悪徳貴族になろうとしたが

石のやっさん

文字の大きさ
61 / 94

【閑話】奴隷の憂鬱

しおりを挟む
「お母さま、これからどうなってしまうでしょうか?」

「大丈夫よテレジア、そんな酷い事にはならないと思うからね、ほら生活も今迄と変わらないわ」

マリアーヌ元王妃はこれは宛にならない事を知っている。

王族は軟禁されていてもそれなりの対応は受ける。

だが、それで安全が保証されている訳では無い。

豪華な部屋で過ごしフルコースを食べる生活をしていても、いきなり縛り首になる事やギロチンに掛けられる事がある。

それが王族には多様にある。


そして自分達は、かなり不味い立場にある。

本来は慈悲を掛けてくれる立場の教会は完全に向こう側の味方。

自分達にはもう《この世で味方になってくれる人》は居ない。

勇者であるルディウス様に嫌われた時点で、恐らく死が待っている。


だから、私は娘達を守る為には何でもするつもりだ。

豚の真似をしろと言うなら喜んでやる。

裸になって踊れというなら笑顔で踊って見せる。

勿論、伽をしろと言うなら自分から笑顔で腰を振って見せる。


夫を殺された事など忘れて《オモチャ》になるしかない。

多分、私と言うオモチャが楽しませていれば、少なくとも娘に矛先は向かわない。

だから...だから...そうするつもりだ。


それしか家族を守る方法が無いのだから、仕方がないわ。

だけど...

こんな体で満足して貰えるのでしょうか?

確かに昔は王国一の美女と言われた事もありますが...もう30半ば、最早あの頃の美貌はない。

体だってくたびれた体をしていますし《そう言う行為》もテレジアが生まれてからしていません。

王との伽も最後は義務でしていました...慰み者としてしか価値は無さそうですね。

無様な姿を晒して痣家笑う、そういう存在なのでしょう。

せめて、10年前の美貌があれば、本当にそう思え泣けてきます。

間もなく此処に、嫁いだフランソワーズにエレノワールも来るそうです、同じ奴隷として。

勇者を殺した男の娘だから、離婚して国外追放の末奴隷ですか?

どちらも王族に嫁いだのに誰も守ってくれない...本当の意味では愛されてなかったのかも知れません。

...無理ですね。

教会を敵に回したら国が潰れる。

王族としては...当たり前の事です。

ですが...誰も気概が無いんですか...《必ず幸せにしてみせます》《必ずや生涯変らぬ愛を》全てが嘘。

そんな者しか居なかった。

諦めるしかありません。

もう、王妃としてのマリアーヌは死にました。

これからは母として子供を守らなくてはなりません。

「テレジア、大丈夫よ、貴方はお母さまが守ってあげるわ」

せめてこの子は側室にしなくては、奴隷にはさせません。



【合流】


「お母さま、話は此処に来るまでに聞きました、テレジア気をしっかりお持ちなさい」

「これからどうするか考えなくては」

「はい、フランソワーズお姉さまにエレノワールお姉さま」

フランソワーズは栗毛色の髪に優しそうな顔立ちの優しそうな感じで、逆にエレノワールは目がきつい感じの金髪だ。

どちらも方向性は違えど美女ではある。

「そうね、まずは今の生活は王族と何だ変わりないわ、此処から出られない事いがいわね」

「そうですか? 少し安心しました」
「牢獄には入らないで良いのですね」


「ええっ、ただこの生活は勇者であるルディウス様の機嫌を損ねる事で崩れ落ちます」

「確かにそうだわね」

「確かにそうでしょうね」



「ええっ、だから貴方達には本当に申し訳ありませんが、奴隷として誠心誠意ルディウス様に仕えて欲しいのです」

「お父様を殺した男ににですか、果たして私に出来るでしょうか?」

「私には自信がありません」


「ですが、やるしかありません、そうしなければ...母はもう覚悟を決めています、ですが愛する者と引き裂かれた貴方達に言うのは酷でしたね...すみません」

《テレジアの為か》

《テレジアにはまだ奴隷にならない道があるのですね》


「別に愛されて居なかったようですよ、お父様が勇者の家族に手を掛けた日からまるで罪人扱いです、この汚らしいドレスを見れば何となく察しがつくと思います、大国の王の娘だから小国にとって価値があっただけ、それだけの様ですよ? 困った時に助けなかった位ですから、愛などなかったのでしょう...愛そうと努力した私が馬鹿みたいでした」

