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第16話 膝枕

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「リヒトさん、本当に私、何もしないで良いんですか? 幾らなんでもこれは可笑しくないですか?」

「良いから、良いから座ってて、俺が好きでやる事だから、暫くはゆっくりしてて良いからね」

「ですが…私は奴隷ですよ、リヒトさん」

「今はだよ、俺だってアイカの手料理とか食べたいから、そのうち出来るようになったら作って貰うけど、暫くは寛いでいてよ!今迄が大変だったんだからさぁ」

「ですが…」

「死んでも一緒に居てくれるんでしょう? なら今位良いんじゃないかな? 先は長いんだしね」

「そう…ですね…解りました」

俺はチョロいのかも知れない。

感謝されたり喜んでくれるだけで、何でもしてあげたくなる。

ガイアとあの三人は何かしてあげても『さも当たり前』そんな顔で感謝もしてくれなかった。

甘やかしすぎた俺も悪いのかも知れないが、それは俺にとって凄く詰まらない事だったんだな。

アイカはこれだけの事で喜んでくれたり、泣く程感動してくれたりする。

同じ事をしていても苦痛じゃない。

いや、寧ろ楽しい。

「今日の夕飯はミノタウルスのステーキだ、直ぐに用意するからね」

「そんな、高級なお肉、本当に良いんですか? 奴隷どころじゃなく貴族様でも貴重品ですよね?」

「俺はこれでも腕が良い冒険者だ、これ位大した事じゃない」

「リヒトさん…本当に私が好きなんですね…もう驚くの止めますね…そうしないとリヒトさんが困ってしまいますから…」

「そう、それで良いと思うよ」

「だけど、私貰ってばかりですね…なにかお返ししたいのに何も持っていなくて…ごめんなさい、途中から家畜番しかしてなかったから使用人なのに家事も満足に出来なくて…本当にごめんなさい」


「ほら、暗くならない、アイカは悲しい顔しているより笑顔の方が可愛いいんだから」

「そうですね…リヒトさん、これで良いですか?」

「ああっ、うんそれで良いよ…」

これは無理して笑っている笑顔だ。

アイカの本当の笑顔はまるで天使か女神の様に可愛いけど…

こうして無理して作った笑顔は頬っぺたが引きつっていて、少し怖い。

良く漫画にあるドス黒い、腹黒い笑顔に見える。

最もアイカは、そんなつもりじゃ無く一生懸命笑顔を作っている気なんだろうけどな。

これは言っても仕方がないな。

「こんな笑顔で良かったら…何時でもしますから言って下さいね」

「そう…ありがとう」

今はこれで良い。

さぁ、コーンスープにパンをつけてこれで食事も、はい出来上がり。

「凄く美味そうです…ね」

「まぁステーキソースは俺特製だから、食べてみて、結構好評だったんだ」

「はい…リヒトさん!これ凄く美味しいです!頬っぺたが落ちちゃいます」

この笑顔は本物の笑顔だ。

うん、凄く可愛い

◆◆◆

食事が終わり、今は二人でお茶を飲んでいる。

アイカはミルクティーが凄く気にいったようだからそれを、俺はブラックコーヒーだ。

普通に会話しているとアイカが申し訳なさそうな顔になった。

「あのリヒトさん…少し聞きづらい事なんですが、聞いても良いですか?」

かなり神妙な顔をしているから、俺が答えにくい事なのだろう。

だけどこれから長い時間を一緒に過ごすんだ。

遠慮は要らない。

「何でも聞いて、答えるから」

「それなら、思い切って聞いちゃいますね…なんでリヒトさんは追放されたんですか?」

やはりこれか。

「力的についていけないし、俺が役に立たないからじゃないかな?」

「そうですか? リヒトさんは役立たずじゃ無いし、何でもできるじゃないですか…可笑しいですよ」

「そう言ってくれると嬉しいけど、実力的についていけなくなっていたのは事実だよ。それに三人とも全員ガイアが好きだから、イチャつくのに俺が邪魔だったのかもな!」

まぁ十中八九こうしゃだな。

「そんな酷すぎますよ、そんな理由で追い出すなんて」

「今となってはそれで良かったんだよ、こうしてアイカに出会えたんだからな」

「全くもう…だけど、勇者パーティの三人は、凄く綺麗じゃないですか?未練はないんですか…私みたいな化け乳じゃ無くて凄く綺麗な美乳ばかりの美少女じゃないですか?」

この世界は、貧乳聖女のせいで可笑しくなっている。

前の世界なら、山脈と草原なら…普通は山脈を選ぶよな。

貧乳って一言で言うけど、見方を変えれば男とさほど変わらない胸をしているんだ、特にリラなんて背中と胸で殆ど変わらない。

そこにロマンなんて無い。

ただ感触を味わうなら自分の胸を触るのとあまり変わらない様な気すらする。

「無いと言ったら嘘になるが、それは男女としてじゃないな。小さい頃からいつも5人で居たからガイアも含んで幼馴染全員と一緒に居られなくなったのが辛い、そんな感じかな」

「そうなんですか? まぁ一緒に居られなくなっただけならまだ良いじゃ無いですか? 私なんて全員が突然敵になっちゃいましたから」

「確かにそうだな」

余りに酷くてこれしか言えないな。

俺の方がアイカより遥かにましだ。

「そうですよ」

少しは心の傷も癒えたのかもしれないな。

さっき程に比べて卑屈にならない…話して正解だったな。

「そう言えばアイカ、その前髪、目に当たっていて邪魔だろう? ついでに髪を切ってあげるよ! どんな風にして欲しいとかリクエストある?」

「リヒトさんって凄くまめですよね。私は身も心も全部リヒトさんの物です…だからリヒトさんの好みに切ってくれれば良いんですよ」

「俺の好みで良いんだ!そう解ったよ」

悩んだ末俺は、前髪ぱっつんのお姫様カットにした。

こういう髪型は人を選ぶがアイカには凄く似合う。

「リヒトさんって本当になんでもできますね…凄く可愛く切ってくれてありがとうございます」

「まぁ良く皆の髪も切ってあげていたから、慣れただけだよ!だけど、良く似合っているよ」

「ありがとうございます! あの…リヒトさんは私にして欲しい事はありますか! 私…何でもしますから…」

「それじゃ…」

「ええっと…これがリヒトさんがして欲しい事ですか?」

「まぁな…少しだけこれで寝て良いか?」

俺は長椅子に座っているアイカの膝の上に頭を載せた、所謂膝枕だ。

やっぱり、こう言うのはアイカみたいな肉付きじゃないと気持ち良く眠れない気がする。

ナインペタンは足や太腿も細いからきっと気持ち良くない…と思う。

「本当にこれがしたい事なんですね、良いですよ、ゆっくり寝て下さいね」

暫く俺は頭でアイカの太腿の感触を楽しんだ。
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