【しっかり書き換え版】『異世界でたった1人の日本人』~ 異世界で日本の神の加護を持つたった1人の男~

石のやっさん

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第67話 【閑話】せめて勇者らしく

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困った。

本当に困った。

俺の名は大樹、勇者パーティ『ブレーブ』のリーダーだ。

メンバーには大河に聖人が居て『勇者』『剣聖』『大賢者』の最強パーティの筈なのだが…ひょんな事で俺達は能力を失ってしまった。

俺達は『資格』が失ってしまったのが、ばれると不味いから、ばれる前に北の大地を目指して旅している。

北の大地を越えれば、その先はルブランド帝国、もう一神教ではないから、今の俺達でも問題無く生きられるかも知れない。


だが、その前に『自分達が死んだ事』にしなければならない。

俺達3職が能力を失った事がばれたら不味い気がする。

それなら、その前に自分達が死んだ事にして行方を眩ませればよい。

そう考えた。

それ以外にも当面の問題は…金だ。

「大樹よ、今のままじゃ真面に狩りが出来ないぞ」

「確かにそうだな」

「それでどうするんだ?」

「今は黙って北の大地に向うしかないだろう」

「このままじゃ戦力不足だぞ」

「お金があるうちに奴隷か武器を買おう、僕は可愛く強い美人の奴隷が良いな」


「聖人、俺も欲しいが、その前に俺たちは『死んだ事』にしなくちゃならない。死んだら…奴隷も武器も捨てなければならない…今は我慢だ」

「仕方ねーな」

「そうか…」

「だから、今は食い物以外に金は使うなよ」

「ああっ」

「教会の奴ら、金をもうくれないみたいだからね」


「あいつ等、薄々気がついていそうだ、決定的にばれる前にやるぞ」

多分、俺達がもう『3職』の力が無い事を恐らくは解っている。

だからこそ追い出したのだろう。

「「おーっ」」

から元気を出しながら、ただひたすら、北の大地を目指して歩いた。

そこ迄いけば希望がある。

金は手を付けないで、急いで歩いている。

途中死んだ事にして別人にならなくてはいけない。

目指すは北の大地…そこには魔族の幹部が居る。

そいつに戦いを挑んだ振りして死んだ事にすれば良い。

今何かを所有しても、それは死人の者になるから意味が無い。

だから大きなものは買えない。

この金は俺達が人生をやり直す為に必要な金だ。

金は1人当たり金貨15枚(約150万円)この旅で金貨5枚で納めて残りの金貨10枚で、新しい生活をする。

それがこの計画の基本だ。

だが、この旅は不安で仕方が無い。

聖人は魔法が何故か使えない。

俺も大河も剣は振るえるが、精々がゴブリンやオークなら1体どうにか狩れる程度。冒険者としてはDランク以下の実力しかない。だが異世界人の為最初からAランクだった。

流石にAランクなのにゴブリン3体を持ち込んだら、凄く嫌な目で見られたので…もう冒険者ギルドに持ち込みにくくなった。

ただただ、北の大地を目指して歩く毎日。

それ以外俺達には何もない。

女が欲しい…だが金には限りがあるし、此の世界の安い風俗はシャワーも無く、性病持ちが多くて怖くていけない。

後で聞けば、此の世界には奴隷が居る。

それならあんな事をする必要は無かった…多分あの行為が元で能力を失った可能性もある

◆◆◆

「あのよ、ちょっと金恵んでくれねーか!」

「俺達がなんで金を恵まなければいけないんだ!」

「バーカ、これは常套文句なだけだよ!お前等は、本当は弱いんだろう!見ていれば解るぜ」

「俺は勇者だぜ、仲間は剣聖と大..」

「うるせーよ!」

思いっきりぶん殴られた。

「この野郎…」

駄目だ、何も出来ない。

「貴様、斬り殺してやる」

大河が剣を抜いた。

「止めろ大河っ」

「あっあああああああああーーーっ俺の腕がぁぁぁぁーーーっ」

「大河―――っ」

大河が剣を抜いた瞬間、相手が剣を抜いて大河の腕を斬り落とした。

「剣が真面に振るえていないな、と言う事は此奴は大賢者か? それじゃこっちが…剣聖かな」

そう言うと聖人の方にその男は剣を横殴りに振るった。

「聖人―――っ」

「うわぁぁぁーーーっ」

聖人が死んだのが解かった。

腹を斬られて、生きている訳はない。

体が上下に真っ二つになって内臓が飛び散っている。

これじゃ、教会で見たハイヒールでも治らないだろう。

『終わった』

大河を拾って、逃げるしかねー。

「狙いはこいつなのかな?」

嘘だろう、此奴一瞬で大河の傍に移動しやがった。

「うわぁぁぁぁぁーーっ」

悲鳴と一緒に大河の首が一瞬で宙に舞った。

『何が起きているんだ』

チクショウ、俺に勇者の力があれば、こんな奴。

足が震える。

チクショウ小便まで漏らしたじゃないか。

逃げたい、だが逃げられない。

此奴は聖人を大河を殺した。

俺はこいつ等のリーダーだ。

1人だけ生き延びるなんて選択は無い。

此奴らが居ない人生は退屈だ。

「ほう…少しは顔つきが変わったようだ。なら盗人の真似は止めだ。俺は魔族幹部 剣鬼ソード、いずれ勇者を殺す男だ。異世界人が居る、そう聞いて来たが雑魚のようだ」

「いずれじゃない…此処にいる、行くぞソード」

何もかもが敵わない。

俺は此処で死ぬ。

相打ちで良い…此奴に一撃を加えたい。

俺は昔習った剣道を思い出した。

上段に構える。

これで良い、これしかない。

痛みを感じたらそこに思いっきり叩き込む。

「目つきが変わったな…その目は嫌いじゃねー」

ソードが踏み込んできた。

突きか…腹が痛い。

何か出来るとしたら此処だ。

俺は思いっきり剣を振り下げた。

頭にあたった…これで相打ちだ..

ボキっ…えっ。

「ぐふっあああああっ…」

「無事だ!だから一撃貰ってやった。 魔族の頭は固い、聖剣でもない限り砕けない」

聖剣なら砕けるのか。

く俺が、勇者のままだった聖剣を持っていた。

ごめんな..俺、敵も討ってあげられなかった。

「ぐぼっハァハァ」

「その意気に免じて止めを刺してやろう」

地面がだんだん遠くなる。

俺の首が宙に舞った。

その証拠に首のない体が見える。

此奴が北の大陸の魔族の幹部…ここ迄来ていたのか。

こんな奴一体誰が倒すんだ…

死の間際、何故か俺は『理人』の顔が浮かんだ。

多分彼奴なら…気の迷いだ。

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