「フランソワーズの所は大変だったのですね、エレノワールの所はオシドリ夫婦さぞかし辛かったでしょう」

「同じような者ですよ? 教会を敵に回した人間は人では無いみたいですね? 愛なんてとっくに覚めました」


「本当に不甲斐ない母親ですみません、赦してね」


「別に良いですよ、お母さまが悪いんじゃないですから、噂によると勇者様は美形らしいですね、抱かれるならあんな青瓢箪みたいな人より勇者様の方が良いですよ」

「そうね、綺麗な方の方が良いですわ」

と言いながら三人とも体が震えていた。

それ以外の運命は無い、だからこういう事で《諦めをつけていた》


「お母さま、お姉さま」


「テレジアは気にしてもしかたないわよ」

「そうよ」

「勇者様にあってからですよ」

王妃や王女たちは自分達のこれからの運命を考えると気が気でなかった。

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

異世界転生、防御特化能力で彼女たちを英雄にしようと思ったが、そんな彼女たちには俺が英雄のようだ。

Mです。
ファンタジー
異世界学園バトル。 現世で惨めなサラリーマンをしていた…… そんな会社からの帰り道、「転生屋」という見慣れない怪しげな店を見つける。 その転生屋で新たな世界で生きる為の能力を受け取る。 それを自由イメージして良いと言われた為、せめて、新しい世界では苦しまないようにと防御に突出した能力をイメージする。 目を覚ますと見知らぬ世界に居て……学生くらいの年齢に若返っていて…… 現実か夢かわからなくて……そんな世界で出会うヒロイン達に…… 特殊な能力が当然のように存在するその世界で…… 自分の存在も、手に入れた能力も……異世界に来たって俺の人生はそんなもん。 俺は俺の出来ること…… 彼女たちを守り……そして俺はその能力を駆使して彼女たちを英雄にする。 だけど、そんな彼女たちにとっては俺が英雄のようだ……。 ※※多少意識はしていますが、主人公最強で無双はなく、普通に苦戦します……流行ではないのは承知ですが、登場人物の個性を持たせるためそのキャラの物語(エピソード)や回想のような場面が多いです……後一応理由はありますが、主人公の年上に対する態度がなってません……、後、私(さくしゃ)の変な癖で「……」が凄く多いです。その変ご了承の上で楽しんで頂けると……Mです。の本望です(どうでもいいですよね…)※※ ※※楽しかった……続きが気になると思って頂けた場合、お気に入り登録……このエピソード好みだなとか思ったらコメントを貰えたりすると軽い絶頂を覚えるくらいには喜びます……メンタル弱めなので、誹謗中傷てきなものには怯えていますが、気軽に頂けると嬉しいです。※※

処刑された勇者は二度目の人生で復讐を選ぶ

シロタカズキ
ファンタジー
──勇者は、すべてを裏切られ、処刑された。  だが、彼の魂は復讐の炎と共に蘇る──。 かつて魔王を討ち、人類を救った勇者 レオン・アルヴァレス。 だが、彼を待っていたのは称賛ではなく、 王族・貴族・元仲間たちによる裏切りと処刑だった。 「力が強すぎる」という理由で異端者として断罪され、広場で公開処刑されるレオン。 国民は歓喜し、王は満足げに笑い、かつての仲間たちは目を背ける。 そして、勇者は 死んだ。 ──はずだった。 十年後。 王国は繁栄の影で腐敗し、裏切り者たちは安穏とした日々を送っていた。 しかし、そんな彼らの前に死んだはずの勇者が現れる。 「よくもまあ、のうのうと生きていられたものだな」 これは、英雄ではなくなった男の復讐譚。 彼を裏切った王族、貴族、そしてかつての仲間たちを絶望の淵に叩き落とすための第二の人生が、いま始まる──。

今更気付いてももう遅い。

ユウキ
恋愛
ある晴れた日、卒業の季節に集まる面々は、一様に暗く。 今更真相に気付いても、後悔してももう遅い。何もかも、取り戻せないのです。

攻撃魔法を使えないヒーラーの俺が、回復魔法で最強でした。 -俺は何度でも救うとそう決めた-【[完]】

水無月いい人(minazuki)
ファンタジー
【HOTランキング一位獲得作品】 【一次選考通過作品】 ---  とある剣と魔法の世界で、  ある男女の間に赤ん坊が生まれた。  名をアスフィ・シーネット。  才能が無ければ魔法が使えない、そんな世界で彼は運良く魔法の才能を持って産まれた。  だが、使用できるのは攻撃魔法ではなく回復魔法のみだった。  攻撃魔法を一切使えない彼は、冒険者達からも距離を置かれていた。 彼は誓う、俺は回復魔法で最強になると。  --------- もし気に入っていただけたら、ブクマや評価、感想をいただけると大変励みになります! #ヒラ俺 この度ついに完結しました。 1年以上書き続けた作品です。 途中迷走してました……。 今までありがとうございました! --- 追記:2025/09/20 再編、あるいは続編を書くか迷ってます。 もし気になる方は、 コメント頂けるとするかもしれないです。

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

〈完結〉遅効性の毒

ごろごろみかん。
ファンタジー
「結婚されても、私は傍にいます。彼が、望むなら」 悲恋に酔う彼女に私は笑った。 そんなに私の立場が欲しいなら譲ってあげる。

【死に役転生】悪役貴族の冤罪処刑エンドは嫌なので、ストーリーが始まる前に鍛えまくったら、やりすぎたようです。

いな@
ファンタジー
【第一章完結】映画の撮影中に死んだのか、開始五分で処刑されるキャラに転生してしまったけど死にたくなんてないし、原作主人公のメインヒロインになる幼馴染みも可愛いから渡したくないと冤罪を着せられる前に死亡フラグをへし折ることにします。 そこで転生特典スキルの『超越者』のお陰で色んなトラブルと悪名の原因となっていた問題を解決していくことになります。 【第二章】 原作の開始である学園への入学式当日、原作主人公との出会いから始まります。 原作とは違う流れに戸惑いながらも、大切な仲間たち(増えます)と共に沢山の困難に立ち向かい、解決していきます。

最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした

新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。 「もうオマエはいらん」 勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。 ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。 転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。 勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

処理中です...