【しっかり書き換え版】『異世界でたった1人の日本人』~ 異世界で日本の神の加護を持つたった1人の男~

石のやっさん

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第58話 家事

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「おはよう」

「おはようございますわ…って理人様、一体何をしていますの?」

「此処の宿屋はキッチンがついているだろう。だから、料理しているんだ。朝市に行って買ってきたんだが、今一前の世界と違うから、味の保証はしないけどな、ある程度は再現出来たと思う」

凄いですわ。黒薔薇の私が傍に居ながら、立ち去る気配すら感じませんでしたわ。私に気がつかれずに立ち去るなんて、凄い隠形ですわ…それより、まさか…

「あっ、あの…下着」

「ああっ、たまっていたから、洗濯して室内干しにしたんだ」

「流石に下着は自分で洗いますわ」

「気にするな、俺は神社で育ったから、洗濯には慣れているし、料理もする。まぁ爺ちゃんと二人で暮らしていたからな、それにお手伝いの巫女さんの衣装も俺が手洗いしていたからまぁ気にしないで良いよ」

「そうですか。まぁ理人様がそれで良いなら良いのですが、それより何故音を殆ど立てずに立ち去って、更に音を殆ど立てずに家事が出来るのです?解りませんわ」

「それ?俺には、爺ちゃんが居て『音を立てるな』って小さい頃から言われてきたんだ。人を起こさない様に家事をする修行をしていたせいかな?」

「あの、お爺様は一流の暗殺者ですの?」

「神主だけど、そこら辺に良くいる爺ちゃんだけど?」

そんな訳ありませんわね、絨毯に落ちる針の音ですから気がつく私が、気がつかないレベルの隠形、アサシンだって出来ませんわ。

「そうですか、素晴らしいお爺様ですわね」

まさか、平和な世界から来た異世界人が、此処迄出来るなんて信じられませんわ。

「まぁね。それより料理が完成したから二人を起こしてくれるかな?」

「解りましたわ」

◆◆◆


「えーと、フルールさん洗濯してくれたのは嬉しいけど、流石にこれは無いよ」

「この部屋には理人もいるのよ、気をつけてよ、恥ずかしいわ」

「これを洗って干したのは理人様ですわ」

「「えっ」」

「ああ、気にしないで良いよ、俺は元から修行で洗濯は得意だから。あと料理もある程度は出来るから作ってみたんだ…とりあえず食べてみてよ」

「理人くんの手作り…うわぁぁぁぁ美味しそう」

「理人が作ってくれたの? 料理まで出来るなんて凄いわ」

「まぁね、ただ俺が本来得意なのは和食なんだけど、食材が手に入らないから洋食。しかも、食材も全部は揃ってないから、かなり適当だけどね」

「理人様の手作り…口の方を合わせますわ」

「私、理人くんが作ってくれたなら泥団子だって食べるよ」

「そうね、理人の手作りなら、不味くても完食する自信はあるわ」

何気に酷いな。

俺は本当に家事が出来るんだけどな。

「…美味しいのですわ。これレストランや王宮の料理よりうまいのですわ」

「理人くん、これ美味しい…うん凄く美味しい」

「美味いわ!理人って欠点が本当に無いわね。これなら日本でだってレストランで出せるわ」

「フルールは兎も角、綾子も塔子は酷いな。俺いつも弁当持って来ていたんだけど覚えてないかな? あれ全部自作だからな。クリームシチューを作りたかったんだけど、野菜や材料が違うから半分勘で作ったから、そこ迄の物じゃないよ」

「理人くん、お世辞じゃないよ! 本当に美味いよ。この世界に来て一番美味しいよ」

「うん、確かにこの世界の味付けは微妙に残念なのよね。前の世界なら兎も角、この世界で食べた物の中じゃ一番です」

「私も、凄く美味しく感じますわ」

「そうか、なら暫くの間は家事は俺が担当するよ」

俺はエプロンを外して席を立った。

「それじゃ、洗い物は任せた」


「理人くん何処に行くの?」

「こんな朝から、もう出掛けるの?」

「この世界の冒険者は結構朝から働くみたいだからな、慣れないとな」

そう言いながら、俺はフルールに目配せをした。

「行ってらっしゃいませ、理人様」

「「行ってらっしゃい」」

三人に見送られて俺は今日も稼ぎに出掛けた。


◆◆◆

と見せかけて俺は街の入口の所でフルールを待った。

「お待たせしましたわ」

フルールが駆けてきた。

こうして見る分には普通に美少女だ。

「それじゃお願いできるかな?」

「はいですわ」

俺はフルールから『道具』を一式貰った。

フルールは汚れ仕事を扱っていた黒騎士を率いていた。

つまり、暗殺はお手の物だ。

この世界には俺の知らない『魔法』という物がある。

だからこそフルールに頼らないといけない。

道具の中にはマントとナイフが入っていた。

「このマントは?」

「これは見隠しのマントですわ、これを着ていれば余程の事がなければ相手から姿は見えないのですわ」

「このナイフは?」

「ある種の毒蛾の交配を繰り返して作った特殊な蛾の鱗粉毒が塗ってありますわ。これで刺されたら3分と待たずに死にますわね。まぁ聖女でもない限り確実に死にますわ」

流石としか言えないな。

蛇の道は蛇、正にそれだ。

「フルールありがとう、今夜早速、ジャミル男爵に攻撃を仕掛ける。今夜は仕事で遅くなると2人に伝えてくれ」

「解りましたわ…ですが私がついて行かなくて宜しいんですの?」

「ああっこれも男の仕事だ」

「理人様の世界の男って随分優しいのですわね。この世界にはそんな考えはありませんわ…あっ違いますわね、理人様がお優しいのですわね」

「そんな事はない。それじゃ行ってくる」

まずは普通の狩りをして、それが終わったら…夜に備え休もう。










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