残念だ。

「それは残念だ」

「そうだね…」

《こういう所は美瑠子ちゃんみたいに見える人が羨ましいな》

「それじゃ、行ってきます」

「うん、今日は肉じゃがもどき作って待っているね」

「ああっあれは美味しいから楽しみにしている」

月子は日本食に近い物を作ってくれている。

異世界では材料が揃わないからモドキだけど…それでもありがたい。

◆◆◆

今日もいつもの様に薬草の採取をしている。

しかし、あちこちから視線を感じるんだよな。

だけど、魔物は襲ってこない。

冒険者ギルドで話を聞くと街道ですら襲ってくると聞いたのに、こんな森の中なのに襲ってこない。

何回か見かけて目があった事があったけど、向こうから逃げていった。

やはり魔物は猪や熊と同じで、向こうもこちらを恐れていて手を出さなければ立ち去って行くのかも知れない。

まぁ、知識が無いからまだ解らないけど。

もし、戦う事になっても結構いける気がする。

この間手に入れた剣、多分最低でも魔剣の様だ。

刀身に美女が映る…それと柄のレリーフだけでも本来凄い価値だ。

俺は授業で剣道を習っていただけなのに、一度振ったら岩まで斬れた。

それだけでなく、何回も振るったら風が舞い上がり突風並みの風が起きた。

流石に異世界、こんな武器があるなんて思わなかった。

もし魔物が襲ってきても弱い魔物位ならこの剣でどうにかなるだろう。

この場所は本当に素晴らしい…幾らでも薬草が採取できる。

今のペースで採取しているなら、年単位で採取可能な気がする。

何時も通りに薬草を採取していると…

森の奥で悲鳴が聞こえてきた。

もしかしたら、冒険者や剣士が魔物と戦っているのかも知れない。

『冒険者の命は自己責任』

可愛そうだが俺は関わらない事にした。

俺は駆け出しの冒険者、幾ら凄い武器があると言っても実力は大した事ない。

授業で剣道を習った程度の腕で加勢しても意味が無いだろう。

この素晴らしい剣の能力を別にしたら『ただの雑魚』それにもし俺が死んだら月子が生活出来なくなる。

ゲームで言うなら『命大事に』モードで行動するべきだ。

周りを気にしながら採取を済ませた。

だが、何が起きているのか興味にかられ、森の奥に行ってみた。

悲鳴も聞こえてこないし『多分終わった後だ』

魔物らしき物は居ない。

だが、血がまるで水たまりの様に溜まっていた。

そこには冒険者証が4つ落ちていた。

確か、これを持っていけばギルドでお金が貰えるんだったな。

俺は血で濡れたプレートをボロ布で拭い手にした。

◆◆◆

時は少し遡る。

「あの新人随分と羽振りが良いじゃねーか!」

俺の名はゾルバ、万年D級冒険者だ。

1人前と言えばそうだが、平凡と言えば平凡だ。

才能のある者は此処からC級B級と上がっていく。

まぁBまで上がれば1流と呼ばれ良い生活が出来る。

俺は才能が平凡だったからDで止まった。

これでもパーティーリーダーで、仲間が三人居る。

ゼル、バルダ、ドック 三人とも同じD級でバトルアックスというパーティ仲間だ。

D級と言うのは本当に大変なんだ。

食べるのには困らない位の仕事は出来るが、逆を返せばそれだけ。

生活に余裕はない…それなのに年齢的に家族もいる。

勿論、俺たち4人も同じだ。

キツキツの生活の中、偶に酒を飲むのが楽しみ…それが俺らのランクだ。

「なぁ、ゾルバ知っているか? 最近冒険者になった異世界人」

「ああっ、異世界人なのにジョブに恵まれない奴だろう」

「そいつで間違い無いが…凄く景気が良いらしいぞ」

「ゼル、まさかチート持ちでいきなりオーガを倒したとか言うんじゃないだろうな?」

「いや違う、聞いた話では、良質な薬草を採取しているみたいだ」

「薬草? そんなに金にならないだろう…ルーキーが金貨を手に入れた位、喜んでやろうぜ、俺らはベテランなんだからよ」

「バルダ、それが金貨10枚でも言えるのか?」

「ドック…なんの冗談だ、薬草採集で金貨10枚だと!オーガ数体倒したのと同じだぞ」

「冗談じゃねーよ、しかも採集に出掛けた時は必ず手にしているんだぜ」

冒険者にとって金になる採取場所や狩場は大切だ。

その為、絶対にばれない様に気を付けている。

だが彼奴は新人で異世界人、その辺りの事を知らないだろう。

『とられる奴が間抜けなんだ』

試しに街の中で理人を尾行してみたが、気取られる感じはしなかった。

金貨に目が眩み…俺たちは肝心な事を忘れていた。

二十年近くこの辺りで冒険者している自分たちが見つけられなかった穴場を新人が見つけられる訳はない。

もし、そんな穴場があったら…それは訳アリの場所だ。


「おい、ゾルバ、新人を追っかけて来てしまったが…此処は死の森じゃ無いのか?」

此処はゴブリンとオークの巣の近く…しかもキング種までいる場所として有名だ。

「ああっ、だが新人の理人が此処で無事に採取しているんだ、案外上級冒険者に狩られて居なくなったのかもな」

「確かに…一回なら偶然かも知れないが、こうも回数が多いならその可能性もあるだろう」

「違う…不味いぞ囲まれている」

ゼルは俺たち中で1番眼鼻が利く…そのゼルが囲まれている、そう言った。

「全員逃げるぞ、ゼル、敵が居ない方向を指示しろ!」

「…無い、しかも無数のオークやゴブリンに囲まれていて数が尋常じゃない」

気が付くと俺たちはオークやゴブリンに囲まれていた。

「もう逃げ場はないな」

「やるだけやるか」

だが数の暴力には勝てない…もう死ぬしかない。

『横取り』なんて考えなければ…今頃は…

もう遅い…死ぬ以外の未来は俺たちにはないのだから。

◆◆◆

「ウツワイガイノニンゲンガイマス」

我は報告を受けた…

此処暫く死の森には何かを宿した器の人間しかきていない。

恐らくは我らにとっては仕えるべき方の器に傷はつけられない。

昔はこの辺りの草につられて沢山の人間が来ていたが、最近では余り来なくなった…久々の人間だ。

「一人残らず殺してしまえ…無事殺せたら、その肉を使い宴でもしようじゃないか」

「ソレハタノシソウデスネ…スグニトリカコミ、コロシマス」

久々の人間の肉…皆喜ぶだろう…

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