『異世界は貧乳が正義でした』~だから幼馴染の勇者に追放されても問題がない~ざまぁ? しませんよ!マジで!

石のやっさん

文字の大きさ
11 / 85

第11話 寝た後に アイカSIDE

しおりを挟む

生きていれば良い事もあるものですね。

今なら、少しだけそう思います。

今、私の横には『とんでもない美少年』が眠っています。

綺麗な銀髪のシャギー、前髪は長めで顔が隠れています。

やや赤み掛かった黒い目、その瞳は涼しげで儚く見えます。

身長は少し低めですが、綺麗と可愛いを兼ね備えた丁度良い高さです。

そして、何よりも鍛えられた体。

細いのに筋肉がついていて逞しい体をしています。

それなのに、ウエストは私より細いなんてズルすぎます。

この人がカッコ良いのは当たり前です。

だって、この人こそが平民の女の子なら誰もが1度は憧れる『英雄リヒト様』なのですから。

リヒト様は本当の英雄という訳ではありません。

勇者パーティの第5のメンバーだったので、他の四職に比べて『魔法戦士』だと聞こえが悪いからと『英雄』そう呼ばれています。

普通に女の子に生まれたら、一度は勇者様や王子様との恋愛を夢見ると思います

その中で私達、平民の女の子が恋愛相手として夢を見るのがリヒト様です。

だって、王子様との恋愛は最低でも上位貴族じゃないとあり得ません。

勇者ガイア様との恋愛もやはり高嶺の花で想像できません。

確かに、平民でも恋愛対象にはなるのかも知れませんが、それは三職限定です。

だから、ガイア様との恋愛をするなら、自分が聖女か賢者か剣聖で無ければ平民には無理です。

後は貴族か王族がお相手になります。

だから、平民の女の子の憧れは自然とリヒト様になります。

カッコ良いですよね…

ジョブは魔法戦士なのに幼馴染の勇者パーティに入り活躍する姿。

若くしてこの世界に20人と居ないS級冒険者になり、皆に優しいまさに英雄のような方です。

普通の平民には狩れないオーガもミノタウルスもワイバーン倒しちゃうんですから。

本当に溜まりません。

ガイア様みたいな派手さはありませんが、それはそれでカッコ良いのです。

一見地味に見えますが、小顔で凄く整った顔立、女の私よりもサラサラした髪の毛。

それがすぐ近くにあるんですよ!

無防備に寝ているんです…

まさか本当にこうなるなんて思いませんでしたよ…

私は酷い女です。

◆◆◆

奴隷として高く売る為に、私を助けてくれた人は、私の胸にさらしを巻いて美乳に見せかけて私を売りました。

奴隷商人が怒るのは当たり前です。

こんな価値が無く商品にならないような『化け乳女』を掴まされたのですから、私なんて鉱山奴隷の価値すらありません。

だから、凄く恨みを買い、私は価値のない奴隷ばかりがいる、カーテンから奥の部屋の檻に入れられました。

此処は暗くて汚くて真面な場所で無いのが良く解ります。

周りを見れば四肢欠損の者や女だと私と同じ化け乳や顔に火傷を負ったような人しか居ません。

容姿に問題があるか働けない奴隷しか居ないんです。

うふふっ、あははっ、私は何を言っているのでしょうか?

