『体の中にナニカが居る』 1人だけ安全な異世界転移

石のやっさん

文字の大きさ
52 / 76

第52話 王女の憂鬱

しおりを挟む
本当に不味い事になったのかも知れない。

私は直ぐに、数人しか居ない天馬騎士(ペガサスナイト)に頼んで、理人や月子と仲が良かった美瑠子と和也を招集しました。

彼等二人にはしっかり異世界人として支援していますから、問題なく話せるはずです。

まだ、遠くに行ってなかったので、すぐに戻ってきたのですが…

「なんですって! 理人という少年には『異世界の女神』が宿っている可能性がある…そう言うのですか?」

「そうですよ! 最低でも天使クラスの実力はある『ナニカ』が宿っていますね? この世界の女神様には及ばないですが『下級神』すら恐れて逃げ出す位の実力はありますね…前の世界で私、いや私達が目視した中ではまさに最強の存在です」

「その様な存在がこの世界に来てくださったと言うのか?」

「お父様…」

「今は儂が話しておる! 詳しく話しをして下され」

ああっ、お父様の顔が歪まれた。

基本、余程の事が無い限り、自分では動かないお父様が、自分自ら話を聞く姿勢だ。

話を聞けば聞くほど…理人、いや理人様に宿っている存在は凄すぎた。

月子に宿っていた犬神という神すら退けたという話しを含み…まるで伝説に語られる様な事を平然と行っている。

聞く話が本当であれば…こんな凄い存在二人と居ない。

「それで美瑠子殿、もし勇者である大樹殿、もしくは指導騎士と比べたら、その宿っている女神様の力はどの位強いと思われる」

千…万、その位は…

「無礼を承知でいわせて頂いて良いかしら」

「構わぬ不問に致す」

「そんな、おもちゃみたいな存在と比べられるわけないですよ…大樹? 1万人居ても勝てないんじゃないですか? 騎士、ご冗談を…多分、この城に居る騎士全員、いえこの国にいる騎士が全員で戦っても多分無理なんじゃないですか…それ位に凄い存在ですね」

「貴方がいう事が本当なら魔王にすら勝てる…そう聞こえますが…」

「あの…ライア姫さま『私は神の力』について話しているのですよ? 魔王なんて存在は対比になりません。 私の考えでは月子についていた犬神にすら劣る存在です…もし、この世界で理人の中に眠る存在に勝てる存在が居るのだとしたら…それは女神イシュタル様とそれこそ、魔族の神である邪神だけです…最も、流石に世界を司っている二柱の神には勝てないと思いますが」

「本当にそうなのじゃな」

確かに突拍子もない話し…笑うのは簡単です。

ですが…今までの話しから考えるに、辻褄が合ってしまいます。

魔物や魔族に襲われない人間。

突如として去っていった四天王のコーネリア。


神託を降ろしてくれなくなったイシュタル様。

弱い勇者達に…突如弱くなった『聖』『光』の力。

…そこから考えだされる答えは。

『異世界の女神』を此処に送って下さったから…今は保護する必要が無い。

そうイシュタル様が判断した…だから神託すら要らない。

そう考えた可能性が高い。

女神の騎士なんて存在すら遥かに超える『女神を宿した存在』そんな存在がこの世界に来たのなら…人類側の勝利は確定。

最早『何もすることは無い』だから干渉しない…そういう事だわ。

「お父様…」

「ライア、何て事をしてくれたんだ…そんな存在を追い出してしまった、急ぎ手を打たないと取り返しがつかない事になる…こんな事が教皇様に知れたら」

「不味いです…すぐに支度金を渡して此処に招かなければ、最悪、私との婚姻も視野に入れて」

「お恐れながら幾ら支度金を用意するつもりですか?」

「この際ですから金貨1000枚(約1億円)用意します! 美瑠子殿に和也殿、ご足労かけますが…」

「全然足りませんよね、ねぇ和也」

「ああっ、その位の金額なら今の理人なら1~2週間で稼いでしまう、そもそも多分彼奴一生遊んで暮らせる位のお金を持ってそうだ、それに質素だから普段からお金は使わないから『要らない』と断りそうだ」

「ならライアはどうだ! 我が娘ながら王国一と名高い美姫だ、なんなら異世界人の憧れ、エルフの側室つきで…」

「お父様…そんな」

「失礼を承知で申し上げる…理人は凄い美形だぞ、女にモテる、まぁこの国の基準じゃ解らないがな」

ジョブが余りに酷いから顔を余り見ていませんでしたが…言われてみれば、そうかも知れません。

「令和の撃墜王理人…それが前の世界の理人のあだ名です…あの塔子すら振った位モテてますよ…まぁ怖い女神のコブ付きですけどね…それに」

「それにまだ何かあるのですか?」

「そんな理人が手元に置いている月子ですがライア姫様にはどの様に見えますか?」

月子…?