その中でも一番価値が無いのは私です。

化け乳は醜い女の代表です。

確かに、周りに化け乳は居ますが、皆は普通より少し大きい位。

お腹も出ているから『デブ』で通せるかどうかギリギリ。

それに対して私のは凶悪すぎます。

だれが見ても…一番醜いのは私です。

これで顔が悪ければ諦めも付きますが、もし醜い胸の塊さえなければ、私は美少女と呼ばれても可笑しくない『顔』なんですよ…

あそこでエリスの罠に嵌まらなければ、幸せに暮らせて…いませんね。

◆◆◆

普通に盗賊に慰み者にされて殺されて居たかも知れません。

『醜いから』盗賊のお情けで見逃されたのですから…

盗賊から

「見ろよ!俺達より不幸そうな女が居るぜ! この胸じゃ抱く気にもならないし、売り物にもならないな」

そう言って笑い物にされました。

「これどうする? こんな奴でもお頭に報告する必要あるか?」

「必要ないだろう? 俺達『煉獄の狼』は搾取する人間から富を奪う盗賊だ…惨めで俺達より悲惨な奴は放置でいいんじゃないか?」

「そうだな…このまま豚の中に居ろ!外に出るなよ! 明日の朝には俺達は居なくなるからな」

「解りました」

そう言って私は放置されました。

次の日のお昼までそのまま豚小屋で豚に隠れて過ごした私が見たものは…皆殺しにされたバルバドール家の人々です。

その死体には両親も居ましたが…何とも思いませんでした。

きっと、虐められ続けた結果『家族』『友達』そう思えなくなったのでしょうね。

あはははっ醜い『化け乳』だから私は助かったのですから。

元の綺麗な私だったらきっとあそこで死んでいましたよ。

煉獄の狼は虐げられた人達が作った盗賊として有名です。

その方たちから同情される位私は醜い化け乳です。

◆◆◆

滅多にあかないカーテンが開きました。

だけど私の所に来るわけは有りません。

もしこんな悲惨な状態の奴隷でも欲しいのなら、私よりは真面な手前側の奴隷を買う筈です。

同じ化け乳でも私より真面なのですから。

私は恐らく数日中に死ぬはずです。

私は此処に来てから食料も水も貰っていません。

他の奴隷は一日一回、芋や固いパン、水を貰っていますが…私にはありません。

毛布も私にはありません。


私がさらしを巻いて売られてきた腹いせです。

『もう助からないし…死ぬしかありません』

もう何日も食料も口にしていないし水すら飲んでいません。

目が霞み相手がだれかもう解りません。

ですがこの人が助けてくれなければ、もう私は死ぬしかありません。

「助けて…」

「解った、すぐに助けるからな!」

力強い返事がすぐに聞こえてきました。

◆◆◆
リヒト様は凄く優しい人です。

こんな醜い私を買ってくれて、貴重なポーションまでくれました。

私の為に店と喧嘩して、自分だってお腹が空いているから買った筈なのにお弁当を二つとも私にくれました。

こんなにも醜い私なのに、奴隷の身分の私にベッドまで譲ろうとするなんて『英雄』な訳ですね。

こんな醜い私でもこの方には『女の子』なんでしょうね。

醜い私が愚痴を沢山言っても聞いてくれました。

だけど辛いんですよ…

憧れの『英雄リヒト様』美少年でカッコ良い男の子の傍に、物凄く醜い姿の私が居る。

惨めだし辛いんです。

貴方が醜かったら、ううん、せめて普通だったら良かったのに。

私は奴隷です。

きっと貴方が素敵な奥さんを貰い幸せになる姿を見るのでしょう。

そして幾ら優しい貴方でも流石に『お情け』はくれない筈です。

凄く幸せな反面…それを考えてしまったら辛くなってしまって。

「カッコよくて可愛らしい素敵な笑顔ですね…今日だけは許して下さいね」

私は月明かりに照らされた美しいリヒト様の唇に自分の唇を合わせました。

きっと愛しては貰えない…惨めな女に恵んで下さい。

明日からはちゃんと奴隷として部をわきまえますから。

そのまま私は再びリヒト様の胸板に顔を移し体を押し付ける様にして眠りにつきました。















しおりを挟む
感想 129

あなたにおすすめの小説

勇者の隣に住んでいただけの村人の話。

カモミール
ファンタジー
とある村に住んでいた英雄にあこがれて勇者を目指すレオという少年がいた。 だが、勇者に選ばれたのはレオの幼馴染である少女ソフィだった。 その事実にレオは打ちのめされ、自堕落な生活を送ることになる。 だがそんなある日、勇者となったソフィが死んだという知らせが届き…? 才能のない村びとである少年が、幼馴染で、好きな人でもあった勇者の少女を救うために勇気を出す物語。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた

黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。 その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。 曖昧なのには理由があった。 『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。 どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。 ※小説家になろうにも随時転載中。 レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。 それでも皆はレンが勇者だと思っていた。 突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。 はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。 ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。 ※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。

俺が死んでから始まる物語

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。 だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。 余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。 そこからこの話は始まる。 セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕

最上級のパーティで最底辺の扱いを受けていたDランク錬金術師は新パーティで成り上がるようです(完)

みかん畑
ファンタジー
最上級のパーティで『荷物持ち』と嘲笑されていた僕は、パーティからクビを宣告されて抜けることにした。 在籍中は僕が色々肩代わりしてたけど、僕を荷物持ち扱いするくらい優秀な仲間たちなので、抜けても問題はないと思ってます。

最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした

新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。 「もうオマエはいらん」 勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。 ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。 転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。 勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

収納魔法を極めた魔術師ですが、勇者パーティを追放されました。ところで俺の追放理由って “どれ” ですか?

木塚麻弥
ファンタジー
収納魔法を活かして勇者パーティーの荷物持ちをしていたケイトはある日、パーティーを追放されてしまった。 追放される理由はよく分からなかった。 彼はパーティーを追放されても文句の言えない理由を無数に抱えていたからだ。 結局どれが本当の追放理由なのかはよく分からなかったが、勇者から追放すると強く言われたのでケイトはそれに従う。 しかし彼は、追放されてもなお仲間たちのことが好きだった。 たった四人で強大な魔王軍に立ち向かおうとするかつての仲間たち。 ケイトは彼らを失いたくなかった。 勇者たちとまた一緒に食事がしたかった。 しばらくひとりで悩んでいたケイトは気づいてしまう。 「追放されたってことは、俺の行動を制限する奴もいないってことだよな?」 これは収納魔法しか使えない魔術師が、仲間のために陰で奮闘する物語。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

処理中です...