「余り、パッとしない感じに見えましたが」

「はい、その通りですね…クラスで真ん中の普通の子です」

「だったら…」

「まだ解りませんか? もしかしたら理人は『女性の外見』にそんな価値を求めないのかも知れません」

正直、もうどうして良いのか解りません。

「それでは、どうすれば良いのだ」

「理人はあれで温情深い人間ですから謝れば良いかと思います」

「まぁな…彼奴は優しいからきっと謝れば許してくれる…そう思うな」

「この度は世話になった…もう下がって良いぞ」

「「はっ」」

◆◆◆

「お父様…」

「何をしている! 今すぐ馬車を出させろ!」

「お父様、一体何を」

「謝罪は早い方が良い…今から一緒に謝りに行こう」

「王であるお父様が頭を下げるのですか?」

「良いから行くぞ…取返しが付かなくなる前に行動、それしかあるまい」

こうして私は…再び異世界人、理人に会いに行く事になりました。


しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

男女比1:15の貞操逆転世界で高校生活(婚活)

大寒波
恋愛
日本で生活していた前世の記憶を持つ主人公、七瀬達也が日本によく似た貞操逆転世界に転生し、高校生活を楽しみながら婚活を頑張るお話。 この世界の法律では、男性は二十歳までに5人と結婚をしなければならない。(高校卒業時点は3人) そんな法律があるなら、もういっそのこと高校在学中に5人と結婚しよう!となるのが今作の主人公である達也だ! この世界の経済は基本的に女性のみで回っており、男性に求められることといえば子種、遺伝子だ。 前世の影響かはわからないが、日本屈指のHENTAIである達也は運よく遺伝子も最高ランクになった。 顔もイケメン!遺伝子も優秀!貴重な男!…と、驕らずに自分と関わった女性には少しでも幸せな気持ちを分かち合えるように努力しようと決意する。 どうせなら、WIN-WINの関係でありたいよね! そうして、別居婚が主流なこの世界では珍しいみんなと同居することを、いや。ハーレムを目標に個性豊かなヒロイン達と織り成す学園ラブコメディがいま始まる! 主人公の通う学校では、少し貞操逆転の要素薄いかもです。男女比に寄っています。 外はその限りではありません。 カクヨムでも投稿しております。

酒好きおじさんの異世界酒造スローライフ

天野 恵
ファンタジー
酒井健一(51歳)は大の酒好きで、酒類マスターの称号を持ち世界各国を飛び回っていたほどの実力だった。 ある日、深酒して帰宅途中に事故に遭い、気がついたら異世界に転生していた。転移した際に一つの“スキル”を授かった。 そのスキルというのは【酒聖(しゅせい)】という名のスキル。 よくわからないスキルのせいで見捨てられてしまう。 そんな時、修道院シスターのアリアと出会う。 こうして、2人は異世界で仲間と出会い、お酒作りや飲み歩きスローライフが始まる。

異世界から来た娘が、たまらなく可愛いのだが(同感)〜こっちにきてから何故かイケメンに囲まれています〜

恋愛
普通の女子高生、朱璃はいつのまにか異世界に迷い込んでいた。 右も左もわからない状態で偶然出会った青年にしがみついた結果、なんとかお世話になることになる。一宿一飯の恩義を返そうと懸命に生きているうちに、国の一大事に巻き込まれたり巻き込んだり。気付くと個性豊かなイケメンたちに大切に大切にされていた。 そんな乙女ゲームのようなお話。

大学生活を謳歌しようとしたら、女神の勝手で異世界に転送させられたので、復讐したいと思います

町島航太
ファンタジー
2022年2月20日。日本に住む善良な青年である泉幸助は大学合格と同時期に末期癌だという事が判明し、短い人生に幕を下ろした。死後、愛の女神アモーラに見初められた幸助は魔族と人間が争っている魔法の世界へと転生させられる事になる。命令が嫌いな幸助は使命そっちのけで魔法の世界を生きていたが、ひょんな事から自分の死因である末期癌はアモーラによるものであり、魔族討伐はアモーラの私情だという事が判明。自ら手を下すのは面倒だからという理由で夢のキャンパスライフを失った幸助はアモーラへの復讐を誓うのだった。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

処理中です...